ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
なんだかんだ色々あって俺達は休暇を淀屋と吹雪と共に過ごし、鎮守府へと戻って来た。
「いや〜数日ぶりだけどなんだかもっと長い間居た様な気がするなぁ。」
「そうねけ・・・いえそうですね提督。充実した休暇でした」
淀屋もとい大淀はかしこまったようにそう言った。
「別に鎮守府でもタメ口でいいんだぞ淀屋」
「いえ。公私は分けなければダメですよ提督。ここでは私は大淀です!」
「そ・・・そうか・・・吹雪はどうだった?俺の地元なんもなかったけどしっかり休めたか?」
「うんっ!お兄ちゃん!私こんな楽しいの初めてだったよ!」
吹雪もなんだかんだで楽しんでくれたようで良かった。
でもあんまり人前でお兄ちゃんと呼ばれるのも恥ずかしいし俺と吹雪は同じ部屋で暮らしているだけであってあくまで艦娘と提督の関係だ。
これ以上踏み込んでしまえばいつかそうでなくなってしまった時に辛いのは俺自身だろう。
「おいおい。あんまり他の人の前でお兄ちゃんって言うなよ?」
俺は吹雪に釘をさした。
「う、うん・・・おに・・・司令官!」
吹雪は少し残念そうな顔をしたが元気にそう答えてくれた。
やれやれ本当に可愛い奴だ・・・・
そんな事を思っていると、どかどかと凄まじい足音と騒がしいという声がこちらに近づいてくる。
「提督さぁぁぁぁぁん!!!会いたかったぁ」
そんな声がした瞬間俺の脇腹向に何かが飛び込んで来きて俺の脇腹に凄まじい衝撃が来たと思ったら何か柔らかい物がむにゅりと当たる。
「うおっ!?」
その感触の方を見ると阿賀野が俺にがっちりと抱きついている。
それも胸をぎゅっと当てて。
なんでこいつの胸シリコンとか言ってたのにこんなに柔らかいんだよほんと・・・
正直を言ってしまえばもう少しこのままでいてもよかったのだが大淀がこちらに鋭い視線を送って来ているのでこれ以上この状態でいるのは危険だ。
「だから急に抱きつくなって言ってるだろ阿賀野!!」
俺はがっちりとだきついていた阿賀野を引き離した。
「えへへ〜なんだか久しぶりだね提督さん。どう?久しぶりの地元は楽しめた?」
阿賀野は笑って訪ねて来た。
ふと横を見るともう引き離したのにも関わらず大淀が凄い形相でこちらを睨んでいる。
「あ、ああ・・・阿賀野も今帰りか?」
俺はそんな空気を脱しようと阿賀野に尋ねると笑顔でうなづいてくれた。
どうやら阿賀野もしっかり地元に帰ったらしい。
「で、弟さん達には会えたのか?」
「うん。久しぶりに会えた。」
そう言った阿賀野の顔は晴れやかだった。
「そうか。よかった」
その顔を見る限りどうやら特に問題はなかったようだ。
俺は胸を撫で下ろした。
「じゃあ俺達は一旦愛宕さん高雄さんに挨拶してくる」
俺は阿賀野に別れを告げて執務室へ向かおうとすると
「あー阿賀野も行く〜」
阿賀野もそう言って着いて来た。
大淀は苦虫を噛み潰したような顔でずっとこちらを睨みつけている。
そして執務室のドアを開けると。
「んんっ・・・・愛宕ダメぇ・・・♡そろそろ謙くんたち帰って来ちゃうからぁ・・・・♡」
「んちゅっ・・・いいじゃない高雄・・・もうちょっとだけこうしてて・・・・♡」
えっ・・・なにこれ・・・
目の前では2人がキスをしている最中だった。
後ろでは阿賀野が目を輝かせ大淀は顔を真っ赤にして手で吹雪の目を覆い隠していた。そう言えば2人はそういう関係だって高雄さんが前に言ってたな・・・しかし執務室でイチャつくとはうらやま・・・けしからん。
いやこれは何かの間違いかもしれない。
愛宕さんはともかく真面目な高雄さんが白昼堂々誰もいないからって執務室であんなことするわけが・・・・
俺はドアを一度閉めもう一度恐る恐る開けるとそこには何事もなかったかのように二人が立っている。
しかし服はちょっとはだけてるし息もなんか荒いしそれに顔だって赤いし高雄さんに関してはなんだか目が虚ろだ。
「あらぁ?提督?お帰りなさ〜いお早いのね。それに大淀ちゃんたちも居るんでしょ?入っていらっしゃ〜い」
愛宕さんはさっきまでのことを感じさせないようにそう言って部屋の外で顔を真っ赤にして居る大淀たちを呼ぶが
「はぁ・・・♡はぁ・・・♡提督、お休みは楽しめましたか?」
その隣では高雄さんが女の顔と言うのだろうか・・・愛宕さんをうっとりと見つめて艶かしい息をあげながら聞いてきた。
いやいやいやいやそれどころじゃない様な事が目の前で繰り広げられてたんですけど!?
流石に誤魔化そうっつったって無理があるだろ・・・
「えーっと・・・その・・・・さっきのは・・・?」
俺は恐る恐る訪ねてみるが
「ええ?何の事かしらぁ?」
愛宕さんは見事にすっとぼけた。
いやいやなんのことってそりゃもうあのまま放っておいたらどうなってたか・・・
「いや・・・あの・・・・さっき・・・その・・・・」
俺がそこまで言いかけると
「あぁ?何だって?男がこまけぇことウジウジ言ってんじゃねぇぞ?」
顔は笑っているがドスの利いた声で威圧してくる愛宕さん。
やっぱこの人怖ええわ・・・・
「いえ!なんでも無いです!!」
細かいことどころではなかった気がするが俺はそんな気迫に押され結局はそう言ってしまった。
「それならいいわぁ♪そうだ提督?あなた達が休暇を取っている間にこの鎮守府が一部綺麗になったのよ?もう見てきたたかしら?」
愛宕さんは露骨に話題を変えてきた。
「いえ・・・まだですけど・・・でもそんなものの数日でそんな事が出来るんですかね?」
「それはですね。高速建造材をつかえば一晩で終わるんですよ」
高雄さんがそう言った。
マトモな話をしているはずなのだがそれよりも高雄さんの赤らめた頬に甘い息遣いが気になるんですけど・・・
しかしなんて便利なシステムなんだでも高速建造材についても高雄さんについても突っ込んだら負けな気がするし黙っておこう。
「そ、そうなんですか凄いですね」
「今日は疲れてるでしょうし皆もう休んだらどう?」
「私は書類のお片付け手伝いますよ。これだけお休みを頂いたんですから。」
いつの間にか部屋に入って来ていた大淀が言った。
働き者だなぁ淀屋は・・・今日くらいまだ休みの延長なんだからゆっくりすればいいのに。
「ああ良いの良いの。今日は書類の整理は全部高雄がやってくれたし大淀ちゃんいつも働きづめなんだから今日はゆっくりしてて」
愛宕さんはニッコリと笑った。
ここだけ見てたら優しいお姉さんなんだけどなぁ愛宕さん・・・・
「そうですか・・・すみません。それならお言葉に甘えて今日はゆっくりさせていただきますね」
大淀は律儀ぺこりと頭を下げた。
すると愛宕さんが思い出したように
「そうそう。吹雪ちゃん。あなたの部屋・・・というより新宿舎が完成したのよ。今月また新しい娘が入ってくるからお部屋が増設されたの。もちろんこれも高速建造材のおかげで一晩で終わったわ!」
と言った。
「そんな急に!?」
なんでだろう?元々あの部屋は俺だけの部屋で吹雪の部屋が用意出来るまで同室ってだけだった筈なのに・・・それにきっと俺は吹雪の部屋が出来た事を喜んでやるべきなのに何故か素直に喜べない自分が居た。
こんな急に別室なんて・・・なんだか寂しいな。
でも仕方ないことだしそれが普通なんだと俺は自分自身に言い聞かせた。
「私の部屋・・・ですか・・・」
吹雪も何処か寂しそうだ。
「あまり嬉しくなさそうね。やっぱり提督と同じ部屋が良いの?」
高雄さんが吹雪に尋ねると吹雪は黙って頷く。
そんな吹雪を見て俺は少し安心していた。
「あらそう・・・それなら吹雪ちゃんもそう言ってるし提督が良いなら矯正することではないけれど・・・提督は引き続き吹雪ちゃんと同室で良いですか?」
そんな高雄さんの問いに対する答えは既に決まっている。
「もちろん。吹雪を一人にしないって約束しちゃいましたからね」
「司令官・・・・ありがとうございますっ!」
吹雪はは嬉しそうに言った。
やっぱり吹雪の嬉しそうなところを見てると俺もなんだか嬉しい。
それに何よりこんな可愛い子と一緒に住めるなら願ったり叶ったりだ。(まあ男なんだけど)もう吹雪は俺の妹・・・いや弟みたいなものだし・・・一緒に住むことも苦じゃない。
「それでは提督、もうしばらく吹雪ちゃんの面倒見てあげてね」
そんな吹雪を見た高雄さんはやれやれと言う様な顔をして言った
「はい!もちろん」
それから俺たちは簡単な挨拶や確認を済ませて部屋に戻ると
「お兄ちゃん・・・私まだここに居ても本当に良かったの?」
吹雪は少し申し訳無さそうに聞いて来た。
「ああ。やっとお前と同室ってのにも慣れて来たところだからな。でもそろそろ俺のベッドで寝るのはやめれるように頑張ろうな?大淀に見られたらなんて言われるかわかんねぇし・・・」
「うん!私頑張る。でも・・・」
吹雪がそこで言葉をつまらせる
「ん?どうした?」
「今日は・・・一緒に寝てもらっても良い・・・?」
吹雪は顔を赤らめてそう言った。もう!そんなのズルいだろ!!そんな顔でお願いされたら断れるわけないだろ!!!
「しょうがないなぁ吹雪は・・・良いぞ・・・きょ、今日だけだからな!」
「本当?私嬉しい!」
吹雪は嬉しそうにそう言うと俺に抱きついて来た
そしてその夜俺はまたいつもの様に吹雪と一緒にベッドに入り眠りに就いた。
そんな日の深夜の事、俺は尿意で目を覚ます。
「ううっ・・・トイレトイレ・・・」
俺は吹雪を起こさないようにゆっくりと布団から出ようとするが吹雪が居ない。
「あれ?吹雪?」
どこにいったんだろう?もしかしてトイレかな?俺はひとまずトイレを探す事にした。
案の定トイレにはカギがかけられており試しにノックをすると
「ひゃっ!?おっ、お兄ちゃん!?ごっ・・・ごめんなさい・・・あんっ・・・!ごめんおにいちゃんっ・・・・!んくっ・・・・・もう・・・少し時間かかりそうっ・・・・!ひゃうっ!」
何やら吹雪の変な声が中から聞こえる。もしかして便秘か何かなのだろうか?まああんまり深くは聞いてやらない事にしよう。しかし俺も早い所用を足してもう一眠りしたい。
「仕方ないか」
背に腹は代えられないか。俺は部屋の外に有る共用のトイレを使う事にした。
「うぅっ・・・やっぱり夜のこういう所はこええなぁ・・・」
消灯が済んだ鎮守府はただただ非常口の文字がぼんやりと光っている以外は真っ暗で何かが出そうな雰囲気だ。俺は懐中電灯を持って外に出る。
「やべえよ・・・ホントになんか出そうだ・・・早くションベン済まして戻ろう」
俺は駆け足で共用トイレへ向かい用を足した。
「ふぅ〜すっきりした。それじゃあ早く戻って寝よ」
そう思った瞬間
「・う・・・・・い・・・・・」
どこからか女性のうめき声の用な物が聞こえる
「なっ!?なんだ!?」
俺はその声に耳を澄ます
「痛い・・・・・痛いの・・・・・苦しい・・・・」
遠くから何かを痛がる女性の声。これってもしかしなくても幽霊的な何かなのでは!?俺そう言うの苦手なんだよ勘弁してくれよ・・・・幸いその声は来た道とは反対側から聞こえて来た。たしかあっちの方にはno entryと書かれたテープがびっしりと貼られた変な部屋があったんだ。
もしかして何かそれと関係が・・・・・?俺は怖くなり猛ダッシュで部屋に戻り、その日は結局その声が気になって眠れなかった。
次の日・・・
「ええ!?夜中の鎮守府で女のうめき声がしたぁ!?」
大淀が目を輝かせている。コイツは昔からホラー映画とかオカルト系が好きだったんだよなぁ・・・・たまに付き合わされて映画見せられたりもしたっけ・・・・
「ああ。昨日確かに痛いって声を聴いたんだよ」
「なんでしょう?ここは以前は旅館だったらしいですしその時の部屋で死んだ女性の霊だったりはたまた志半ばで死んだ艦娘の・・・あの開かずの部屋にはまだ手がつけられていない死体が・・・・」
大淀は露骨に俺を怖がらせようとしてくる。
「わーっ!!やめてくれ大淀!!俺そう言うの苦手だって言ってるだろ!?」
俺は慌てふためいて言う
「謙・・・いえ提督の怖がる顔が面白いんですよ」
大淀は不敵な笑みを浮かべた
「お前まで俺をからかうのはやめてくれよぉ〜」
俺は大淀に泣きついた。
すると
「それじゃあ今夜・・・正体を探りに行ってみます?私と一緒に」
大淀はまた悪い笑みを浮かべる。
こいつ俺がその手のことが苦手なのを知ってる上で誘いやがって・・・!
「なっ・・・何で俺まで行かなきゃいけねーんだよ!!」
「鎮守府の問題を解決するのは提督の義務ですっ!それに・・・」
「それに?」
「一人じゃ怖いじゃないですか〜」
「お前絶対そんな事思ってないだろ・・・」
絶対一人じゃ怖いんじゃなくて俺のビビるところを見たいだけだろ・・・
「じゃあ行かないんですか?」
大淀はそう訪ねてくるが鎮守府の問題を解決するのも提督の義務・・・という言葉が引っかかる。
流石に幽霊的な物をどうこうできる訳ではないが何かが起こってしまう前に真相を掴んでおかなければ他の艦娘に危険が及ぶかもしれない。
この前の任務の時だって俺はただ指示を出して結局は無事を祈ることしかできなかった。
そんな俺が役に立てることがあるのならそれくらいの事はするべきではないだろうか?
「いや・・・でも昨日も気になって寝れなかったし好奇心はあるんだよな・・・それじゃあ一緒に行くか?」
「はい!それじゃあ今日の深夜ですね?」
「ああ。」
俺は大淀と夜中の1時に会う約束をした。
そして深夜1時頃。
吹雪がぐっすり寝ているのを確認し俺はこっそりベッドを抜け出て部屋の外で待っているとこちらに向かって懐中電灯の光が近づいて着て寝間着姿の淀屋がやって来た。
「謙、お待たせ」
「い、いや。今部屋出て着たとこだから」
休暇の時から思ってたけどこいつなんでこんな可愛い寝間着着てるんだよ・・・それに口調もオフモードだしなんか可愛くね?ってこいつは男で俺の親友なんだぞ・・・そんな可愛いなんて・・・
「おい敬語はどうしたんだよ・・・いや。別に良いんだけどさ」
「だって夜は艦娘の仕事はお休みなんだし良いでしょ?ね?それに夜中の鎮守府で2人っきりなんて始めてだしなんだかワクワクしない?」
淀屋は笑った。もうその笑みに以前の彼の面影はほぼ無く本当に美少女のようだ。
たまに可愛い所見せてくんのやめてくれねぇかなぁ・・・・
そんな俺の脳裏にはふと休暇の時の淀屋の言葉が浮かぶ・・・・2人きりかぁ・・・なんか気まずいなぁ・・・
「そっ、それじゃあ行こうぜ!もう気になって寝れないのはゴメンだし正体を突き止めて今日は安眠してやるからな!!」
俺はそんな気まずさをかき消す様に決意した。
すると
「うん!それじゃあ手、繋いでくれる?」
淀屋が手を差し出してくる
「な・・・なんで男同士でてなんか握らなきゃいけないんだよ」
「良いじゃないこの間吹雪ちゃんと私と手繋いだでしょ?それに謙が逃げないようによ」
大淀はまた不敵な笑みを浮かべた。
確かに怖いのは苦手だけど友達をほっぽり出して逃げる訳ないだろ。
でも淀屋がそう言うなら・・・
「わ、わかったよしょうがないな・・・」
俺は渋々淀屋と手を繋ぎ、淀屋は俺の手を優しく握り返してきた。
手の感じもやっぱり以前の淀屋よりも少し細くなったような気がする。
「ありがとう謙。それじゃあその例の場所まで案内してくれる?」
そして問題の共用トイレ前に着くとやはり何か人の声が聞こえる。
「・・・・い・・・・やめて・・・・・・・・・・・・・・・・・・たすけて・・・・」
やっぱり昨日と同じ声だ。
なんだかすごく苦しそうな声だし助けを求めてる?!
「淀屋!?聞いたか今の?」
「ええ十分に!こっちから聞こえたわ。謙!早くいこっ!」
淀屋はそう言って俺の手を引いて走り出した。
「うぁあああああいくらなんでも心の準備がだなぁ!!!」
そしてどんどんと声は大きく近くなっていき、ある部屋の前で止まった。
「この部屋からね!」
淀屋は目を輝かせる。
「あれ?この部屋からなのか?」
しかしその声が聞こえて来る部屋はno entryと書いてある例の部屋ではなかった。
俺と淀屋は扉に耳を付け、中の様子を伺う事にした。すると
「痛い痛いってばぁ!もうやり過ぎじゃないかしらぁ」
「愛宕?こんなのでへこたれてたらダメでしょ?」
「あんっ!高雄厳しいんだからぁ・・・痛たたたたた!!痛いってばぁ!誰か助けて〜」
「助けても何も愛宕が悪いんだから!もうちょっと力抜きなさい1」
「あぐっ・・・!だめっ!それ以上はらめぇ!」
ん?完全に高雄さんと愛宕さんの声だ。
一体中で何が行われているんだ・・・・・俺はゴクリと唾を飲み込む。
「謙?どうするの?」
「そう・・・だな・・・ひとまず開けてみるか」
自室ならともかく流石にこんな部屋でもしいかがわしい事を夜な夜なしているなら提督として注意しなくちゃ
俺は覚悟を決めて恐る恐るドアを開けた。
その部屋にはエアロバイクやランニングマシーンが置いてあり、そこでは背中を向けていて顔は見えなかったがスポーツウェア姿の高雄さんと愛宕さんが何やらエクササイズをしている。
どうやらここはトレーニングルームのようだ。
こんな部屋あったのかよ知らなかった。誰か教えてくれてもよかっただろ・・・
部屋の入り口でそんなことを考えて突っ立っていると愛宕さんが俺達に気付いたのか
「みぃ〜たぁ〜なぁ〜!?なんちゃて♪」
そう言ってこちらを振り向いてきた。
その顔はいつもの愛宕さんのものでは無く真っ白だった。
「うわぁっ!!出たぁぁぁぁぁ!!ごめんなさいごめんなさい!!!」
俺は驚いて思わず声をあげてしまった。
「えっ?提督?どうしたんですかこんな夜遅くに」
その声に気づいて高雄さん(?)もこちらを振り向くが今の愛宕さんと同じような顔をしていた
「うわぁぁぁぁぁ高雄さんもぉぉぉぉぉ!?」
「どうしたの謙くん。こんな夜中に?それにそんな顔を真っ青にして」
愛宕さんはいつものようにそう尋ねてくる。
「あ、愛宕さんか・・・顔が・・・・」
俺はガクガクと腕を震わせながら愛宕さんの顔を指差す。
「顔?ああこれ?美容パックよ。こんなのでびっくりするなんて提督結構可愛いとこあるのねぇ〜」
愛宕さんは顔から白いものをぺりぺりと剥がすといつもの愛宕さんの顔が現れた。
なんだパックか・・・流れが流れだからびっくりしてしまった。
しかしこの人すっぴんでもこんなに綺麗なんだ・・・って愛宕さんも男なんだぞ!?それに中身も酔ったらただのおっさんだし・・・
「それで提督?こんな夜中に何か用事かしら?」
高雄さんはすっぴんを見られたくないのかパックをつけたまま俺に尋ねてくる。
「いや・・・なんか昨日この部屋の前を通り過ぎた時に変な声が聞こえるんで幽霊か何かかと思って・・・」
「私はその付き添いです。謙・・・いえ提督がどうしても声の正体が知りたいって言うので」
後ろから淀屋がぬっと出て来た。
お前が見に行くって言ったから仕方なく付き合ってやったのは俺なんだぞ!?まあいいや・・・
「まぁ幽霊ですって!愛宕が変な声出すから・・・提督、驚かせちゃったみたいでごめんなさいね」
「え・・・・ああはい」
俺が呆気にとられていると
「ところで高雄さんと愛宕さんは何をされてたんですか?」
大淀が二人に尋ねる
「ダイエットよ。休みの間に飲みすぎたせいで愛宕の体重が増えちゃったのよ。だから私が付き合ってあげてたんだけど運動も何もしないからこの人たるんでて」
高雄さんが愛宕さんのお腹をぺちぺちと叩く。
確かに太っているとまではいえないが少し下っ腹が出ていた。
「いやぁんっ!もぉ〜高雄〜やめてったらぁ!」
愛宕さんが顔を赤らめる。
「何がやめてったらぁ・・・よそれだけあなたが怠けてたのがいけないんでしょ?」
「あんっ!やめっ・・・!お腹の肉つままないでよぉ」
「ほら、提督が見てるんだからあんまり情けないこと言わないの」
「だってぇ」
なんで夜中に男二人がイチャイチャしている所を見せられなければいけないのか。
いやまあ目の前にいるのは確かに外見的には美女二人なのだがショートパンツがもっこりとしていてどうしてもそれが気になるし幽霊だと思っていたものの正体がただダイエットの為にエクササイズをしていた二人だったとわかると急に力が抜けてしまった。
「なんだよぉ・・・そんな事かぁ〜」
「ガッカリだったねけ・・・いえ提督・・・はぁ・・・」
それにしても残念そうだなぁ淀屋・・・
俺もなんだか怖がっていたのがバカバカしくなってきてそれと同時に眠気が込み上げて来る。
「なんか安心したから急に眠くなってきました。俺寝ます。おやすみなさい」
「私もそうします。高雄さん、愛宕さんおやすみなさい」
「ええおやすみなさい。ほら愛宕。あと一時間はやるわよ?」
「ええ〜やだぁ〜この鬼ぃ〜いたたたたたたたたたた!ちょ、高雄マジでそれ痛てぇって・・・ちょ・・・ちょっと提督助けてぇ〜」
部屋を後にしようとすると高雄さんたちはエクササイズを再開し、愛宕さんが俺に助けを求めて来たがそんな声を背にして俺たちは部屋を出た。
「はぁ〜まさか愛宕さんがエクササイズで柔軟するときに出してた声だったなんて人騒がせな人だなぁ・・・はぁ・・・」
俺は大きなため息をつく。
「そうね・・・こういう所には怪談がつきものだと思ってたんだけど・・・・でも謙が美容のパック付けた高雄さんと愛宕さん見るだけであんなに驚くなんていいもの見れたわ!録画したかったくらいよ」
淀屋は嬉しそうだ。
こう言うところは全然変わってないなこいつ・・・・
少しムカついたが以前と変わってないところもある思うとなんだか少し安心したようなきがする。
そして俺達が部屋に戻ろうとしたその時、俺はある異変に気付いてしまう。
「おい・・・淀屋・・・・」
「何?謙」
俺は恐る恐る懐中電灯を後ろに向けた。するとno entryと書かれたテープがびっしりと貼られた扉が開いていたのだ。
「あれ・・・開かない部屋だったよな・・・?」
「え、ええ・・・」
「なんで開いてるんだ・・・?」
「なんでだろ?」
俺の心拍数は見る見るうちに上がっていった。
そして耳を澄ますとトイレの方からぺたっ・・・ぺたっ・・・という足音が聞こえてどんどんこちらの方に向かってくる。
「おい淀屋・・・なんかがこっちに近付いて来てるぞ・・・」
「そうね・・・もしかして本物の幽霊だったりして・・・・」
俺は怖くて後ろが振り向けない。
「おい淀屋・・・先に振り向けよ・・・」
「わっ・・・私もこういうのに直面したのは初めてで・・・・なんか竦んじゃって・・・それに私スプラッタ系は好きだけどジャパニーズホラー系はダメなのぉ・・・!」
淀屋は震えていた。
こいつまじかよ!!もしかして怖かったからって言うのは本心だったのか!?
「なんだよぉ!お前こういうの大好きなんじゃなかったのかよぉ!!」
「だだだだって興味はあったけどまさか本当だとは思ってなかったんだもん!!」
淀屋は声を振るわせている。
そんな事をしている間にもどんどんと足音はこちらに近付いてくる。
ダメだ・・・!逃げるにしてもあの部屋の先は行き止まりだし・・・もしかしたら他の誰かがトイレに起きただけかもしれない!そうだ!そうに違いない!!
「よし淀屋・・・せーので振り向くぞ・・・」
俺は覚悟を決め小声で淀屋に伝えた。
「う、うん・・・」
淀屋はゆっくりと頷く。
「よしそれじゃあせーのっ!」
俺と淀屋は一斉に後ろに振り向き懐中電灯でその音がする方を照らした。
するとそこには顔が隠れる程の長い黒髪をした"何か"がこちらに向かって歩いて来ているではないか。
長い髪、それに生気のない歩き方・・・これってもしかしなくても幽霊!?嘘だろまじで居たの!?
「ぎゃあああああああ!!!!でっでたああああああああ」
こんな二段オチで本物の幽霊見ちゃったの俺!?
「きゃぁあああああ謙私怖い!!!」
淀屋も悲鳴を上げて俺に抱きついてきた。
どどどどうしようこんな時どうすればいいんだっけ・・・塩?いやいやそんなの持ってないし
俺がどうするか悩んでいるとするとその"何か"も
「うわあああああああああああ!!」
と声を上げた。
あれ?あっちもビックリしてるのか?
そして俺達と何かの間に少しの間静寂が流れる。
その静寂を壊す様にその"何か"が
「あっ・・・あの・・・・・」
とかき消されそうな声で語りかけてきた
「うわああああ喋ったああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
幽霊に話しかけられた!?やばい・・・本当にこれ呪われたり取り憑かれる奴じゃないのか!?
俺は恐怖で身を震わせていると
「どうしたの!?」
高雄さんと愛宕さんが部屋から飛び出して来る。
「あっ・・・あれ・・・・・幽霊・・・・」
俺はその"何か"を指差した。
それを見た高雄さんが
「幽霊・・・?あら・・・・初雪ちゃん!また食堂の冷蔵庫から何か持って来たのね!?」
えっ・・・高雄さんとこの幽霊知り合いなのか?
「あの・・・初雪って・・・?」
「ああ提督には言ってませんでしたね。実はこの鎮守府にはもう一人艦娘が居るんです。と言ってももう艦娘なんてやらないって言って部屋から出てこなくなってたんですけど・・・・」
高雄さんはそう言った。
言っといてくれよそんな大事なことくらい・・・
初雪と呼ばれた長髪の少女はまたかき消されそうな声で
「わっ・・・私・・・幽霊・・・じゃない・・・・人聞きの・・・悪い事・・・・言わないで・・・」
と言ってそそくさとno entryと書かれた扉のある部屋に入りバタンと扉を閉めた。
なんだったんだ一体・・・
「えーっとあの子は・・・?」
「あの子は初雪。もう艦娘をやめたんです。でも身寄りがなくて仕方なくここに住み着いてしまってそれに戦場で受けた心の傷がまだ癒えてなくて私達と顔を会わすのが嫌みたいで・・・たまに食べ物とかを取りに夜中にこっそり食堂に出て来たりするんですよ。それに定期的に私が散髪してあげてるんですけど最近全然出て来てくれなくて。でっ・・・でも不器用なだけで悪い子じゃないんですよ?」
高雄さんは寂しそうに言った。
「そうだったんですか・・・ちょっと悪い事しちゃったかな・・・」
俺は少し罪悪感を覚え、一度会って話してちゃんと謝らなきゃな。
そう心に決めた。
それから半月程月日は流れ・・・