ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

26 / 97
思い出の味

 「ふうーやっと着いたな」

ショッピングモールに到着しバスから降りた俺はそう呟く。

結構な長旅だった上に更にバスでの時間が長く感じたからだ

正直私服の阿賀野が可愛過ぎてバスの中でめちゃくちゃ目のやり場に困ったんですけど・・・なんだか無駄に神経をすり減らしているだけのような気もしなくもないが・・・そんな事を考えていると

「提督さーん着いたらお腹空いたねー何か食べにいこうよ」

ん?阿賀野が何か言ったな。

流石にさっきあれだけ食ったのにお腹すいたなんて言わないよな・・・?聞き間違いだよな!?

「阿賀野・・・・今お前なんて言ったんだ?」

恐る恐る聞き返すと

「だーかーらーお腹空いたの。もうおやつの時間でしょ?阿賀野パフェ食べたいな〜」

阿賀野は俺の驚きなど意に介さずそう言った。

「お前さっきめちゃくちゃ食ってただろ!まだ食う気かよ?」

「うん!スイーツは別腹なの!それに艦娘はすぐにお腹空くモノなんだから!」

コイツの腹ん中はどうなってんだよ・・・・

それにまたそんな口から出任せを・・・・まあ俺も喉乾いてるしちょっとぐらいなら付き合ってやるか。

「しょうがねぇなあ・・・」

まだ映画まで時間もあるし少し位なら付き合ってやるよ。

俺がそう言おうとした瞬間

「やったー!提督さんごちそうさま〜」

阿賀野は嬉しそうに俺に手を合わせてくる。

多分奢れってことなんだろうな・・・なんて図々しい奴なんだ。

「おいちょっと待て!奢りだとは言ってないぞ。お前に奢るとサイフがいくらあっても足りなさそうだからな」

「えー提督さんのケチ〜こういう時は男の人が払うモノなのに〜」

「うるせぇ!お前も男じゃねえか!!」

「む〜」

阿賀野はわざとらしく膨れて見せる

クソッ!なんで男なのにこんなあざとくて可愛く見えるんだよ!!

「そ、そんな膨れたって俺はなんとも思わないからな!?」

「えーほんとかなぁ?提督さぁん?阿賀野も頑張ったんだし少しくらいご褒美くれてもいいでしょ?」

阿賀野は目をキラキラと輝かせこちらを見つめてくる。

そんな目で見るなよ!

男だとわかってはいる筈なんだけど何故か胸が変に脈打つ。

「だ、だからそんな事されても・・・」

ダメだ!このまま迫られたら俺やばいんじゃないか・・・?

俺はギリギリのところで踏みとどまっていると

「しょうがないなぁ。じゃあ今回は阿賀野が提督さんに奢ってあげる」

阿賀野は急にそんなことを言い出して呆気にとられてしまう。

「どうしたんだよ急に?」

「うーん、そうだなぁ。これはね、提督さんへのお礼ってところかなぁ?私が悩んでたとき提督さんは自分は自分だろって言ってくれたからこうやって帰って来れたんだもん。それくらいしなきゃね。それに弟達に会うのももう私は以前の自分じゃないと思ってたから怖かったけどもう吹っ切れちゃった。これも提督さんのおかげ。だから今回は特別に阿賀野が奢ってあげるの。じゃあ行こっ!提督さん。阿賀野美味しいパフェのお店知ってるの。こっちこっち」

そう言うと阿賀野は俺の手を引き走り出し、とある店の前で阿賀野は足を止めた。

「ここで〜す」

そこは何の変哲もないファミリーレストランだった。

「なんだ。ただのファミレスじゃないか」

「このファミレスのパフェが一番おいしいんだから!じゃあ入ろっ!提督さん」

阿賀野に手を引かれファミレスに入ると飯時ではないからか空いていてすぐに席に通された。

「提督さん何食べるか決まった?」

「おいおいまだ座って1分も経ってないんだぞ決まる分けないじゃないか。阿賀野は決まったのか?」

「うん。阿賀野ここに来る時はいつもこれって決めてるのがあるの!」

阿賀野は自信満々にそう言ってメニューを置いた。

しかしファミレスなんて来るのも久しぶりだしメニューも豊富だしで何を食べれば良いのか迷うなぁ

それに阿賀野に奢ってもらうと言うのも気が引けるしそんな高いものにするのも悪いだろう。

何にしようか・・・・

そういえば俺は良く近所のファミレスで淀屋とよく飯を食ってたっけ。

そのときはいつもクリームソーダを締めのデザートに食ってたんだよな。

そんな思い出に浸りながら俺はクリームソーダを頼む事に決めた。

それほど高くもないし丁度いいだろう。

「阿賀野、決まったぞ」

「はぁーい提督さん。それじゃあ阿賀野がボタン押していい?いや押させて!」

俺の声を聞くや否や阿賀野は目を輝かせて呼び出しボタンを見つめる

「子供かお前は!じゃあ押せよ。ほらよ」

そう言って俺は阿賀野の近くに呼び出しボタンを寄せてやると阿賀野は即座にボタンを押す。

それから間もなく店員が俺たちのテーブルの前にやってきた。

やってきたのは背丈の低い下手すると労働法に触れそうな見た目の金髪の店員だった。

「お待たせ!ご注文お伺いするよ!」

元気のいい店員だなぁ。

でも敬語くらい使えよ・・・俺がそんな事を思っていると

「じゃあこのメガストロベリーバナナパフェで。提督さんは?」

おおう見るからに食い切れそうにない奴を頼むのかコイツは・・・・

「じゃあ俺はクリームソーダで。」

俺が注文を言い終わると

「ご注文を繰り返すよ。メガストロベリーバナナパフェとクリームソーダだね。それにしてもお客さん見かけに寄らずクリームソーダなんて可愛いね。じゃあもう少し待っててね!」

そう言って店員は俺たちの前から立ち去った。しかし可愛いなんて言われた記憶がないのでなにやら複雑な気分だ。いやいやそれより見掛けによらないのはそっちだろうがよ・・・俺はニヤニヤする阿賀野を見てそう思った。そんなとき俺は阿賀野に声をかけられる。

「ねえねえ提督さん」

「何だ阿賀野」

「あの娘、可愛いと思わない?」

「ええ?まあ、うん」

「へぇ〜そうなんだ。ふふふ」

阿賀野はそう言って笑った。何がおかしいんだろう?

「だから何だよ?」

俺は気になったので聞いてみる

「え?ううん。提督さん女の子見ると口角が少し上がるからもしかしたらそうかなーって。阿賀野と初めて会った時もそうだったよ」

えっ、そうなの!?俺は突然の分析に驚き口角に手を当てた。

「あはは面白〜いそう提督さんのウブな反応好きだよ」

「すすすす好きっておま・・・・そんな言葉を軽々しく口にするんじゃねーよバーカ!」

俺が取り乱す所を見て阿賀野はまたけらけらと笑う。

阿賀野は掴み所がありそうで全然ないしいつもこうやってペースに乗せられている気がする。

それからしばらくしてあの店員が大きなパフェとクリームソーダを乗せたお盆を片手で器用に持ってやってきた。

「お待たせ。メガストロベリーバナナパフェとクリームソーダ持って来たよ。それじゃあごゆっくりね!」

それにしてもあのデカいパフェを片手でお盆に乗せて軽々運んでくるとは一体何者なんだこの店員・・・

店員は手際良くパフェとクリームソーダを並べると

「それじゃ、ごゆっくりね!」

そう言って嵐のように去っていった。

鎮守府の面々にも負けないくらい濃い店員だなぁ。

俺はそんなことを思いながら店員の背中を見送っていると阿賀野はやっぱり見てるじゃん〜気になってるんでしょあの娘?と言わんとするような顔でこちらを見ていた。

「ゴホン、じゃ、じゃあ食べるか」

俺は仕切り直そうとしてそう言うや否や阿賀野はパフェにがっついていた。

何度見ても凄まじい食べっぷりだ

「ホント良く食うよなぁ阿賀野は」

俺もそう呟いた後にクリームソーダに手をつける。

うん。何処でたべてもこのメロンソーダとアイスの味は変わんないな。

特別な事もなくただそれでいて何処か安心出来るそんな味だ。

良く淀屋と食ってたなぁ・・・・

俺がそんな郷愁に近いものに狩られていると急に阿賀野が声をかけてきた。

「ねえ提督さん」

「なんだ?」

「ありがとね」

俺は予期していなかったその言葉に焦りの色を隠せなかった。

「きゅ、急になんだよ?」

「なんだか言いたくなったの。さっきも言ったけど提督さんのおかげで今私はここに居られるなーって自分自身としてしっかりと」

阿賀野は嬉しそうにそう言ってくれたが俺は阿賀野の感謝を素直に受け取る事が出来なかった。

なぜなら俺はあの時阿賀野を止めたからだ。

結果的に阿賀野は那珂ちゃんを無事救出し帰って来れたから良い物のそれは提督として正しい判断だったのか?

あれから何度も考えたがその答えは分からなかった。

結局俺は何も出来ていなかったんじゃないのか?

そんな自責の念から阿賀野のその気持ちを素直に受け取る事が出来なかった。

「でも俺はあの時お前を止めた。おかしいよな。お前はお前だって言っておきながら結局阿賀野という船が沈んだって話を聞いてここで行かせてしまったら本当に阿賀野は沈んじゃうんじゃないかって怖くなったんだ。こんなんじゃ俺、提督失かk・・・むぐっ!?」

話している途中阿賀野から口に何かを突っ込まれて口の中に冷たさと甘さが一気に広がった。

「もーその話はおしまい。どう?パフェ美味しい?」

突然の出来事に俺は頭の中を整理する。

口の中には甘酸っぱい何かと鉄の感触

こっ・・・これはまさかデートで定番の・・・・『あーん』という奴なのでは・・・・・

しかも間接・・・キス・・・・・!?

俺の脳裏にはそんな言葉がよぎり、口の中に入った物をゴクリと飲み込む。

「おっ、おまっ・・・・・!」

俺は頭の中がこんがらがって言葉に詰まっていた。すると

「ふふっ!提督さん顔真っ赤!それに提督さんは間違ってないよ。提督として艦娘の勝手な行動を止めるのは正しい決断だったと私も思う。それに実を言うとあの時は私も自分の意志なんだかなんなんだか良くわかってなかったの。でもね、那珂ちゃんを助けようとしたとき提督さんの言葉のおかげで頭のモヤみたいなのが吹き飛んだの。そのおかげで私は今こうしてパフェを食べられてるんだと思うんだ。だから提督さんには感謝してるの本当にありがと提督さん」

俺はそんなマジメに話す阿賀野に圧倒され

「お、おう。そりゃ良かった」

と返すのが精一杯だった。

そしてしばらく間接キス、あーんの2つの言葉が頭をグルグル回り、放心状態でぼーっとしていると

「ごちそうさまー」

と阿賀野の声で我に返る。

どうやら俺がぼんやりしているうちにあれだけの量のパフェを平らげたらしい。

「もう食ったのかよ!」

「うん!それにしても自分でもこのパフェ一人でこんなすぐに食べきれるようになるなんて思ってなかったな〜」

「と言うと?いつも食ってたんじゃなかったのかよ?」

「あのね私、こう見えて昔は小食だったの。まあビンボーだったってのもあるんだけどね。それで給料が入った次の日は弟達とこのパフェを4人で分けて食べてたんだ。だからこのパフェは私の・・・いや私と弟の思い出の味なの」

そうだったのか。

阿賀野の話を聞く限りはあながち艦娘になると腹が減るというのも間違いではないらしい。

それに俺がクリームソーダを選んだように阿賀野にも同じような物があるんだな。

そう思うと俺は少しほっこりした。

それからしばらくして

「ふうーじゃあそろそろお腹も落ち着いたし映画行こっか提督さん」

「ああ。そろそろ行くか。」

俺たちは席を立ち会計を済ませた。

会計をしてくれたのもあの小さな店員で

「女の子に奢らせるなんて可愛いね!」

と言われたがもはや何のこっちゃ分からなかった。

「ごちそうさん。本当に奢ってもらって良かったのか?」

「うん。これぐらい今の阿賀野からすれば安いもんよ。それじゃあ提督さんそろそろ映画館行こっか!映画なんて久しぶりだからワクワクしちゃう!提督さん早く早く!置いてっちゃうよ!!」

「おいこら待て!食った直後に走る奴があるか!、」

俺は阿賀野を追いかけるようにして映画館へと向かった。

 

同じ頃××ショッピングモールの駐車場に1台の車が止まった。

 

「ぜえ・・・ぜえ・・・やっと着いた・・・」

息を上げて車から降りてきたのは大淀だった。

「大淀さーん早過ぎて目が回るかと思いましたよ〜」

助手席には吹雪が座っていて大淀がここに来るまで相当飛ばしてきたのか少しぐったりとしている。

「吹雪ちゃん。ごめんなさい少し運転荒っぽかったわね大丈夫?気持ち悪くない?」

大淀は吹雪に優しく言葉をかける。

「そ、それは大丈夫ですけどそれにしても珍しいですね大淀さんからショッピングモールにいこうって誘ってくれるなんてだなんて!私、誘ってくれて嬉しかったです」

「ええそうね。今日は久しぶりにお休みだしちょっとは羽伸ばさないとって思ったの。あとこうやって艦娘同士親交を深めるのも大事でしょう?あっ、そうだ吹雪ちゃん」

「何です?大淀さん」

「急いで出て来ちゃったから艦娘の制服のままね。このまま出歩くのは余りいい気がしないでしょ?」

「え、私は別に・・・でも大淀さんがそう言うならそうなのかもしれません。私、あんまり外の事しらないから・・・」

吹雪は少しうつむいた。 

そんな吹雪の事情を知っていた大淀は眼鏡をクイっと上げる動作をすると

「でもそんな事もあろうかとしっかり着替えを用意して来たの!吹雪ちゃんの分もあるのよ。後ろの座席に紙袋があるでしょ?そこに入ってるから」

大淀は胸をポンと叩きそう言った。

「ほんとですか!?じゃあ着替えなきゃ。でも着替えるには狭くないですかこの中・・・」

吹雪は少し嬉しそうな表情をした後首を傾げた。

「ああそれならあそこに丁度トイレがあるわ。あそこで着替えましょう!あそこなら私たちでも抵抗なく入れるでしょ?」

大淀はそう言って多目的トイレを指差した。

「そう・・ですねわかりました!」

吹雪は元気に返事をして大淀と共に紙袋を持ち多目的トイレへ向かった。

(小さい子と一緒にトイレに入るってなんか変な感じ・・・)

大淀はそんな状況に背徳感を覚えていると

「大淀さん・・・・これ男の子の服じゃ・・・」

吹雪は少し戸惑ったような表情をして大淀にそう言った

「ええ?そんな事ないわ。これ着ても吹雪ちゃんは可愛いから女の子に見えるわよ!」

(これくらいしてもらわないと謙に気付かれちゃうからごめんなさいね吹雪ちゃん・・・・)

大淀は心の中でそう静かに思った。

「うーん・・・いつもスカートだったからこんなおしゃれなズボン履くの恥ずかしいですよぉ〜」

吹雪は着替え終えるとモジモジしてそう言った。

(かっ、可愛い・・・年端のいかない中性的な子だと思ってたけどこんな子と謙はいつも一緒に寝てるの・・・?新たなライバル出現かしら?いえいえ今はそれどころじゃないわ!)

「吹雪ちゃん。いつもジャージ履いてるじゃない。それにとっても似合ってるわ。私も着替えるから少し待っててね」

大淀も服を着替え始めた。

(少し可愛過ぎたかしら・・・?でもこれくらいの方がバレないわよね。)

大淀はその長い髪をツインテールにまとめ瓶底眼鏡をかけた。

(これでカンペキね!)大淀は鏡を見てそう思った。

「吹雪ちゃん。この帽子と眼鏡もかけてもらえるかしら?」

大淀はそう言って吹雪に眼鏡と帽子を渡した。

「えっ、でも私別に目が悪い訳じゃ・・・」

「伊達眼鏡って言ってこれはファッションなのよ」

「へえ〜そうなんですか!知らなかったです!どうですか?似合ってますか?」

吹雪はファッションと聞くと嬉々として眼鏡を掛け大淀に尋ねた。

「ええ。とっても似合ってるわ。別人みたい!」

(ええそうよ。これで謙に見つかってもバレないでしょ。)

大淀は不敵な笑みを吹雪に気付かれないように浮かべた。

「それじゃあ吹雪ちゃん。ショッピングに行きましょうか。はぐれないように気をつけてね」

「はい!」

(謙!待ってて!きっと謙のことだから阿賀野の誘惑に負けちゃう。そんな謙を誘惑から守ってあげるから!そ、そうよ!あくまで秘書官として艦娘と提督が間違いを起こさないように指導するだけ!べっ、別に阿賀野がうらやましい訳じゃ・・・ないんだから・・・・)

大淀は吹雪の手を引いてトイレから飛び出して謙を探すためショッピングモールへと入っていった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。