戦女神×魔導巧殻 第二期外伝 -ハイシェラ魔族国興亡伝-   作:Hermes_0724

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第七話:聖女の作戦

ディル=リフィーナ(二つ回廊の終わり)世界が誕生する以前は、世界は科学文明が栄えていたイアス=ステリナと、神と魔法の世界ネイ=ステリナが、個々に独立した世界であった。この二つの世界がどのように融合したのかは、その詳細は一切が不明である。時間の流れや様々な物理法則、天体運動や惑星の地形などが段階的に融合していったと考えられているが、一太陽系内での融合なのか、それとも宇宙全体で融合が発生したのか、ディル=リフィーナ世界成立の経緯は後世においても「最大の謎」とされている。後世の研究で判明をしているのは、イアス=ステリナ世界(先史文明期)の遺跡が、世界融合に結界のような役割を果たしていた、ということである。また人造の女神である機工女神の一柱「エリュア」が、異質融合の特殊能力を発揮して世界融合を成立させたと考えられている。これらは紀行記「東方見聞録」の中でも描かれているが、それ以外にも三神戦争叙事詩や各地の遺跡探査からも傍証が発見されており、考古学上の定説となっている。

 

先史文明期の遺跡は、ラウルバーシュ大陸各地で確認をされている。また現神たちが棲む「神骨の大陸」においても遺跡が存在していると言われている。このことから、イアス=ステリナ人は惑星全体を覆うほどの巨大結界を形成し、世界融合を実現したと考えられているが、その結界が具体的にどのような形状であったのかは判明していない。また同様に、機工女神エリュアがどこにいて、どのように異質融合を果たしたのかは、一切が闇の中である。

 

 

 

 

 

ケレース地方統一から二年半が経過しようとしていた。エディカーヌ王国に移転した住民は十万を超え、西ケレース地方は急速に人口が減少している。だがこれは既に予定されていることであった。宰相シュタイフェは二年以上前に、各産業の「減産計画」を策定しており、民衆の生活水準には大きな影響は出ていない。ハイシェラ魔族国は建国当初こそレスペレント地方、アヴァタール地方に輸出をしていたが、減産に伴い輸出量も急減し、現在は「鎖国状態」となっている。ラギール商会プレメル支店も半年前に閉じていた。魔人パラバムの監視の中、人質であるシュミネリアはプレメルの街を歩いていた。

 

『初めてこの街に来た時は、大勢の人がいて輝いていましたが、少しずつ寂しくなっていますね…』

 

プレメルでは空き家が目立ち始めていた。ドワーフ族、獣人族などは大半が移転を終えている。人間族や悪魔族、その他の亜人種が多いが、時折、龍人族も見かける。ターペ=エトフ王国時代からの貨幣をそのまま使うことが出来るが、最近では物々交換もされ始めている。数万を超えていた人口も半分以下になった。閉鎖された大図書館前で立ち止まり、巨大な建物を見上げる。

 

『インドリト・ターペ=エトフという王は、国が亡びることを予期した時に、何を感じたのでしょう?これほどに発展した国を放棄しなければならない…私には、とても耐えられません』

 

パラバムは興味が無さそうに欠伸をしていた。日が暮れるまで街を歩き、シュミネリアは王城に戻った。謁見の間で、ハイシェラとシュタイフェが話し合いをしている。シュミネリアが部屋に戻ろうとすると、ハイシェラに呼び止められた。

 

『汝も参加せよ。イソラにも関わることだの』

 

ハイシェラたちが話し合いをしていたのは、ケレース地方の防衛体制についてであった。ハイシェラ魔族国は、東オウスト内海の南岸を領土としている。その為、商船程度であれば、大抵の場所に接岸することは可能である。だが軍隊を送り込むとしたら、補給のための拠点を設けなければならないため、侵入経路は限られてくる。

 

『このケレース地方に侵攻するとなれば、その経路は全部で五カ所に限られヤス。まずはルプートア山脈北西部の「ケテ海峡」、西ケレース地方の港湾「フレイシア湾」、ケレース地方東部の「イソラの街」、そしてレウィニア神権国から入った「華鏡の畔」、アヴァタール地方東部から入る「シュタット森林地帯」でヤス。このうち、華鏡の畔については問題視はしなくて良いでしょう。エルフ族は未だ渋っていヤスが、レウィニア神権国が侵略戦争を始める可能性は低いと判断しヤス。シュタット森林地帯からの経路は、オメール山に狼煙台を設けておりヤスし、ハイシェラ様が直に説得をされた魔神殿も目を光らせてくれてヤス』

 

ケレース地方全体を示した地図を刺しながら、シュタイフェが説明をした。それを見ながら、シュミネリアは改めて実感した。ケレース地方は広大である。これほどの地方を一つの行政府で統治をするのは不可能であろう。シュタイフェもそれを承知しているようで、イソラ王国は半自治権を獲得している。現状はいわば、「ハイシェラ魔族連邦国」と言えた。

 

『…残りはケテ海峡、フレイシア湾、イソラの街でヤスが、やはり最も警戒すべきはケテ海峡でヤス。我が国が警戒すべき仮想敵勢力は、マーズテリア神殿、バリハルト神殿、カルッシャ王国、フレスラント王国、バルジア王国でヤスが、フレスラントとバルジアは国力から考えても数千の兵を船で移送することは難しいでしょう。マーズテリア、バリハルト、カルッシャの三勢力は、いずれも「ケテ海峡」を通過する必要があり、ここを警戒しておけば、早期に防衛体制を取ることが出来ヤス』

 

シュミネリアは不安を感じていた。聖女ルナ=クリアの作戦は、西ケレース地方からハイシェラを引き離し、その間に王宮を占領する、という戦力分断作戦である。だが目の前の王と宰相は、タダモノではない。先を見通す智慧を持っている。たとえハイシェラをこの王宮から引き離したとしても、占領軍を送り込めなければ意味が無いのである。シュミネリアの不安を余所に、二人は議論を続けた。

 

『ケテ海峡は霧が立ち込めると聞いておるが、その場合は監視は可能か?』

 

『ヘイッ!その場合は、交代で飛天魔族を偵察に飛ばし、監視をするようにしヤス。また、万一に備えてフレイシア湾に棲む龍人族に協力を要請し、湾に侵入される前に警報を受け取れるようにしておりヤス』

 

『ルプートア山脈東部がある以上、東からこの地に侵攻することは不可能じゃからの。我自らが、それを経験しておる。良かろう!引き続き、ケテ海峡とフレイシア湾の警戒に当たれ!』

 

『ヘッ!』

 

シュタイフェが退室すると、ハイシェラは面白そうにシュミネリアを見た。

 

『どうじゃ?汝の希望はこれでも叶えられそうか?』

 

『な、何でしょうか?』

 

『我が気づいておらぬと思うてか?汝の希望は、夫がマーズテリア軍を率いてこの地に乗り込んでくることであろう?じゃがそれは不可能だの。奴らが来れば、フレイシア湾で藻屑としてくれるわ』

 

沈黙するシュミネリアを見ながら、ハイシェラは高らかに嗤った。

 

 

 

 

 

『…と、魔神ハイシェラは考えているでしょう。ケテ海峡を抑えている限り、急襲は不可能であると…』

 

聖騎士エルヴィン・テルカ、その弟のヴィルト・テルカ、更に各部隊を率いる隊長たちが揃っている中、聖女ルナ=クリアはケレース地方の地図を使って説明をした。それはまさに、ハイシェラとシュタイフェが話し合っていた内容であった。エルヴィンが首をひねって質問をした。

 

『聖女殿、それでは魔族国への急襲は不可能ということでしょうか?私から見ても、この布陣には隙きが無いように思えますが?』

 

皆が一斉に頷く。クリアは嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 

『聖騎士殿までそう考えて下さるのであれば、尚更、成功の可能性は高いですね。皆さん、一つ忘れていませんか?レウィニア神権国はターペ=エトフの同盟国でしたが、ハイシェラ魔族国の同盟国ではありませんよ?』

 

『…それが何か?』

 

エルヴィンたちはまだ気づいていなかった。それほどまでに「ケレース地方侵攻はフレイシア湾から」という常識に囚われていたのだ。クリアは頷き、説明をした。

 

『ターペ=エトフ王国時代から、ケレース地方への侵攻は「オウスト内海からケテ海峡を通過し、フレイシア湾に上陸する」という経路に限定されていました。それには二つの理由があります。一つはレウィニア神権国という同盟国の存在、そしてもう一つは「華鏡の畔」という結界が存在していたからです。ですが現在、この二つの条件は消滅しています。侵攻のための「戦略的条件」が変化をしたのです。私たちは出来るだけ魔族国の視線を「北」に貼り付けます。ですがそれは「囮」です。本命は南部からの侵攻、つまりベルリア王国で軍を興し、ブレニア内海を通過してレウィニア神権国に上陸し、華鏡の畔を通過して一気にプレメルに攻め入る、という経路です。この経路であれば、直前まで気づかれることはないでしょう』

 

『ひょっとして、三年前にフレイシア湾に入ろうとしたのも…』

 

『もちろん、この作戦のための仕込みです。マーズテリア神殿はフレイシア湾から来る、と思い込ませるためです』

 

全員が感嘆の声を漏らす。だがヴィルト・テルカが疑問を提示した。

 

『ですが、レウィニア神権国が我らの通過を認めるでしょうか?彼の国は侵略を否定していますが…』

 

『認めます。何もレウィニア神権国に軍を興せと言うのではないのです。魔族国討伐のために通過を認めよ、というだけです。もし拒否をすれば「レウィニアは魔族国側の国」と諸国は見做すでしょう。絶対君主「水の巫女」自身の気持ちは図れませんが、政治的に拒否をすることは不可能です』

 

ハイシェラ魔族国の弱点は、周辺諸国全てが「光側の国」によって囲まれていたことである。その上、ラギール商会が撤退したため、外部についての情報が極端に少ない状態になっていた。殻に閉じこもった亀と同じ状態だったのである。

 

『あと数カ月で、元ターペ=エトフ国民の移転は終わるでしょう。その時、罠を仕掛けに魔族国に向かいます。もちろん、フレイシア湾から…ヴィルト殿、もう少しです。もう少しだけ、辛抱してください』

 

聖女に励まされ、兄に肩を叩かれ、ヴィルト・テルカは決意の表情で頷いた。

 

 

 

 

 

聖騎士たちに作戦の概要を伝えた夜、ルナ=クリアは自室の縁台に腰かけ、月を眺めていた。聖騎士たちに語ったのは、討伐軍の侵攻経路についてである。だがこの作戦には欠けている部分があった。魔神ハイシェラが絶壁の王宮を離れ、オメール山に向かった時を察知する必要がある。更には、ハイシェラがオメール山に入り次第、魔術によって結界を形成し、外部からの情報遮断を山全体に仕掛けなければならない。そのためには、オメール山を監視し、結界を形成する人員を配置しておく必要がある。イソラ王国に百名程度の人員を置く必要があるが、そのためにハイシェラとの交渉が必要となる。

 

『半年後、ロコパウル卿と共に罠を仕掛けにフレイシア湾に向かう。その時が唯一の機会ですね…』

 

聖女という立場上、すべては計算通りという表情をしなければならないが、実際には薄氷の上を踏むような作戦である。魔族国を相手にするというのはそれ程に危険であり、慎重を要する。この大陸には幾つかの魔族国が存在しているが、他国によって討伐されたという事例はない。この作戦が成功すれば、歴史上初めて「人間の力で魔族国を滅ぼした」ことになるだろう。

 

『私たちにとって幸運だったのは、ディアン・ケヒトと戦わずに済むことです。彼ならあるいは、この作戦すら読んだかもしれません…』

 

立ち上がり、寝台へと向かった。

 

 

 

 

 

『マーズテリア神殿の使者が来てる?何の用で?』

 

レウィニア神権国王都プレイアにて、リタ・ラギールは部下からの報告を聞いていた。マーズテリア神殿総本山から来たという使者は、レウィニア国王や有力貴族たちと話し合いを続けているそうである。何らかの交渉だろうが、その詳細は厳重な緘口令によって、容易には掴めなかった。唯一掴めたのは、ハイシェラ魔族国に対しての話し合いをしている、ということだけであった。リタとベラとの秘密裏の会合でも、その話題が出た。

 

『我々の方でも、詳細は把握していないわ。私が知っているのは、マーズテリア神殿が魔族国に何かをしようとしている。それについて、レウィニア神権国に協力を要請しているってことだけね』

 

『「何か」って、戦争以外無いでしょう?各国が挙兵して、一気にケレース地方に攻め込むっていう作戦かな?』

 

『であるならば、マーズテリア神殿もタカが知れているわね。あの地が「天嶮の要害」と呼ばれるのは、軍を上陸させるための港湾が少なく、南部からの侵攻経路も限られるからよ。周辺国が一斉挙兵をしたところで、侵攻経路が判明している以上、各個撃破をされてしまうわ』

 

『そうだよねぇ~ ターペ=エトフが三百年の平和を保ったのも、その地形が大きな理由だし… でもその程度のこと、マーズテリア神殿も解っているはずだよ?何か作戦があるんじゃないかな?』

 

リタの疑問に、ベラは肩を竦めた。

 

『いずれにしても、我々には関係のないことだ。私は魔神ハイシェラに助けられたという義理はあるが、北華鏡の集落を守っていることで、それは返している。そちらもそうだろう?』

 

『そうだねぇ。プレメル支店も閉鎖しちゃったし、教える義理は無いかな…』

 

二人の商人は頷きあった。

 

 

 

 

 

ターペ=エトフ滅亡から三年、プレメルの住民の大半はエディカーヌ王国に移転し、ケレース地方は人口希薄地帯となっていた。ハイシェラ魔族国とトライスメイルとの間では、結局のところは交渉が成立せず、エルフ族が自発的に治安を維持する…という程度の合意で決着がついた。アヴァタール地方の裏社会によって、一定の治安が維持されているため、ハイシェラはそれで良しとしたのである。

 

『全住民の移転終了まで、あと四、五カ月といったところでヤスねぇ。幸いなことに昨年は麦も豊作でしたし、自給体制に問題はありヤせん。この地に残る亜人族たちも人口が増えつつありヤスので、いずれは大規模な軍を興すことも出来るようになるでしょう』

 

書類を一読し、ハイシェラは頷いた。先王インドリトとの約定は果たせそうである。だがハイシェラの中には、一つの疑問があった。このまま魔族国の王として生きるのか、という疑問である。ターペ=エトフとの戦争は高揚感に満たされていた。ケレース地方統一という目標も、悪くないものであった。だがそれが成し遂げられた後、自分は何をすべきなのだろうか。当初は巨大魔族国によって「この地を護る」という目的であった。ターペ=エトフが滅亡すれば、光側神殿やレスぺレント地方の諸国が侵攻してくると考えていた。だが実際には、攻めてくる気配すら全くない。破壊衝動によって気ままに闘争をするのが本来の魔神である。ハイシェラにとって「護り」というのは想像以上に退屈なものであった。欠伸を噛み殺している時、偵察隊の一人が駆け込んできた。

 

『ハイシェラ様、マーズテリア神殿の船がケテ海峡を通過したとのことですっ!』

 

ハイシェラの貌が輝いた。待ちに待った「戦争」の始まりだと思ったのである。だが詳細を聞いて失望した。

 

『船は一隻、神殿旗と共に白旗を掲げています。どうやら使者のようです』

 

つまらなそうに溜め息をつく王を横目に、シュタイフェが指示を出した。

 

『フレイシア湾東部に接岸させよ。守備隊は完全武装をするように。使者であることを確認した上で、上陸を認める。くれぐれも丁重に…』

 

シュタイフェは一礼し、部屋を出た。

 

 

 

 

 

『これがフレイシア湾…確かに良港ですね』

 

ルナ=クリアは船上から湾を眺めた。普段の服装とは違い、一介の神官の服装をしている。指には赤く光る指輪を嵌めている。神気と魔力を抑える指輪である。

 

『ヴィルト殿のみならず、まさか貴女様まで来るとは…御身に危険が及ぶかもしれませんぞ?』

 

カルッシャ王国マーズテリア神殿神官長のロコパウルは、困った表情を浮かべていた。クリアは笑って首を振った。

 

『魔神ハイシェラは、ただの乱暴な魔神とは違います。理性と暴力の均衡を持つ魔神です。こちらが下手に出ている限り、闘いを仕掛けてくることは無いでしょう』

 

ロコパウルは溜め息をついて、甲冑姿の男に目を向けた。拳を固く握り、その視線は遠く絶壁の王宮に向かっている。本来、ヴィルト・テルカはこの船に乗る予定では無かった。クリアとロコパウルに「どうしても」と懇願し、ようやく認められたのである。クリアは微笑みのまま、神官長に一礼した。小舟が接岸され、上陸が認められる。ルナ=クリアは円錐形の頭巾を被った。他に三人神官たちが同様の格好をする。全員が女性神官だ。ルナ=クリアを目立たないようにする為の仕掛けである。神官長ロコパウルの他、神官四名と騎士としてヴィルト・テルカ一人を乗せ、小舟は船を離れた。

 

(…空き家が目立つ。やはり民衆を移転させていますね。終了するまであと三月、といったところでしょうか)

 

プレメルの街を歩きながら、ルナ=クリアは周囲をそれとなく観察した。プレメルの守備隊規模なども抜け目なく予測する。ハイシェラ魔族国は、国土は広いものの人口が極端に少ない国である。物産への影響を考えると、簡単に兵数を増やすことは出来ない。五千名の兵士のうち、その大半がケテ海峡、フレイシア湾、イソラ王国に配備されていた。プレメルを護るのはせいぜい数百名程度の兵士である。閉鎖された神殿や大図書館を通り過ぎ、昇降機に乗る。輝く白亜の王宮を見て、クリアは目を細めた。王城の入り口に、青肌の魔人が出迎えに来ていた。

 

『これはこれは、マーズテリア神殿の方々…ようこそ、超絶美魔神ハイシェラ様の王城へ。アッシはシュタイフェ・ギタルと申しヤス。不束ながら、宰相を任されておりヤス』

 

『カルッシャ王国マーズテリア神殿神官長のロコパウルです。騎士ヴィルト・テルカの他四名の神官を連れて、交渉の為にお伺いをしました。ハイシェラ王への御取次の程、お願い申し上げます』

 

(あれがシュタイフェ・ギタル…ターペ=エトフの元国務大臣にしてハイシェラ魔族国の宰相。エディカーヌ王国についても知っているでしょう。彼は生かして捕えなければなりませんね)

 

ルナ=クリアは目立たないように、それでいて鋭く観察を続けた。シュタイフェは気づくことなく、六名の使者を招き入れた。

 

『ハイシェラ様が謁見の間にてお待ちでヤス。その前に…』

 

ヴィルト・テルカに視線を向ける。騎士は頷き、剣を外した。シュタイフェは丁重に受け取り、先頭に立って案内をする。白亜の王宮内は驚くほどに美しく、手入れが行き届いていた。魔族の衛兵が立つ扉の前で、シュタイフェが振り向いた。

 

『実は、ハイシェラ様はいま、いささか虫の居所がお悪いようなのです。少し気配が強いかもしれません。御心積もりをしておいて下さい』

 

そう告げ、分厚い扉を開いた。向こう側から、圧倒的な魔神の気配が襲ってきた。赤髪の魔神が見える。ルナ=クリアは目を細めた。

 

 

 

 

 

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