ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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空の色海の青

 吹雪が医務室に運ばれてからどれ位経ったのだろうか?俺は吹雪の意識が戻るのを今か今かと待ち吹雪の事を見つめていた。

しばらくして医務室のドアが勢い良く開かれると春風がこちらに向けて走ってくる。

「吹雪!!ああ吹雪・・・ごめんなさい吹雪・・・わたくしが・・・わたくしが至らなかったばかりにこんな事に・・・」

春風は吹雪を見るなりわんわん泣き出した。

「春風・・・お前のせいじゃ無いよ」

俺は春風の頭を撫でた。

「でっ・・・ですが・・・」

春風の顔にはまだ疲れの色が残っていたので

「春風、お前疲れてるだろ?吹雪は俺が看てるから今日はもう休んでてくれ」

俺はそう勧めた。

「しかし・・・吹雪にもしもの事があったらわたくしは・・・・」

「大丈夫だって。高雄さんも命に別状は無いって言ってたし。明日の朝にはケロっとしてるよ。だから今日はもう休んでてくれ」

「は、はい・・・それではわたくしはこれで失礼します」

春風はとぼとぼと医務室を後にした。

それからまたしばらくして大淀が医務室にやって来た。

「提督、お夕飯持ってきました。今日は愛宕さんも高雄さんもお忙しそうなので各自で食事をとってもらってます。」

大淀はカップ麺を持って来てくれた。

「ああ、ありがとう。」

俺は医務室にあったポットでカップ麺にお湯を注いだ。

「吹雪ちゃん・・・まだ目を覚まさないんですね・・・私・・・心配です」

大淀も不安の色を伺わせる。

「大丈夫だって、コイツは絶対目を覚ますよ」

俺は大淀を安心させようとそう言った。

「そう・・・ですよね!きっと大丈夫ですよね・・・」

大淀は無理に笑顔を作って笑ってみせてくれた。

「それでは私は書類の片付けがあるので執務室に戻っていますね。今日は高雄さんがいないので大変です」

「大淀・・・お前1人で」

「気にしないでください。提督は吹雪ちゃんのそばにいてあげて。それじゃあね吹雪ちゃん・・・では提督、失礼します」

大淀は吹雪の頭を一撫でして医務室を後にした。

その後金剛が紅茶を入れに来てくれたり、阿賀野と那珂ちゃんが医務室にやって来たが2人は医務室でお菓子を食べ始めたり騒ぎ立てたりしたので追い返した。

那珂ちゃん曰く暗い顔してたら良い事なんか起こらないよ〜?キャハッ☆との事で確かに一理あるとは思うが今の俺はそんな気分ではなかった。

そして夜はどんどんと深けていった頃

「げほっ!げほっ・・・!」

吹雪が突然咳き込み始めた。

これはもしかして吹雪の発作?そうか・・・ずっと意識がなくて薬を飲めてなかったんだ!早く薬を用意しないと!えーと薬薬・・・・

そう言えばいつも吹雪は枕元に薬を置いていた様な気がする。待っててくれ吹雪!俺は急いで部屋に戻ろうと医務室を飛び出す。

すると医務室の前には天津風が立っていた。

「あっ・・・天津風・・・」

「あなたの探してるのはこれ?」

天津風は何やら薬の瓶を持っていた。

「なんでお前がそんな物持ってんだよ?」

「勘違いしないで!高雄さんに持っていって欲しいって言われたからここまで届けに来ただけよ!それだけ・・・それだけなんだから・・・」

天津風はそう言うと薬の瓶を俺に押しつけ走り去ってしまった。意外と天津風も吹雪の事を気にしているのかもしれない。しかし一つ気がかりな事があった。

「ほんとにこれ吹雪がいつも飲んでる奴なのか・・・?」

瓶をよく見るとメモが貼付けられていた。

そこには

【これは予備用の吹雪ちゃんの細胞分裂を抑えるお薬です。そう言えば今日は吹雪ちゃんがお薬飲んでなかったなと思い私は艤装の整備で行けないので私の代わりに天津風ちゃんに持たせました。早く飲ませてあげてください。 高雄】

と書かれていた。

よし!そういう事なら早く飲ませてやらないと!!

俺は医務室へ戻り苦しむ吹雪の口に薬を押し込んだ。しばらくすると吹雪の容態は落ち着き、安らかな顔になった。

「ふう・・・良かった」

俺は胸を撫で下ろす。そして同時に安心したら眠くなって来てしまった。

それから俺は睡魔と戦ったが最終的に負けてしまい吹雪の寝ているベッドに倒れ込む様にして寝てしまった。

 

 夢を見た。

吹雪がこのまま目覚めない夢を

吹雪・・・お前がいなくなったら俺はどうしたら良いんだよ!?

俺がそばに居てやるって約束したのにお前の方からいなくなるなんてそんなのあんまりだろ・・・!

俺は夢の中でずっと吹雪の名前を呼び続けた。

そんな俺の頭を何かが触る感触で俺は目を覚ます。

「んっ・・・?」

俺はまだ良く見えない目を擦ると吹雪が俺の頭を撫でていてくれた。

「吹雪・・・?吹雪!!」

俺は彼女の名前を叫ぶ。

「あっ、お兄ちゃん。目が覚めた?うなされてたみたいだったけど・・・・」

「それはこっちのセリフだ!吹雪・・ああよかった・・・目が覚めたんだな・・・・本当に良かった。お前がもう二度と目覚めないんじゃないかって思ってた・・・・」

俺は飛び起き吹雪を抱きしめる。

「お兄ちゃん痛いよ・・・・でもあったかい・・・・心配かけさせたみたいだね・・・それに一晩中私につきっきりで居てくれたんでしょ?それに発作も起きてない・・・きっとお兄ちゃんがお薬飲ませてくれたんだよね?ありがとうお兄ちゃん」

吹雪はそう言って俺を抱きしめ返す。

「良かった・・・・本当大変だったんだぞ・・・!」

俺は胸を撫で下ろす。

そしてふと彼女の傷口が僅かではあるが塞がり始めていた事に気付く

「吹雪・・・傷が・・・」

「うん。私・・・傷の治りが早いみたいなの」

吹雪は言った。

そういえば細胞分裂がどうとか言ってたな・・・それが関係あるのかもしれない。俺は驚嘆すると同時に吹雪は他の人間や艦娘とは違うと痛感してしまう。そんな考えをかき消す様に

「そうなのか・・・それよりお前・・・大丈夫なのか?痛い所とかないよな?」

俺はそう吹雪に尋ねた。

「もうお兄ちゃんったら心配し過ぎ!まだちょっと痛むけどこれくらい入渠すれば治るよ。心配かけてごめんねお兄ちゃん」

良かったひとまず大丈夫そうだ。

すると吹雪が

「お兄ちゃん天津風ちゃんは?」

と尋ねて来た。

「ああ、アイツなら無事だぞ。もう入渠も終わって多分寝てるんじゃないかな」

「そう・・・なんだ・・・良かった。お兄ちゃんは天津風ちゃんの事怒ってる?」

吹雪は安堵の表情を浮かべた後にそう聞いて来た。

「ああ。もちろんだ。あいつは命令を無視しただけじゃなくお前をこんな目に遭わせた挙げ句全く反省してない素振りを見せたんだからそりゃ怒るさ」

俺は言った。

「あれは私が勝手にやった事だからこのケガは私のせいだよ。だから天津風ちゃんの事は許してあげて」

吹雪は言った。あいつが勝手に飛び出したせいで大ダメージを負ったってのに何でそんな事言えるんだ吹雪は・・・

「なあ吹雪・・・・?」

「なに?お兄ちゃん」

「なんで天津風を庇ったんだ?」

吹雪は少し考え込んだ後

「うーんとそれはね、どこか寂しそうな感じが昔の私に似てると思ったから・・・ここに来る前の私に」

「そうか?天津風はお前と比べ物にならないくらいひねくれてるぞ?」

あんな可愛げのない奴が吹雪に似てるなんてそんなこと微塵も感じなかったけど・・・

「多分ひねくれてたのは私も同じ・・・ずっと自分のが身体が男の子だって事を苦にして自分は男の子だって思い込む事で身体のズレから逃げようとしてた。それでも誰かに助けて欲しかった。優しい言葉をかけて欲しかったのかも・・・それでお兄ちゃんに出会って私の秘密を知っても私にここに居て良いって家族・・・お兄ちゃんだと思ってくれても良いって言ってくれた。だから私はいまここにいられるの。あの時見捨てられていたら私はもうこの世界にはいないしそれにお兄ちゃんの事をお兄ちゃんって呼ぶ事もなかったと思う。きっと天津風ちゃんはあそこで私が助けなかったら。本当にいなくなっちゃうんじゃないかってそう思ってたら勝手に身体が動いてて・・・・」

「吹雪・・・でもあいつはその事について全く謝りもしなかったんだぞ?」

俺は吹雪に天津風が帰港してからの出来事の一部始終を話した。

「それはきっと素直になれないだけなんじゃないかな?私もそうだったし・・・天津風ちゃんは誰かに助けて欲しいんだと思うの。何についてかはわからない。でもきっと私みたいにきっと誰かの助けを・・・手を差し伸べてくれるのを待ってる。そんな気がするの。だからお兄ちゃん、私はもう大丈夫だから天津風ちゃんの所に行ってあげて。こんな気持ちになれたのもみんなお兄ちゃんがあの時手を差し伸べてくれたおかげ。だから私だけじゃなくて天津風ちゃんにも手を差し伸べてあげて欲しいの。天津風ちゃんからはありがた迷惑だって言われそうだけど・・・・・」

吹雪がこんな状態になる原因を事を作った天津風の事をそこまで心配して・・・・

俺は天津風を注意するとか話し合うとか許すとか許さないなんて事よりも何より吹雪の想いに答えてやりたい。

そんな気持ちが俺を動かした。

「おっ、おう・・・お前がそう言うなら・・・そうだ!もう入渠ドックは多分空いてるだろうから動ける様になったら一応入渠しにいけよ!」

「うん!ありがとお兄ちゃん」

吹雪は笑顔で俺を見送ってくれた。

医務室を出ると朝焼けが廊下を照らしている。

「カーテン閉めてたからわかんなかったけどもう朝か・・・・ん?」

俺は医務室の向いの壁にもたれかかって眠っている天津風を見つけた。まさかこいつずっとここで・・・?

しかし寝顔は可愛いんだな。黙ってりゃ可愛いとは思うんだけど・・・

いやいやそうじゃなくて・・・こんな所で寝てたら風邪を引いてしまう。

それに話も聞きたいし俺は天津風を起こすことにした。

「おーい天津風ー起きろー」

俺は天津風を揺さぶると

「ひゃあ!おっ、お兄さ・・・提督!?私が寝てる間になにかいかがわしい事しようとしてたのね!!この変態!ロリコン!!性犯罪者!!!」

天津風は飛び起き流れる様に俺を罵倒した。

「バッ・・・ちげえよお前がこんな所で寝てたから起こしてやっただけだ!!」

俺は必死で否定する。

「へっ・・・!?そうなの・・・?てっきり私の事まだ怒ってると思って・・・それで・・・」

天津風はぽかんとした顔をしている

「バーカ。どう思われてんのかは知らないけど怒ってるからってそんな行為に走る程俺も外道じゃないんでね。それと俺はお前の事まだ許してないからな。」

「別に・・・そんな・・・許して欲しいなんて・・・」

天津風は何やら口をモゴモゴとして何かを呟く。

そんな天津風に俺は憤りを感じた。

「なんだよ?言いたい事があるならちゃんと言えよ」

「べっ・・・別になんでも無いわよ!!」

天津風はそう言って俺を睨みつけた。

どこまでもめんどくさい奴だな全く・・・しかしなんでこんな所で寝てたんだ?もしかしてこいつなりに吹雪を心配しているのかもしれない。

「なあ」

俺は天津風に声をかける。すると

「何よ!?べっ・・・別にあなたと吹雪が心配でここで待ってた訳じゃないんだから!!あなたの情けないアホ面を見に来てやっただけなんだからね!それじゃあ私はもう寝るから!」

まだ何も聞いてないのにあっちから勝手にそう言って来た。なんだよこのテンプレみたいなセリフは・・・昨日港であんな事を言っていたがコイツなりに吹雪の事を心配してたんだな。俺は少し天津風に対する認識を改めた。

それならまずは俺が謝らなければならない。

「ちょっと待ってくれ天津風・・・!!昨日はその・・・殴ろうとしてごめんな・・・いくら腹が立ったからって提督として感情で艦娘を傷つけるなんてやっちゃいけないよな」

俺は頭を下げると

「なっ・・・何で謝るのよ!!全部私が悪いのに・・・それにあんなに酷い事も言ったのに・・・なんであなたはそんな私に謝れるの!?私は・・・・私は・・・・うっ・・・・うわぁああああああん!!!!」

天津風は突然泣き出してしまった。

「お、おい天津風・・・?大丈夫か?ちょっと落ち着けよ・・・」

俺は天津風をなだめようとするが

「触らないで!私に優しくしないでよ!!なんであなたはこんな私に優しくしてくれたの!?あなたに会わなければこんな気持ちになる事もなかったのに!ぜんぶあなたのせいよ!!」

天津風は俺の手を払いのけた。

優しく・・・?それに俺に会わなければ・・・?俺のせい・・・?俺は一体彼女に何をしたのだろうか?俺には皆目見当も付かなかった。

「天津風・・・なんで俺の事をそんなに拒絶するのか教えてくれないか?」

「なんでって・・・なんでもよ!とにかく私はあなたの事が・・・・大ッキライなのよ!!」

天津風はそう吐き捨てて走り去ってしまった。

「ちょっと待ってくれ!まだ話したい事が・・・」

俺はその走り去る天津風に手を伸ばしとっさに何かを掴む。

するとその何かが天津風からすぽんと外れた。

「きゃぁ!何するのよ!!」

天津風は頭を抑えている。俺は一体何を掴んだんだ・・・?

俺は手に掴んだ物を眺める。

これは・・・髪の毛!?俺の手には天津風の結っている髪の片方が握られていてた。

女の子の毛ってこんな簡単に抜けるのか!?とにかく謝らなきゃ!!

「ごごごごめん!!痛くなかったか!?えーっとまずは医務室・・・いや医務室には吹雪しかいないしまずは高雄さんの所へ・・・!」

俺はただ慌てふためいた。そして天津風は俺の手に持った髪の毛を見ると表情が一変。彼女は顔を真っ青にして

「あ・・・・ああ・・・それ私の・・・みっ・・・見ないで!!僕を見ないでぇぇぇぇ!!」

そう言ってその場に頭を抱えうずくまってしまった。

「どうしたんだよ天津風!?」

俺はそんな天津風の顔を覗き込んだ。その時俺は天津風の顔を至近距離で目にする。

あれ・・・?胸ぐらを掴んだときは頭に血が上っていて気付かなかったがやっぱりどこかで会った事があるような・・・この白く透き通ったような髪、それにこの琥珀色の瞳・・・こんな子に一度あっていたら忘れない筈なんだけどなぁ・・・・

その時俺の脳裏に「僕の事忘れないでね」という少年の言葉がよぎった。当たり前だろ?忘れるわけ無いじゃないか・・・忘れるわけないのに・・・

俺の中の些細な疑念がどんどんと大きくなる。

いや、もしかしたらただそれが事実だと思いたくなかっただけで最初に天津風に会った時から俺は気付いていたのかも知れない。

俺がそんな事を考えていると

「それ・・・返して・・・・」

天津風は立ち上がりの右手に握られていた髪の毛を奪い取った。

その横顔は別れた前の日、海を眺めているソラの顔にそっくりだった。それを見た俺は

「お前もしかしてソラ・・・なのか・・・?」

そう口に出してしまう。

それを聞いた天津風は少し黙った後

「ごめんなさい!!」

そう言って走り去ってしまった。

「あいつ・・・本当にソラなのか・・・?」

なんでソラが艦娘に・・・?お前はあの場所で「復讐以外の夢を探すんだ!」って嬉しそうに言ってたじゃないか・・・・それなのになんで・・・・俺は彼が艦娘になった理由がわからず呆然とその場に立ち尽くした。

俺のバカ・・・!なんでもっと早くに気づいてやれなかったんだ!

それにこうなる前に俺にもっとできることがあったんじゃないか・・・?

そんな自責の念に駆られ天津風を追った。

「こんな事してたらダメだ!あいつを追いかけてしっかり話を聞いてやらないと・・・!まだ俺はあいつになにかしてやれることがあるかもしれない!!」

しかし鎮守府の辺りをくまなく探したが天津風は見つからない。

もしかしたら部屋に戻っているのかもしれない。

そう思った俺は天津風の部屋へと向かい

「おーい天津風、帰ってるか?」

俺は部屋をノックするが返事は無い。

俺は試しにドアノブを回してみるとカギがかかっておらず扉が開く。

そこは春風の部屋と同じ様に最低限の物しか置かれていない殺風景な部屋で天津風の姿はなかった。

しかし一つだけ春風の部屋にはなかった物が置かれており、それに俺の目は引かれる

「これは・・・」

俺がソラにあげたのと同じロボットネイトリュオンのおもちゃだ。そして俺はまさかと思いネイトリュオン足の裏を見るとそこにはひらがなでおおわだけんと書かれていた。

「やっぱり・・・!」

俺はネイトリュオンを元あった場所に戻し部屋を後にして走り出すとぽつりぽつりと雨が降り出してくる。

「くそっ・・・!こんな時に雨かよ!!」

俺はそう吐き捨て傘を自分の部屋から持って来て鎮守府を飛び出した。

しかし徐々に雨は強くなっていく。

早く見つけ出さないと・・・

「天津風ー!天津風ー!!」

俺の呼ぶ声は雨の音にかき消されてしまう。

くそっ!あいつどこ行ったんだよ・・・・?

待てよ・・・?

あいつがソラなら・・・きっとあの場所にいる筈だ!

俺は土砂降りになった雨の中あのベンチがある場所まで走った。

もう傘など意味をなさないくらいに横殴りの雨が走る俺を打ち付ける。

「天津風ー!!天津風ー!!ソラァァァァァァ!」

俺は叫んだ。

あの場所を目指して走りながら・・・・

そしていつも彼と話をしていたベンチのある場所にたどり着く。

海は雨と風で荒れ、いつもの青い色とは比べ物にならないくらいに灰色に染まっている。

それは雨を降らせている空の色をそのまま映し出している様にも見えた。

そしてあたりを見渡しすとそんな荒れた海辺で雨に打たれながら立ち尽くす天津風の姿があった。

「天津風!!いやソラ!!やっぱりここにいた!!」

俺はすかさず彼に駆け寄る。

「やめて!なんで追いかけて来たの!?どこまでバカなの!?」

彼はまた俺を拒絶する。

「なんでってそりゃ・・・・お前が友達だから・・・」

俺はそう返す

「噓よ!私の事さっきまで気付かなかったくせに!」

ソラは言った。

「それは・・・・その・・・・」

それに関して俺は何も言い返せない。

「寧ろ気付かない方が良かった・・・!それにあなたなんかとは出会わない方がお互い幸せだったわよ!」

そう言うと雨で荒れて灰色に濁った海の方にソラは歩き出した。いくら艦娘と言えど艤装も付けないでこんな荒れ狂った海に入れば普通の人間と同じ様に溺れてしまうだろう。その行いが何を意味するか俺は気付く

「ソラ!?何やってんだ!!」

俺はソラを追いかけた。次は絶対にソラを見失わないしソラを死なせたりするもんか!!

俺はソラをなんとかギリギリの所で捕まえることができた。

「よかった・・・」

俺は安堵の息を漏らす

「離してよ!!」

ソラは俺の腕を振りほどこうと暴れた。

「離すもんか!俺がお前がソラだって気付けなかったからお前はこんな事をしようと思ってるのか?それに出会わなかった方が良かったなんて・・・俺と話してたときの事・・・全部噓だったって言うのかよ・・・」

俺はソラに尋ねる。

「違う!私は・・・・私は・・・・お兄さんとの約束も守れなかった・・・・それにお兄さんとお兄さんの大切な人を傷付けた・・・!そんな私なんて・・・・私なんて・・・!だから離して!!」

ソラはそう言って更に暴れる。

「馬鹿野郎!!逃げるんじゃねぇよ!!お前は吹雪に謝らなきゃいけない!それに・・・それにお前はまだ将来の夢を見つけて無いじゃないか!あの時俺に言っただろ!?復讐以外の道を探すって!!その道を探す事から逃げてんじゃねぇよ!!」

俺は更に力強くソラを抱きしめた。

「うるさい!!私はもうこんな身体になっちゃったのよ!?もう普通の人間じゃないの!!だから将来の夢なんてもう無いわ!ただ戦って戦って・・・」

そこでソラは言葉を詰まらせる

「戦って・・・それからどうするんだ?」

俺は尋ねた。

「それは・・・・」

ソラは黙り込んでしまった。

「ほら・・・まだ先があるじゃないか。お前がなんで艦娘になったか詮索はしない。でもこの戦いが終わったらお前は何がしたいんだ?まだお前にはその先の未来があるじゃないか・・・・」

「戦いが終わった後・・・」

ソラは呆気にとられたような顔をした。

「ああ。それを俺と・・・俺達と探そうぜ?せっかくまた会えたんだから・・・それなのにこんな所でさよならなんて俺は嫌だな」

「ごめん・・・お兄さん・・・・私・・・生き急いでただけだったのかも・・・」

ソラの抵抗する力が弱まり、彼は何故艦娘になったのか?ソラは俺に会うまでの話や昨日の出撃の時の事、そして誰かの希望で××鎮守府に着任する事になった事を教えてくれた。

「ごめんなさい・・・私、本当は自分がソラだって・・・また会えて嬉しいって会った時一番に言いたかった・・・でも・・・私がソラだって知ったらお兄さんは私が約束を破った事を知ってしまう・・・それに・・・男の艦娘なんて嫌でしょ・・・?だから私がソラだってバレるのが怖くて・・・約束を破った事が辛くて・・・お兄さんと他の艦娘が仲良くしてるのが羨ましくって・・・それであんな酷い事を・・・」

そう言ってソラは俺の胸で泣き出した。

そうか。約束を破った事を気にして自分がソラだって気付かれるのが嫌で俺を避けてたのか・・・

「バーカ。そんな事思う分けないだろ?どんなになったってソラは友達だって!それに吹雪からお前が・・・天津風が誰かに手を差し伸べてもらえるのを待ってる気がするから手を差し伸べてやって欲しいって言われてな。だから俺はこの手を絶対に離さないからな」

俺は言った。

すると

「また吹雪・・・なんだ・・・」

天津風は少し不機嫌な顔をした

「あいつも最初はお前と同じような問題児でな・・・まあお前程酷くはなかったんだけど」

俺は吹雪と出会ったときの話を天津風にした。

「そうだったんだ・・・私・・・そんな事何も知らないで吹雪に酷い事言っちゃって・・・でも私よりマシって言い方は酷くない?」

ソラは唇を尖らせた

「まあそう言うなって。俺もお前にもっとしてやれた事があったかもしれない。でもそれは叶わなかったからそれならこれからどうやっていくかを一緒に考えような!」

俺はそう言って以前の様にソラの頭を撫でてやると

「頭・・・やっと撫でてくれた・・・・」

ソラは嬉しそうだった。

そしてふと気付くと雨は止み、空には晴れ間が射していて海も青さを取り戻しつつあった。

「まあ難しい事はこれから考えるとしてそろそろ帰ろうぜ。俺達の鎮守府へ!」

俺はソラに言った。

「うん!ありがとうお兄さん。これからもこんな姿になっちゃったけど改めて私をよろしくね」

ソラはやっと笑ってくれた。

その笑顔は以前の彼となんら変わりのないものだった。

「よし帰るか!ふぇっ・・・・ぶぇっくしょい!」

俺は大きなくしゃみをした

「お兄さん大丈夫!?」

ソラは俺を心配そうに見つめる。

「ああ大丈夫だ。ちょっとばかし雨に打たれて冷えただけで・・・・ぶぅわっくしょい!」

俺はもう一つくしゃみをした

「ごめんねお兄さん・・・私の為にここまで・・・」

「いいっていいって!それより愛宕さん怒るとめちゃくちゃ怖ええんだよ・・・だからお前説教は覚悟しといた方が良いぞ?」

「えっ・・・そうなの!?やっぱ私帰るのやーめた!なーんちゃって!!」

「おいこら待てよー!」

俺は笑って走るソラを追いかけた。

 

そして鎮守府に戻ったソラは吹雪や他の艦娘達に謝罪し、ようやく××鎮守府の一員として皆から迎え入れられたのだった。

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