ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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はじめての×××××(前編)

 なんてこった!

バスで寝過ごしてしまったせいで俺と阿賀野はどこだかわからないバス停で降ろされてしまった。

それに俺は今女装したままだ。流石にこのまま一夜を過ごすのは落ち着かないし恥ずかしいし大淀の事も気になるからいち早く帰りたいんだけどこんな靴で鎮守府まで歩いて帰る訳にもいかないし道路はあるものの交通量はまばらでタクシーなんかも見当たらないし仮にタクシーを拾えたとしても鎮守府まで帰れる分のタクシー代も持ち合わせていないし、周りも民家がぽつぽつとあるだけで一夜を過ごせそうな場所も無い。

一体どうすりゃ良いんだ・・・?解決策を必死に考えていると

「ねえねえ提督さん。野宿なんてワクワクするね!!」

阿賀野は呑気に話しかけてくる。

「わくわくしねぇよ!」

「え〜そうかなぁ・・・?」

阿賀野は首をかしげた。全く・・・こっちはどうやったら帰れるか考えてるってのに

背に腹は代えられない。鎮守府に電話して高雄さんに迎えにきてもらおう。

用事があると言っても提督の一大事だ。夜遅くにでも迎えにきてくれるだろう。

俺は携帯を取り出すとそこには鎮守府や大淀から大量の着信履歴が残っているし昨日充電をしなかったからか充電も残り少ない。

こりゃいけない・・・早くしないと・・・俺は急いで鎮守府に電話をかける。

頼む高雄さん・・・鎮守府に帰ってきててくれ・・・!

そう祈りながら高雄さんが電話に出るのを待ったが電話に出たのは高雄さんではなかった。

『は〜い。こちら××鎮守府で〜す』

「あれ?愛宕さん?」

『あら?提督じゃない。どこほっつき歩いてるの?もう大淀ちゃん達も帰ってきてるわよ?』

「え、ああ・・・・ちょっとかくかくしかじかで・・・・出来れば着替えを持って迎えにきて欲しいんですけど・・・」

俺は現状を報告した。

『あらあら大変。でもごめんなさい。私免許持ってないの』

「え!?」

『あら?言ってなかったかしら。私調理師免許は持ってるけど運転免許は持ってないのよ〜』

そう言えば愛宕さんが車を運転している所を見た事が無い。

「ええ!?ところで高雄さんは?」

『高雄ならお母様に会うって出掛けて行ったわ。今日は帰ってこないんですって。だから今日は私が当直代わったの。はぁ・・・めんどくせぇ・・・』

最後に小声でめんどくせぇって言ったなこの人!

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

俺は唯一の頼みの綱だった高雄さんが居ない事に落胆し思わず声を上げてしまう。

用事ってそう言う事だったのか・・・・

「じゃあ俺帰れないって事ですか?」

『別に高雄じゃなくても大淀ちゃんに頼めば良いじゃない』

「いや・・・流石にこんな格好あいつに見られたらどうなることか・・・・なにより阿賀野も居てそれに阿賀野は男装してるんですよ?言い訳考えるまでもなく殺されますよ・・・」

そうだ。俺が女装して男装した阿賀野と出掛けてたなんて知ったら軽蔑されるに違いない。

それこそ俺の事なんか見限って那珂ちゃんとくっついてしまうかもしれない

『ええ〜折角だし見てもらえばいいじゃない』

俺の不安とは裏腹に愛宕さんはそう言うが絶対にそれだけは避けなければならない。

「絶対嫌です!」

『あらそう残念』

残念じゃねぇよ・・・畜生・・・これじゃ帰れないじゃないか

そうだ。せめて帰れないなら吹雪を心配させる訳にはいかないし吹雪には先に今日は帰れなさそうな事を伝えておこう。

「愛宕さん。わかりました。今日はこっちでなんとかします。それより吹雪に心配かけたくないんで代わってもらえませんか?」

『ええ。良いわよ。ちょっと待っててね』

電話から保留音が流れ、それからしばらくしてその音が止まる。

『あなた!今どこで何してんの!?』

電話に出たのは吹雪ではなく天津風だった。

それにめちゃくちゃ怒ってるぞ?

『わ・・・ちょ・・・天津風ちゃん・・・・そんなキツく言わないであげて』

そんな天津風の声とは別に小さく吹雪の声も聞こえる。

どうやら天津風と一緒に居る様だ。

『いいの。あのバカにはこれくらい言ってやらなきゃ!それであなた!今どこに居るのよ!?またあた・・・・吹雪に心配かけるつもり!?』

天津風はすごい剣幕で怒鳴りつけてくる。

確かにこの間も出て行ってしまった時天津風も相当俺の事を心配してくれてたみたいだしそれからあまり日も経ってないのに同じような事をしたんだから怒られても仕方ないか・・・

でもちょうど良かった。この間俺が居なかった時天津風は吹雪を泊めてくれたって言ってたな。

「え、ああ・・・ごめん。ちょっと色々あって今日は帰れなくなった。大淀達にも伝えといてくれ」

『はぁ?またなの!?あんた提督でしょ?それが急に帰れなくなった!?何考えてんのよ?』

「だからごめんって・・・・俺も予想外だったんだよ。すまん天津風。お前に頼みたい事があるんだ」

『こんな時に何言ってんのよ!?そんなの聞く訳・・・・』

「お前にしか頼めないんだよ頼む・・・!」

『しょ・・・しょうがないわね。何?』

「今夜また吹雪をお前の部屋に泊めてやってほしいんだ。この間も世話になったみたいだしそれで吹雪の気が少しでも紛れるなら・・・」

『わ・・・わかったわ。そうしてあげる。でも吹雪にはあなたの口で伝えなさい。それにしっかり謝るのよ?それじゃあ吹雪に代わるわ』

「あ、ああ・・・・ありがとう。心配かけてごめんな」

『べっ・・・・別に私は心配なんかしてないわよ!!それじゃあ代わるわ!』

天津風がそう言って間もなく

『あ・・・もしもしお兄ちゃん?』

吹雪の声が聞こえた。

そんな吹雪のどこか声色は暗い印象を受ける。やっぱり心配かけてたのかな・・・

俺の中の罪悪感が大きさを増す。

「ああ吹雪・・・・ごめんないつも心配かけちまって・・・・天津風にも言ってあるけど今夜俺帰れなくなっちゃったんだ」

「え・・・・お兄ちゃん大丈夫なの!?また怪我とかしてない?」

吹雪は泣きそうな声で尋ねてくる。

「いや。今回は大丈夫だから心配しないでくれ。それでな、今夜はまた天津風の部屋に泊まってくれないか?」

『う、うん。わかったよお兄ちゃん・・・・でも・・・・』

「ん?何だ吹雪」

『できるだけ早く帰ってきてね。そうじゃないと私・・・』

「ああ。わかったよ。今夜は寂しい思いをさせるけど許してくれ・・・」

「うん・・・それじゃあお兄ちゃん・・・・私のお願いも聞いてくれる?」

吹雪が少し遠慮がちに言った。

お願いってなんだろう。これだけ心配かけたんだし聞いてやらないとな。

「ああ。できることならなんでも言ってくれ」

『ありがとうお兄ちゃん!それじゃあね・・・?明日お兄ちゃんが帰ってきたらいつもより甘えてもいい?』

吹雪の声色が少し明るくなった。よかった。そんな事位お易いご用だ。

「ああ。もちろん!それじゃあまた愛宕さんに代わってくれるか?」

『うん!それじゃあ私待ってるからね!』

吹雪の声が聞こえなくなり、また愛宕さんの声がする。

『はぁ〜い代わったわよ。それにしても提督、天津風ちゃんに懐かれたのね。一時はどうなるかと思ってたけど安心したわ』

『べ・・・べつにあんな奴の事どうも思ってないわよ!!愛宕さんあんまり変な事言わないでください!!』

愛宕さんの後ろの方でそんな天津風の声が聞こえた。きっと顔真っ赤にしてるんだろうな。

そんな事を考えると自然に口角が上がった。

『あらあら元気ねぇ〜可愛い♡それじゃあ天津風ちゃん。吹雪ちゃんをよろしくね』

『わ・・・わかりました。それじゃあ吹雪、いくわよ。』

『あ、待ってよ天津風ちゃん!』

そんな電話越しに聞こえる声に俺は少し落ち着きを取り戻す。

『天津風ちゃん達出て行ったわ。それとこの事は大淀ちゃんたちにはナイショにしといてあげる。それに阿賀野は任務で出張中って事にしてあるから一緒に居るとは思われないはずよ。でもあの子もとっても心配してたから提督から電話してあげたらどうかしら?』

「はい。そのつもりです」

『よろしい。それじゃあ高雄が帰って来次第迎えに行く様に伝えておくわ』

「ありがとうございます」

『いいのいいの!こっちの事は私に任せて!なんたってここの元提督なんだから!よっぽどの事が無い限り大丈夫よ。だから安心して♡』

「は・・・はい。そうでしたね・・・・」

さっきめんどくせぇって言ってたのはどこのどいつだよ・・・でもそんな事言いながら番を任せられるって事はしっかり仕事はしてくれているのだろう。

『それじゃあ気をつけて頑張ってくださいね提督』

「は、はい・・・なんとかします・・・」

俺がそう言うと電話が切れた。

はぁ・・・・野宿確定かぁ・・・

俺は肩を落とした。

「提督さん提督さん!!愛宕なんて言ってた!?それに提督さんかっこいい事言うじゃん・・・阿賀野見直しちゃったな。本当に吹雪ちゃんのお兄ちゃんみたい」

阿賀野が急に褒めてくる。

「お・・・おうありがとう・・・高雄さんは帰ってこないし免許持ってないしで迎えに来れないってさ・・・」

「そんなぁ〜・・・でもそれはそれで楽しそうだし提督さんと2人っきりだし♪」

そんな呑気な事を言う阿賀野にいい加減カチンと来てしまい

「お前なぁ!いい加減にしろよ!元はと言えばお前が言い出したんだぞ!!」

やり場の無い怒りの矛先を阿賀野に向けた。

「そ・・・それは・・・」

「俺の事馬鹿にするのもいい加減にしてくれ!!」

「そ・・・そんなつもりじゃ・・・・ごめんなさい・・・」

「ごめんじゃねーよ!それならもうちょいマシに今夜を過ごせる方法でも考えろよ!!」

「う・・・うん・・・そうだよね・・・・」

阿賀野は少し申し訳無さそうにそう言った。

それからしばらく無言が続く

気まずいな・・・・あんな事言わなきゃ良かった

俺が後悔していると

「あっ!」

阿賀野がなにやら声を上げる

「どうした阿賀野?なんか思いついたのか?」

「思いついては無いけど・・・あれ見て!!」

阿賀野が指を指した方向になにやら薄ぼんやりと建物と灯りような物が見えた。

「あそこにいけばなんとかなるかも!」

阿賀野は得意げに言う

「そうなのか・・・?」

「うん!多分大丈夫だから阿賀野を信じて!」

阿賀野は胸を張った。

正直なんでこんなに自信たっぷりなのかもわからないがここまで来れば野宿するよりはマシだろう。

「わかった。お前がそこまで言うなら」

「じゃあ提督さん。その靴じゃ歩きにくいでしょ?阿賀野の靴と交換しよ?」

「でもサイズ合わないんじゃないか?」

「大丈夫。阿賀野は艦娘として鍛えたバランス感覚があるからぶかぶかなヒールでもなんとかなるよ!それに阿賀野の靴は小さいと思うけどスリッパみたいにして履いてくれたらいいから履いて」

阿賀野はそう言って靴を脱ぎ渡してきた。

「ああ。ありがとう」

俺は履いていたヒールを脱ぎ、阿賀野の履いていたスニーカーを受け取って履いてみる。

やはり少し俺の足には小さいいので阿賀野の言う通り後ろの部分を踏み、スリッパの用にして履いた。

それを見た阿賀野は俺の履いていたヒールを履いたががやはりぶかぶかだ。

「阿賀野、お前本当に大丈夫なのか?」

「うん!大丈夫・・・おっとっと・・・!」

阿賀野は少しフラ付く

「おいおい大丈夫なのかよ?」

「これくないなんてことないよ!ほら!行こ・・・!うわっ!」

阿賀野はバランスを崩したので受け止める。

「ご・・・ごめんなさい提督さん・・・でもちょっとバランス崩しただけで大丈夫だから・・・」

阿賀野はそう言いながらよろよろと体制を立て直したがやはりどこか危なっかしい。

ヒールを履いてみてわかったがこんなバランスの悪い靴でしかもサイズが合ってないとなると歩くのは大変だろう。

「ほら言わんこっちゃない・・・しょうがねぇな・・・ほら。背中貸してやるよ」

俺は阿賀野に背中を差し出した。

「おんぶしてくれるの?」

「ああ。今日はなんだか阿賀野に女みたいに扱われてばっかだったしちょっとくらいは男らしいところも見せとかなきゃって思ってな」

「提督さん・・・・それじゃあお言葉に甘えて・・・・よいしょっと」

阿賀野が俺の背中に負ぶさってきた。やっぱりちょっと重い・・・

でも以前のように背中に柔らかい感触は余り伝わってこない。サラシか何かを巻いているんだろうか?

でも腕に当たった阿賀野の尻は少し柔らかかった。

って何考えてるんだ俺・・・

「お前また重くなったんじゃないか?」

照れ隠しに阿賀野にそう言ってやった。

「もー提督さん!女の子にそう言う事言わないの!!」

「お前は男だろうが!それに今は男の格好もしてるんだからノーカンだ。女の子ぶるの禁止な」

「ええ〜そんなぁ・・・」

「じゃあいくぞ」

俺は阿賀野を背負ってその光の方へ向かって歩きはじめた。

「提督さん」

「ん?なんだ?」

「提督さんの背中・・・やっぱり安心するよ。前と違ってちょっとウイッグが顔に当たって邪魔だけど」

「これ被せたのお前だろ!?」

「ごめんごめん!でもなんだか安心するなぁ・・・私、提督さんにおんぶされるの好き」

阿賀野はそう言って肩に顔を乗せてきた。

いきなり何するんだこいつは・・・・!?

「ばっ・・・バカ!急に何言い出すんだよ!?」

「あはっ!提督さんほんとウブなんだからぁ。でも提督さんのそう言う所私は大好きだからね」

「だだだだだ大好きってお前・・・・俺にはあいつが・・・・」

やばい・・・急な事で口を滑らしてしまった。

「ん〜?あいつって誰かな〜?」

「いや!!なんでも無い!なんでもない・・・ぞ!」

「も〜提督さん本当に噓下手なんだからぁ 大淀ちゃんでしょ?」

「えっ!?」

バレてる!?

「そんな驚かなくても今日の提督さん見てたらバレバレだよぉ〜」

「そ・・・そうか・・・」

「あれだけ男なんか興味ないって言ってたのにね〜」

「う・・・それは・・・」

痛い所を付かれた・・・・確かにあいつは・・・淀屋は男で俺の大事な親友で・・・・

でも今はそれだけじゃなくて・・・

ああもう!なんて言ったら良いんだよ!!

「ううん。言わなくていいよ。提督さん正直だからきっと噓じゃないし大淀ちゃんの事大事に思ってるってわかるもん」

「あ、ああ・・・」

「でもちょっと寂しいな〜阿賀野も提督さんの事・・・」

「えっ・・・!?」

「やっぱりなんでも無いっ!でも最近私思うんだ・・・」

「何を?」

「私がもし艦娘にならなかったら・・・もっと他の道を選んでたら・・・男の子として生きていたら友達と一緒に笑ったり泣いたりできたんじゃないかな〜って・・・私、こんなになっちゃったから友達と以前と同じ付き合いもできないし・・・第一連絡なんかずっと取ってないし・・・別に今更男の子に戻りたいなんて思わないんだけどなんだか提督さんと大淀ちゃん見てたら中の良いお友達にも見えちゃって・・・ちょっと羨ましいなって」

阿賀野の声は少し震えていて、寂しさが滲み出していた。

しかし俺と淀屋の事そこまでお見通しって事なのか・・・相変わらず阿賀野の感の鋭さには驚かされる。

でも阿賀野のもし阿賀野が艦娘になっていなかったら・・・?という言葉を聞いた俺もどこか寂しくなってきた。

阿賀野が艦娘じゃ無かったら俺は阿賀野と会う事も無かっただろう。

いつもどこかぼんやりとしててものぐさでだらしなくていつも俺の事をからかってくるけど・・・

でも優しくて思いやりがあって・・・

阿賀野はあの鎮守府に無くてはならない存在だ。

それだけは伝えなければ

「阿賀野・・・」

「なぁに?提督さん」

「お前が艦娘にならなかったらって言ったよな・・・」

「うん」

「お前が艦娘にならなかったら俺はお前に会えなかっただろ?」

「そう・・・だね」

「だからさ・・・そんな事考えないでくれよ・・・すくなくとも俺は阿賀野に会えてこうやって同じ鎮守府に居られて今こうやって話が出来る事悪くないって思ってるんだけど」

「え・・・・うん・・・私も・・・・そう・・だよ。ありがと提督さん」

「それに・・・もう男友達とは付き合えないって言ってたけど・・・・俺じゃダメかな?」

「えっ?」

「いや・・・その・・・俺達もう友達みたいなものじゃないかな・・・?俺提督だけど全然威厳も無いしさ・・・それにお前も俺の事ずっとからかってくるし・・・」

そうだ。思い返してみればいつも阿賀野にからかわれてそれで怒って一緒に笑って・・・・もうずっと前から俺は阿賀野とそんな関係だったのかもしれない。

「友達・・・・そう・・・かもね・・・私、提督さんとお友達になりたかったのかも・・・気兼ねなく話せるお友達に・・・」

「そうか。それなら俺は大歓迎だぞ?」

「うん・・・・!ありがとう提督さん!私決めた!」

「ん?何をだ?」

「まずはお友達からって事だよね!!」

うんうん・・・・・は?

「えっ・・・?それはどういう・・・」

「提督さん大淀ちゃんともお友達なんでしょ?だーかーらーまずはお友達付き合いから初めて・・・・って言ってくれようとしたんだよね?」

「はぁ!?」

予想外の言葉に俺は耳を疑った。

「だーかーらーこれからもお友達として・・・・艦娘として提督さんの側から離れてあげないんだから!こ不束者だけどこれからも私の・・・阿賀野の事よろしくね♡」

「えええええええええええええ」

どうやら思わぬ誤解をさせてしまった様だ。

こいつポジティブなんだかネガティブなんだかわからねぇよ・・・

はあ・・・先が思いやられる・・・

でもこう言う所那珂ちゃんに似てる気がする。2人が仲がいいのも頷けるかもしれないし阿賀野が元気になってくれたんなら今はそれで良いかな・・・

それから十数分ほど歩いていくに連れてその光はどんどん大きくなって行き、更にしばらくしてその光を放つ建物の正体がはっきりとしてきた。

なんだあの何も無い道路沿いに不自然に存在感を放つド派手な光る城みたいな建物・・・・あれ・・・?これってもしかして・・・・

「な・・・・なあ阿賀野・・・あれって・・・」

俺は恐る恐る阿賀野に尋ねる

「ラブホテルだよ♪」

やっぱりかよ!!しかもこんな堂々と答えるって事は最初から知ってたなコイツ!!

「お前わかってたな!!」

「だってぇ〜言ったら提督さん嫌がると思って〜」

くそぉ!!まんまと嵌められた!

「いやだ!こんな所で男と寝るくらいならさっきの停留所で女装したまま寝てた方がマシだ!!」

「も〜ここまで来たんだからそんな事言わないの!どうせ提督さん入った事無いでしょ?社会勉強だよ!阿賀野がお金出してあげるから!!」

お金がどうとかの問題ではない・・・!

第一そんな俺と阿賀野はそんなラブホで一緒に寝泊まりするような間柄じゃ・・・・

「余計なお世話だ!第一なんで男と2人っきりでラブホなんか行かなきゃいけないんだよ!」

「ええ〜今提督さん女の子の格好してるしいいじゃない!さっき提督さんも女の子ぶるの禁止っていったしぃ〜今の阿賀野が男の子なら提督さんは女の子って事で」

「そんな理屈で騙されるか!」

「む〜折角ラブホテルにタダで泊れるんだからいーじゃん」

「タダでも嫌なもんは嫌だ!!」

「別に何もしないんだし野宿よりは良いじゃないのー」

たしかに阿賀野の言う通りだがそう言う事ではなくやっぱりこういう所に2人で入るってことはその・・・

「確かに野宿よりはマシだけどさぁ・・・・なんと言うか抵抗が・・・それにこう言う所はカップルとかが一緒に寝泊まりする所で・・・・その・・・俺にそう言うのはまだ早いっていうか・・・その・・・段階を踏んでからと言うか・・・」

何言ってんだ俺・・・

目の前にそびえるド派手な建物を前にして自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。

「考え過ぎだよ提督さん。何もしなかったらただのホテルだよ!それに提督さんと阿賀野の仲じゃないの♡」

「う・・・・」

「ん〜?やっぱり阿賀野とえっちな事出来るんじゃないかって期待してるのかな〜?」

阿賀野とエッチな・・・事・・・・!?

「はぁ!?そ・・・そんな事考える訳ねーだろ!!」

「本当ぉ〜?もしかして阿賀野の事そういう目で見てたの?さっきはお友達とか言ってたのに・・・提督さんのエッチ♡」

「ちげーよ!断じて無い!!」

「じゃあ何?女の子として俺に抱かれたいの?」

阿賀野はまた声色を変えて囁いてくる。

やっぱりなんだかドキッとしてしまう。

「だから急にそういうのやめろって言っただろ!!」

「え〜だって〜提督さんが女の子ぶるの禁止って言ったんじゃない!別に提督さんがその気なら阿賀野はどっちでも良いよ?提督さんは阿賀野にどうされたいのかな〜?」

「だからそんな気なんて無いっての!!どうもされたくねーから!!」

「ちぇ〜提督さんのイジワル〜でも野宿なんかよりは断然マシだと思うよ?それにわざわざここまで歩いてきたのにまたバス停まで引き返すの?」

強がりで停留所で野宿した方がマシだとは言ったがこんな格好だと落ち着かないしどう考えてもベッドで寝られるのならそれに越した事は無い。

でもやっぱりラブホテルって好きな女の子と一緒に行く物じゃないですか・・・・?

いや・・・別に阿賀野が嫌いな訳ではないけどラブホテルにいくような間柄じゃないし・・・・・第一阿賀野は男で・・・

それにそんな事もし大淀にバレたら・・・・・

そうだ!大淀に電話しなきゃいけないんだ!

しかしこんな阿賀野を負ぶさっていては電話もできないしもう充電も残り少ない。どこかで充電をしないと途中で電源が切れてしまうかも知れないからどこかで充電をしたい訳だけどラブホテルって充電できんのかな・・・?

しかしラブホテルか・・・・もし大淀に行こうって言ったらどんな顔するだろう?

やっぱり殴られるかな・・・

俺がそんな事を考えていると

「ん〜?何考えてるのかな〜?やっぱり阿賀野にナニしたいのか考えてる?」

と阿賀野が話しかけてくる

「バッ・・・・ちげえよ!な、なんも考えてねぇよ!!」

「ほんとかなぁ?別に阿賀野はいつでもオッケーだよ?それに極力普通めの部屋選んであげるからあんまり緊張しなくていいよ」

「普通め!?それに部屋選ぶってなんだよ!?」

ラブホテルに言った事に無い俺にはさっぱりわからない。

「まあまあついてからのお楽しみって事で!さあ!もうちょっとで目的地だよ提督さん!」

こいつ・・・おんぶされてるからって良い気になりやがって・・・それにこのままじゃ本当にラブホで一泊する事に・・・・

しかしもう今日一日色々な事がありすぎてこれ以上反論する元気も無くなってきた。

「なあ・・・ほんとに泊るのか?」

「うん!だってこんな可愛いレディーを野宿させる訳にはいかないだろ?」

そう言って阿賀野が俺の頬を撫でてきた。俺の背筋がゾワッとする。

「ひぅっ!?」

「あはははは〜提督さんかーわーいーいー」

「お前なぁ!」

「大丈夫だよ提督さん。提督さんが望まない限りは何もしないって!ただ一緒のベッドで寝るだけだから」

阿賀野と同じベッドで寝るだけ・・・・それでも俺には刺激が強過ぎるような気がするんだけどなぁ・・・

「はい!早く歩くっ!」

阿賀野は俺の肩をバンバンと叩いてくる。

「痛え!わかった・・・・わかったよ・・・!」

「それじゃあ微速前進!ヨーソロー!!」

阿賀野はラブホテルにむけてびしっと指をさした。

調子の良い奴だなぁほんとに・・・・

今からまたこの道を引き返すのもしんどいし疲れきった俺は仕方なくラブホテルへと足を進めた。

なんだか緊張するなぁ・・・・別になにもしないはずなのに

 

そしてやっとの事で俺達はラブホテルの入り口にたどり着く

看板にはホテル得玖洲詩亞と描かれている。なんて読むんだこれ・・・?

そんな看板と睨めっこをしながらひとまず阿賀野を背中から降ろす。

「ありがと提督さん。それじゃあ靴返すね。流石に男の子の格好してるのにヒールって変だし」

「あ、ああ」

俺達は入り口で再びお互いの靴を履き直した

「うわっとっと・・・・」

ヒールの高さでまたバランスを崩してしまう。

やっぱりこの靴歩き辛いな・・・

「大丈夫提督さん?また支えてあげよっか?」

「え・・・ああ。頼む・・・」

「それじゃあプリンセスお手をどうぞ」

「え・・・いや・・・その・・・」

阿賀野は今朝の様にまたそう言って膝を付き俺に手を差し伸べてきた。

あの時は部屋の中だったが今はそんな阿賀野の後ろに大きな城の用な建物があることも相まってなんだか本当にお姫様にでもなったような錯覚に陥る。

なんで俺・・・こんな気分になってんだ・・・・?

「どうしたの提督さん?急にしおらしくなっちゃって」

「な・・・なんでもない!!俺は男だ!男に二言は無いからとっとと入るぞ!!」

俺はヤケクソになり阿賀野の手を取った。

「うん!じゃあ行こっか!プリンセス?」

阿賀野はそう言うと俺の手を引きラブホテルに足を進める

「プリンセスじゃねぇって・・・っておいそんな引っ張るなってうわぁ!!」

ヒールでバランスを取るのに精一杯なのをいいことに阿賀野は俺をぐいぐいと引っ張ってくる。

もうここまで来てしまったら逃げることもできないしどうしようもない。

ああ・・・

まさか人生初のラブホテルに女装して男と一緒に入る事になるなんて・・・・

でもなんだろう?この胸の変な感じ

やっぱり俺・・・男装した阿賀野にドキドキしてる・・・のか?

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