ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
「提督、阿賀野、着きましたよ」
高雄さんがそう言うと車は水族館の見える横断歩道の近くで止まった。
「はぁ〜やっと着いたか・・・」
「ええ〜阿賀野はもうちょっと乗ってたかったなぁ〜」
「やだよ!お前車ん中でずっとべたべたしてきやがって!!まだなんもしてないのに疲れたわ」
「だって今の提督さんかわいいしぃ〜今夜だけでも俺の女になってみる? なーんちゃって♡」
阿賀野はキメ顔で言った
「だ・・・だからそう言うのやめろって言っただろ!?」
なんで俺こんなドキドキしてるんだ・・・・!?いつもの女の恰好してる阿賀野ならともかく今の阿賀野の外見は完全に男なんだぞ!?
「えへへ〜それじゃあ高雄!提督さんと楽しんでくるね!」
そんな俺の事はお構い無しに阿賀野はいつもの調子でそう言って車のドアを開けた。
「おい阿賀野・・・お前当初の目的を忘れてないか?」
「だいじょーぶだって!はい、提督さん!阿賀野がしっかりエスコートしてあげるっ!」
阿賀野は車を降りると俺に手を差し伸べてくる。
なんか調子狂うなぁ・・・
「お・・・おう・・・」
俺は阿賀野の手を取り恐る恐る車を降りた。
「おおっと・・・」
地面に足を着けるとやっぱりふらついてしまう。
この靴歩きにくすぎるだろ・・・・
「大丈夫提督さん?」
バランスを崩した俺を阿賀野はしっかりと受け止めてくれた。
そんな俺は阿賀野にしっかりと抱きついており、阿賀野の顔が俺の目の前に・・・・
「だ・・・・・大丈夫だっ・・・・うわぁ!!!」
俺は反射的に阿賀野から離れようとするもまたバランスを崩してこけそうになってしまった。
「おっと・・・・!ダメだよ提督さん。ヒールなれてないんだからあんまり激しく動いたら」
阿賀野が俺の手を掴んで引っ張って支えてくれたおかげで転ばずに済んだがやっぱなんか恥ずかしい・・・
しかしなんでだろう。いつも呑気そうな阿賀野がどこか頼りがいのある奴に見えてしまう。
「う・・・・すまん」
「いーのいーの!!阿賀野も最初はこんな感じだったし!」
阿賀野は胸を張った。
やっぱ阿賀野は男装してるけどいつも通りなのかなぁ・・・・
俺が変に意識しすぎてるだけなのか?そうだ・・・そうに違いない!
女装してて変に俺が浮き足立ってるだけなんだ!
そう自分に言い聞かせていると
「どうしたの?提督さん」
阿賀野が俺の顔を覗き込んでいる
別になんて事ない男っぽい阿賀野の顔が目の前に居るだけなのに俺はびくりと体を強張らせてしまった。
「うわぁ!!な・・・・なんでもない・・・なんでもないぞ・・・!!!」
「そう?ならいいけど。それじゃあ高雄。後は阿賀野に任せて!」
阿賀野は車からドアガラスを開けてずっとこちらを傍観していた高雄さんに言った。
「ええ。もう少し提督の初々しい女装姿を眺めていたいですが私はこの辺で・・・あっ、そうだわ提督。帰りは用事があるので迎えにこれません。ですからバスで帰ってきてくださいね。ただこの辺バスがややこしい上に夕方になると鎮守府方面行きのバスが減ってくるので乗り間違えない様に気をつけてくださいよ?それでは失礼します」
高雄さんはそう言い残しドアガラスを閉めて車を発進させ、俺と阿賀野はそれを見送った。
「ふう・・・・高雄、行っちゃったね」
「あ、ああ・・・」
なんだか気まずい・・・・
なんでだ?もう阿賀野と喋るのなんか抵抗も何もない筈・・・
というか元々阿賀野は男だからそんなものない筈なのに今日はなんだかいつもと違うというか・・・
「それじゃあ提督さん!早く行こっ!」
俺の事等知った事ではないと言わんばかりに阿賀野は水族館を指差す。
「わかったからちょっと待ってくれよ・・・この靴歩きにくいんだから」
俺はぐらつく足をぎこちなく進める。
「もー提督さん!そんなんじゃいつまで経っても着けないよ?ほ〜ら。手、繋ごっ」
阿賀野は強引に俺の手を掴み歩き出す。
「うわっ!ちょ・・・待て!」
俺はバランスを取るのに必死だったが阿賀野は逐一俺の事を確認しつつ優しく引っ張って足を進めてくれている。
そして歩いているうちに辺を見回す余裕ができてきたが他人の視線がとても気になってしまう。
女装して阿賀野と手を繋いでる俺・・・変に映ってないかな・・・
なんの気ない筈の他人の視線がチクチクと体に刺さってくるようだ。
「な、なあ阿賀野・・・」
「ん?提督さん、なぁに?」
「お・・・・俺・・・・変じゃないよな・・・・?」
阿賀野にこっそりと俺は尋ねる。
いや。女装してる時点で十分に変だと思うんだけど・・・・やっぱり俺が女装しても変に見えるだけだよなぁ・・・
「全然そんなことないよ!今の提督さん十分可愛いよ!」
阿賀野はそう言って笑いかけてきた。
「お世辞は良いんだよ・・・!ほら・・・なんか俺・・・見られてないか?やっぱどっか変なんだろ?阿賀野もそんな事言って俺の事からかってるだけなんだろ?」
「違うよ提督さん。きっと皆提督さんが綺麗だから見てるんだって!それに阿賀野が可愛くしてあげたんだから変なわけないでしょ?ほら。もっと自信もって!!堂々としないと逆に変に見えちゃうよ?」
「う・・・・」
なんだかそこまで言われるとそんな気もしなくも・・・ない・・・のかな・・・?
今日の俺・・・やっぱりなんか変だ。これも全部女装のせいだ。
そうこうしているうちに俺達はチケット売り場にたどり着いた。
「阿賀野・・・俺・・・ここで待ってるからさ・・・・チケット買ってきてくれよ・・・・やっぱり恥ずかしいし・・・」
「なーにいってるの提督さん!ほら一緒に来る!横に居るだけで良いから!」
阿賀野は俺の手を引いた。
「うわぁちょ・・・阿賀野!?」
そしてチケット窓口に連れていかれ・・・・
「大人2枚で」
阿賀野は低めの声でそう言って俺の肩を抱き寄せた。
「ひぁっ・・・・!」
急な事に変な声が出てしまう。
なんで・・・・俺・・・・こんなドキドキしてるんだよ・・・・
「カップルさんですか?楽しんで行ってくださいね!」
窓口の販売員のお姉さんにそんな事を言われ
「ああ。ありがとね!それじゃあ行こうか」
阿賀野は爽やかにそう言って俺を水族館の中へと引き入れた。
俺は提督なんだぞ・・・?それなのに阿賀野に良い様に遊ばれてる気がする・・・・
そして入ってすぐにある大水槽のある開けたスペースに入ったので俺は阿賀野に一言言ってやることにした。
「阿賀野・・・・何のつもりだよ!!あんなことしやがって・・・・!俺は別にデートに来たわけでもお前の彼女でもなんでも無いんだからな!!」
「え〜だってぇ〜カップルのフリして2人を尾行するって計画じゃない!あれくらい当然だって!もしかして提督さん・・・・ドキドキしちゃった?さっきもあんな可愛い声出しちゃってたし」
阿賀野はそういつもの調子で答える。
「い・・・いや・・・そんな事・・・・」
図星を突かれた俺は苦し紛れにそう言うが阿賀野は俺の頬に手を添えて目を合わせてきて・・・
「ほら〜やっぱりドキドキしてたんだ〜!!いいぜ?今日だけは俺の女になる?・・・・なぁんちゃって!!」
はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!??????
「な・・・・なななななな・・・・!!!!!」
俺の体温と心拍数が急激に上昇する。
ヤバい・・・・!ヤバい!!一瞬本気でなんか生まれちゃいけない感情が・・・・
やっぱり阿賀野怖い・・・・
「あはっ!提督さん赤くなっちゃってか〜わ〜い〜い〜」
阿賀野はにたにたと笑う。
やっぱりこいつ俺の事からかってるだけなんじゃないか?
「阿賀野お前なぁ!!からかうのもいい加減に・・・・・」
「あれ〜良いの?女の子がそんな荒っぽい言葉遣いしちゃって目立っちゃうよ?」
「何言って俺はおと・・・・」
そこまで言いかけたところではっとなり通行人の視線が気になってくる。
そうだ・・・今の俺は女装してて・・・こんな事してすごく周りから浮いてるんじゃないか?
そう考えると急に顔が熱くなってきた。
「ふふ〜ん♪今の提督さんは俺の彼女だもんね?」
「うう・・・」
言い返してやりたかったけどこれ以上悪目立ちしたり女装した変態だと思われたくない俺は何も言えなかった。
それからしばらく阿賀野にされるがまま水族館の中を回っていると
「提督さん。お魚見てたらお腹減ってきちゃった。ご飯にしない?」
阿賀野は急に言い出した。
「はぁ?」
「はぁ?なんて言い方しちゃダメだよねぇ?この辺人いっぱい居るんだよ?」
「うっ・・・今なんて言った・・・の?」
俺はしぶしぶ少し高めの声で訪ねた。
「だ〜か〜ら〜ご飯だよご・は・ん!阿賀野朝から何も食べてないしぃ〜ここのレストラン美味しいって評判なんだって!なんかお魚見てたらお腹すいてきちゃった」
はぁ〜やっぱり阿賀野と居ると調子が狂うなぁ。
突飛な一言に一気に怒る気も失せてしまった。これが天然なのか計算ずくなのかがわからないところがこいつの怖い所なんだよなぁ・・・・
それに俺もそう言われてみれば朝にサンドイッチを食べただけだし色そろそろ昼飯時だしなにより臑毛を一気に抜かれたり女装させられたりとなれない事をされまくったせいでなんだか飯の事を考えると一気に腹が減ってきた。
「はぁ・・・・わかったよ」
俺は渋々阿賀野に了承した。
「それじゃあこっちだよ。提督さん、また転んじゃうと危ないし手、離さないでね」
阿賀野は俺の手をぎゅっと握ってきた。
その手の大きさや力強さからやっぱり阿賀野も男なんだなと再認識させられる。
そしてレストランに入り席に通される
「ふぅ〜やっと座れる・・・この靴ちょっと歩いただけなのにめちゃくちゃ疲れるな・・・」
「女の子って大変でしょ〜?」
「え・・・ああうん・・ってお前は男だろ!?」
「良いじゃんべつに〜阿賀野もヒール履く事あるしぃ〜あっ、そうだ提督さん」
「なんだよ」
「そんなまた開いて座ってたらパンツ見えちゃうかもよ?」
「えっ・・・・!?」
阿賀野に言われて俺は反射的にスカートを抑えていた。
「まあロングスカートだから開いても見えないと思うけどね〜」
阿賀野はニヤニヤしている。
「お前なぁ・・・・」
「えへへ・・・ごめんごめん!でも股開いてたら変に見られちゃうかもよ?男だってバレちゃうかもね」
「えぇ!?ああ・・・わかった・・・」
俺は意識して股を閉じてみたがこれも結構疲れる。
立ってても座っても疲れるとかどうなってんだよこれ・・・・
そんな事を考えていると阿賀野はある一定の方向を見つめ
「ほ〜ら。思った通り♡」
と呟いた
「どうしたんだよ?」
「提督さん、ほらあそこあそこ」
阿賀野がそう言って指を指した方向には大淀・・・いや今は淀屋なのか?そんな彼と向き合って話をしている美少女の姿があった。
隣の子誰だよ・・・いや。あいつしか居ないわけなんだけど・・・・・・
「あれ那珂ちゃん!?」
俺は思わず声に出してしまった。
「しーっ・・・!提督さん!!気付かれたら変装してる意味ないでしょ!?」
阿賀野に口を塞がれる
だっていつもと雰囲気違いすぎるだろ・・・あんなにめかしこんでどれだけ気合い入ってんだよ・・・・それだけあいつの事が気になってるって事なんだろうか・・・?
あんな可愛い子に告白されてもし淀屋がくっついちゃったらどうしよう・・・・
『謙、ごめんね!僕やっぱり男として那珂ちゃんの人生のプロデューサーになるよ!じゃあね』
『ヨドちゃんったらぁ〜那珂ちゃんのプロデューサーさんなんてそんな事言わないでよぉ・・・・那珂ちゃんはぁもうアイドルなんかやめてヨドちゃんのお嫁さんになるんだからぁ〜ヨドちゃんは那珂ちゃんの旦那様でしょ?』
ヨドちゃん・・・・!?
待ってくれ淀屋・・・・大淀!!!!!!
なんて状況が頭に浮かんだ。
いやいやいやあいつに限ってそんなこと・・・・ない筈なんだけど・・・・・
なんでだろ・・・・あいつが那珂ちゃんと仲良く喋ってるの見てるだけなのにすごく胸がモヤモヤする
「どーしたの提督さん?」
「あ、いや・・・なんでもない・・・」
「ふふ〜ん。もしかして那珂ちゃんに嫉妬してるの?」
「は!?」
そんな阿賀野の言葉が俺の心に生まれたよくわからない感情をはっきりさせた。
嫉妬・・・?俺が那珂ちゃんに!?
そんな・・・・なんで・・・・・・
「だって提督さん大淀ちゃんの事好きなんでしょ・・・?もし那珂ちゃんにとられちゃったらど〜しよ〜とか考えてるんじゃない?」
心を読まれた!?
「ちちちちちげーし・・・・俺と淀・・・・大淀はそんな関係じゃねーから・・・・」
俺は必死に誤摩化そうとするが
「え〜そうなのぉ?その割にはなんか最近いい感じだと思ってたんだけどなぁ〜」
「違うって!」
「それじゃあ阿賀野達ほんとに付き合っちゃう?もちろん今の男の子の恰好の私じゃなくて女の子の阿賀野として提督さんの彼女になってあげるけど?」
つ・・・・付き合う!?そんな・・・俺には大淀が居るのに・・・・ってそう言う事じゃなくて阿賀野は男なんだぞ!?それにこのまま女装して男と付き合うなんてゴメンだ!
いや・・・まあ大淀も男なんだけどそう言う事じゃなくて・・・・
「女の子としてって第一お前は男で・・・・」
「ふーん。じゃあやっぱり今の俺の方が好きなんだ。別にそれでも良いけど本当に俺の彼女になってみる?退屈させないよ?」
また阿賀野は低めの声でそう言って俺に顔を近づけてくる。
「だから違うって!!俺にそんな趣味は・・・・」
少し前までなら俺にそんな趣味はねぇ!と即答できただろう。
今は本当にそう言いきれるんだろうか?
あいつは俺の事を好きだって言ってくれたし俺も何故かそれを受け入れられた。
それってやっぱり俺も・・・・
「ん〜?そんな趣味は・・・なんなのかな〜?」
阿賀野に見つめられてさらに訳がわからなくなってしまう。
「う・・・」
「なーんちゃって!冗談だよ冗談!!早く何か頼もうよ」
阿賀野はそう言ってメニューをテーブルに広げた。
それを見て俺は安堵の大きなため息をつく。
「ほら提督さん!これとか美味しそうだよ?」
「ああ。そうだな・・・・」
正直さっきの事が頭の中でまだぐるぐるしていてそれどころではないのだが
「じゃあ阿賀野これにする〜提督さんはどれにするの?」
「えーじゃあこれにしようかな・・・」
俺は適当にメニューの中からハンバーグ定職を頼む事にした。
「わかった。それじゃ店員さん呼ぶね!」
阿賀野は呼び出しベルのボタンを押した。
それからしばらくして店員が注文を聞きにやってくると
「くらげミートソースパスタ一つください。それじゃあハニー。君も注文して」
そう言って俺にウインクをしてくる。
誰がハニーだ・・・・と言いたかったが今は店員が居るのでそう言うわけにもいかず・・・
「おれ・・・・わたし・・・はこの・・・・・ハンバーグのセットを・・・・」
高めの声で俺は恐る恐るメニューを指差した。
すると店員は
「はい!クマノミロコモコプレートですね?」
と聞き返してくる。
そんな洒落た名前なのかこれ!!
「は・・・はい・・・それで・・・」
「かしこまりました!くらげミートソースパスタとクマノミロコモコプレートがお一つづつですね!もうしばらくお待ちくださいませ」
店員はハキハキとそういうとテーブルから離れていった。
俺・・・男だってバレなかったかな・・・
ひとまずなんとかやりきった俺は安堵の息を漏らす。
そんな俺を阿賀野はニヤニヤ見つめてくる
「提督さんさっきの可愛かったよぉ〜」
「ば・・・・馬鹿・・・・それはその・・・・女装だってバレたらマズいと思って・・・・」
「うんうん!あれくらいならちょっとシャイでハスキーな感じの女の子だと思ってくれるよ!・・・多分」
「そ・・・そうかな・・・」
褒められてるのかどうかわからないがここは褒められていると受け取っておこう。
でも女の子に見えるなんて言われてもあんまり嬉しくはないはずなんだけど・・・・
すると
「ねえねえ提督さん!那珂ちゃん達も何か頼んだみたいだよ?」
と大淀達のいるテーブルの方を指差し耳打ちしてきた
「そ・・・・そうか」
「何頼んだんだろうね〜」
それにしてもさっき思った通りって言ってたけど何が思った通りだったんだろうか?
俺は阿賀野に尋ねてみる事にした。
「なあ阿賀野」
「ん?どうしたのハ二ー?」
「ぶっ!!だからハニーじゃねぇって!!・・・・なあ、なんで大淀達がここに来るってわかったんだ?」
「そりゃこの水族館でご飯食べるって言ったらここか売店くらいしかないし・・・それに阿賀野が昨日ここの事オススメしといたんだ〜まあでもタイミングまでバッチリだったのは予想外だったけどね。それと阿賀野もここのお料理食べてみたかったし」
「お前最後のが本音だろ」
「えへへ〜バレちゃった」
阿賀野は誤摩化す様に笑った
その表情はやっぱりいつもの阿賀野なんだけどなぁ・・・・
一体阿賀野が何を考えているのか少しわからなくなってしまう。
それからしばらくすると料理が運ばれてきた。
「わぁ〜おいしそ〜それじゃあ提督さん食べよっか!」
「あ、ああ・・・・」
阿賀野は目を輝かせスパゲッティーをガツガツと食べ始めた。
最初はクラゲミートソースってなんだよって思って居たが単にミートソーススパゲッティーの上にクラゲ型のマカロニが盛りつけられているだけの料理だったが阿賀野はそれを美味しそうにほおばっている。
それにしても食べっぷりは男そのものなんだよな阿賀野・・・・
俺の方に来たクマノミロコモコプレートは魚の形に整えられて盛りつけられたご飯の上にハンバーグと目玉焼きと千切りのレタスが覆い被さる様にして乗っかっている。
なるほど。これでクマノミが隠れてるみたいになってる訳か。よく考えてあるなぁ・・・
少し食べるのがもったいない様な気もしたがハンバーグの香りに食欲がそそられ、俺も食べ始めることにした。
美味い・・・・見かけ倒しだと思いきやハンバーグを一口食べると口の中に肉汁が溢れ出してくる様にジューシーで目玉焼きも半熟でハンバーグのソースに絡めて食べるとそれはもう絶品だった。
そしてハンバーグを食べ進めていると阿賀野が
「提督さん!あれ・・・!あれ!!」
とまた大淀達のテーブルの方を指差した
「ああ?なんだよ・・・?」
俺は渋々その方向を向くと那珂ちゃんが淀屋の口にスプーンを近づけている。
これってまさか・・・・・・
「あ〜ん・・・・カレーも美味しそうだなぁ・・・・カレーにすれば良かったかぁ・・・」
「いや違うだろ!!食ってるものなんか問題じゃなくてあれって・・・・・その・・・・デートの定番とウワサされているあの・・・あーん・・・とかいう奴では・・・・」
「んん〜?提督さんもしてほしいの?」
「ちげーよ!あんな事・・・・俺もまだしてもらった事ないのに!!」
あーんをされている淀屋が羨ましいのかそれとも大淀がそれをされている事にジェラシーを感じているのか俺の中でこの2つの感情がせめぎあっている気がした。
「那珂ちゃん攻めるねぇ〜」
「うう・・・」
恐るべし那珂ちゃん・・・・本当に淀屋が落ちてしまわないか尚更心配になってきたぞ・・・
「ほら提督さん。あーん」
気付くと阿賀野が俺の口元にスパゲッティーを巻き付けたフォークを近づけている
「は!?」
「いいじゃん提督さん。ほらあーん♡」
「えっ・・・いや・・・その・・・俺別にやられたい訳じゃ」
「いいからいいから!ね?」
阿賀野はそう言ってウインクをする。
そう言われると断るに断れないんだよなぁ
「しょうがねぇな・・・・むぐっ」
俺は仕方なくスパゲッティーを食べた。
「どう?美味しかった?」
「え・・・ああ・・・」
「よかったぁ〜それじゃあ提督さん。そのハンバーグちょっとちょーだい♡」
「は?」
「え〜だって阿賀野いまスパゲッティーあげたじゃん」
こいつ・・・それが狙いかよ!!
「しょ・・・しょうがねぇな・・・・勝手に取れよ。でも一切れだけだぞ?全部取るなよ!?」
「ええ〜阿賀野も食べさせてあげたんだから提督さんも食べさせてよ〜」
阿賀野はそう言うと口を大きく開けた
「俺もやんなきゃダメなのか・・・・?」
「あん・・・」
阿賀野は口を開けたまま頷く
「はぁ〜・・・ほらよ」
俺はため息を一つついて残っていたハンバーグを一口大にフォークで分けて阿賀野の口に運んでやった
「んむっ・・・・・おいひいねこれ!!もう一個ちょうだい!」
「なんでだよ!?もうこれ以上は自分で頼んで食え!」
「ちぇ〜」
阿賀野は残念そうにまたスパゲッティーを食べ始めた。
飯を食べ終わってからしばらくして那珂ちゃん達がレストランを出て行ったので俺達は後をつけていると、那珂ちゃん達は水族館の記念撮影ができるパネルの前で2人で記念撮影をした後イルカショーが行われているショープールの方へ向かったので俺達もそれを追う。
そして那珂ちゃんたちは水がかからないギリギリくらいの席に陣取ったので俺達はその少し後ろから2人を見張ることにした。
「イルカショーなんて阿賀野久しぶりだよ〜」
阿賀野はなにやら楽しそうだ。
俺はイルカどころではなくぴったりくっついている前の2人の方が気になって仕方がなかった。
そんなショーが中盤に差しかかると司会のお姉さんが
「それじゃあショーのお手伝いをしてくださる方ー手を挙げてくださーい」
と客席に呼びかける。
すると
「はいはいはーい!!!」
と前で那珂ちゃんが思い切り手を上げている。
それが司会のお姉さんの目に留まったのか
「それではそこの白いお洋服のお姉さん!」
と那珂ちゃんがステージに呼ばれ、そんな那珂ちゃんに連れられ淀屋もステージに上がった。
そんな2人を見て
「あれ?こちらの方彼氏さんですか?」
とお姉さんが2人に尋ねると
「はいっ!」
と那珂ちゃんは即答し淀屋に抱きついた。
「ほぉ〜那珂ちゃんやるじゃない・・・・」
横で阿賀野はそんな事を言っていたが俺はやはりなにかこうもどかしい気分になってしまった。
そしてショーが終わり、那珂ちゃん達を尾行しつつ水族館を回っていると那珂ちゃん達がなにやらこちらを見つめてきている
「やべっ!バレたんじゃないか!?」
「大丈夫大丈夫。遠巻きに見られてるだけだしこう言うときこそカップルのフリで乗り切らなきゃね!」
阿賀野はそう言うと俺と腕を組んできた。
「うわぁ・・・ちょ・・・」
「いいじゃない。これくらいしなきゃ誤摩化せないって」
阿賀野はそう言ったがなんだか良い様にされている様にしか思えない。
そんな俺達を見て対抗心を燃やしたのか那珂ちゃんが淀屋の手に指を絡め歩き始めた。
もしかしてあれって・・・・
「恋人繋ぎかぁ〜阿賀野達にあんな見せつてくるけるなんて那珂ちゃんほんとに肉食系なんだからぁ〜」
「恋人繋ぎ・・!?」
「どうする提督さん。阿賀野達もする?」
「い・・・いや・・・・俺は別に・・・・お、おい!早くついていかなきゃ見失うぞ!」
俺はそう話を誤摩化し更に尾行を続けた。
それからしばらくして海の見える野外水槽のある広場で2人が何か話をし始めた。
辺は日も沈み始めなんともムードのある雰囲気だ。
近付きすぎると怪しまれると思い、俺と阿賀野は遠巻きに2人を眺めていると、なにやら2人は笑いながら話をしていた。
よかった・・・これなら別に何も起こらないだろう。
俺がそう胸を撫で下ろしたのもつかの間、那珂ちゃんが淀屋の頬にキスをした
「ええ!?」
「キャー!!那珂ちゃんやっるぅ〜!」
横で阿賀野が嬉しそうにそんな2人を眺めているが俺は全くそんな気にはなれなかった。
淀屋・・・やっぱりお前はそっちの方が良いよな・・・・?
なんでだろう?親友のてデートをしている瞬間やキスの瞬間を見てしまい、なんだか淀屋が遠い所に行ってしまったような気がしてしまった。
それになんでだろう?
あいつが淀屋として・・・・男に戻るならそれはそれで嬉しい筈なのに今は秘書官として大淀としてでずっと俺の隣にいて欲しいと思っている俺がいる。
この間淀屋に大淀だろうが淀屋だろうがどっちも俺が受け止めるなんて大見得を切ったのに俺は結局どっちかを選ぶ事しか出来なかったんだろうか・・・・?
淀屋にとってどっちが幸せなんだろう・・・・・・?
「・・・・・さん・・・・」
「いとくさん・・・・もう!提督さんってば!!」
阿賀野の声で俺ははっと我に返る
「あ・・ごめん。俺、ぼーっとしてた・・・」
「那珂ちゃん達行っちゃったよ?」
「え・・・ああ・・・そうか・・・」
「それじゃあ阿賀野達も帰らなきゃね。先に帰って提督さんのお化粧落としたりとかしないといけないしその恰好で阿賀野と一緒に帰ってくる所大淀ちゃんに見られるの嫌でしょ?」
「あ、ああ・・・」
「そろそろバス、出ちゃうみたいだよ?2人はお土産買いに行ったみたいだからその間にこのバスに乗って帰ろうよ。お菓子とか買えないのは残念だけど阿賀野達が水族館のお土産持ってたら怪しまれちゃうしね・・・那珂ちゃん達が買ってきてくれるの期待しよっか」
阿賀野は俺の手を引いてバス停に向かい、幸いバスになんとか間に合った
俺はぎこちないながらも股を開かないように膝に力を入れて座席に腰を下ろしていると
「ふぅ〜楽しかったね提督さん!提督さんも可愛かったし。久しぶりに男の子の恰好で息抜きできたし!!」
阿賀野は隣に座って軽く伸びをした。
本当に呑気な奴だ。少し羨ましい気もする
「そうか・・・はぁ・・・・・」
俺は阿賀野みたいに楽しむ事は出来なかった。
たしかに阿賀野と一緒に水族館を回るのは楽しくなかったと言えばウソになる。
でも淀屋が・・・・大淀が那珂ちゃんとどうなったのかが気になってそれどころではなかったからだ。
気分を紛らわす為に阿賀野に2人についでどう思うか聞いてみるか。
「な、なあ・・・阿賀野・・・?」
阿賀野に呼びかけるが
「すぴ〜すぴ〜」
阿賀野は気持ち良さそうに寝息をかいている
「寝るのはええなおい!!」
でも今日はそれだけこいつも楽しんでたって事なんだろうか?
そんな阿賀野を見ていたら俺もなんだか眠くなってきた・・・・
思い返してみれば今日は色々あって疲れたし・・・・それに大淀が本当に那珂ちゃんの事を好きになってしまったかどうかなんて聞いてみるまでわからないし起きてたら悪い方にばかり考えてしまいそうだしどうせ鎮守府までは結構時間かかるんだから鎮守府につくまでちょっと寝てしまおう。
俺はそのままゆっくりと瞼を閉じて眠りについた。
それからどの位経ったのか
「・・・・さん」
誰かが肩を揺らして俺の事を呼んでいる
「お客さん!!」
「んぁ・・・・?」
俺が目を開けると横では相変わらず気持ちよさそうに阿賀野が寝息をかいて寝ていて、バスの車窓から見える景色は鎮守府ではなく街頭がまばらについている見知らぬ夜の町が広がっている。
「お客さん。終点ですよ!」
俺を呼んでいたのはバスの運転手だった。
「え・・・あ・・・・・はい・・・」
とりあえず阿賀野を起こさなきゃ・・・・と思ったがその時横で男装して眠って居る阿賀野を見て今自分が女装している事を思い出し
「す・・・すみません!わたしたち寝過ごしてしまったみたいですわおほほほほ・・・」
と裏声で運転手に話し、寝ている阿賀野に肩を貸してそのまま運賃を払ってバスを降りた。
そして降りた先にあった停留所でしばらく椅子に阿賀野を座らせ
「おい・・・起きろ阿賀野・・・!」
と何度か揺さぶっていると
「んぁ・・・?提督さん?おはよ・・・・」
阿賀野が目を覚ます。
「おはよ・・・じゃねえよ!!」
「あれ・・・?ここどこ?」
阿賀野も自体を軽く悟ったのか辺を見す
「あの・・・・俺達寝過ごしたみたいなんだけどここ・・・どこかわかるか?」
俺は阿賀野に尋ねる。
「う〜ん・・・・どこだろ・・・?バスの終点の駅のはずだけど・・・もしそうなると鎮守府から更に遠くに来ちゃった事になるね。流石に歩いて帰れる距離じゃないね・・・」
阿賀野は少し深刻そうな表情をした。
「そ・・・・それじゃあ高雄さんに・・・・って高雄さんは用事があるとかいってたな・・・・それに仮に大淀が帰ってて迎えに来てもらったとしてもこの恰好の俺達を見たらそのまま置いて帰られそうだし・・・・」
辺は街頭が少しある程度でほぼ暗闇。
それに民家の灯りが点々と灯っているような場所で一晩過ごせそうなところもない。
しかしここは停留所。流石に待ってればバス位はくるだろう。
鎮守府に帰れなくても大きめの街にさえ行ければなんとか・・・
そう考えてバスの時刻表を確認したがそこには7時半のバス以降時刻表にバスの来る時間は書かれていなかった。
「な、なあ阿賀野・・・今何時だ?」
「えーっとね・・・・7時47分・・・」
それってつまり・・・・・
「今日はもうバス来ないってことか!?」
田舎を舐めていた。
バスなんて一時間に少なくとも一本くらいは毎時間通るものだって思ってたけどそうはいかないみたいだ。
「ってことは俺女装したままこの辺で一晩過ごさなきゃいけねぇの!?」
「そういうことになる・・・かな・・・・あはは・・・」
阿賀野は気まずそうに笑った。
早く帰って大淀に那珂ちゃんの事聞かなきゃいけないのに・・・
よりによって帰れなくなった上にこんな格好で阿賀野と一夜を過ごさなきゃならないなんて俺は一体どうすれば・・・
俺はただただ焦りと不安に駆られていた。