ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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前回に引き続き天津風視点でお話が進行します。
活動報告の方で引き続きアンケートをとっているのでそちらもお願いしますhttps://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=150980&uid=190486
(追記)致命的に抜け落ちていた部分があったので追加しました。



天高く吹き抜けて:side天津風(後編)

 「ここからの行き先はこのメモの通りだ。それでは達者でな」

長峰さんは僕を最寄りの駅で降ろしそう言ってメモを手渡してくる

「う・・・うん。今までありがとうございました」

僕は彼に別れを告げメモに記された通りの場所へと向かった。

そしてメモに記された駅を降りると

「君がソラくん・・・で良いのかしら?」

と突然女の人に声をかけられる

「あっ、はいそうですけど・・・」

僕はそう返事をする

「そう。長t・・・じゃなかった今は長峰くんだったわね。どう?彼は元気にしてる?」

その女の人は長峰さんの知り合いらしい。

一応僕の保護責任者という事になってくれてはいたが彼とは毎日顔を数回会わすかどうかと言った程度で保護者と言うよりは近所の人という感じだったので余り深くは彼の事を知らなかったがこんな美人の知り合いが居たんだ・・・

しかし彼女の問いに対し長峰さんはいつも僕と会う時はどこか元気の無さそうな表情をしていた。しかしこの人に無駄な心配をかけさせたくはないので

「はい・・・多分元気だと思います」

と答えておく事にした。

「そう。それは良かったわ。私は芹本海夏(セリモトミカ)っていうの。長峰くんとは昔からの知り合いで人を艦娘にする研究をしてるのよろしくね」

芹本と名乗った彼女はそう言って僕に手を差し伸べて来た。

「よろしくお願いします」

僕は芹本さんと握手を交わした

「思ったより小さくて可愛いのね。」

芹本さんは言った。僕は身長が低い事がコンプレックスだったので少しカチンと来た。

「こんな所で立ち話もなんだから行きましょう。そこでお話を聞かせてもらうわ。それじゃあ車があるからついて来て」

芹本さんは僕を車に乗せた

そしてそこから車に揺られること1時間程うっそうとした山道をぬけると海岸が広がっており、そこには何も無い海岸には不釣り合いな程に人工的な建物がぽつりと建っていた。

「ここよ」

芹本さんはそう呟いてその建物の前で車を止めた。

「ソラくんお疲れさま。それじゃあ私は車を車庫に入れてくるからちょっとここで待っててくれるかしら?」

芹本さんは僕を車から降ろし車庫へ向かった。

そして数分後

「お待たせソラくん。それじゃあ行きましょうか。こっちよ」

僕は芹本さんに言われるがまま施設の中へ足を踏み入れた。そして談話室の様な場所に通される。辺りを見渡すと資料を無理矢理片付けたような痕跡が見られる。僕の為に片付けたのだろう。芹本さんはあまり片付けが得意な方じゃないんだろうか?

僕がそんな事を考えていると

「それじゃあそこに座ってね」

と芹本さんは僕を椅子に座らせテーブル越しに向かい合う様にして芹本さんも席に着く

「まず最初に確認するけど本当に艦娘になりたいの?」

芹本さんは僕にそう質問した。

「当たり前じゃないですか。僕はその為にここに来たんだ」

僕はそう返した

「それじゃあなんでなりたいの?長峰くんはその理由を教えてくれなかったからそれだけ聞いておきたいなって」

僕はそんな芹本さんの問いに両親が深海棲艦の攻撃で死んでしまった事、その仇討ちがしたいと言った事を正直に話した。すると

「そう・・・風間(カザマ)博士が聞いたらなんて思うかしらね・・・」

彼女はぽつりと呟いた。風間・・・僕のお母さんの旧姓だ。

「芹本さん!僕のお母さんを知ってるんですか!?」

僕は思わず声を上げてしまう

「ええ・・・私の父と一緒に艦娘について研究していたわ・・・いつもあなたの事を心配していたのよ?」

芹本さんは言った。

「噓だ!お母さんは僕の事なんかこれっぽっちも思ってなんかくれてなかった!!僕なんかより研究の方が大事でそのせいで勝手に死んじゃったんだ!!」

僕はそう声を荒げた

「噓じゃないわ。それに風間博士はあなたの事を大切に想って戦いに巻き込まない為、戦いを終わらせる為に必死で研究をしていたのよ?もちろんあなたのお父さんの津山(ツヤマ)博士もね」

芹本さんは言う。

「そんな・・・・そんなの今になって言われたって信じられませんよ!それに本当に僕の事を大切に想ってくれていたなら僕の事をあの時置いていったりしない!それに・・・・」

僕はそうただただ感情のままに言葉を続けた。するとそれを遮る様に

「ソラくん・・・長峰くんから何も聞かされていなかったの?」

芹本さんは少し悲しそうに言った

「ええ!あの人はただ両親の知り合いだからって言って僕を引き取ってくれただけで何も両親の話はしてくれませんでしたよ!!」

「そう・・・なのね・・・・」

芹本さんは表情を暗くした

「それじゃあもう一回聞くわ。本当にあなたは艦娘になって復讐がしたいの?ご両親の事、嫌っているみたいだったけど・・・」

「ええ!大嫌いですよ!ロクに別れも言えないまま勝手に居なくなったんですから・・・でもそれと同じくらいにそんな両親を殺した奴らが憎いんです。おかしいですかね・・・・?」

「いいえ。私も深海棲艦の攻撃で家族を失ったわ。私の父は身寄りの無い私を引き取って一人前にしてくれた。だから私はそんな父の研究を引き継いで私みたいな境遇の子を少しでも減らせたらってそう思ってたの・・・・・でもよりにもよって津山博士と風間博士の子をそんな戦いに巻き込まないといけなくなるなんて皮肉なものね・・・だから私はソラくん・・本当はあなたの事を艦娘にしたくないのだけど」

芹本さんは言った。

「でっ・・・でも僕にはもうこの道しか思い付かないから・・・」

僕の心は少し揺らいでいた。

「艦娘になったらもう普通の人には戻れなくなるのよ?それでも良いの?」

芹本さんはそう言って僕を見つめる。僕に残された道は1つだ。もしここで僕が艦娘になるのをやめると言ったら僕はその後どうすればいいのだろう?今更長峰さんの所に戻る訳にもいかない。だから僕にはもう選択肢なんて言うものは用意されていないし考えられない。もっと早くにお兄さんに出会って居れば結果は変わっていたかもしれないけど・・・

でももうそんなお兄さんに会う事もないだろうし別に罪悪感に駆られる必要なんて無いんだ。それならば僕は深海棲息艦を1隻残らずやっつけてやるんだ。僕はそう今の自分を正当化しただ頷く事しか出来なかった。

「わかったわ・・・ソラくんがそう言うなら私は止めないわ。でも今日はもう疲れてるでしょ?今日はもう休んで・・・お部屋は用意してあるから」

そう言った後芹本さんは何も言わず僕を空いている部屋に通した。

僕はその部屋のベッドに置かれていた病衣の様なものに着替えそのままベッドに倒れ込む。その日の夜、僕は遂に明日艦娘になるんだ。そう考えると様々な感情が入り乱れ結局寝ることができなかった。

次の日部屋をノックする音がするので僕は扉を開けるとその先には芹本さんが居た

「ソラくんおはよう。昨日は良く眠れたかしら?」

「いいえ・・・あんまり」

僕がそう言うと

「そう・・・まあ自分が別の何かになるなんて考えたら怖いわよね。でも大丈夫痛くはしないしすぐに終わるから。それじゃあついて来て」

僕は診察室の様な場所に通された。そこで

「ちょっとチクっとするからね」

と言われ注射を一本射たれる。それからしばらくして意識が朦朧としてきて僕は気を失ってしまった。

そして目を覚ますとそこは昨日通された部屋ベッドの上だった。

何か夢を見ていた様なそんな気もするが内容はあまり思い出せない。

身体が少し怠いがお腹がすいたので僕はベッドから降り辺りを見回す。

すると部屋隅にある机の上にはペットボトルと菓子パンとメモが置かれて居る。

メモには

【ソラくんへ

手術は無事成功しました。お疲れさま。明日の朝お部屋に行くからもしそれより早く起きていたらそこにおいてあるパンを食べて待っていてください。

芹本】

と書かれている。僕はパンをほおばりながらそのメモを読んでいた。

そう言えば今何時なんだろう?この部屋に時計はないが外はまあまあ明るいので朝方だと推測出来る。

朝・・・?と言う事は昨日注射を射たれてから丸一日眠っていたと言う事なんだろうか?そんな事を考えていると扉をノックする音が聞こえて

「ソラくん起きてる?」

という芹本さんの声が聞こえた

「はーい。起きてるわ・・・・えっ!?何言ってるの私・・・私!?どうなってるのよこれ!!なんで女の子みたいな喋り方になってるの!?」

僕は自分の発した言葉に耳を疑った。声が僅かではあるが高くなっているし今までの口調とは全然違う喋り方になっている。僕が混乱していると芹本さんが部屋に入って来て

「おはようソラくん・・・いえ天津風ちゃん」

と僕を見て言った。天津風?それが僕の艦娘としての名前なのだろうか?不思議とそう呼ばれる事に違和感は無く、寧ろ今までずっとそう呼ばれていた様な気分にさえなる。その凄まじい違和感が僕を襲った

「芹本さんわた・・・僕どうなったの?何か変・・・・」

僕は口調を必死にもとに戻そうとして芹本さんに聞く

「みんな最初はそんな感じになるのよ。最初は元の自分と艦娘の記憶が混在して簡単な記憶の混乱みたいなものが起こるの。でも時間が経てばその2つは定着して1つになるから最初は気持ち悪いかもしれないけど安心して」

芹本さんはそう言った。

「わ・・・わかったわ・・・・」

僕はそう返事をした。僕の頭の中ではいつもの口調で話しているつもりなのだが発せられる言葉はその通りには出てこない事にもどかしさを感じる。

その後身体に異常が無いか等の検診を受けさせられた。

それから僕は艦娘として動ける様になるまでここで投薬なんかをしながら生活する事になった。最初は身体の方には違和感は無かったのだが日を重ねるごとに腕が細くなり、全体的に身体が柔らかみを帯びて来ている事を身を以て感じていた。

そんな自分が自分で無くなってしまう様な恐怖を感じる度、僕は提督のお兄さんに貰ったロボットを見て自分を奮い立たせた。しかし同時にお兄さんの

「君は復讐なんて物に捕われないでもっと未来を明るく出来るような大人になるんだよ」

という言葉が僕を苦しめる。

「ごめんね・・・お兄さん。私結局復讐する事しか選べなかったの。でも私・・・できることならもう一回だけで良いからお兄さんに会いたい・・・またお兄さんとお話したいよぉ・・・寂しいよぉ・・・・」

僕はロボットのおもちゃにそう語りかけていた。

寂しい・・・・?お父さんやお母さんが居なくなってもおばあちゃんが死んでも長峰さんと別れても今まで寂しいなんて言葉は出てこなかったのに・・・僕艦娘になって変になっちゃったのかな・・・?あれ?おかしいな・・・?僕どうして泣いてるんだろう?

僕は何故だか涙が止まらなくなった。

思い返してみれば僕はいままでずっと僕は寂しかったのかもしれない。でもそれを普通だと勝手に思い込んでいて気がつかなかっただけなのかもしれない。

これが寂しいって事だったんだ。僕はその日初めて寂しくて泣いた。

それからと言うもの僕は夜な夜なお兄さんに貰ったロボットに話しかけるようになった。

そして施設で生活を始めてから1ヶ月程が経ち、僕は浜辺で射撃演習が出来る様になるまでになっていた。初めて海の上に浮かんだ時自分はもう人間ではないんだと痛感したが、同時に何か懐かしい様な気もした。そんな演習帰りの事そして施設で生活を始めてから1ヶ月程が経ち、僕は浜辺で射撃演習が出来る様になるまでになっていた。初めて海の上に浮かんだ時自分はもう人間ではないんだと痛感したが、同時に何か懐かしい様なそんな気もした。そんな演習帰りの事

「演習お疲れさま。もう艦娘としては問題無いレベルね。はいお水」

芹本さんはそう言って僕にペットボトルを手渡した

「ありがとう芹本さん。私もう一人前かしら?」

僕は自分の発する言葉に感じる違和感ももう感じなくなって来ていた。

「ええ。そんな天津風ちゃんに良いお知らせがあるんだけど・・・遂にあなたの着任する鎮守府が決まったわよ」

芹本さんは言った

「これで私も深海棲艦と戦えるのね!それで・・・その鎮守府はどこなの?」

僕は聞いた

「それはね・・・××鎮守府に着任させるようにってある人からお願いされてね。私も手を回すのが大変だったんだけど来週付けであなたは××鎮守府勤務よ。少し急だけどね」

ある人って一体誰だろう・・・?

それより××鎮守府・・・お兄さんの居る鎮守府だ!その名前を聞いた時、僕は少し嬉しかった。でも変わり果てた僕の姿を見たら彼はどう思うだろう・・・?それに彼との約束を僕はやぶってしまった。僕はもう彼に会うことはないと思って居たからこの事を考えない様に今まで自分を正当化しようとしていたのになんでよりにもよって××鎮守府なんかに・・・・僕はどんな顔で彼に会えば良いのだろう・・・

そんな事を考えていると

「それでね、あなたのお洋服を見繕ったんだけどちょっと着てみてくれないかしら?」

そう芹本さんは言った。今までジャージやインナーシャツのような服しか用意されておらずどんな服なのだろうと少し不安はあった反面可愛い服だったら良いな。と思う自分が居た。

そして部屋に芹本さんが服を持って来てくれた。しかし何かが足りない様な気がする

「あの・・・芹本さん・・・」

「何かしら?」

「服ってこれだけ・・・?スカートとかズボンとかはないの?それにこの下着・・・こんなのじゃはみ出ちゃう・・・・」

僕は顔を赤くして言った。

「服はこれが天津風の正装よ。服はこれだけ。ワンピースになってるから一回着てみて。」

僕はそう言われるがままされるがまま芹本さんにその服を着せられた。そして

「最後にこの吹き流しを髪に付けるんだけどまだ天津風ちゃん髪短いでしょ?じゃーん!これ!エクステ用意したの。きっと似合うと思うわ!」

芹本さんは楽しそうに僕にエクステを付け、そこに赤と白のしましまの吹き流しを付けた。そして

「よし!これで完成!すっごい似合ってるわよ天津風ちゃん!」

芹本さんは笑顔でそう言って僕に姿鏡を向けた。

そこにはツーサイドアップの美少女が立っている。元々中性的な見た目をしていたので艦娘になってからも余り艦娘になった実感が湧かなかったが目の前にいるのはどう見ても女の子だ。

「こっ・・・これが・・・私?」

僕はそう声を上げた

「ええ。とっても可愛いわよ」

芹本さんは言った

「でっ・・・でもこのワンピース短くないかしら・・・下手したら私が男の子だってバレちゃう・・・」

僕は必死にワンピースの丈を下げようと下に引っ張る

「大丈夫よ。ギリギリ見えない様にする最低のラインで調整してるから!!」

芹本さんは得意げに言った。そんな・・・ギリギリなんて・・・・天津風って艦娘は相当ヘンタイだったらしい・・・何で僕がそんな艦娘になっちゃったんだろう・・・・僕はため息をついた。

それからというもの服の着方やエクステの付け方を教えてもらったり鎮守府への着任の手続きだったりをしているうちにあっという間に1週間が経ち、僕は××鎮守府に向かう事になってしまった。

当日芹本さんは僕を××鎮守府の近くまで車で送ってくれた。

「それじゃあ元気でね。それと長峰くんに会ったらたまには会いに来なさいって伝えておいてね」

「わかったわ。今までお世話になりました」

僕は芹本さんに頭を下げ鎮守府のインターホンを押した。

すると

「はい。何かご用ですか?」

という女の人の声がインターホンから聞こえる。なんだお兄さんじゃないのか・・・僕はインターホンに向けて

「私、今日付けで着任した駆逐艦天津風です。」

と名乗った。するとインターホンからする声は

「そう言えば今日でしたね。すみません今から行くので待っていてくれますか?」

と言った後インターホンからプツリという音がした。

それから1分程待っているとメガネをかけた女性が黒髪をたなびかせてこちらにやって来た。綺麗な人だなぁ・・・

「お待たせしました。私、ここの秘書官をしている大淀ですよろしく。ようこそ××鎮守府へ。でもごめんなさいあいにく今提督は出掛けてるの。もうすぐ帰ってくると思うけどそれまで私がこの鎮守府を案内しましょうか?」

大淀と名乗る艦娘は僕にそう聞いて来た。特にやる事も無いし別に断る理由も無いので僕は

「ええ。それじゃあお願いしようかしら」

と言った

そして一通り鎮守府の中を案内されると

「これで一通りの案内は終わったわ。それじゃあ私は書類の整理が残ってるからまた夕方16時に執務室まで来てね」

そう言って大淀さんは僕を残して執務室の方へ歩いていってしまった。

そして特にやる事も無くただ辺りをうろうろとしていると何やら懐かしい話し声が聞こえ、僕は思わず物陰に逃げる様に隠れた。そこからこっそり眺めていると提督のお兄さんが歩いている。僕は勇気を出して声をかけようとしたがその後ろにピンク色の着物を着た僕と同年代くらいの女の子が居て2人は何やら仲よさそうに話していたので僕は彼に話しかけるのをやめた。そんな2人を見た僕の心の中にはなんだかよくわからない感情が生まれる。

「なによ・・・ヘラヘラしちゃって・・・」

そう僕は無意識に呟いていた。

そして2人の後を僕はこっそりとつけて回っていると2人は一緒に大浴場へと入っていった。

「ななな何よ!!女の子と一緒にこんな真っ昼間からお風呂に入るなんて!!あのヘンタイ!!」

僕は顔を赤くして言った。なんで僕は怒っているんだろう?そりゃ僕くらいの女の子と一緒にお風呂に入るなんてどう考えても良くない行為だ。しかしその事について怒っている訳ではない・・・それじゃあ僕は一体・・・・僕はそこで2人を尾行するのをやめ、夕方まで大淀さんに案内された部屋でごろごろしていた。

そして約束の時間になったので僕は執務室へと向かうと執務室に向かう途中廊下に何やら人が3人立っていた。

「何してるのかしら・・・?」

僕が不思議そうにそれを眺めていると

「あら?あなた今日来た子?」

とその中の一番胸の大きな女性が僕に話しかけて来た

「はい。天津風って言います」

僕はそう答える

「私は高雄。医務室の番や艤装のメンテナンスなんかもやっているのよろしくね」

他の2人も僕に気付いた様で

「オーウ!この子もニューフェーイスですカ?ワタシ英国で生まれた帰国子女の金剛ネー!」

「那珂ちゃんでーす!キャハッ☆」

なんか個性的な人たちだなぁ・・・・しかし金剛って人の胸も大きいな・・・僕は金剛さんの胸を見つめていた。すると

「それでは今から執務室で提督に簡単に挨拶してもらいますね」

と高雄さんが言った。すると

「わかったデースそれならワタシが一番ネー!!」

そう言うや否や金剛さんは執務室に向かって猛ダッシュで走っていった。

「あ〜那珂ちゃんもー!」

それを追う様にして那珂さんも執務室へ向かう。

「あらあら・・・元気な人たちね」

それを高雄さんは呆れた様に見つめていた

「天津風ちゃん・・・でしたっけ?私達も行きましょうか。執務室はこっちよ」

そう言って高雄さんは僕を執務室へと連れていく。

そして執務室で僕が見たものは金剛さんに抱きつかれ鼻の下を伸ばしている提督のお兄さんの姿だった。

さっきの大浴場と言い今目の前で起きている事と言い僕の中の提督のお兄さんの像が音を立てて崩れていく様なそんな気がした。そしてまた僕の胸の中に生まれたよくわからない感情がまた大きくなった。

そうこうしていると

「天津風ちゃーん!恥ずかしがってないで入っておいでー!!」

という僕を呼ぶ声がする。別に恥ずかしくなんかないし!

「ばっ・・・・!私別に恥ずかしがってなんて・・・」

と言って執務室に足を踏み入れた。

すると

「君が天津風・・・・?俺がここの提督の大和田謙。よろしくな」

彼はそう言って僕に手を伸ばして来た。彼はよく僕の頭を撫でてくれた。でも今頭を撫でられたらエクステが取れちゃうかもしれない。僕はとっさに

「やだ、触んないでよ!!取れちゃうじゃない!!」

と言って彼から飛び退く。本当は前みたいに頭を撫でて欲しかったのに

「いっ・・・いや別にそんなつもりじゃ・・・それに取れるって何が?」

彼はそう言った。どう考えても握手をしようとしていただけだったのかもしれない。それによかった。僕だって気付いてないみたいだ。そう安心した反面何で僕だって気付いてくれないの?ずっと寂しかったのに・・・会いたかったのに・・・それなのに・・・それなのに・・・・

僕の中に生まれたよくわからない感情は怒りとして僕の口から流れ出していた

「何がって・・・それは・・・吹き流しよ!そんなのもわかんないの!?ふんっ!それにしても冴えない顔してるわね!私陽炎型駆逐艦の天津風。以上。それじゃあ高雄さん、挨拶も終わった事だし私を部屋に案内してくれませんか?」

僕はそう吐き捨て部屋の場所は知っていたが高雄さんに僕を部屋へ連れていく様にお願いした。

「あのー天津風・・・?」

彼は僕の気もしらずに呑気に僕の名前を呼んだ。艦娘の僕の名前を。なんでだろう・・・別に天津風と呼ばれる事に今まで抵抗も何も無かった筈なのに何故かその時は苛立ちや憤りが僕を支配しもう自分の感情をコントロールできなくなって居た。

「気安く呼ばないで!さっきから金剛さんに抱きつかれてへらへらしちゃって・・・・私、一応艦娘だけどあなたとは提督と艦娘としての最低限の関わりしか持つつもり無いから!それじゃあ今日はもう私移動で疲れたから寝るわ。高雄さん!もういいでしょ?早く私を部屋に案内してください」

僕はそう高雄さんを急かし逃げる様に執務室を後にした。

そして部屋に戻り独りで僕は自己嫌悪に駆られていた

「せっかくまた会えたのに・・・・私なんであんな事言っちゃったんだろ・・・明日はきっとちゃんとお話し出来るわよね・・・?」

僕は鞄から取り出したお兄さんから貰ったロボットにそんな事を話しかけていた。

その日はそのままエクステも何もかも外し眠りに就ついた。

次の日、僕はお兄さんに昨日の事を謝ろうと執務室に来ていた。その道中凄いスピードで走り去って行った金剛さんとすれ違う。

そして僕が執務室の扉の前に立つと、ものすごい勢いで扉が開き

「待ってくれ金剛!!違うんだこれはその・・・誤解で・・・」

そう言いながら下半身がパンツ一丁のお兄さんが息を荒げて飛び出してきた。

僕は急な事に驚きその場で固まってしまう。すると

「あっ・・・天津風・・・?おはよう・・・」

お兄さんは今自分に起きている事を誤摩化そうとしているのか僕に挨拶をしてきた。とても目が泳いでいる。

一体執務室の中で何が行われていたのか?お兄さんこんなパンツ履いてるんだ・・・・って一体何を考えてるんだ僕は!それにお兄さんのパンツ姿を見ているのがなぜか恥ずかしい。なんでだろう?僕と同じ男の人のパンツをただ見ているだけの筈なのに・・・・でもなんだかとても見てはいけない物を見ている気分になった僕は次の瞬間

「なっ・・・・何がおはよう・・・よ!!パンツだけで出てくるなんて頭おかしいんじゃないの!?いっぺん死ね!!」

と言いながら彼の金的に思いっきり蹴りをかまして居た。

ああ。またやってしまった・・・また謝れるチャンスを自分から捨ててしまった。僕はまた逃げる様にその場を離れた。僕逃げてばっかりだなぁ・・・

それからしばらくして突然執務室に総員呼び出しがかかり、僕が執務室へ向かうと深海棲艦の艦隊が発見されたのでその艦隊を無力化しろという初めての出撃任務が課せられた。

出撃する前にお兄さんに何か一言でも昨日の事、それにさっきの事をを謝ろうと他の皆が戦闘準備に出て行く中僕は執務室に残っていた。

すると

「どうした?まさか出撃もしたくないなんて言うんじゃないだろうな?」

彼はそう言って僕を睨みつける。きっと昨日の事とさっきの事を怒っているに違いない・・・僕はごめんなさい。と言いたかった。でも何故かそう言えず

「ふんっ!そんなんじゃないわよ!!あんたみたいなマヌケそうな顔した奴の采配がちょっと心配になっただけ!でも命令には従ってあげる。じゃあね」

と吐き捨てまた逃げる様に執務室を飛び出した

「私・・・なんで素直に言えないんだろ・・・」

僕はそう呟きながら戦闘準備をしていると

「あなたが天津風ちゃん?」

突然声をかけられる

「え、ええそうよ」

その声の主はまたも私と同年代くらいの少女で何処にでも居そうな平凡そうな見た目をしているがどことなく優しそうな子だった。

「私、吹雪って言うの!昨日パーティーに居なかったから心配してたの!でもよかった!これからよろしくね!!」

彼女の笑顔はとてもまぶしく、僕はその笑顔に圧され

「よ・・・よろしく・・・でも私馴れ合うつもりないから」

とそっぽを向いてしまった

「そう・・・なんだ・・・でもあなたも同じ鎮守府で暮らす家族だから!それだけは忘れないでね!!」

彼女は少し残念そうな顔をしてそう言った。

話しかけて来てくれたのは嬉しかったが僕はそんな彼女の家族という言葉がとても引っかかった。そんな軽々しく家族だなんて言って欲しくない。どうせ愛想の無い奴だとか思っているに違いないんだから。

「家族なんて軽々しく言わないでくれる!?私とあなたはあくまで同じ鎮守府に居るってだけでそれ以上でも以下でもない関係なの!だから家族だなんて馴れ馴れしい言い方しないで!」

僕は彼女の言葉を拒絶した。せっかく話しかけて来てくれたのに僕はなんて事を言ってしまったんだろうと言葉を発した後に後悔をしたがそんなものはもう意味をなさない

「ごっ・・・ごめんなさい・・・・私・・・そんなつもりじゃなかったの・・・・」

彼女は表情を暗くして言った。僕の方が謝らないといけないのに・・・・でも僕は謝る事が出来ず

「ふんっ」

と言ってその場をまた逃げる様にして離れた。

そんな最悪の状態のまま僕は初陣に出る事になった。

それから海上を隊列を乱さない様に移動していると

「敵発見よ!天津風ちゃん、春風ちゃん実践初めてなんでしょ?無理はしちゃダメよ?」

愛宕と名乗る艦娘が僕と昨日見たピンク色の着物を着た艦娘に言った。

それからしばらくして

「私と金剛がまずは1発お見舞いするからその後に那珂ちゃん、あなたが先陣を切って駆逐艦の子たちを先導して相手の陣形を崩して」

愛宕さんが作戦を説明し、

「はーい!それって那珂ちゃんセンターじゃない!頑張らなきゃ!!それじゃあ春風ちゃん天津風ちゃん吹雪ちゃん!バックダンサーお願いね☆」

那珂さんはそう言った。

そして僕たちは敵艦隊との戦闘に突入した。

そのとき僕は初めて深海棲艦を目の当たりにする。資料やテレビでは良く見ていたし芹本さんから話も聞いて居たが目の当たりにしてその大きさにまず僕は驚き恐怖した。それと同時にコイツらがお父さんとお母さんを殺して僕をこんな風にする原因を作りお兄さんとの約束を守れなかったのも全てコイツらのせいだ。憎い!憎い!!憎い!!!そんなドス黒い感情が僕の内側から湧き出して来る。

そして気付いた時には僕は正面から敵艦隊に突っ込んでいた。

「ヘイ!天津風!!突出し過ぎネ!!下がるデース!!」

「天津風ちゃん戻って・・・!!しょうがないわね。みんな、深海棲艦の注意を天津風ちゃんからこっちに引きつけて!!」

「センターは那珂ちゃんなんだからぁ!よーっし陽動なら任せて!!」

そんな僕を引き止める声がするがそんなものに聞く耳は持たない

そして僕は1隻の駆逐艦に食らい付き

「お前らが!!お前らなんかが居るから!!私は・・・・僕はッ・・・・!!」

ただただ感情の赴くがままその駆逐艦を執拗に痛めつけた。

それからしばらく経ち、敵は残り一隻になっていた。そんな時である。

愛宕さんが

「敵さんも撤退したし春風ちゃんも大破してるからこっちも撤退するわよ〜」

と言った。ふざけるな。あと一息で艦隊を全滅させられるのに・・・撤退なんて・・・お兄さんは一体何を考えてるんだ。僕は離脱しようとしている敵の深海棲艦を睨みつける。

僕は考えるより先にその深海棲艦を追いかけていた。

「天津風ちゃん!ちょっと待って!撤退よ!!」

愛宕さんが僕を呼び止める。

しかし僕はそれを無視し敵艦を追った。

相手は僕を振り切ろうとこちらに向けて砲撃を仕掛けてくる。

僕はその1発に被弾してしまう

「ぐっ・・・・こんなの・・・・かすり傷なんだから!!」

僕はそう吐き捨てる。痛みなんかどうでもいい。それにこの距離なら僕の艤装でもやれる。そう思った僕は逃げる敵にボロボロになった砲を向け狙いを定めた。

「死んじゃぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

僕はそう叫び敵にありったけの砲弾を撃ち込んだ。辺りには爆煙が上がる

「ふふっ・・・やったわ・・・・!」

僕が悦に浸っていたのもつかの間その煙の中から猛スピードで敵艦がこちらに向けて突っ込んで来た

「うそ・・・効いてないの!?」

敵艦は僕に砲を向け攻撃を仕掛けてくる。

ダメだよけられない・・・・僕もお父さんやお母さんみたいに死んじゃうのかな・・・約束も守れず復讐も果たせないまま・・・・

僕は諦め目を閉じた。すると

「天津風ちゃん!!きゃぁあああああああ!」

僕の名前を呼ぶ声、そして悲鳴が聞こえる。

目を開けると僕と敵艦の間にボロボロになった吹雪が立ちふさがっている。

「吹雪・・・どうして・・・」

「天津・・・風・・・ちゃん・・・よか・・・った・・・・無事・・・で・・・・」

そう言うと吹雪は僕の方に倒れ込んで来た。さっきあんなに酷い事を言ったのにどうして吹雪は僕を助けてくれたのかわからなかった。

すると後ろから砲撃が飛んで来てそれは正確に敵艦だけを捉え敵艦はそのまま海の底へ沈んでいった。

「ふう・・・間一髪だったデース・・・それにしても愛宕・・・さすがデース!Youの砲撃センス凄いネー!」

「ふふっ♪伊達にずっと艦娘やってないわよ〜」

どうやら愛宕さんの攻撃らしい。なんて力なんだ・・・・僕はただただ驚愕していた。そして愛宕さんがぐったりと倒れた吹雪に気がつくと

「吹雪ちゃん!吹雪ちゃんしっかりして!!」

そう言って吹雪を抱きかかえた

「ヘーイ天津風、あんなデンジャーな戦い方はやめた方がいいヨ・・・」

金剛さんは僕にそう言った。

「天津風ちゃん?今回は間に合ったから良かったけど1人の勝手な行動が艦隊を全滅させる事だってあるのよ?」

愛宕さんもそう僕を優しく諭した。

僕は2人の言葉に対し何も返事ができずそのまま足取り重く鎮守府に戻った。

港にはお兄さんが居た。どうやら吹雪が心配だったようでお兄さんは吹雪を見るや否や泣きそうな顔で吹雪に駆け寄っていた。

僕は吹雪をあんな風にしてしまった罪悪感から顔を合わせ辛く物陰に身を潜めてそこからお兄さんを眺めていた。

その先で吹雪を抱きかかえるお兄さんを見ていると何故だかもどかしい気持ちになり

「なによ・・・吹雪吹雪って・・・そんなにあの子の事が大事なの?」

僕は何故かそんな事を呟いていた。

そして吹雪が金剛さんによってどこかへ運ばれるとお兄さんはこちらに向かって歩いて来て

「天津風ェ!お前自分が何やったかわかってんのか!?」

と僕を怒鳴りつける。

僕はすぐにでも謝りたかったが

僕には大丈夫の一言も無いの?たしかに僕のせいで吹雪があんなことになってしまった。でも僕だって頑張ったのに・・・なんで吹雪ばっかり・・・なんで・・・僕の中に生まれた感情はどんどん大きくなっていき

「私はただ艦娘としての職務を全うしただけよ。深海棲艦を一隻残らず消す。それが艦娘の仕事でしょ?」

僕は吐き捨てた。どうして素直にごめんなさいって言えないんだろう。すると彼は僕の胸ぐらを掴み

「ふざけんな!お前の命令無視のせいで吹雪が・・・吹雪が沈む所だったんだぞ!!」

とまた怒鳴りつけた。これだけ顔を近づけても僕に気付いてくれない様だ。少し安心したと同時にどうして気付いてくれないの?それに口を開けば吹雪吹雪ってそんなにあの子の事が好きなの?僕の中に生まれたよくわからない感情がちりちりと燃える様にさらに大きくなっていく。

「ふんっ!吹雪吹雪って・・・相当吹雪って娘に肩入れしてるみたいじゃない。別に謹慎でも懲罰でも好きにすれば?」

僕は自分の中に生まれた感情を抑えきれずそう口走ってしまった。

すると

「もう我慢の限界だ。バカにするのもいい加減にしろよ!」

と彼は拳を握りしめて僕に振り上げた。僕はお兄さんがあんな目をする所を初めて見た。アレは誰かを憎いと思う目だ。その眼差しと拳は今僕に向けられている。本当はこんな事言いたい訳じゃなかったのに・・・もう僕は以前の様にお兄さんとはお話できないんだ。ごめんなさいお兄さん・・・・僕はそう思い目を閉じた。

しかしその拳は僕を捉える事は無かった。

僕が目を開けるとを愛宕さんがお兄さんの腕を掴み拳を制止してくれていたのだ。

「ちょっと提督、やり過ぎじゃないかしら?天津風ちゃんもそうとうなダメージを受けてるのよ?だからお説教はあ・と・で。ね?」

そして愛宕さんはお兄さんを諌めた。本当は僕が悪いのに・・・・

「ぐっ・・・離してください愛宕さん!コイツの事一発ぶん殴ってやらないと気が済まないんです!!」

お兄さんはそう言って愛宕さんの手を振りほどこうとしている。

すると

「ごめんね天津風ちゃん」

愛宕さんはそう言うや否や僕の頬にビンタをした

「なっ・・・何すんのよ!!」

僕は反射的に愛宕をさんを睨みつける。

「天津風ちゃん・・・命令無視のお説教は後にするとしてこれは提督の代わり。提督は吹雪ちゃんの事をどれだけ心配してたと思ってるの?それなのにあの言い方はないんじゃないかしら?旗艦の私にだってあなたを指導する責任がある。このビンタはその分よ。提督、この場はこれであなたも頭を冷やして。ね?」

その言葉で僕は冷静さを取り戻した。なんであんな事言っちゃったんだろう・・・?僕はその場に居辛くなり

「そっ・・・それじゃあ私入渠してくるから」

と言ってまた逃げる様にその場を去った。

なんで素直に謝れずにあんな事を言っちゃったんだろう・・・僕ここに来てから何か変だ・・・

そして入渠ができると聞いて居た大浴場へ着いた僕は服を脱ごうとした時ふと既に他の服が脱いでおいてある事に気付く。このピンク色の着物はきっと春風と言う子のものだ。このまま大浴場に入ってしまえば僕が男だと春風にバレてしまう。しかしこのまま入渠しない訳にもいかないのでタオルを巻いて大浴場に入る事にした。

大浴場に足を踏み入れると

「ひゃぁ!!だっ・・・誰ですか!?」

春風の驚いた声が聞こえた

「天津風よ」

僕は名乗る

「あっ・・・天津風さん・・・でしたか・・・・わたくしもう大丈夫なので上がりますね!ごゆっくり!!」

春風は湯船に引っ掛けて居たタオルを自分の身体に巻き付け浴槽から上がり外に出ようとする。

「あの・・・そんな急がなくて良いわよ・・・」

僕は言うしかし浴槽から出た彼女に違和感があった。服を着ていた時は胸が結構あると思っていたのに今の彼女は僕以上にペったんこだ

「あなた・・・胸は・・・?」

僕はそう質問した

「あっ・・・これは・・・その・・・詰め物で・・・・では失礼しまっ・・・きゃぁ!」

彼女は躓いて転んでしまった。何でこんなに焦っているんだろう?まさか僕が男だってバレてるのか?

「ちょ・・・ちょっとあなた大丈夫・・・?」

僕は彼女に声をかけた

「ええ、大丈夫です。あいたたた・・・わたくしとした事が・・・」

彼女はそう言って立ち上がったが股間には見慣れたものがぶら下がっていた

「あっ・・・あなた男だったの!?」

僕は驚きの声を上げた

「ごめんなさい!!隠すつもりは無かったんです!!」

春風はそう言って頭を下げた。

そんな春風を見て自分と同じ境遇だと言う事を知り少し親近感が湧いた。

「頭なんか下げなくて良いわよ・・・私も・・・そうだから。それにこの髪もエクステなの」

僕は春風を安心させようとタオルとエクステを取り一糸まとわぬ自分のありのままの姿を春風に見せた。

それを見た春風は

「あっ・・・天津風さんもそうだったんですね・・・・はぁ〜よかった・・・」

と安堵のため息をついた。僕は彼女・・・いや彼が何故艦娘になったのか興味を持ったので

「お風呂上がらなくていいわよ。それにさん付けなんかしなくても良いわ。少し私とお話ししましょ」

「え、ええ」

2人で浴槽に浸かり直し、春風はどうして艦娘になったのか?そしてそれまで何をしていたかを話してくれた。

「という事があったんです。天津風はどうして艦娘に?」

春風は僕に尋ねてくる。でも僕は余り以前の話をしたくなかった。僕が過去の話をしてそれが何処からかもれてお兄さんに僕が天だと知られてしまうかもしれないからだ。

「私は・・・ごめんなさい。話したくないの・・・・自分から聞いておいて悪いんだけどどうしても言えなくて・・・」

僕は春風に言った。

「そうですか。きっと辛い事があったんですね。それなら無理には聞きません。もし話せるようになる時が来たらあなたのお話も聞かせてください。だから今は無理に話さなくても良いですよ」

春風は僕に優しい言葉をかけ微笑みかけてくれた。

この子、本当に僕と同じ男なのだろうか?その微笑みはまるで女神のようだった。

そして

「天津風」

春風は突然改まって僕の名を呼んだ

「なによ?」

僕はてっきりさっきの戦闘の説教をされる物と思っていたが

「天津風は凄いです。作戦無視をしたとは言え初陣であそこまで戦えるなんて・・・・わたくしなんかなにもできないままこんなにボロボロにされてしまって・・・・情けないです」

それは予想外の言葉だった。

「すごい・・・・?私が?」

僕は呆気にとられてしまう。凄い?僕が?ただ我を忘れて敵に突っ込んだだけなのに?その行動を褒められると逆に自分がしてしまった事の重大さを思い知らされ罪悪感が僕を襲った。

「わたくし深海棲艦を見た瞬間に身が竦んでしまって・・・動けなくなってしまったんです。艦娘失格ですよね」

そんな春風の言葉を聞いて自分がさっきの戦闘でやった事を冷静に振り返る事ができた。

「そんな事無いわよ・・・結局沈められたのは1隻だけ・・・それに私が突出しなければあなたにも吹雪にもそんなキズは負わせなくて済んだんだから・・・」

僕はそう自嘲した。

「吹雪!?私が撤退した後吹雪に何かあったのですか!?」

春風は顔色を変えて僕に迫った

「その・・・私を庇って・・・今は医務室で・・・」

僕がそう言うや否や

「あなたを庇って・・・こうしては居られません!わたくし早くお見舞いに行かなくては!!」

春風は浴槽を出て走って行ってしまう。

「春風、ちょっと待ちなさいよ!!」

僕も吹雪に謝らなければいけない。春風と一緒なら僕は吹雪に謝りに行けるかもしれない。

でも吹雪は僕の事をどう思っているだろう?僕のせいであんな大けがを負わせてしまった。吹雪は怒っているだろうか?そんな事を考えると彼女に会わせる顔が無い。顔を会わせるのが怖い・・・・

僕は結局春風の背中を見送る事しか出来なかった。

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