ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
煩わしい目覚まし時計のアラームが今日も私を夢の中から現実へと引きずり出す。なんだか楽しい夢を見ていた様な気がするので最悪の目覚めだ。
「んんっ・・・」
私は重い体を上げて目覚まし時計を止め、鏡の前に立つ。
最初は慣れなかったこの姿も、やっと慣れて来た。
そして顔を洗い、寝間着を脱ぎ、最初は抵抗しか無かったがもうそんな抵抗も無くなったそして下着を身につけようとしたその時、私は少し胸に違和感を覚える。
「少し大きくなってる・・・?」
最初は体や精神の変化を感じる度に自分が自分でなくなっていく感覚や謙との思い出が無くなってしまうのではないかという恐怖を感じていたがその恐怖も杞憂だった様で今となっては喜びすら覚える。なんて言ったってこの鎮守府には彼を誘惑する胸の大きな女性(厳密に言えばそうではないのだが)が3人も居るのだ。私の控えめな胸に謙は見向きもしてもらえないだろう。
それから手慣れた手つきで軽く化粧をし、制服に身を包み、眼鏡をかけ、カチューシャを付ける。
「よし!今日もバッチリ!」
そう自分に言い聞かせ私は執務室へと向かう。
いつも謙より1時間は早く執務室へ行き、今日の任務などの書類をまとめる所から私の仕事が始まる。楽な仕事では無いが、謙がいつも「ありがとう」とそう言ってくれるだけで何だってできる。そんな気がするのだ。
それから30分程すると高雄さんが入ってくる。これもいつもの事だ。
「おはよう大淀ちゃん。今日も早いわね。足りない日用品のリストは出来ているかしら?」
「おはようございます。そこに置いてます」
高雄さんは私一人で書類の整理をするのは大変だろうといつも手伝ってくれて主に会計をやってもらっている。
それにしても何なんだろうかあの胸は。いつも彼があの胸を鼻を伸ばして見ている。やっぱり謙はああいう胸の大きな女性(以下略)が好きなのだろうか・・・?そんな事を考えながら作業を進めていると
「おはよーございまーす」
聞き慣れた声が聞こえる。
「提督おはようございます。」
私と高雄さんは挨拶を返す。
「よし。今日は何か出撃任務とか出てるのか?」
「いえ、本陣に寄れば今日も××港近海に敵影見ずとの事です。ただ、色々書いていただかないといけない書類が数件あるので目を当通しておいてください」
「ああそうか。いつもありがとな」
この会話の為だけに早起きをしてこの仕事をしていると言っても過言ではない。
すると高雄さんが
「では、私は今日の当番があるので失礼しますね」
そう言って執務室を後にする。
彼と私の2人きりの空間。特に会話は無いがこの時間が1日の中で一番好きだ。
「なあ大淀・・・」
「はい提督!紅茶ですね!!」
「おおう、もうこれだけでわかるのか・・・まあそりゃそうか。もう長い付き合いだもんな!」
彼は基本的にわかりやすい人間なので大体何を言いたいかはわかっている。
「はい紅茶です。砂糖4本ですよね」
そう彼は甘党なのである。
「ありがとう。てかそこまで覚えてんのか大淀、もはや夫婦の域だぞ・・・なっちゃってなハハハ」
夫婦・・・・
ふうふ・・・・
婚姻関係にある男女の一組。夫と妻。めおと。の事である。
彼と私が・・・?
「そそそそんなふふふふふ夫婦だなんてやややだなぁけけけ謙」
私は顔が赤くなる。そしてあくまで提督と艦娘という距離に居る以上馴れ馴れしく彼の事を謙と呼ぶ事は避けていたがついポロリと出てしまった。
「そんな顔真っ赤にしなくてもいいだろ 冗談だよ冗談。お前はホントに冗談通じないなぁ」
彼の冗談はたまに冗談かどうかわからなくなる事がある。
「そそそそうですよね・・・ははは・・・」
鎮守府で艦娘と提督という関係になり、距離が以前よりも離れた気がするが、今の私と彼はこのくらいの付かず離れずの関係の方がお互いに丁度いい。そう自分に言い聞かせる。
しかし彼も私の反応を見て少し気まずくなったのか少しの間の沈黙が執務室を包む。このままではいけない。何か話題を・・・・
「「あの!」」
お互いに声が同時に出る。
「てっ、提督お先にどうぞ」
私は彼に話を譲る。
「ああそうか。じゃあ、お前毎日ずっと執務室籠もりっきりじゃん。どうせ大した用事もないんだからたまにはちょっと鎮守府うろついてこれば?代わりに俺がここに居るからさ」
予想だにしない言葉が来た。
「いえ、そんな・・・私なんかが」
「いや良いんだよ。ずっと籠ってばっかりじゃ気も滅入るだろ?たまには息抜きしてこいよ」
それなら私は提督と一緒に居たいです。そう喉元まで出た言葉を抑え
「いえ!悪いですしそれに鎮守府も見回るのも立派な提督の仕事なんですよ!!」
適当な事を言って彼を説得しようするが
「いいや!今日は俺がここで仕事をするって決めたんだからお前はゆっくりしてろよ。」
彼にそう一蹴されてしまう。高校時代から彼は1度言った事は曲げなかったし、もう何も言っても無駄だと私は思った。
でも自分と違い全くあの頃から変わっていない彼を見て安心する。
「そうですか。わかりました提督。それではこの書類だけ片付け・・・きゃっ!」
何かのコードに足を引っかけ彼の方へ思いっきり倒れ込んでしまう
「いててて・・・」
「あいたたた・・大丈夫ですか提督」
むにゅ・・・
何やら胸に謎の感触が・・・確認してみると私が押し倒した彼が私の胸を揉んでいるではないか
「ててて提督!!ななななんで私の胸揉んでるんですか・・・・!!!」
「ちょっ・・・これは不可抗力でこうなっただけでだだだ断じて胸なんか!!!!うわっ!!マジだ!!ごごごごめんワザとじゃないんだ!!」
どうやら私を受け止めようとしてこうなったらしい。きっと彼はこれ漫画で読んだ奴だ!でも相手が淀屋だからなぁとか思っているに違いない。証拠に彼の鼻の下が少し伸びている。
鼻の下が伸びてる・・・?と言う事はこんな私でもそんな気分になってくれるんだ・・・そうか私でも・・・そう思うと急に胸を触られたという行為が恥ずかしいと思えてきた。ここには居られないそんな気がして
「すすすすみません提督!!!!」
そう言って私は全力で執務室を飛び出してしまった。このまま執務室に戻るのも気まずいので、ここは彼の厚意に甘えて今日はゆっくりさせてもらおう。そう思ったが、今まで他の艦娘たちとは最低限の付き合いしかしてこなかったので、何処で何をすればいいのかもわからない。そこでとりあえず当ても無く鎮守府を歩いてみる事にした。
すると演習場の方から爆音が聞こえてくる。覗きに行ってみよう。そこには吹雪ちゃんが居た。全く熱心である。
彼女はこの鎮守府に来るまでの経緯等を資料で確認する限りどうなるか非常に心配であったが、謙のおかげでなんとかこの鎮守府に馴染む事が出来た様で安心している。すると彼女がこちらに気付いたのか私の方へ駆け寄ってくる
「大淀さん!珍しいですね!!良かったら大淀さんも一緒に砲撃演習やりませんか?」
そう彼女に誘われるが
「いえ・・・私はいいわ。艤装もメンテナンス中だし。」
私は噓を付いた。実際艤装はある。しかし私は今まで1度も出撃した事も無ければ砲を撃った事も無い。理由はずっと執務室で指示を出す役に徹していたと言うのもあったが、実のところ艦娘の適正が低く、水上で航行することすらままならないからだ。それを私は皆に隠している。
「そうですか・・・」
彼女は残念そうな顔をしていた。このままではいけない。折角の機会だし彼女と話してみよう。私はそう思い話を切り出す。
「あの〜吹雪ちゃんはいつもここで一人で訓練してるの?」
「ええ!もちろん。皆さんに比べて経験も浅いですし、足手まといになりたくないので。それにここに来てから私守りたい人が出来たんです!その人のためにも頑張らなきゃ!!」
非常に前向きな少女である。着任したての時はどことなく根暗な少年の様な雰囲気を感じていたが今やそんな面影は何処にも無い。謙のおかげだろうか?守りたい人とは十中八九謙の事だろう。私だって謙を守ってあげたい。もっと適正値が高く戦艦クラスになれていれば謙は私にもっと靡いてくれただろうか?そんな事を考えて居たが考えていても仕方が無い。
「そう、吹雪ちゃんも謙・・・いえ提督に救われたのね。邪魔してごめんね。じゃあ訓練頑張ってね」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると
「大淀さん!よくおに・・・じゃなかった司令官の事を名前で呼びますけどお知り合いだったんですか?」
「うっ・・・そ・・・・それは・・・・」
痛い所を付かれた。幸い謙は私との関係を彼女には話していないようだ。適当にここは誤摩化して・・・そんな事を思っていた矢先である
「あ〜阿賀野もそれ気になる〜!」
呑気そうな少々癪に触る声が聞こえる。何も考えてないように見えて実はとても計算高い阿賀野だ。確かに人当たりが良く、私にも好意的に接してくれているが、いつも謙に馴れ馴れしく接しているのがどうも気に入らない。あれ・・・?なんで私こんな気分になっているんだろう?思い返してみるとこの感情がよくわからない。
「あっ!阿賀野さんどうしたんですか?」
「吹雪ちゃん頑張ってるから差し入れ持って来たの。はいチャーハン。昨日の夜食の余り物だけど。」
「ありがとうございます!!頂きますね」
吹雪ちゃんは嬉しそうにチャーハンを受け取る。しかし昨日夕飯をアレだけ食べて夜食にチャーハンまで食べるのかこの女は(厳密に言えば女ではなく以下略)栄養が皆胸に行っていると見える。私ももっと食べれば胸が大きくなるのだろうか?
「それより大淀ちゃん。こんなところにいるなんて珍しいじゃない。私も聞きたいな〜提督さんと大淀ちゃんのか・ん・け・い」
「べっ、別に何も無いです!昔ちょっと知り合いだったってだけで・・・」
「そっか〜じゃあ阿賀野が提督さんと付き合っちゃっても良いんだ〜なんちゃって」
この女(以下略)完全に私をからかっている!
「あまりからかわないでください!怒りますよ!?」
「えへへ〜ごめんごめん。大淀ちゃんもチャーハン食べる?」
「結構です!失礼します!!」
私は演習場を立ち去った。私が阿賀野に対して抱いている感情は一体なんなんだろうか?別に阿賀野に何かをされた訳でもなければ別に嫌いになる要素など無い。 それにさっき拒絶してしまった事で更に彼女との溝が深まってしまったようにも感じる。どうしたら良い物か・・・?
そんな事を考えていると愛宕さんが前から歩いて来た。
「あら大淀ちゃんじゃない。珍しいわね」
「ええ。提督が今日はゆっくりしていろと言っていたので。」
「そう。そう言えば大淀ちゃん。さっきから思い詰めた顔をしてるけど悩み事?お姉さんで良かったら相談に乗るわよ?」
愛宕さんにそう切り出された。確かにこのままもやもやしたまま業務をすれば支障が出るかもしれないし、高雄さんにはあまり迷惑をかけたくないし相談出来る人物と言えば愛宕さんくらいしか居ない。もしかするとこの感情がなにかもわかるかもしれない。そう思った私はその申し出を受ける事にした。
「ここじゃなんだから食堂でも行きましょうか。今の時間はだれもいないでしょうし」
そう言って愛宕さんは私を食堂へと連れていった。
「で、悩みはなに?体の事?それとも・・・」
「実は・・・」
私は謙との関係、そして阿賀野と謙が仲良くしている所を見ると何かよくわからない感情がこみ上げてくる事、そして最近謙が私を避けているのでは無いかという事を全て打ち明けた。
すると
「あ〜なるほどねぇ〜」
そう愛宕さんはなにやらにやつきながら数回うなずくと
「大淀ちゃん。あなた提督の事好きなんでしょ?」
えっ・・・・好き・・・?
「すすすすすすきだなんてそそそそそそんな。私と謙はあくまで親友で・・・そんな・・・私は・・・・」
「その慌てっぷりビンゴね?そんなこと皆艦娘になりたての頃は悩む物なのよ。性別とかのズレとかそう言うのもあるし」
「ででででででも」
「阿賀野ちゃんへの気持ちもいわばヤキモチでしょ?それに阿賀野ちゃんはあの時あえてあなたを怒らせてあの場を話す事で吹雪ちゃんにあなたと提督の話をしなくても良いようにしたんじゃない?」
「あっ・・・・」
私の胸の中のモヤモヤが一気に晴れたような気がした。そうか。私は阿賀野にヤキモチを妬いていたんだ・・・・それに私は謙のこと・・・・なんでこんな簡単な気持ちに気がつけなかったのだろう?いや、こんなこと最初からわかっていたのかもしれない。しかし謙と私は親友という関係を壊したくなかったばかりに自分自身そうだと思いたく無かったからあえて男が男を好きになる訳が無いとその事を否定し、それから有耶無耶にしていたんだ。
それに言われてみれば阿賀野の気配りだったのかもしれない。やはりあの女(略)は侮れない。
「どう?スッキリした?」
愛宕さんはそう私に聞く
「はい・・・でも・・・・」
「でも?」
もうここまで思いのたけを愛宕さんに伝えてしまったので全て聞いてみる事にする
「私・・・確かに謙の事が好きなのかも知れません・・・・でも私と謙はあくまで親友で、謙も多分そう思ってます。急に好意を寄せてこの関係が壊れるのが怖くて・・・・それに私の体はあくまで男のままなのに・・・」
すると愛宕さんが
「そう思ってたから大淀ちゃんは無意識に提督と距離を置こうとしているんじゃない?まだこの鎮守府での生活も始まったばかりなんだから時間をかけていけばいいじゃない。私もある艦シーメールと添い遂げた男を知っているし私は貴方を応援してるわよ」
そう言うと愛宕さんに肩を叩かれた。
そうか。急がなくても良いんだ。それに確かに意識をしすぎて自然と自分から彼を遠ざけていたのかもしれない。
「ありがとうございます愛宕さん。なんかスッキリしました。」
「いいのいいの。それに阿賀野ちゃんへの事を気負いしてるんならプリンでも持っていってあげると良いわ。あの子甘い物に弱いから。あらいけない私陸奥と約束してるの。もう時間だからそろそろ出るわね。いってきま〜す」
「えっ、あっはい行ってらっしゃい」
愛宕さんはそう言って食堂から出て行ってしまった。
それから何時間か経ち日も翳って来た頃私は大浴場へ向かっていた。私自身の貧相な体を他の愛宕さん達に見られるのが恥ずかしいのでいつもこの時間を狙ってこっそり入りにくるのが日課なのだ。
「ふう〜」
湯船に浸かると全てを忘れられるような気がする。そんな時である
「久しぶりの風呂だ!ヒャッホォォォォウ!!!!」
という大声とともに謙が凄いスピードで湯船に飛び込んできた。
幸いまだ気付かれていないらしい。こっそり抜け出そう。そう思い湯船から出ようとした瞬間・・・
「おっ、淀・・・淀・・・大淀ォ!?」
気付かれた。その時彼に裸を見られた事に対して羞恥を感じた。今まではこんな事無かったのに・・・朝の事を気にしているからなのだろうか?何がなんだかわからなくなった私はとっさに胸と股間を手で隠し、
「け・・・いえ提督どどどどうしてこんな時間にお風呂へ!?すみません!!邪魔ですよね!!すぐ出ますから!!ごめんなさい!!!」
と恥ずかしさの余りその場を駆け出してしまった。
裸を見られるのはこんなに恥ずかしい事だったっけ?そんな事を思いつつ凄まじい勢いで体を拭き服を着て自室に駆け込んだ。途中阿賀野とすれ違ったような気がするがそんな事を気にしている余裕は無かった。
自室に付くや否やベットに潜り込んだ私は
「謙に・・・裸見られちゃった・・・」
と呟いた。なんでこんなに恥ずかしいのかそんな時脳裏に「大淀ちゃん。あなた提督の事好きなんでしょ?」という愛宕さんの言葉がよぎる。この恥ずかしさは謙を男として意識してしまったからなんだろうか?それだけ自分の精神が艦娘になってしまっているのだと再認識させられる。そしてやっぱり私はあの人の事が・・・・
その後夕飯の時も謙とは目が合わせられないままそそくさと夕飯を済まし、自室へ戻る。
このままじゃいけない。愛宕さんももっと時間をかけていけば良いと言っていたじゃないか。それにこの気持ちが本当にそうなのかまだ自分の中では半信半疑だ。これから彼ともっと長く向き合えばその謎も解けるだろう。そう思い私は謙と話をしようと謙の部屋の前に来ていた。
「と・・・とりあえず次の作戦の話と言う事にして・・・・」
私は緊張のあまりノックするのを忘れてしまったが意を決して
「提督、次の作戦について少しお話が・・・」
と言いながらドアを開く。するとそこでは
「ああ俺も大好きだぞ吹雪ぃぃぃぃぃぃ」
と叫びながら裸の吹雪ちゃんを抱きしめる謙の姿。
2人は既にそう言う関係だったの・・・?謙はこういう娘(略)の方が好きだったの・・・?様々な思いが私の頭の中を駆け巡る。
「ちょ、ノックくらいしろよ大淀!!!えっと・・・あの・・・・こっこれはごごごご誤解で・・・・」
何が誤解よ・・・裸の女の子(略)を抱きしめながら大好きだなんて誤解も何も無いないじゃない・・・・私の苦労も知らないで・・・謙のバカ
もう自分の中で感情が制御出来なくなっていた私は
「けっ・・・・謙のバカァァァァァァァァァァ」
と叫び自然と手が出てしまっていた。
そしてそのままその場に居る訳にもいかずその場を立ち去った。
謙に手を出したのはいつ振りだろう?たしか謙が台風の時に川に流されていた子猫を助けようとして死にかけた時に殴ったような気がする。
そんな事はどうでも良い。自分自身の身勝手な独りよがりで彼を殴ってしまった。これは謝っても許される事ではないのかもしれない。
それから数日間は吹雪ちゃんと彼の行っていた事よりも自分が殴ってしまった事を負い目に感じて謙とは目すらあわせる事は出来なかった。このまま謝るタイミングを見つけられまいまま終わってしまうのだろうか?
しかしそんなある日朝起きて部屋を出るとそこには謙が居た。
「もうこうでもしないと謝れないと思ったからお前がいつ起きてるのかもわかんないしここでずっと待ってたぞ。」
「そ・・・そんな。別に私は・・・・」
私がそう口ごもっていると
「すまなかった!!吹雪が好きだって言うのはえーっとあの可愛い弟・・・いや妹分って感じで好きって意味で・・・・それから・・・・・」
その後謙は吹雪ちゃんが身寄りが無く、ショッピングモールで家族を見て吹雪ちゃんが寂しそうにしていたから俺を家族だと思ってくれていいと言った結果妹分の様な物になった事、そしてあの日謙の心労がピークに達していた事を打ち明けられた。それでも納得出来ないのなら憲兵に引き渡すなり切腹するなり何だってしてやる。と最後に付け加えて・・・
やっぱり困っている人を見たら放っておけない所は前から全く変わっていない。以前そんな彼に救われ、そして今心を惹かれているのだとその時やっと気付いた。吹雪ちゃんも同じなのだろう。
「ふふふ」
私は自然と笑ってしまった
「おい・・・なに笑ってんだよ・・・もしかしてキレるの通り過ぎたとか・・・・?」
「いや、謙は昔から変わってないなってそう思っただけ」
「何だそりゃ。俺は前から変わらないしお前がどんな姿になったって親友だからな!」
そうか。やっぱり彼の中での私は親友なんだ。今はそれで良いかな。何故か私はそう思えた。
「ええ私もどれだけ変わっても謙に対する気持ちは変わらない。それに私こそいきなり殴ってごめんなさい・・・」
「ああ気にしてないよ。お前もパンチ力だけは全然昔と変わんないな!」
「もう!謙ったら!」
「これからもよろしく頼むぜ親友」
「ええ。こちらこそ不束者ですが」
「おいおい!そりゃまだ気が早いぞ」
「冗談」
「言ったなコイツ!」
それから謙と私はたわいない会話をした。彼とは高校生の頃こんな馬鹿話をよくした物だ。彼の目に今の私はどう映っているのだろう?まだ親友の淀屋大として映っているのだろうか?もしそうならこれ以上の関係になろうとすればきっと今のこの距離感や関係は崩れ、彼は私を拒絶するだろう。それならこれから時間をかけて、いつかその時が来たら私のこの思いを伝えよう。そう心に決めたのであった。