ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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今回と次回は天津風視点でお話が進行します。
活動報告の方でアンケートをとっているのでこちらもご覧頂けたらなと思いますhttps://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=150980&uid=190486



天高く吹き抜けて:side天津風(前編)

 「気安く呼ばないで!さっきから金剛さんに抱きつかれてへらへらしちゃって・・・・私、一応艦娘だけどあなたとは提督と艦娘としての最低限の関わりしか持つつもり無いから!それじゃあ今日はもう私移動で疲れたから寝るわ。高雄さん!もういいでしょ?早く私を部屋に案内してください!!」

ああ。またやってしまった。いつもそうだ。私はどうしていつも大切だと思う人に素直になれないんだろう・・・?その先に待っているものは悲しい事だけだと言うのに

 

 

話は私・・・いや僕が天津風になるずっと以前に遡る。

僕の両親はなにやら艦娘の研究をしているらしく僕はそんな親に連れられて各地を転々としていた。そして僕の7歳の誕生日のいつも帰りの遅い父と母は平日だというのに家に居た。そして朝目が覚めた僕に開口一番に父がかけた言葉は

「お誕生日おめでとう」

といった類いの言葉ではなく

「これから父さんと母さんはこれから前線の鎮守府にいかなくてはならなくなった。明日にでもすぐに出発しなければならない。そんな危険な所にお前を連れていく訳にもいかないから明日からおばあちゃんのお家へ行って欲しい。これも世界を守るため・・・それがお前を守る事にも繋がるんだ。だから・・・わかってくれるか?」

というあまりにも突然で衝撃的な言葉だった。

僕は幼いながらに父と母の都合に付き合わされ続け各地を転々として友達なんて居なかった事、そして何より誕生日を忘れられた事に腹を立てて両親にその頃僕が思いつく最大限の罵声を浴びせてしまった。

「お父さんもお母さんも大嫌いだ!もう何処にでもいって死んじゃえばいいんだ!!」

と。本当は行かないで欲しい。僕はお父さん達と一緒に居たいと言いたかった。でも僕はそれが言えないまま父と母を見送る事もせずおばあちゃんが僕を迎えにくるまでずっと部屋に引きこもっていた。

それから一年と少し経って深海棲艦殲滅作戦が成功し、深海棲艦は殲滅されたというニュースが世間に走る。

僕はこれできっと父さんと母さんは帰って来てくれる。そうしたらあのときに言った事を謝ろう。そう心に決めていた。そんなある日僕を訪ねて来たのは両親ではなく髪の長い長身の女の人だった。そんな女の人は僕の顔を見ると

「すまない・・・私は君のお父さんとお母さんを助けられなかった・・・許してくれ・・・・私はぁ・・・・」

そう年甲斐もなくぐしゃぐしゃに泣きじゃくりながら僕に頭を下げて来た。

僕はそのとき女の人の言った事がよく理解出来なかったが、後で聞いた話に寄れば両親は鎮守府が襲撃を受け、その時に逃げ後れて死んでしまったらしい。

僕はその時はうっすらとしか理解する事は出来なかったが父と母はもう居ない。そう薄々気付いていた。でも心のどこかではいつかひょっこり帰って来てくれるんじゃないか?もしかしたら僕の最後に言った一言をまだ怒っていてそれで僕に会いに来てくれないんじゃないかと様々な思考を巡らせていた。

それからと言うものひょっこり小舟か何かに乗って両親が帰ってくるかもしれない。そんな淡い希望を胸に僕は海を眺めるようになった。

それから少し経っておばあちゃんが病に倒れ死んでしまい、僕は独りになってしまった。

その時目の前で動かなくなったおばあちゃんを見て僕は死と言うものを肌身で感じ、同時に両親ももう帰ってこないんだと理解してしまった。

いやもっと前から理解していたのかもしれない。ただその事実から逃げていただけだったのかもしれない。

そんな独りになった僕のもとに長峰と名乗る男の人が訪ねて来た。

彼の言う事には彼は父さんの知り合いで僕の身元請負人になってくれると言う事だった。

それから僕は××町という町に引っ越し、長峰さんの家の隣の家で暮らす事になった。しかしそこは何も無い場所でテレビではアニメも何も流れないしとても退屈な日々を送っていた。

しかしそこは元々僕が住んでいた街と同じ様に家から海が近く、僕はただただ何もする事なく海を眺めては一日を終えるという生活を送る様になっていた。

学校にも行かずただただ海を眺めて時間が過ぎていき、僕が12歳になった頃、深海棲艦隊が未だ猛威を振っているというニュースを耳にする。

僕は海を眺めながらこの海の先では両親を殺した深海棲艦がまだ誰かの大切な人を奪っている。

僕みたいな想いをしている人たちを増やしているという事知り、その事に対する恐怖、そして深海棲艦に対する憎しみは日々増していった。

そんなある日、長峰さんが僕に言った。

「君は来年で13歳だ。そろそろ海を眺めるだけの生活はやめないか?君を立派な人間に育てなければ私は君の両親に顔向けが出来ない。そうだ。君の将来の夢を聞かせてくれないか?私は君の夢の為ならなんだって協力してあげよう。それが私のできる最大限の償いと君の両親に対する弔いだから・・・・」

彼はいつになく真剣だった。将来の夢か・・・そう言えば考えた事がなかったな。

昔父さんと母さんみたいな科学者になって2人の手伝いをするというような夢を持って居たような気がする。でもその夢はもう叶う事はない。僕はそのとき始めて自分の夢を口にした。

「艦娘になりたい」

それを聞いた長峰さんは少し黙り込んだ後

「どうして・・・そう思うんだい?」

と訪ねてくる。

「深海棲艦を一隻残らずやっつけて父さんと母さんの仇を討ちたい。艦娘になればできるでしょ?僕ニュースで見たんだ。男でも艦娘になれるって!!」

僕がそう言うと長峰さんは

「君・・・それは本気で言っているのか?」

彼はそう聞き返してくる

僕は黙って深く頷いた。

すると彼は

「そう・・・か・・・艦娘になれば背負うものが沢山できる。それになんと言っても命がけだ。出来れば君にそんな道は歩んで欲しくない・・・」

と言った。

彼のその言葉には何故かとても重みがある様に感じた。しかし僕は

「何でそんな事言うの!?僕の夢にはなんだって協力してくれるって言ったじゃん!!僕に噓付いたの?」

僕は始めて彼に対してダダをこねた。

彼は少し困った顔をして

「そ・・・そうだな・・・・君がそこまで言うのならそれが君の一番やりたい事なんだろう・・・それならば君の13歳の誕生日の日、君を艦娘にしてくれる施設を紹介してあげよう。しかしこれだけは言わせてくれ。艦娘は決して深海棲艦が憎くて戦って来たんじゃないんだ・・・それだけは覚えて居て欲しい」

と言った

それから僕は施設の案内のパンフレットや資料を長峰さんから貰ったり手続きを済ませたりする様になった。

そんなある日、いつもの様に海を眺めに行くとそこに見慣れぬ人影が立って居た。そういえば長峰さんが話してくれていた気がする。多分近所の鎮守府に新しく赴任して来た提督だろう。長峰さんが言う通り何処か少し頼りない感じだけど優しそうな男の人だった。

僕は長峰さんの話を聞いていて少し興味を持っていたので好奇心から彼に話しかけてみる事にした。自分から人に話しかけるなんて何年振りだろう?

僕は勇気を振り絞り

「お兄さん見ない顔だね。」

と彼に声をかけた。

彼は僕に好意的に接してくれた。そして彼はやはり××鎮守府に赴任して来た提督だと言う事が明らかになった。そして僕は自然と彼に自分の夢の話(流石に艦娘になるなんて言って変な顔をされたら嫌だったので提督になりたいと答えたけど)そして何故そう思う様になったかを話していた。すると

「残念ながら君の夢は叶わないなぁ」

彼は言った。

僕が理由を聞くと

「理由?そんなの簡単さ。俺の代で深海棲艦との戦いを終わらせてやるからだ。俺が少年の仇も一緒にとってやるから安心しろ。少年、君は復讐なんて物に捕われないでもっと未来を明るく出来るような大人になるんだよ」

と彼は露骨にキメ顔で言った。

うわぁ・・・なんか痛いぞこの人・・・・でも彼の君は復讐なんて物に捕われないでもっと未来を明るく出来るような大人になるんだよ。という言葉が僕の胸に刺さった。どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだろう?どれだけ過去に父さんと母さんは帰ってこない。それに仮に深海棲艦を全てやっつけたとして僕はその後何がしたいんだろう?そんな事を考えるとなんだかおかしくなって僕は自然と笑っていた。

そして僕は彼とそんな話をして去り際に

「うん!わかった!!じゃあねぱっとしない提督のお兄さん!僕の名前は (そら)って言うんだ!また会ったら次は鎮守府の話聞かせてね!!」

と彼に名前を名乗って別れを告げた。

それからは僕が本当は何をしたいのか?そんな事を考える様になり、頻繁に彼に会って話をする様になった。

彼は色々な事を話してくれた。

バカな話から高校時代の友達の事や鎮守府の艦娘たちの事、そして将来の話を・・・

彼の話を聞くにつれて僕は学校に行きたい。そう思う様になっていった。

そんなある日

「天くん、とうとう来月13歳の誕生日だな・・・施設へ行く準備はできているかい?」

長峰さんはそう尋ねてきた。

全くもって忘れていた。僕は後1ヶ月で艦娘になる手術を受けなければならない事を

いや、忘れていたのではなく思い出したくなかったのだろう。

僕は艦娘になるのはやっぱりやめたい。学校に行きたい。そう言いたかった。

しかし今更そんな事を言える筈も無く

「う・・・うん・・・」

そう頷く事しか出来なかった。もう少し早く提督のお兄さんに会えていれば良かったのに・・・・僕はそう思った。

それから長峰さんにも提督のお兄さんにも本当の事を言えず・・・いやあえてこの事を考えない様にしないまま1ヶ月が過ぎていき、僕は結局この町を離れる事になった。

そして施設へ向かう当日、最後にこの見慣れた海の景色を目に焼き付けようと朝こっそり家を抜け出しいつもの様に海を眺めていた。

この景色を見るのも今日が最後か・・・そんな事を思っていると

「やっぱり今日も来てたんだな」

ともう聞き慣れた声が聞こえた。

そこには提督のお兄さんが息を上げて立っていた。

きっと僕に別れの挨拶をしに来てくれたんだろう。それはとても嬉しい事だったがもう彼と会えなくなると思うと同じくらいに寂しかった。

僕は「ありがとう」と言おうとしたがなんだか恥ずかしくなって言えず

「お兄さん・・・こんな朝っぱらから何しに来たの?仕事は?ヒマなの?」

と悪態を突いてしまう。

彼はそんな僕に少し怒った様な素振りを見せたが

「こんなやり取りもこれが最後なんだなて思うとなんというか・・・・寂しいな・・・」

という彼の言葉で彼と会えるのは今日が最後だと言う事を痛感する。

そして僕は何を言えば良いのかわからなくなっていると彼はボロボロのロボットのおもちゃを僕にくれた。なにやら昔流行ったロボットらしく彼は得意げにそのロボットについて語っていた。いい加減その話にも飽きたので

「あーわかったわかったよ。でもなんでそんな大切なモノを僕に?」

と話を遮る。すると彼は

「そりゃ・・・お前・・・俺がソラの事を大切な友達だと思ってるからに決まってるだろ?辛い時はこれ見てこの町の事とか俺の事とか思い出してくれよ」

と言った。

友達・・・か。僕の事をそう呼んでくれた人は今まで居なかったので僕はとても嬉しかった。

そうこうしていると

「おお、ここに居たのか天くん。探したぞ」

長峰さんが僕を探していた様だ。長峰さんがここに来たと言う事は僕はもうここから離れなければならないと言う事だろう。

僕は必死で彼に言いたい事を考えた。ここで言えなかったら多分また父や母の時の様に後悔するだろう。だから必死で彼に言いたい事を考えた。

「そろそろ時間だ。ソラくん。最後に提督君になにか言いたい事は無いかい?」

その思考を遮る様に長峰さんが言った。もう本当にこれが最後なんだ。今まで言えなかった事・・・・・

僕は今思っている事をありのままに伝えた。

「あっ・・・あの・・・・こんな僕と短い間だったけど話し相手になってくれて・・・・ありがとう。これ大切にする。」

やっと「ありがとう」と言えた。ずっと彼に伝えたかった事が。

僕の中で彼と会えなくなる寂しさやずっと言えなかった事を言えた喜びが入り交じりそれが涙として頬をつたった。

それを見た彼も

「おいやめろよ・・・俺まで泣きたくなっちまうじゃねえか・・・・俺もお前と友達になれて嬉しかった。昨日も言ったけどどれだけ離れても俺とお前は友達だからな。また会いにこいよな!!」

と涙を拭いそう言って僕の頭を撫でてくれた。

彼は良く話をしている時に僕の頭を撫でてくれていた。彼が頭を撫でてくれるのもこれで最後・・・そんな事を思うともし僕が艦娘になってから彼に会う事は出来るのだろうか?会いに来ても彼は僕だと気付いてくれるだろうか?それに僕が艦娘になった事を彼は許してくれるだろうか?そんな不安が胸をよぎる。

「うん・・・また・・・ね。お兄さん・・・僕の事忘れないでね」

僕は彼にそう言った。

「ああ当然だろ?またな!ソラ!!」

彼はそう返事をしてくれた。

僕は彼との挨拶を済ませて長峰さんの車に乗り込む。

ふと後ろを見ると彼が僕にずっと手を振ってくれていた。

僕も見えなくなるまで彼に手を振り続けた。

そして彼が見えなくなった頃

「君もあんな顔をして笑うんだな・・・実は少し君達2人が話している所を見ていたんだが君のあんな楽しそうな所・・・今まで見た事がなかった・・・」

と長峰さんが嬉しそうに呟いた。

「え・・・・」

僕はそのとき始めて気付いた。そういえば彼に会うまで僕は笑えていなかったのかもしれない。

僕が本当にほしかったのは仇を討つための力なんかじゃなくこの苦しみを分かち合える友達だったんだと

でも今気付いてももう手遅れだ。僕は復讐の道に進まざるをえなくなってしまった。

何故もっと早くに気付けなかったんだろう?

僕がもっと素直だったらこんな事にはならなかったのかな・・・・

そんな後悔を胸に僕はとある施設へと連れていかれそこで艦娘になる為の手術を受ける事になるのだが・・・

 

(続く)

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