ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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男と男の話

 なんだか色々な事が起こり過ぎて訳が分からないぞ・・・とりあえず話を整理しようまずは目の前に立っている男の事だ。

「あの・・・・愛宕さん・・・で良いんですかね?」

恐る恐る口を開く。

だってなんて呼べば良いのか分からないし確かに面影は無いとも言えないしさっきの声は愛宕さんだったし・・・

何より今の彼を愛宕と呼んで良いのかどうなのかが一番謎だ。

また怒鳴られたりしたら嫌だしなぁ・・・

そんな思考を巡らせていると

「おう。好きに呼んでくれや。前までの名前なんてもう忘れちったし」

彼はニコッと笑ってそう言った。なんというか男らしいって言うのかなんというか・・・すると女将さんがクスクスと笑い出し

「ふふっ!もう提督ったらまたそんな冗談を前に酔っぱらったとき久々に高雄さんに名前呼んでもらって嬉しかったって言ってたじゃないですかそれにこの間・・・・」

「だああああああ!それ以上言うな恥ずかしいだろ!?あっ、そうだ鳳翔さんアレ!アレ2人前作ってくれ」

彼は女将さんの話を遮る様に言った。この2人どういう関係なんだろう?

「もう・・・しょうがないですねぇ・・・・来るなら来るって言っておいてくれれば用意しておいたのに・・・わかりましたちょっとお時間かかりますけど作って来ますね。それではお二人ともごゆっくり。この人頑固だから謙くんも大変でしょう?いつもご苦労様」

そう言うと女将さんは厨房のほうへ足を引きずって入っていった。

そして2人きりになり俺はまた黙ってしまう。そんな時

「なあ、お前ここのハンバーグ食った事あるか?」

彼は突飛な事を聞いてくる。

「いや食べた事無いですけど・・・というかハンバーグなんてメニューにあるんですか?」

ハンバーグだって?ここ和食メインの居酒屋じゃないの!?

「いいや裏メニューだ。つーか無理矢理作らせてる。鳳翔さんの作る飯で一番うめぇんだよ」

彼はそう誇らし気に言った。

そんなドヤ顔で言われてもなぁ・・・しかしそんな急な事にも笑顔で対応してくれる女将さんが凄いのかそれともそれくらい親しい感じなんだろうか?

只の常連客と言う訳では無さそうだ。でも話って一体なんだろう?

「その・・・・何で俺をここに呼んだんです?話って一体それになんでわざわざ男装を?」

俺が尋ねると

「ちょっと昔話混じりにお前と男同士で話がしたくってな」

男同士って・・・まあ間違ってはいないんだけど・・・

「そんで何で男装かってのは俺の事を明かすいいタイミングだとも思ったんだけどいつもの恰好だったらお前いつも俺の胸ばっかチラチラ見てっから頭に入ってこねーかなーって思ってさ。まあ俺の胸でっかいし見とれちまうのも無理ないけどな!」

そう愛宕さんはドヤ顔で言った。

なんかこんないい加減そうな男の人の胸に見とれてたと思うとなんか悔しい気もする

「はは・・・で、その話って言うのは・・・・?」

俺は恐る恐る尋ねる。

「あーそうだ・・・まず高雄が殴りかかろうとしてて悪かったな。一応俺が代わりに謝っとく。すまん!」

彼はこちらに軽く頭を下げてきた。

「え・・・」

「ああいや一応元提督として?アイツの管理不行き届きというか・・・うーんまあアレだアイツにもいろいろあったんだよ。しっかしあんな高雄俺も久しぶりに見たぜ。でも怒りに任せた暴力じゃなんも解決しねーからな。流石に止めさせてもらったぜ」

そう言えばたしか以前に俺が天津風に同じような事をしようとした時も愛宕さんが止めに入ってたっけ

結構荒っぽそうに見える人だけど言われてみればそうかもしれない。

「そ・・・そうですか・・・でも結局は俺があんな事言わなければ済んだ話なので・・・」

「あーその事で本題なんだけどさ、うん。単刀直入に聞くけどお前今のあの子の事正直どう思ってんの?」

あの子・・・一体誰の事だろう?吹雪?それとも阿賀野か・・・?

「えーっと・・・あの子って・・・・誰ですか?」

俺がそう尋ねると彼は痺れを切らしたのか

「お前それワザとやってんの?それとも天然かよ?大淀だよお・お・よ・ど!お前あの子とは艦娘になる前から知り合いだったんだろ?」

と声を荒げた。

淀屋の事をどう思ってるかって?そりゃ大切な親友に決まってる・・・はずなのになぁ・・・

自分ではそう思っているつもりだった。しかしどう思っているかと聞かれると以前淀屋に好きだと言われた事を思い出す。

きっと俺が思うあいつとあいつの思う俺に凄まじいズレが生じていると言う事はもう薄々気付いている。

それにそのズレに俺もまきこまれて

いる事にも気がついている筈なんだ。でもどこかで俺はあいつが俺に友情ではない別の感情を寄せている事が怖いんだ。それを受け入れてしまったら3年間一緒に過ごしたあいつが本当に消えてしまいそうで。だから俺はあの時答えをはぐらかしたんだ

俺はなんて答えれば良いのか分からない。いいや答えは出ている筈だけどそれを口に出してしまったらもう後戻りもできなくなってしまう。

俺は口を噤んでしまった。

すると

「なんだなんだよ急に黙りこくりやがって!お前も男だろ?女が腐ったみてーな事してねぇでもっとハッキリ物を言えよ!!あんな一途な子はそういねーよ?あっ、これ秘密だっけな・・・今のナシで!!」

女が腐ったようなのはどっちだよ・・・・

というかなんで淀屋が俺に好意を寄せている事なんかを知ってるんだ?

あいつ愛宕さんに何か話してたのかな・・・?

「あの・・・愛宕さん。淀屋・・・いえ大淀から何か話を聞いてたんですか?」

「ああ・・・秘密にしといてくれって言われたんだけどな。あの子、お前の事好きなんだってさ。あー言っちまった!!これ大淀には内緒な!後でおっぱいもませてやるから黙っといてくれよ!?」

彼は俺に手を合わせ頭を下げた。

うーん・・・確かにできることなら愛宕さんのおっぱいは揉みたかったけどこんな揉み方するのもなんかやだなぁ・・・・

「要りません!!それに知ってますよ。あいつが俺の事好きな事も・・・」

「えっ!?知ってんの?マジ!?なんでなんでなんで!?」

彼は俺の言葉を聞いた瞬間凄まじい勢いで突っかかって来た。

このまま黙っている訳にもいかない雰囲気だな・・・黙ってたら死ぬまで聞いてきそうな勢いだ。ええい!もうどうにでもなれ!!

「ああもう煩いですよ!前の休暇の時にあいつから言われたんです!!好きだって!!!」

俺の言った言葉を聞いて一瞬辺が沈黙に包まれたが

「ヒュ〜やるじゃん大淀・・・!もっと時間かかると思ってたけどやったのか!」

彼は嬉しそうにそう言った。

「で・・・お前はどう返したんだ?」

と少し真面目なトーンで尋ねてくる

「それは・・・その・・・」

「まあ今のお前と大淀を見てたら大体察しは付くけど聞かせろや。後でおっぱい揉ませてやるから」

答え辛そうな俺を見て彼はそう言った。易々とおっぱいを揉まそうとしてくるなこの人・・・

「だから要りませんって!そうですよ!結局はいともいいえとも言えませんでしたよ!!」

「はぁ〜やっぱダメだなぁお前・・・」

俺の返事を聞くと彼は頭を抱えてため息をついた。

「ダメってなんですか!?俺だってあいつの事は・・・・」

あっ、まずい・・・言ってしまいそうになってしまった。ダメだ。これだけは絶対に口に出しちゃいけない。

それに本人じゃなくて他人になんて尚更・・・

「ん?あいつの事は何だって??ほらほら・・・おじさんだけに言ってみろって」

彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべ俺に顔を近づけてくる

おじさんなのかお姉さんなのか忙しい人だなこの人・・・・

「な・・・なんでも無いです」

「言いたくないならそれでも良いけどよ・・・それじゃあ話題を変えよう。なんで大淀が鬱ぎ込んじまったかお前に分かるか?」

「そりゃ・・・事故とは言え金剛と部屋に一緒に居て・・・それからあんな事を言ってしまったから・・・・」

「なんでそれであいつは傷ついたと思う?それにお前はなんでそんな言葉を口に出しちまったんだ?本心からそう思ってんなら今すぐ他の鎮守府紹介してやるけどどうするよ?どこも人手不足だからな〜それこそ本当にハーレム生活も夢じゃないぞ?」

彼は冗談なのか本気なのかそんな事を言い始めた。

「言い訳とかに聞こえるかもしれないんですけど・・・・あれはその・・・・本心じゃなくて・・・・」

俺は途切れ途切れに言った。でもなんで俺はそんな事を口走ってしまったのか?言われてみれば理由を考えていなかった。単に金剛の一言にカチンと来てそれから・・・・

「本心じゃないならなんなんだよ?」

彼はそう言って急かしてくる。

「その・・・・」

理由はあった。

でもそれをどう言葉にしたら良いのか俺には分からない。

この感情に名前をつけるなら恐怖と言った物に近いのかもしれない。

「怖かったんです・・・・」

俺は消えそうな声で言った

「何が怖いんだ?」

「その・・・なんて言って良いのか分からないんですけど・・・その・・・あいつじゃ無くなっていくあいつや他の鎮守府のみんなをどんどん男だって思えなくなって来ている自分に怖くなったんです・・・本当にこのままで良いのか?って思って・・・金剛だってそうです・・・もうアレがぶら下がってる以外はちょっと強引だけど女の子にしか見えなくて・・・俺が毒されてこのままじゃ変になっちゃいそうで・・・どこかでずっとそんな事を溜め込んでたんだと思います・・・だから今思えばあんな言葉を発する事で自分自身に言い聞かせたかったのかもしれないです・・・こんな方法で2人を傷つけて最低ですよね・・・俺・・・」

俺の口からは自然とそんな言葉が溢れて来た。

それを聞いた彼はにっこりと笑って

「はぁ〜い♪よく言えました」

と言って俺の頭を撫でた。

その顔はさっきまでの眉間にシワを寄せていたどこかいかめしい表情では無くいつもの愛宕さんのような優しい表情だった。

「あの・・・ちょくちょくいつもの愛宕さん挟んで来るのやめてくれませんか?なんというか混乱しちゃいます・・・それにマジメに答えたんですよ!?茶化さないでくださいよ!!」

「そ・・・そうか。悪かったな。アラサーのオッサンに褒められるより可愛いお姉さんに褒められた方が嬉しいかと思ったんだが・・・」

「たしかにそう・・・ですけど愛宕さんは緩急が激しすぎるんですよ!」

「悪い悪い。でもな、よく話してくれた。多分あいつも同じ事考えてると思うぜ」

彼は言った同じ事・・・?

どういう事だろう

「なんですかそれ・・・?」

「あー多分な、大淀もそんな感じの事考えてると思うんだよ。なんたって自分自身が変わっていくなんて怖いじゃねぇか。俺もどっちの自分が本当の自分かたまに分かんなくなる時があってな・・・でもそんな時高雄はいつも近くに居てくれて・・・今の俺も愛宕としての俺もどっちも今の俺なんだって教えてくれるし不安な時はあいつが側に居てくれる。あっ、悪い悪い。のろけ話になっちまったな・・・あっ!俺と高雄が付き合ってんの知らなかったっけお前!」

彼は恥ずかしそうに笑った。

そういえば高雄さんは愛宕さんとそういう関係だって話をしてたな。

「知ってましたよ。前に高雄さんから聞きました」

「ウッソマジで!?高雄の奴それならそう言ってくれりゃよかったのに・・・」

「で・・・結局いつもの愛宕さんと今の愛宕さん。どっちが本当の愛宕さんなんですか?」

俺は尋ねた。

すると

「わかんねぇ!!!」

彼は自信満々に即答したがなんでそんなに自信に満ち溢れているのか全く俺にはわからなかった。

「わかんないんですか?自分の事なのに!?」

「だってよぉ俺は高雄の事女としても男としても好きだぜ?それにせっかくこんな可愛いボンキュッボンの美人になったんだから多少は女の子っぽい事もしないと損だろ?だからその・・・あれだ。白黒付ける必要はねーんだよ。多分俺は男でも女でもないあいつの事が好きなんだからよ!だから別に本当の俺がどっちかなんていちいち考えてたら疲れちまうだろ?」

彼はそう言い切った。

やっぱり男らしいなこの人・・・・

確かにそうかもしれない。俺は淀屋に好きだと言われてからずっと答えを急いでいたのかもしれない。

「でもな・・・それは俺の側に高雄が居てくれたからそう言えるんだ。艦娘になるにはそれなりに覚悟が要る。大淀はなんで艦娘になったかまでは教えてくれなかったがそれなりの覚悟があって艦娘になるって決めたんだと思う。でもな今のあいつはある意味孤独なんだ。あいつもお前に今の自分を否定されたらどうしようとか拒絶されたらどうしようとかずっと悩んでるんだ。だからお前にあんな事言われたら本心じゃなくても傷つくよなぁ?それにきっとお前がその言葉に応えれば今までの親友としてのお前、それにいままでお前と過ごした日々さえ否定する事になるとも思ってる。だから結局お前らはどっちも似たような事を考えてんだよ。いやぁ〜若いなぁお前ら!ちょっと羨ましいぜ」

彼は言った。

「なんですか他人事だと思ってそんな事!!」

「お前がそう思ってんならお前が直接あいつにそう伝えてやれ。できるよな?」

彼の言う通りだ。

あいつと一度面と向かって今の気持ちを話さなければいけない。

もう逃げ場も隠れるところだってない。

「は・・・はい!」

俺は覚悟を決めた。

「やっぱ高雄の言った通りだな。あいつ初めてお前に会った日にちょっと頼りなさそうだけどどことなくあなたに似てていい子だって喜んでたんだぜ?それでお前の秘書官で似たような境遇の大淀と昔の自分を重ねてたんじゃねーかな・・・だからあそこまで怒ってたんだろうなぁ・・・まあでもお前の気持ちもわからなくもないんだぜ?あんなナリで男とかどう考えても頭の理解が追いつかねぇもん実際俺も高雄とは良く喧嘩してたからな」

頼りないは余計だ!

「えっ・・・?そうなんですか?」

「ああ。よく「私もこんな身体ですが男なんですよ!?女性にしか興味ありませんから!!あなたとそう言う関係になる気は毛頭ありません!」とか」

彼は誇張した高雄さんのまねをしてそう言った。

「俺もお前みたいなカマ野郎に興味ねぇからこっちから願い下げだーとか良く言ってたなー」

結構仲悪かったんだな二人・・・・でもそんな二人はどうしてくっついてそれに元提督だった彼は愛宕になったんだろう?

「それじゃあ愛宕さんはなんで艦娘になったんですか?」

「あ〜それはなぁ・・・・」

俺がそう尋ねた瞬間

「は〜いお待たせしました。丁度ひき肉が二人分余ってて良かったです。ごゆっくり召し上がってくださいね。あっ、ご飯もおかわりありますから言ってくださいね」

女将さんがそう言ってハンバーグとご飯を持って来た。

「おっ、ナイスタイミングだぜ鳳翔さん!お前も冷めないうちに食えよ!んじゃいただきます」

彼はそれを待っていたかの様にハンバーグを食べ始めた。

なんだか上手い感じで質問をはぐらかされたが目の前に出されたハンバーグは凄まじく美味しそうでデミグラスソースの香りが俺の食欲を刺激した。

くそう!!まんまと彼と女将さんの術中に嵌められた気がするがもう空腹も限界に近いので俺はハンバーグを食べる事にした。

「い・・・いただきます」

ひとまずハンバーグを一口放り込む。

なんだこのハンバーグ・・・!

柔らかくてそれでいて肉がしっかりしてて噛んだだけで口の中が肉汁まみれになるくらいにジューシーで・・・

「美味いっ!!」

俺の口からは自然とそんな言葉が出ていた。

「ふふっ。ありがとう謙くん。久しぶりだから美味く出来るか心配だったんだけど」

女将さん嬉しそうに笑った。

「そりゃそうだろ。なんせ俺が教えたんだからな」

彼は誇らし気に胸を張る

「どういう事です?」

俺はハンバーグをご飯と共に搔き込みながら尋ねる

「なんせ俺の将来の夢は洋食料理屋を開く事だったからな。ガキの頃はずっとそんな飯を作る事だけ考えて生きてた」

「じゃあなんで提督に・・・?」

「それは・・・その・・・色々あんだよ。それから鳳翔さんが和食しか作れねーって言うから俺が洋食の作り方を1から教えたんだ。なっ!鳳翔さん」

「はい。おかげさまでレパートリーが格段に増えました」

一体二人はどんな関係なんだ・・・・ますます読めなくなって来たぞ?まるで以前一緒に暮らしてたみたいだ・・・

「いやぁ〜それほどでもあるかな!でも鳳翔さん。前より美味くなってるぞ」

「ええ。あの後色々勉強して一工夫加えてみたんです!」

「えっ!?何したんだ鳳翔さん!!教えてくれよ!」

「ないしょですっ!ふふっ」

「なんだよ〜」

そんな話をする二人はまるで家族の様だった。

もしかして愛宕さんって鳳翔さんの息子さんだったり・・・?

いやいやそれは絶対無いな。なんたって女将さんが若過ぎるし・・・

まあいいや!そんな事より俺もハンバーグを食いたい!

俺はもう疑問をそっちのけでハンバーグを口に運び、完食した。

「ふぅ〜美味しかったです女将さんごちそうさまでした」

「謙くんも喜んでくれたみたいでよかったわ」

それからしばらく水を飲んで一服していると

「そろそろ帰るか。お前も今の自分の思いのたけをあいつに自分自身の言葉で伝えてやるんだ。俺に言えたんだから大淀にだっって言えるだろ?」

彼は俺の肩をポンと叩いた。

根拠は無いが今の俺ならそれが出来そうな気がする。

「はい!」

「あっ、悪い流石にこのまま帰る訳にもいかねーから俺メイクしてから帰るわ。だから先に帰っててくれるか?鳳翔さんワリぃ便所借りるな」

そう言うと彼はトイレの方にずかずかと歩いていった。

「あの人いつもあんな感じなの。謙くんも大変でしょう?」

「えっ・・・はい。でも愛宕さんのああいう所を見たのは初めてで・・・ちょっとびっくりしました」

「そうよね。まだ提督だったって事も言ってないって言ってたわね・・・でもあの人は今の恰好でも愛宕の時でも根は同じだから。ちょっと扱いは難しいかもしれないけど優しくしてあげてね。ちょっと酒癖とかが悪い所もあるけど良い人だから」

「は・・・はい。それじゃあ帰ります。ハンバーグ美味かったです。ごちそうさまでした」

「ええ。気をつけて帰ってね。それと今度はその大淀って子も一緒に連れていらっしゃい。また腕によりをかけてごちそうするわ」

「ありがとうございます。それじゃあお邪魔しました」

俺は女将さんにそう言っておおとりを後にし鎮守府へ向かった。

 

 

そして鎮守府へ着くと入り口に誰か人が立っている。

誰だろう?どこかで見たような気がするし見た事が無い様な気もするし・・・・

そんな人影は俺に気付いたのか手を振って来た。

誰だ?俺の事を知ってる人?

俺はその人影に近付いてはっきりとその姿を捉えた。

その人影の正体を俺は忘れる筈も無い。

そんな・・・噓だ・・・そんな筈無い・・・だってあいつは・・・・なんで・・・

そこに居たのは髪を短くした大淀・・・いや淀屋だ。オレの知っている高校の頃の・・・・

「よ・・・淀屋・・・なんで・・・」

俺が訳も分からずあたふたしていると

「謙、心配かけてごめんね」

淀屋はそう言った。声は昔より少し高かったが確かに淀屋だ。

「いや・・・謝るのは俺の方で・・・ってその髪どうしたんだよ・・・!?それにその恰好・・・」

淀屋はいつもの艦娘の服ではなくパーカーにズボンといったような恰好だった。

「ああこれ?こっちのが良いでしょ?僕もう疲れたんだ」

「疲れた・・・って?それにお前いま僕って・・・・」

「だって艦娘って大変じゃん。女の子の恰好とか結構気も使うし服もめんどくさいし髪も長くてうざったいし。だから僕もう女の子の真似するのやめたんだ。男なのに女の子みたいな恰好して女の子みたいにしてたら気持ち悪いしこの方が謙も気が楽で良いでしょ?でも身体までは元に戻らないからちょっと前よりだらしない身体になっちゃったかな・・・」

淀屋はそう言った。そんな淀屋の目の下は少し腫れており、さっきまで泣いていたようだ。

「で・・・でもお前艦娘の仕事は・・・」

そうだ。疲れたって言ってたしこいつ艦娘やめるつもりじゃ・・・・

「ああそれ?別に僕は出撃する事も無いからこのまま仕事はつづけるし今まで通り謙のお手伝いもさせてもらうよ。これからもよろしくね」

淀屋はそう言って笑った。しかしそんな笑みにはどこか他の感情が入り交じっている様にも見えた。

やはり俺の言った言葉がそうとう堪えているらしい・・・

早くなんとかしないと・・・でも今俺の目の前に居るのは以前の淀屋だ。

大淀に自分が淀屋であると告げられた時からずっとこの姿に戻って欲しい。また二人でバカな話をして笑い合いたいとも思っていた。でもこんな形で淀屋に戻るなんて・・・淀屋は望んでこの恰好をしているのか?

もし俺の言葉のせいでこんな事になっているのなら今すぐ大淀に戻って欲しい。

しかしあいつは噓であれ本当であれ自ら望んだ事だと言うだろう。

「な、なあ大淀・・・」

「謙、僕は淀屋だよ。もう大淀じゃない」

前は大淀だって言ってたじゃないか・・・・

「でもお前は前に大淀として接してくれって言ってただろ?」

「ああ言ったよ。でもあんなのウソさ。そっちの方が謙にも他の艦娘の人にも気を使わせない方が良いと思って一芝居打ったんだ。どうだった僕の恋する女の子のお芝居。B級映画のヒロインくらいなら張れるでしょ?もしかして謙もずっとわかんなかった?」

「いや・・でも・・・お前・・・・」

絶対噓だ。俺の知ってる淀屋は絶対にそこまで回りくどい噓は着かないし第一俺に気を使わせないという理由なら最初から正体を打ち明けなければ済む話だ。

それに・・・どうしてそんな悲しそうな顔をしてるんだよ・・・

どうしても俺には今の淀屋の言っている事が本心とは思えなかったが自分が淀屋を追いつめここまでの事をさせるに至ってしまった事に負い目を感じて結局その場でなにも言うことができなかった。

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