ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
「休み明けにまた鎮守府で。各自充実した休みを送ってくれ!それじゃあ解散!」
謙がそう言うと皆はそれぞれ荷物を持って鎮守府を後にし、阿賀野は一人電車に乗り故郷へと向かっていた。
その車内で阿賀野は
(私って昔どんな喋り方だったかな・・・?もう完全に女の子が板に付いちゃったから思い出せるか不安・・・)
と弟達に自分の現状を気取られないように昔の自分の喋り方や立ち居振る舞い方等を思い出していた。
そんな事を考えているうちに阿賀野は自分の実家のある場所の最寄り駅へとたどり着いた。辺りは既に夕焼けに包まれている時間帯であった。
「もう着いちゃったかぁ・・・・ここはそんなに変わってないなぁ・・・・そうだ。何処かで着替えないと・・・」
阿賀野はひとまず何処かで男物の服に着替えようと着替えられそうな場所を探す事にした。そして線路の高架下へと差しかかった時
「きっ・・・君・・・もしかしてはるちゃん?」
突然中年の男性が阿賀野に声をかけてきた。
(げっ・・・・やば・・・)
阿賀野はこの名前に聞き覚えがあった。『はる』とは阿賀野が以前男娼をしていた時に使っていた名前であり、この男はその時良く金を貰っては行為に及んでいた男であった。
「え〜私そんな名前じゃないしぃ〜人違いじゃないですかぁ〜?」
阿賀野は盛大にすっとぼけるが
「いいや声もちょっと違うし顔の感じも少し違うけどその首元ははるちゃんだよね!?僕には分かるよ!!戻って来てくれたんだね!??清楚な感じになってて見違えたよ!」
男はそう言って息を荒くして阿賀野にすり寄ってくる
「ちょ・・・やめてください・・・ホントに人違いですってば・・・・」
(こっ・・・怖い・・・昔はこんな事で怖いだなんて思わなかったのに・・・・)
阿賀野は男の勢いに押され、恐怖を覚えていた。
「噓はいけないよはるちゃん・・・・そういえば胸、どうしたの?パッド?それとも性別変えたの・・・?それにしても一段と可愛くなったねはるちゃん・・・・」
男は更に阿賀野に詰め寄る。
「いっ・・・嫌ぁ・・・・」
(ダメ・・・怖くて声が・・・出ない!?)
阿賀野はもう完全に男のペースに乗せられていた。
「はるちゃん、キミのせいでおじさん男の子でしか気持ち良くなれなくなっちゃったんだよ?あっ!そうかボクの為におっぱい入れて戻って来てくれたんだよね?また昔みたいにえっちな事しようよ・・・お金も前よりもっと出すからさぁ・・・ね?いいだろう?また気持ち良くしてあげるからさぁ・・・・」
そう言って男は阿賀野の腕を掴んだ。
「ひっ!」
(何で・・・?振りほどけない・・・・私こんなに力も弱くなってたんだ・・・もう・・・ダメ・・・誰か助けて・・・でもこんな事でお金稼ぎしてたんだからこうなるのも当然だよね・・・・バチが当たったのかな・・・・)
阿賀野は半ば諦めていたが、その時
「おいオッサン!その人嫌がってんだろ」
突然そんな声が聞こえる。
「べっ・・・別に良いだろ・・・この娘はエンコーで稼いでるんだからさ!」
男はその声にそう反論する。
「ふぅん・・・でもその割にはそっちが強引に何処かへ連れていこうとしてるように見えるけどな」
そう言うと暗がりから一人の少年が男と阿賀野の方へ向かってくる。
「どうなんです?おねーさん。ホントに今からそんなオッサンとエンコーしに行くんですか?そうは見えないですけどね」
少年は阿賀野にそう語りかける。
「わっ・・・・私は・・・」
阿賀野が助けて欲しいと言いかけると
「うるさい!はるちゃんはボクのモノなんだ!キミにとやかく言われる筋合いは無いぞ!!さあはるちゃん。早く行こう。」
男は阿賀野を引っ張って行こうとするが
「ほーん。今にもそのおねーさん泣き出しそうだけど本当にそれで良いのかオッサン?今ならその子を離すだけで見逃しといてやるけど?」
少年はそう言って身構える。
「だっ・・・だまれえええええ・・・・大人をナメるなよ!」
男は阿賀野を離し、鞄からナイフを取り出し、少年に襲いかかった。しかしそれをひらりとかわし、少年は男の股に思いっきり蹴りを入れた。阿賀野は腰が抜けてその場にへたり込んでしまっていた。
「ぐっおおおおおおおおおおお・・・・・」
男は股を押さえその場にうずくまる。
「お〜痛そ〜まあでも約束通り離したからこのくらいにしといてやるよ。ねえおねーさん大丈夫?ケガとかしてない?」
少年は阿賀野に手を差し伸べる。
「あっ・・・ありがとう・・・あっ!」
(あれ・・・この子・・・・代智・・・・!?)
暗がりと恐怖でよく見えていなかったがその時阿賀野はしっかりと少年の顔を見た。阿賀野はその少年に見覚えがあった。見覚えどころか忘れもしない彼は阿賀野の実の弟[[rb:阿藤代智 > アトウ ダイチ]]だったのだ。
「ん?どうしたのおねーさん俺の顔に何か付いてる?ところでおねーさんどっかで会ったこと有ったっけ?なんか見覚えがあるような無いような・・・まあそんな事今はどーでもいいやとりあえずここから離れよう。おねーさん立てる?」
彼は阿賀野に手を差し伸べた
(代智・・・少し見ない間に立派になって・・・)
阿賀野は今すぐにでも彼を抱きしめたかった。
しかし自分が彼の実の兄だと知られる訳にもいかないので阿賀野はそんな感情を押し殺し
「あっ・・・うん。ありがとう・・・ございます」
わざとよそよそしくそう言って少年の手を取った。
そして二人は高架下から離れ駅前の繁華街へやって来た。
「ここまでくれば大丈夫だね。それにしてもおねーさんどっかで会ったような気がするんだよね・・・俺の事知ってる?」
彼はそう呟く。
「たっ、多分気のせいじゃないかな!あっ、そうだ私急いでるんだ。助けてくれてありがとう!じゃあね!」
阿賀野はその場を逃げる様に走り去った。
「あっ、ちょっおねーさん・・・・気をつけて帰ってね」
そんな彼の声が阿賀野の背中の方から聞こえてくる。
(まさかあんな所で代智に会うなんて・・・それに私が援助交際をしてた事まで聞かれちゃった・・・・)
阿賀野は自分の情けない姿を見せてしまった事、そして一番聞かれたくなかった相手に自分が援助交際をしていた事をバラされてしまい、その場に居られなくなってしまったのだ。
「はあ・・・・はあ・・・・ここなら大丈夫。ここで着替えよう。」
阿賀野は駅前にある共用トイレへ入って行った。ここは以前から阿賀野が援助交際をする際によく着替えに使っていた場所であった。
そして阿賀野は着替えを済ませトイレから出てくる。
「あ〜あ〜ん"んっ!・・・これでなんとか。男の子に見える・・・・かな?でもさっき見られちゃったし・・・帰りたくないなぁ・・・・私・・・じゃなかった!俺だってバレてないと良いんだけど・・・」
阿賀野は自分の出せる極力低い声でそう呟き、重い気分のまま家へ向かった。
そして
「よし。着いた。」
阿賀野は自宅の前に着いていた。しかし阿賀野はカギを持たずに出て行ってしまった為インターホンを押さなければならなかった。
(もしこれで気付いてもらえなかったらどうしよう・・・それに勝手に出て行った事怒ってたりしないかなぁ・・・)
阿賀野は恐怖に似た感情に支配されて、その指は震えていた。そしてその震えた指でインターホンを押す。
すると家のドアが開き
「う〜い。新聞と宗教勧誘なら間にあっt・・・・」
中から先ほど阿賀野を助けた少年がそう言いながら現れた。
そして代智は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして阿賀野の顔をみる。
「たっ・・・大賀兄さん・・・・?」
その声を聴いて阿賀野は
(よし・・・・なんとか気付いてもらえた。)
と一安心し、久しぶりに聞く大賀という自分の本当の名前に懐かしい気持ちになる。しかしそんな安心もつかの間。代智は阿賀野に飛びついてくる。
「うわああああん!大賀兄さん今まで何処行ってたんだよおおおおおお!俺一人で凱矢と優宇の世話するのどんだけ大変だったと思ってんだよおおおおお」
代智は先ほどの威勢の良さとは全く違う一面を見せた。
(人前で泣かない代智がこんなに泣くなんて・・・・相当寂しい思いをさせてたのね・・・)
「悪かったな代智・・・全部お前に押し付けて」
阿賀野は抱きついて来た代智をよしよしとなだめる。
「大賀兄さん、ほんとに2年近く連絡も一切よこさないで一体今まで何処行ってたんだよ?毎月あんなにお金が振り込まれてくるのに大賀兄さんとは全然連絡つかないからめちゃくちゃ心配してたんだよ?それに凄く寂しくて・・・・心配で・・・」
代智はそう大賀に言った。
「ああ、心配かけてごめんな代智。ちょっと大きな仕事で忙しくって全然連絡出来なくて。でもまた休み明けたら行かなきゃいけないんだ。許してくれ」
(う〜んこんな感じの喋り方で大丈夫・・・だよね・・・?)
大賀は心の中でそんな事を思いながら代智に謝った。
「うん。大賀兄さんが俺達の為に頑張ってくれてるのは分かってる。それでも帰って来てくれて本当に嬉しいよ。凱矢と優宇もきっと喜ぶよ。あっ、俺が泣いたのは2人には秘密にしといてくれよ兄さん。」
代智は涙を拭い、そう言った。
「ああ分かった分かった。一人で頑張ってくれてたんだもんな」
阿賀野は代智の頭をもう一度撫でた。
「髪・・・・伸びたね」
代智は阿賀野の髪を眺める。
「あ、ああ。切りに行く暇もないくらいに忙しくってさ」
阿賀野はそう誤摩化して頭を掻いた。
その時代智は何かに気付き
「ん?兄さん、その腕どうしたの?何か赤くなってるけど?それにちょっと痩せた・・・?手とか細くなってない?それになんか声もちょっと変じゃない?」
と阿賀野に尋ねる。
阿賀野の手には先ほど男に強くにぎられた痕が残っている。
(やば・・・・なんとか誤摩化さなきゃ・・・・!)
「えっ!?ああこれは電車で寝てる時に出来たんじゃないかなぁ・・・?ははは・・・声が変なのは今ちょっと風邪引いててさ・・・・ごほごほ・・・」
阿賀野はそう適当に笑って誤摩化した。
「ふぅん・・・そうなんだ。まあ立ち話もアレだし上がってよ。兄さんに上がってなんて言うのなんか変だけどさ。お帰り。兄さん」
代智は阿賀野を家に迎え入れた。
「ああ。ただいま」
阿賀野は代智に連れられ家の中へと足を踏み入れる。
「ぜんぜん出て行く前と変わってないなぁ〜」
阿賀野はしみじみと家の中を見渡し、リビングへとたどり着いた。
「ところで凱矢と優宇は?居ないみたいだけど」
阿賀野は気になっていた事を聞く。
「ああ凱矢は部活。優宇は学童保育。凱矢が優宇の事迎えに行ってるからもうそろそろ帰ってくると思うよ。あっ喉かわいてるよね?お茶入れるよ」
代智はそう答え、冷蔵庫から緑茶を出した。
「ありがとう。そう言えば代智は部活行ってないのか?」
阿賀野は代智に更に尋ねる
「ああ。俺が居なくちゃあいつらに飯作ってやれないしバイトも忙しいしやってる暇ないからやめたよ」
代智は少し寂しそうにそう言った。
「代智・・・・俺のせいで・・・」
阿賀野は自分のせいで代智が部活を辞めてしまった事に負い目を感じた。
「いや、兄さんのせいじゃないよ。俺が好きでやってるだけだからさ」
代智はそう明るく振る舞った。そんな時、家のカギが開く音がして、
「ただいま」
「ただいま〜」
と2つの声が聞こえた。
「おっ、帰って来たな。じゃあそろそろ晩飯の準備だ」
代智はそう言って台所へ向かう。
そして足音がリビングに近付いて来て
「兄ちゃん飯まだ〜俺もう腹へってさぁ」
「疲れたぁ〜」
2人の少年がリビングに入ってくる。
「おう!凱矢、優宇お帰り!今日はカレーだから煮詰めてる間に風呂入ってきな。っと、それより今日はお客さんが来てるぜ」
代智はそう言って阿賀野をの方を指差した。
指差す方を見た2人は目を丸くしてその方向へ駆け出した。
「あー!たいがおにーちゃん!久しぶり!!」
「大賀兄ちゃん・・・勝手に出て行ったきりじゃないか・・・・会いたかった」
「優宇・・・凱矢・・・2人とも大きくなって・・・・俺も会いたかった・・・・」
阿賀野は優宇と凱矢を抱きしめた。
「ん?兄ちゃん、なんか柔らかくなった?」
凱矢はそう阿賀野に言った。
「えっ!!?」
そして畳み掛けるように」
「おにーちゃんなんか良い匂いするね〜」
と優宇は言った。
「きっ気のせいだよきっと・・・・ハハハ・・・それより代智が早く風呂入れって言ってるだろ?早く入ってこいよ」
阿賀野はそう誤摩化すが
「え〜たいがおにーちゃんも折角なんだし一緒に入ろうよぉ〜」
優宇はそう言って阿賀野を引っ張る。
阿賀野になる以前末っ子の優宇とは一緒に風呂に入っていた。しかし風呂に入れば自分の身体が以前とは変わっている事を知られてしまう。
「えっ、ちょやめ・・・わた・・・じゃなかった俺は後でいいから!ウチの風呂そんな3人も入れる程大きくないだろ?」
阿賀野は優宇を諭す。
「大賀兄ちゃんもそう言ってるしあんま困らせるなよ優宇。俺は後から行くから先に入れ」
凱矢もそう言った。
「ちぇ〜久しぶりにおにーちゃんとお風呂入りたかったな〜」
優宇は残念そうにそう言って風呂場へ向かっていった。
(ふう〜危ない危ないごめんね。私もう皆とお風呂入れないんだ・・・・)
阿賀野は去って行く優宇の背中を見つめて心の中でそっと呟いた。