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今宵、始まるのは戦争である。
仮面の男たちが、それぞれの願いを果たす為、
ここ、冬木に集う。
今宵、始まるのは戦争である。
たった一つの願いを果たす為の、
聖杯という名の願望機を賭けた戦争(ころしあい)。
人々はそれを、聖杯戦争と呼んだ――。
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――最強のカードを引き当てた……!
その確信を覚えさせたのは何によるものなのか。降霊の儀式を終えた遠坂凛の目の前に、果たしてサーヴァントの姿は認められなかった。
ようやく事態を認識し始め、頭の中を疑問符が駆け巡り出した頃、頭上ではけたたましく炸裂する音があった。
地下室の階段を駆け上がり、歪んでしまっていた居間の扉を蹴破って中に飛び込めば、その惨状が否応にも事態を理解させてくれた。
瓦礫に塗れた部屋の中で、偉そうにふんぞり返っている男が一人。彼の者が間違いなく元凶であろう。凛は確信を深めながら、破壊を免れた柱時計を眺めた。時計は大規模な部屋の破壊にも負けず、その使命を全うしている。
――その日に限っては一時間だけ、早く時を刻んではいたが。
「……………また、やっちゃった」
遺伝というものはやっかいである。
例えどんなことでも人並み以上にこなす、学校では優等生、高嶺の花と名高い遠坂凛嬢にあっても、ここ一番の大事な所でミスを犯すという遺伝的な呪いは、齢十数年にして未だに解呪できてはいなかったのだ。
「……やっちゃったことは仕方ない。反省」
自らの馬鹿さ加減に苛立ちつつも、すぐに切り替えられるという能力こそ、彼女の美徳であり優等生たる所以でもあるのだが。
「それで。アンタ、なに」
「開口一番にそれとは……、どうやらとんでもないマスターに引き当てられたようだな」
「確認するけど、貴方はわたしのサーヴァントで間違いない?」
「――違うな。俺はサーヴァントなどではない。例えるならば俺は太陽……天の道を行き、総てを司る男だ」
下手人が口にした言葉は、他でもないオレサマ宣言であった。
「…………は?」
男はゆっくりと天上に向けて人差し指を突き上げながら言った。
「俺は誰の指図も受けない。何故なら、俺は世界の中心。何人も太陽を手にすることなど出来はしないからな」
余りの唯我独尊ぷりに、凛は開いた口が塞がらない思いだったが、すぐに思考を切り替え、目の前の男に右手の甲に浮き出た令呪を突き出した。
「貴方のマスターはこのわたし。これがその証でしょ? サーヴァントなんて言っても、所詮は使い魔。貴方にはわたしの命令を聞く義務があるの」
「なるほど、では早速それでこの俺を従わせるか? 回数限定の命令で俺を召使扱いなど、とても正気の沙汰とは思えないな」
大袈裟に肩を竦めながら、立ち上がり部屋を出ようとする。
「ちょっと! 話はまだ終わってないってのに、どこへ行く気よ!」
「少しキッチンを借りるぞ。――おばあちゃんが言っていた。病は飯から。食べるという字は人が良くなると書く、ってな。まずは軽く食事を採って落ち着くことだ」
落ち着き払った男の言葉に、凛は自分がここ数時間食事はおろか水分もロクに摂っていないことを思い出し、反論出来なくなってしまった。
それから三十分もしないうちに男は調理を済ませ、散らかった部屋の中から、辛うじて無事だったテーブルの上にその料理を並べた。
「丁度良く中華の材料が揃っていたのでな。豆腐もあったことだし、麻婆豆腐だ」
簡単に言ってはいるが、出来合いの中華料理の素など遠坂邸には存在しない。凛自身にも中華の心得はあるからよくわかるが、この麻婆豆腐は結構な手間をかけたものだと理解できた。
「どうした、食わないのか? 豆腐はまずまずだが、この俺が作ったんだ。美味いぞ」
その壮大な自信に面食らいながらも、凛はレンゲを手に取り、麻婆豆腐を口に運んだ。
辛さこそ控えめなものの、中華でありながらさりげなく和風の風味が口の中を包み込む。しかも短時間なのに豆腐にはしっかりと味が染み込んでいた。
「美味しい……」
「当然だ。この俺が作ったのだから、そんじょそこらの店屋とは比べ物にならないぞ」
そんな会話を交わしたのも束の間、気が付けば凛は目の前の麻婆豆腐を完食してしまっていた。その間、男は何も言わず、眩しげに目を細め、微笑んでいるだけだった。
「ごちそうさま。――その、美味しかった、わよ」
「そうか」
頷きながら男は片付けを始めようとしていた。
「と、その前に。結局、貴方は私に召喚されたサーヴァントってことで間違いないわけ? だとしたら、一体クラスは何なのよ。もしかして、セイバー?」
片付けの手を休めることなく、男は答える。
「俺が聖杯の力を借りて召喚されたサーヴァントであることは間違いない。だが、残念ながらクラスは――ライダーだ」
その返答に凛は項垂れる。それはそうだ。儀式の時間を間違えた上に、結局セイバーの召喚すら果たされなかった。
「何を落ち込んでいる。お前の召喚したサーヴァントだぞ。俺はお前を守り、勝利へと導く為にここにいる」
「な、なによ。さっきアンタ指図は受けないって――」
「世界は自分を中心に回っている。そう思った方が楽しい。マスターも、それはよくわかっているんじゃないか?」
その時確かに彼は言った。凛の事を"マスター"と。
――ここに契約は果たされた。
最後の一人、未だマスターとして覚醒しない七人目がサーヴァントを召喚した時、此度の聖杯戦争は幕を上げる。
その時を十年間待ち続けた少女の戦いの火蓋が、切って落とされようとしている――。
まずは原作に沿ってアチャポジションのライダー召喚。
料理が上手くて赤くて俺様でいてフェミニストなアチャポジションはあの人しかいないでしょうってことで。