ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
俺はとうとう阿賀野に手を引かれ人生初のラブホテルへ足を踏み入れてしまった。
一歩一歩歩く毎に心拍数が上がっていく気がする。
なんでだ・・・!?
なんでただ入るだけなのにこんな緊張してるんだ俺・・・・
まるで初めてレンタルビデオ屋のアダルトコーナーに入った時みたいな・・・いやそれ以上だ!
落ち着け俺・・・相手は男なんだぞ・・・?
いや、男なのを意識したらなんか逆に恥ずかしいような気も・・・・
「どうしたの提督さん?緊張してる?」
急に阿賀野に囁かれた。
「ふぅわぁ!き・・・緊張って・・・そりゃこんな所入った事無いし・・・」
急に話しかけられて俺は変な声を上げてしまう。
なんでだよ・・・・別にどうって事無いはずなのになんでこんなに緊張してるんだ俺・・・
「提督さんの初めて貰っちゃったね。ふふっ!それじゃあ阿賀野についてきて!」
阿賀野は嬉しそうに微笑んで俺の手を引く。
「うわぁちょっ・・・!」
ホテルの中を進むんでいくと、なにやら光るパネルがあり、その前で阿賀野は足を止めた。
「どの部屋が良い?」
阿賀野に尋ねられパネルを見ると様々な種類の部屋の写真がパネルには表示されている。
それに聞かれてもどれが良いのかわからないし・・・
「え・・・・一番普通の奴で・・・」
「わかった。じゃあここでいい?」
阿賀野はそう言うと慣れた手つきでパネルについていたボタンを押した。
「じゃあ行こっか」
また阿賀野に手を引かれフロントに連れていかれる
「提督さんは阿賀野の隣で見ててくれたら良いからね」
阿賀野はそう言うとフロントで手慣れた様子で手続きを済ませ、部屋の番号の書いた鍵を受け取った。
阿賀野・・・こう言う所来慣れてるのかな・・・
そんな事を考えているうちに鍵と同じ番号の書かれた部屋の前に到着する
「ここだね。それじゃあここはレディーファーストで!さあどうぞ」
阿賀野はそう言うと戸を開け、俺を部屋に通そうとする。
「だから俺はレディーじゃないっての!」
「え〜いいじゃない〜こう言うときはムードが大事なんだから」
「ムードもクソもあるか!!」
「つれないなぁ提督さんは・・・それじゃあ一緒に入ろっ!」
阿賀野はそう言って俺を部屋に引き入れた。
「うわっちょっ・・・」
その部屋は大きなシングルベッドとソファーが置かれている全体的に静かな雰囲気の部屋だった。
「あれ・・・?結構普通だな」
「でしょ?別に普通のホテルだって言われても変じゃないくらいのお部屋もあるんだよ」
「そ・・・そうだったのか・・・もっとSMの用具とかが置いてたりベッドが回ったりするのかと・・・でもよかった。これなら寝れそうだ」
想像の何倍も普通のホテルといった内装で俺はひとまず胸を撫で下ろした。
「確かにそんな部屋もあるけどそれが全てじゃないよエッチな本の読み過ぎなんじゃない?」
阿賀野はにまにまとこちらを見つめてくる
「エロ漫画読んで悪いかよ!俺は健全な男子なんだから当然だろ!!」
「えへへ〜そうだよね〜提督さんは健全な男子だもんね〜まあ阿賀野も昔は結構読んでたんだけど」
「し・・・知ったこっちゃねぇよそんな事・・・・」
そう虚勢を張ってみるが今夜は阿賀野とこの部屋で2人っきりなのか・・・・少々落ち着かないがずっと阿賀野を背負って歩いてきたのでもう限界だしすこしはくつろがせてもらおう。
俺はひとまずコンセントを探し、携帯電話と充電器を取り出して接続してから煩わしいヒールを脱ぎ捨てソファーに腰掛けた。
「ふう・・・疲れた」
やっとゆっくりと腰を下ろせたからか一気に力が抜け俺は大きく息を吐く。
それを見た阿賀野が俺の隣に座ってきた
「横・・・良いかな?」
「え!?ああうん」
顔・・・近いっ・・・・!
なんでだよ・・・今隣に座ってるのは何の変哲も無い男のはずなのに・・・
でも男装してても可愛いと言うか・・・肌も綺麗だし・・・・
いやいやいや何考えてんだ俺!?阿賀野は男なんだぞ!?
それにいつもみたいに女装してるわけでもないただの男・・・
「ん?どうしたの提督さん?阿賀野の顔に何か付いてる?」
「えっ!?いや・・・・なんでもない・・・なんでもないぞ!」
「そう?ならいいけど」
阿賀野はそう言ってニッコリと笑う。
なんて爽やかな笑顔なんだ・・・本当に男らしい屈託の無い笑顔だ。
前もちょっと思ったけどほんとにかっこいいよな・・・・
ちょっと待て!俺・・・もしかして女装のし過ぎで変になっちゃったのか?こんな・・・男の阿賀野にときめくなんて・・・・
いやいや!それは絶対ない・・・!
ただ疲れてるだけだ・・・多分
自分にそう言い聞かせていると
「ねえ、提督さん」
突然阿賀野が話しかけてくる
「はっ、はいぃ!?」
急な事で声が裏返ってしまう
「もう!提督さんったらそんな緊張しなくたって良いじゃないの!」
「そ・・・そうだよな・・・・ははは・・・」
「ありがとね提督さん。ここまでおんぶしてくれて・・・十分男の子らしいと思うよ」
阿賀野はすこししおらしい声でそう言った。
「え・・・!?ああ。うん・・・」
「今はこんなに可愛いのにね」
阿賀野はソファーの向かい側に置かれていた鏡を指差した
そこには黒い髪を後ろで束ねた青年とブロンドヘアの女性が映っている。
やっぱり今の俺の姿はなんだか自分じゃないみたいで落ち着かないし恥ずかしい・・・
それに俺こんなに顔真っ赤にしてたなんて・・・・
「う・・・」
「大丈夫だって提督さん。最初は戸惑うかもしれないけど慣れれば女の子の格好も楽しいよ?」
慣れれば・・・?そんな・・・慣れるなんて・・・でもこの格好で可愛いって言われて嬉しかった俺が居る・・・・
ダメだ!これ以上深みにはまってしまったら絶対戻れなくなる!
「慣れたくない!!もういい!!!俺これ脱ぐ!」
俺はソファーから立ち上がろうとするが
「待ってよ提督さん!もうちょっとそのままで居てよ〜」
阿賀野は袖を掴んで止めてくる
「やだよ!だって俺は男で・・・そんな可愛いなんて言われても全然・・・・嬉しくないし・・・」
「本当かなぁ?まんざらでも無さそうだったけどね〜」
「うるせぇ!それじゃあ俺着替えるから!!」
俺は阿賀野の手を振りほどいてソファーから立ち上がり、ベッドの上にルームウェアが置かれていたので俺はそれを取りに向かう
「え〜ノリ悪いなぁ提督さん・・・折角そんなに似合ってるのに〜」
「悪くない・・・!それに似合って・・・ない!!別に俺女装趣味でもなんでも無いんだからな!」
口ではそう言ってみた物のなんだかこれを脱ぐのは少し寂しい気もしてしまう。
寂しい・・・?きっと気のせいだ・・・!気のせいに決まってる。
俺はまた自分にそう言い聞かせ服を脱ごうとするが
「んっ・・・?あれ?」
この服どうやって脱ぐんだ?そのまま脱ぐ訳にもいかなそうだし前にボタンやチャックも見当たらない。
ほぼ高雄さん達に無理矢理着せられたしどうやって着たかなんて思い出せない。
流石にこの格好で寝るのも嫌だし・・・
仕方ないいか・・・
「あ・・・あのさ・・・・阿賀野・・・」
「ん〜?どうしたのかな〜提督さん?阿賀野とえっちな事したいの?」
「ちげーよ!あのさ・・・・服の脱ぎ方がわかんなくてさ・・・」
「しょうがないなぁ提督さんは・・・ほらこっち来て?脱がせてあげるから」
阿賀野は手招きをしてくる
「え・・・ああ」
俺は阿賀野の居るソファーの方へまた戻る
「それじゃあ阿賀野が脱がしてあげるね」
「お・・・おう・・・お願いします・・・・」
「それじゃあいくよー」
阿賀野はそう言うと俺の背中に手を触れた。
その時、別に静電気が走った訳でもなんでも無いのに身体がビクリと震えた
「んひっ・・・!」
心拍数が徐々に上がって行く
な・・・なんでだよ・・・!?
阿賀野に触られただけなのに・・・
「ん〜提督さん?どうしたのそんな変な声出しちゃって?」
阿賀野も俺の異変に気付いたのかそう尋ねてくる。
「いっ・・・いや・・・・なんでも無いぞ」
なんで服脱がしてもらうだけなのにこんなに恥ずかしがってるんだ俺・・・
「そうかなぁ・・・?」
阿賀野はそう言うと俺の背中を優しく撫でてきた
「んぁっ・・・・・・」
まただ!また変な息が漏れた・・・・!
「ほらやっぱり!提督さん、阿賀野に服脱がされるのドキドキしてるんでしょ?」
「ち・・・違う・・・」
「ほら鏡見てみて。今の提督さんすっごく可愛い」
阿賀野はそう言ってまた俺の背中を優しく撫でた
「ひぅっ・・・・・」
「ほ〜ら・・・俺に背中撫でられただけでこんなに顔真っ赤にしちゃって・・・今の提督さん本当に女の子みたい」
阿賀野今また俺って・・・・
それに俺は女じゃない!
それなのになんでこんなドキドキしてるんだよ!!
「ち・・・ちが・・・・俺は・・・」
「何が違うのかなぁ?今の提督さん本当に女の子みたいだよ?」
阿賀野はそう耳元で少し低い声で囁いてくる。
阿賀野にささやかれるたび否定したい気持ちとはまた違った感情が胸から湧き上がってくる。
女の子みたい・・・・?俺が?
ふと鏡に目をやると顔を真っ赤にして青年に身体を触られている少女の姿がある。
いや・・・女なんかじゃないのに・・・俺なのに・・・・こんな服、すぐにでも脱ぎたいはずなのにっ・・・・!
「それじゃあ脱がすね〜まずは手袋から外しちゃおっか」
阿賀野は手袋をするりと脱がせる。
「うわぁっ!」
なんで手袋脱がされただけなのにこんなにドキドキしてるんだよ俺・・・!!
「それじゃあ服も脱いじゃおうね」
阿賀野はそう言うと服の背面にあったボタンを外し、チャックをゆっくりと下ろし始めた。
俺・・・阿賀野に服脱がされちゃってる・・・・なんでだ?俺がお願いしたはずなのになんで脱がされたくないって思ってるんだ・・・?
別に今までは何ともなかったのに・・・
俺がそう考えて居る間にも阿賀野はねっとりと俺の服を脱がせていく
こんな服早く脱ぎたいはずなのに阿賀野に脱がされているからか凄く恥ずかしい。
「や・・・やめ・・・・・・」
気付くと俺はそんなか細い声を出していた
「ん?どうしたの提督さん?」
「も・・・もう・・・ここまで脱げたら後は自分で出来るから・・・」
俺は阿賀野を振りほどいてソファーから降りようとするが阿賀野がすかさず腕を掴んで押さえつけてくる。
「だーめ。折角ここまでやったんだから最期までやらせてよ〜それとも俺に服脱がされるのそんな恥ずかしいの?」
「だから俺って言うのやめろってば・・・!それにそんなんじゃない!!うわっ!」
俺は阿賀野から逃げようとしてバランスを崩してソファーに倒れ込んでしまった
「いててて・・・・・」
身体を起こそうと目を開くと俺の目の前には阿賀野の顔があった。どうやら倒れ込んだ時に一緒に倒れてしまった様だ。
「大丈夫提督さん?急に暴れるからびっくりしちゃったよ」
阿賀野がそう尋ねてくる
ち・・・近い・・・・それにこれって・・・・
俺今女装してて・・・
それで服が脱がされかけててそれで男装した阿賀野に押し倒されてるみたいになってる・・・・!?
そんな自分の置かれている状況を理解し心臓が破裂しそうになるほどに脈打つ
「あ・・・・あの・・・・・」
「どうしたの提督さん?」
阿賀野が俺の方を見つめてくる。
なんなんだこの胸の高鳴りは・・・・!?
なんだか胸がぐっと締め付けられる様な感じは・・・・!?
もしかして俺・・・本当に男の阿賀野が好きになっちゃったんじゃ・・・
好き・・・・?
いや違う・・・!絶対違う!!
「お・・・俺・・・その・・・・違うくて・・・・」
いつもの阿賀野ならともかく男装してる阿賀野に対してこんな感情を抱いてるなんて・・・
俺・・・どうしちゃったんだよ・・・・
なんでだ!?退いて欲しいって言いたいだけなのに言葉が出てこない・・・・それにおかしいな・・・なんで俺泣きそうになってるんだ?
ダメだ・・・頭の中がこんがらがってきた・・・遂に目から涙がこぼれ落ちてくる。
「わあちょっと!提督さん?なんで泣いてんの!?」
こんな阿賀野の前で訳もわからず泣くなんて情けないにも程があるだろ俺・・・
そう思うと尚更涙が出てくる
「ううっ・・・・俺違うのに・・・・男なのに・・・・!!」
「どうしたの?どっか打った!?どこか痛い所でもあるの!?さっきどこかにぶつけた?」
阿賀野はそんな俺を見て慌てた様子でいつもと変わらない調子で尋ねてくる。
「そんなんじゃない・・・・」
「じゃあどうして?」
「俺・・・・こんな格好で阿賀野に女の子みたいに扱われて・・・その・・・・阿賀野の男っぽい所を見せつけられて・・・でも俺・・・別にそれが嬉しかったとかそんなんじゃないはずなのに・・・・違うのに・・・ドキドキしてる自分がいて・・・・そんな事考えてたらなんか急に涙出てきて・・・」
口ではそう否定している物の自分でも阿賀野に今日一日女の子みたいに扱われていた事が嬉しかったのか嫌だったのかよくわからない感情が混濁していた。
「そう・・・だったんだ・・・・提督さんごめんね。提督さんの反応がかわいくって・・・それで面白くてちょっとからかいすぎちゃったみたい・・・すぐいつもの阿賀野に戻るからちょっと待っててね・・・」
阿賀野は俺の言葉を聞き少し表情を暗くして俺から離れて洗面所の方に行ってしまった。
阿賀野に悪い事言っちゃったかな俺・・・
俺も体制を立て直してソファーに座り直した。
鏡には相変わらず女装した俺が映っている。
俺・・・なんで泣いちゃったんだ・・・?
こんな所に来てしまったからか阿賀野に何かされるって思ってしまったんだろうか・・・?
俺・・・阿賀野の男装姿を見てなんでそんな事考えてるんだ・・・・?
今日はいろんなことがあって疲れただけだ。そうに違いないんだ!
断じてそんな・・・男装姿の阿賀野にときめいたわけじゃ・・・
そんな事を考えていると
「おまたせ〜提督さ〜ん!いつもの阿賀野でぇ〜す!きらり〜ん!!はぁ〜今日はずっと胸にサラシ巻いてたから胸ちょっと腫れちゃったよぉ〜」
ルームウェアを着て髪をほどいた阿賀野が洗面所から出てくる。
その姿は俺がよく知る阿賀野そのものでそんな阿賀野に安心感を覚えた彼はどこか明るく取り繕っている様にも見えた。
「あ、ああ・・・・」
「ごめんね提督さん・・・阿賀野から誘ったのに阿賀野ばっかり楽しんでて提督さんの事・・・・全然考えてなかったね。今日は疲れたよね・・・?」
確かに阿賀野の言った通り今日は散々阿賀野に引っ張り回されるし大淀と那珂ちゃんがいちゃいちゃしている所まで見せられるしで疲れて散々だった。
でも阿賀野は楽しそうだったしそんな阿賀野を見ているのは苦ではなかったし俺も楽しんでいたはずだ。
それなのに阿賀野にこんな気負いさせて良い訳が無い
「阿賀野・・・・俺こそごめんな・・・さっきは急に訳がわかんなくなっちゃってさ・・・・」
「ううん!提督さんが謝る事無いよ・・・!阿賀野が提督さんの事からかいすぎちゃったから・・・・そうだよね・・・提督さんは男の子なんだから男に言いよられても気持ち悪いだけだよね・・・阿賀野とこうやっていてくれるのも阿賀野がいつも女の子の格好して女の子みたいに振る舞ってるからだよね・・・それなのに阿賀野・・・もしかしたら男の私も受け入れてくれるかもしれないと思ってつい張り切りすぎちゃって・・・・本当にごめんなさい・・・」
阿賀野の表情が暗くなった。
「その・・・俺さ、男のお前が嫌で泣いたわけじゃないんだけどさ・・・」
「え・・・・」
「男の格好した阿賀野・・・かっこ良くてさ・・・・それでなんだか俺、ドキドキしちゃってて・・・それで訳がわかんなくなって気付いたら涙出てたんだ・・・」
「かっこ・・・いい・・・?」
「ああ。いつものだらしない阿賀野からは想像もつかない位にかっこ良かった。それにずっと今日お前にふらついてる俺を支えてもらってさ・・・・そんな事されてたらなんだか俺・・・いつの間にか男の阿賀野にドキドキしてて・・・」
「もー!だらしないは余計だよ!でも・・・それ・・・本当?」
「あ、ああ」
「そう・・・なんだ・・・・良かった・・・嫌われちゃってたらどうしようかって思っちゃったよ」
阿賀野はそう呟いた
「阿賀野・・・?」
「ああいやこっちの話だから・・・それもきっと提督さんが可愛かったからつい張り切っちゃったのかな〜なんて!俺のことカッコいいとか思っちゃった?」
阿賀野は声のトーンを低くして得意げに言った。
「はぁ〜・・・おだてたらすぐ調子乗るよなお前・・・」
「えへへ〜」
阿賀野は嬉しそうに笑う。
やっぱり男の格好をしててもいつもの阿賀野でも笑った顔は同じだな。
そんな阿賀野の笑顔を見ているとふと脳裏に男装をしていたときの阿賀野の顔がちらつき少し恥ずかしくなってしまったので
「そ・・・・それじゃあ俺も着替えてくるから・・・!!」
俺は照れ隠しにそそくさと洗面所へ向かった。
そこで服を脱ぎ、ウイッグを外して鏡を見ると女性ものの下着を着けて化粧をした俺が鏡には映っている。
お世辞にも女の子とは言えない体格と見慣れた髪型が俺の性別をはっきりと物語る。
「やっぱ俺が女装なんてしてても似合わないよな・・・」
鏡に映った俺に呟き下着を脱ぎ、置いてあったルームウェアを身につけた。
あれ・・・?そう言えば化粧ってどうやって落とすんだろ・・・?
生まれてこのかた化粧なんてした事が無かったのでこれをどうやって落とすのかがわからない。
試しに洗面台の蛇口を捻って水をかけてみると化粧が少し落ちてオバケみたいになってしまった。
どうすんだよこれ・・・!!!
とりあえず阿賀野に聞くしかないか
俺は洗面所を飛び出した
「阿賀野・・・!これどうしたらいいんだ!?」
「提督さんなぁに・・・・?って何その顔!!」
阿賀野は俺の顔を見るなりゲラゲラと笑い始める
「笑うなよ!!化粧の落とし方がわからねーんだよ」
「ああごめんごめん!阿賀野のメイク落とし貸してあげるから洗面所で待ってて」
阿賀野がそう言うので俺は洗面所へ戻り、鏡に映った自分の今の顔があまりにも酷いので自分でも笑ってしまいそうになった。
化粧って大変なんだな・・・・
今日一日で女の人の気持ちとか苦労とかが少しわかったような気がする。
そうこうしていると阿賀野がポーチをもって洗面所へやってきた
「おまたせ〜提督さんそれじゃあメイク落としてあげるね」
阿賀野はそう言うとポーチからシャンプーのボトルのような物を取り出してそこから何やら液体を出して俺の顔に少しずつ付けると
「これで落とせるからね」
阿賀野はそう言って俺の顔をぐりぐりと撫で始めた。
「うわっぷ!」
「提督さん、目に入るから目は瞑っててね〜」
阿賀野は俺の頬を撫でてきた。
「うん!これでもう大丈夫!あとは流すだけだから蛇口捻っとくね」
阿賀野はそう言うと洗面所から出て行ってしまう。
俺は音を頼りに蛇口の水を掬い上げて何度か顔に掛けた。
「ふう〜」
そして鏡に映ったのはいつもの俺の顔だった
なんでだろう・・・
鏡で自分の顔をまじまじと見てるといつもは不思議な感じになるけど今日はなんだかいつもの自分の顔をみて少し落ち着きを取り戻した様な気がする。
そして洗面所を出ると阿賀野がベッドで一人ごろごろとしていた。
「あ、提督さん。ちゃんとメイク落とせたんだね〜よかった」
「あ、ああ。ありがとう阿賀野」
「別にお礼を言われる様な事してないよ〜」
「いいや・・・今日はお前に色々してもらってさ・・・・今まで知らなかった事がちょっとだけわかった気がするよ。その・・・・女装も悪くないもんだな・・・」
「えっ!?提督さん目覚めたの!?」
阿賀野が嬉しそうに聞いてくる
「ちげーよ!ヒールとか化粧とか女の人は大変だなーって・・・そういうのがわかって勉強になったって事」
「そうでしょ?阿賀野も最初は大変だったんだよ。イクちゃん先輩に色々教えてもらってなんとかなったけどね。あっ、そうだ!また女装したくなったら言ってね?阿賀野がまた可愛くしてあげるから!」
「もういい!二度とごめんだ」
「も〜つれないなぁ提督さんは・・・ねえ。提督さん?」
「な・・・なんだ?」
「汗かいたでしょ?先にシャワー浴びる?」
「え・・・・そ・・・それって・・・」
どこかで聞いた事あるぞ?これってエッチする前に身体綺麗にしてこいって意味だって・・・
「も〜提督さんったら硬直しちゃってぇ〜別に深い意味は無いよ。ただ汗かいたまま寝るのも気持ち悪いかな〜って。折角シャワーがあるんだからすっきりしてきてよ。阿賀野おんぶしたりして疲れてるだろうし今日一日なんだかんだで付き合ってもらったんだからお先に」
「なんだよびっくりさせやがって・・・・」
「ん?何がびっくりしたの?別に提督さんがその気なら阿賀野は全然ウェルカムだってば〜」
「だから俺にそんな気は毛頭ねぇよ!!それじゃ先にシャワー使わせてもらうぞ」
俺はそう吐き捨てシャワーを浴びるために洗面所でルームウェアを脱ぎ、その奥にあった簡単なシャワールームでシャワーを浴びる事にした
「ふう〜」
シャワーを浴びて息を漏らす。
1日の疲れがお湯と一緒に流されていくみたいだ。
今日は色々あったなぁ・・・・早く帰りたいのも山々だけど今夜はもうこうなってしまった以上早く寝て明日に備えないと・・・
足早に入浴を済ませ、洗面所に置いてあったタオルで身体を拭いて再びルームウェアを着て洗面所を出た。
「上がったぞ阿賀野」
「早いじゃない提督さん。それじゃあ阿賀野もシャワー浴びてくるね。あっ!覗いちゃダメだからね・・・?でも提督さんならちょっと位覗いても良いよ?」
「誰が覗くか!!とっとと入ってこい」
「は〜い」
阿賀野は不貞腐れた様に言って洗面所へ入って行った。
「はぁ〜疲れた・・・」
長かった1日もやっと終わりだと思うと急に力が抜けてベッドにうつぶせで倒れ込んでしまった。
するとほんのりといい匂いがした。
そう言えば阿賀野がさっきまで寝転がってたんだよな・・・
きっと阿賀野はシャンプーやらなんやらまで気を使っているのだろう。
一日中歩き回ったと言えまだこんな甘い香りがベッドに付くなんて・・・
大淀も気を使っているんだろうか・・・?
俺はふといつも書類の整理をしている時大淀の髪からほんのりと香る匂いを思い出していた。
大淀・・・・あれ?なんか忘れてるような・・・・
「そうだ大淀!!」
すっかり忘れてた!!大淀に電話しなきゃ!!
俺は慌ててベッドから飛び降りて携帯電話を持って部屋を出た。
そして部屋の外で扉を背にして携帯電話尾で大淀の番号を押すと画面に【淀屋 発信中】
と書かれた画面が表示される。
そういえばあいつ携帯の番号とかはそのまんまなんだな・・・
どうしよう?登録名大淀に変えといた方が良いのかな・・・
そんな事を思っていると
『もしもし?謙!?今どこに居るの!?』
彼女の心配そうな声が聞こえてきた
「ああ・・・連絡遅くなってごめん・・・ちょっと出掛ける用事が出来て手違いで帰れなくなっちゃってさ・・・」
『どこに居るの?大丈夫!?場所さえ教えてくれれば今からでも迎えに行くよ!?」
相変わらず心配性だなぁこいつは・・・
「あ、ああ大丈夫大丈夫!明日の午前中には帰れると思う。だから悪い・・・朝の書類整理とかは任せられるか?埋め合わせはちゃんとするから」
『う・・・うん・・・わかった。謙が大丈夫なら私はそれだけそれただけでもう十分だから』
「ああ。ゴメンな・・・急に帰れなくなって・・・そう言えばその那珂ちゃんとのデ・・・・・じゃなかった水族館はどうだったんだ?」
こっそり後を付けていたが一応聞いておく事にする
『あ・・・あのね・・・・那珂ちゃんがこれからもお友達としてよろしくねって・・・・』
はぁ〜よかったぁ・・・・・俺は胸を撫で下ろす。
でもそれじゃああの時キスしてたのは一体・・・!?
でも見てたなんて言えないしどうやって聞くべきなんだ・・・!?
『謙・・・?どうしたの黙っちゃって』
「ああいや・・・なんでもないんだ・・・!その・・・一応那珂ちゃんはデートって言ってた訳だろ?それでその・・・・キス・・・とかされてないかなーって・・・・」
遠回しにそう尋ねてみる
『え!?ああ・・・その・・・・ごめんなさい謙・・・・私ね・・・那珂ちゃんにキスされちゃった・・・ほっぺだけど・・・』
「ええ!?・・・そ・・・それはなんでなんだ・・・!?」
俺は知っていたが大袈裟に驚いてその理由を尋ねた
『あのね・・・・デート・・・って那珂ちゃんは言ってたんだけど・・・その・・・ね?那珂ちゃんがデートの最後にって・・・・友達としてほっぺたにキスしたって・・・・』
「そ・・・そうだったのか・・・」
よかった・・・別に男女の関係になるとかじゃなかったんだ・・・
『それでね、那珂ちゃん・・・私の事、応援してくれるって』
「そ・・・それ本当か!?というか俺達の事バレてたのか・・・?」
『い・・・いや・・・それは無いと思うわ。那珂ちゃん・・・あくまで私と好きな人とが上手くいく様に応援してる・・・みたいな言い方だったし・・・きっと大丈夫!』
「そうか・・・それにしても友達増えて良かったじゃないか。お前いつも他の艦娘にどことなくよそよそしかったし同じ境遇の友達が増えたんなら俺も嬉しい」
『うん・・・・そうだね・・・謙、行ってきて良いって言ってくれて本当にありがとう・・・謙が言ってくれてなかったら那珂ちゃんとこんな関係になる事は無かったと思うから』
「いえいえ。どういたしまして。それじゃあなるべく急いで帰るからお前は心配しないでくれよな」
『うん・・それじゃあ私、待ってる。水族館で買ったお土産も渡したいし早く帰ってきてね?』
「ああ。ありがとう。それじゃお休み・・・」
『ええ。お休み・・・・・・・』
その後お互い無言の状態が続く。
『電話・・・切らないの?』
しびれを切らしたのか大淀は言った。
「いや・・・その・・・・大淀が先に切るかなって・・・」
『謙が先に切ってよ・・・』
ああ・・・これ漫画で読んだ事ある奴じゃん!!
まさか淀屋と・・・いや大淀とこんなやり取りをするなんて過去の自分に言っても信じてもらえないだろうな
そう思うと自然に笑いがこぼれた
『謙?どうしたの?急に笑っちゃって』
「いいや・・なんでもない・・・でも俺達本当に恋人同士みたいな事してるなって思ったら急におかしくなっちゃってさ・・・」
『こ・・・・恋人・・・!?たしかにそう・・・だけど・・・・・もう・・・バカ・・・・すk』
大淀がそう言った途端電話が切れてしまった。
なんだよあいつ・・・なんであんな可愛い反応するんだよ!?
ふう・・・なんとか大淀にも連絡できたし明日は早く帰らないとな・・・
さあ!今日は早く寝なきゃ!
そう思い部屋の扉を開けようと扉の方に振り返ると阿賀野が扉越しにこちらをニヤニヤと見つめて笑っている
「いやぁ〜提督さん・・・お熱いですなぁ」
「ばっ・・!?いつから!?」
「うーんとね〜キスがどうこうみたいな所らへんからかな〜」
大体聞かれてた!?
めちゃくちゃ恥ずかしいぞ・・・・
「やっぱり提督さんと大淀ちゃん・・・そーゆー関係だったんだね・・・」
「え・・・・いやその・・・これには色々あって!!!」
「いいよ!深くは聞かないから!前からなんだか提督さんと大淀ちゃん訳アリって感じだったし・・・・だから阿賀野も提督さんとは今まで通りの関係で居るんだからね!」
「はあ・・・やっぱ変な所だけポジティブだなお前・・・」
「えへへ・・・また提督さんに褒められちゃった」
「褒めてねぇよ!」
「ほら提督さん!そんな所突っ立ってないでお部屋入って来たら?」
「ああ、うん・・・なっ!?」
阿賀野に言われるがまま部屋に入ると阿賀野がバスタオル一丁で立っていた。
「なんでバスタオル一丁なんだよ!?」
「だって〜お風呂上がりなんだも〜ん!」
阿賀野はそう言って胸を強調してくる
「ああもう服着てくれ早く!!」
「ええ〜だって阿賀野熱いんだも〜ん」
「だ・・・だからってそんな・・・・」
「ほんとウブなんだから提督さんは〜」
「べっ・・・別に男の裸なんて見たって嬉しくねぇよ!!」
口ではそう言った物のやはりバスタオルから覗く胸に目がいってしまう。
「ええ〜?その割にはなんだか阿賀野のおっぱいの方に視線を感じるな〜提督さんのえ・っ・ち♡」
「そ・・・そんなわけないだろ!?だから俺は男なんかに興味ないって・・・!」
「そうなんだ・・・・じゃあこれでどう?」
阿賀野はそう言うとバスタオルを腰の方まで降ろし、胸をぼろんと出してきた
「うわぁ!!急に何してんだよお前!!」
「提督さんが言ったんじゃない!男の身体なんかに興味ないって。だから男らしく胸隠すのやめてタオル腰まで下げて巻いたんだけど?別に提督さんは男の身体なんかに興味ないって言ってたからこうやってても問題無いよねぇ〜?」
阿賀野はしてやったりといった顔でにじり寄ってくる
「うわぁ・・・!そんな凶悪な物を揺らしながら寄ってくるなぁ!!」
「何?やっぱり提督さん・・・・俺の胸興味あるんだ?それともやっぱり口では嫌って言ってても男の方が好きなの・・・?」
また俺って言った!!それも低めの声で!!
でも目の前に立ってるのは端から見れば胸の大きな女の子のはずなのに・・・
脳が理解を拒んでいるような気がする。
目の前に立っているのは俺と同じ男のはずなのに・・・
「ち・・・ちがう・・・断じてそんな事は・・・!それにその格好で俺とか言うなよ・・・!訳がわからなくなるだろ!?」
「じゃあなんでそんな顔真っ赤にしてるのかなぁ?それに俺に女の子ぶるの禁止って言ったのは提督さんだろ?俺、提督さんの言われた通りにしてるだけだけど?」
コイツ・・・都合のいいときだけそんな事言いやがって・・・!!
でも男だと言われてもやはり目の前にあるのは男にある筈のない二つの大きな膨らみ・・・
こんなのが男に付いてるなんて反則だろぉ!!それに顔もこんなに整ってて美人と来た!
ここまでして何で阿賀野は女じゃないんだよ!!
遂に思考が阿賀野が女ではない理由を探り始めたが結局阿賀野が男だから女ではないというA≠Bの結論に帰結する
どれだけ頭で思考を巡らせようとこちらににじり寄ってくるのは上半身に何も纏っていない風呂上がりでみずみずしい肌が健康的に火照った阿賀野だ。
なんで男なのにこんな色っぽいんだよぉぉぉぉぉ!!
「こ・・・これはその・・・・・確かに言ったけどお前のお・・・・」
「お・・・?ちゃんと言ってくれないと伝わらないな」
くっそぉ!!また調子に乗り出したなコイツ・・・!!
「お・・・・・・・おっぱいが・・・・」
「ん〜?男の俺の胸がどうしたって?」
そう!阿賀野は男・・・・だけどいつも女の子の恰好してて・・・・
その辺の女の子なんかより全然可愛いし胸もデカいし・・・・
って何考えてんだ俺!!
やばい・・・どんどん阿賀野のおっぱいが近付いてくる・・・
デカい・・・初めて会ったときよりでかくなってるんじゃね・・・・?
あわよくば触りたい・・・
いやいや別に阿賀野をエロい目で見たい訳でもなんでもない・・・はずなんだ・・・・!!
阿賀野は男なんだぞ・・・そんな男の胸を触りたいなんて・・・・
俺の頭の中を様々な考えが脳裏にぐるぐるとめぐっていく。
ああ・・・・ダメだ・・・頭に血が上ってきた・・・・
「ぶはぁ!!!」
俺は盛大に鼻血を噴出して倒れ込んでしまった。
「ちょ・・・!?提督さん・・・!?提督さん!!」
そんな阿賀野の声が聞こえるが俺の視界と意識はどんどんぼやけていく。
やばい・・・このままじゃ男の胸を見て鼻血を出して失血死なる凄まじい最期を遂げ・・・る・・・こと・・・に・・・・
「お・・・・おっぱ・・・・い・・・ガクっ」
俺の意識はそこで途切れてしまった。
夢を見ていた。
どこか妙にリアリティーのある夢だった。
内容ははっきりしないがただただ冷たい暗闇の中に居た。
俺は出口を探そうとその場を這いずり回っていると何故か何も見えないはずの暗闇の中に人の影が見えた。
誰だろう・・・?
そんな人影がこちらにどんどん近付いてきて姿がどんどんとはっきりとしてくる
その姿は綺麗な長い黒髪をした女の人の様だった。
どこかであった事がある様な・・・でも顔にはモヤがかかっていて顔を確認する事はできなかった。
「君・・・・誰?」
俺はその人影に尋ねると
「お願い・・・・・・戻ってきて・・・」
女性は一言そう言うと消え、それと同時に意識がどんどん夢から離れて行った。
「待ってくれ!!君は一体誰なんだ!!」
俺は消えゆく女性にそう声をかけるがその声は届かない
そのままどんどんと夢は薄れて行きどこからか声が聞こえてくる。
「・・・・さん!!・・・督さん!!!」
そんな声が俺を現実に引き戻す。
そうだ・・・俺、鼻血出してぶっ倒れたんだっけ
俺は重たい瞼を持ち上げると視界の先にはうすぼんやりとだが視界を遮る何かとその先からこちらを見つめている阿賀野が見えた。
「あ・・・阿賀野・・・・」
「提督さん!!よかった気がついて・・・・」
阿賀野は安堵の表情を浮かべた
「え・・・ああ・・・うん・・・」
ふと俺の後頭部に生暖かく柔らかい感触がある。
それに頭上に阿賀野がいて・・・
この状況ってもしかしなくても膝枕されてる!?
それじゃあこれってもしかして・・・
俺は目を擦るとぼやけていた視界がはっきりとしてくる。
視界を遮っていたものは一糸纏わぬ阿賀野の胸だった。
「うっ・・・うわぁ!!なんで阿賀野裸なんだよ!?」
俺は慌てて飛び起きた
「裸じゃないよ!ちゃんと下はタオルで隠してるじゃない」
「な・・・なんでさっきの格好のままなんだよ?」
「だって〜急に提督さんが倒れるんだもん・・・服着る間も惜しんでずっと介抱したげてたんだよ?・・・はくちゅん!」
阿賀野は可愛らしいくしゃみをした。
まさか俺がぶっ倒れてからずっと膝枕してくれてたのか・・・?
「あ・・・ありがとう阿賀野・・・俺はもう大丈夫だからとりあえず服着てくれ」
「う・・うん!元はと言えば阿賀野がからかったせいだし・・・当然だよ!でも鼻血出したってことは阿賀野の事見て興奮しちゃったって事だよね?」
「う・・・うるさい・・・!阿賀野が男なのにそこいらの女の人より可愛いしおっぱいがデカいのが悪いんだからな・・・!とっとと服着てこいよ!!」
俺は思わず本心を口に出してしまう。
「あ・・・いや・・・その・・・」
「ふふっ♪提督さんのそう言う素直な所好きだよ?ありがと提督さんそれじゃあ服着てくるね」
阿賀野がそう言って立ち上がったその時はらりと阿賀野が腰に巻いていたタオルが剥がれる
「きゃぁ!」
阿賀野はすかさず手で隠したがその手の間からはやはり俺より立派なアレが顔をのぞかせていた。
やっぱりどれだけ可愛くてもぶら下がってるそれは男そのものなんだな・・・・
「はあ・・・・やっぱりそっち見せられたらげんなりするわ・・・俺のよりデカいし・・・・自信無くしちゃう」
「も〜なによそれ!!」
「はいはいわかったわかった。早く着替えてこいって風邪引くだろ?」
「は〜い」
阿賀野はそう言うと洗面所に入っていった。
はあ・・・色々あって今日は本当に疲れた。
膝枕をされていたとは言え地べたで寝ていたから少し身体が痛いし先にベッドで横になってるか
俺はベッドに飛び込んだ。
ああ・・・柔らかい・・・・!!
少し埃っぽいが結構寝心地は良さそうだ。
ベッドの感触を確かめていると服を着た阿賀野が洗面所から出てきた
「あ〜!提督さん先にベッド入るなんてずる〜い!!阿賀野も入る」
阿賀野はそう言って俺が寝ているベッドに入って来る
「うわ・・・ちょ!!何で俺のベッドに入ってくるんだよ!!」
「だってベッドこれしか無いじゃないの!」
「あっ・・そうだった・・・」
と言う事は阿賀野と同じベッドで寝なきゃいけないのか・・・・
俺は正気を保っていられるのだろうか
「それじゃあお休み提督さん♡阿賀野が寝てる間にえっちな事しちゃダメだよ?するならしっかり言ってね?阿賀野がきっちりリードしてあげるから」
阿賀野は得意げに言った
「そんな事しねぇよ!!じゃあお休み」
俺は阿賀野に背を向けて電気を消して瞼を閉じた
それからしばらくして背中に何やら柔らかい物が当る感触が走る
「う・・・・・」
これって阿賀野の胸・・・!?なんで当ててきてるんだよ!?
落ち着け・・・阿賀野は男・・・・阿賀野は男・・・・阿賀野は男・・・・阿賀野は男・・・・阿賀野は男・・・・阿賀野は男・・・・阿賀野は男・・・・阿賀野は男・・・・阿賀野は男・・・・
俺は自分の頭の中でそう何度も唱えるがやはり背中に当たるものの柔らかさは男の物だとは思えない・・・
阿賀野の奴一体ナニをする気なんだ!?
そんな事を考えていると
「提督さん・・・」
阿賀野が俺を読んだ
「はっ・・・はいぃ!!!?」
緊張からか声が裏返ってしまう
「も〜そんなに緊張しなくても良いじゃない・・・・今日はありがとね・・・」
阿賀野は恥ずかしそうに言った
「あ、ああ・・・・俺も・・・悪くなかった・・・かも・・・?」
「ふふっ♪よかったあ〜私の男の子の所・・・いっぱい見せちゃったけど提督さんが阿賀野の事嫌いにならななかったみたいでよかった・・・」
「え・・・!?ああ・・・うん・・・」
別に阿賀野が男だからという嫌悪感は全く無い。
ただそんな阿賀野を受け入れてしまったら俺自身の中で何かが崩れ去ってしまう様な気がして・・・
できれば阿賀野とはこんなふざけ合えるような仲で居たい。
それに俺には大淀も居るし・・・・
「あのね・・・提督さん・・・私ね・・・」
阿賀野はそこで言葉を止めた
「な・・・なんだよ・・!?」
「提督さんに裸見せるの・・・結構恥ずかしかったんだからね・・・」
阿賀野はそう小声で言った。
「な・・・なんでそれじゃあわざわざあんな事したんだよ!?」
「ずっとお前は男だろって言われて・・・それで阿賀野のおっぱい見せれば少しは考えを改めてくれるかな〜って思って・・・・でもおかげで女の子より可愛いって行ってくれて嬉しかったな・・・それに今日久しぶりに男の子の格好で遊びに行けて楽しかったよ。私・・・どんどん心も身体も元の自分とは変わっちゃって・・・・元の私が本当に消えてなくなっちゃうんじゃないかって思って怖かったの。でも提督さんがこの前私は私だからって言ってくれて・・・それで弟達に会いに行くきっかけまでくれてね、そんな事があって私・・・今は阿賀野だけどちゃんと元の自分は元の自分でしっかり私の中にあるんだなって思えたの・・・・提督さんに会うまでは自分が自分じゃ無くなっていくのは怖かったけど逆に何もかも忘れられるなら昔の自分なんかもう要らないって思ったてたの・・・でもやっぱり提督さんが言ってくれたおかげで昔の私も今の阿賀野もどっちも私なんだって・・・どっちも大事にしようって今は胸を張って言える。それに那珂ちゃんって新しいお友達も出来たし・・・ちゃんとお礼言えてなかったから。ありがとう提督さん。阿賀野・・・ちょっと頼りないところもあるけど提督さんの事・・・大好きだよ」
「え・・・ちょ・・・それって・・・!?」
「なーんて冗談・・・って言ったら信じてくれる?いつもはふざけてるけどちゃんと面と向かって言おうと思うと恥ずかしくて・・・
だから提督さんの背中にこうやってかたりかけてま〜す・・・えへっ・・・」
阿賀野は照れ隠しなのかそう言って笑った
「阿賀野・・・」
「それとね・・・?」
「ど・・・どうしたんだよ・・・?まだ何かあるのか」
や・・・やばい・・・またドキドキしてきた!!
「提督さんのおかげで男の子だった頃の声の出し方も思い出せたよ。ずっと可愛い声を出そうって意識ししてて自分の声の出し方まで忘れちゃう所だったけど色々あったから今の声がずっと作ってた声だってこと忘れててさ。男の子してるときよりは高くなっちゃってるけど実はあの声が普通の阿賀野の声なんだよね」
「え・・・ええ!?」
「そんな阿賀野の男の子の部分を思い出させてくれた提督さんの事・・・・愛してるぜ・・・?」
阿賀野はまた声を低くして俺に囁いてきた
「だから俺にその気はないって言ってんだろ!!」
「な〜んちゃってふふっ♡今のは冗談だよ!じょ・う・だ・ん♡」
「はあ・・・冗談かよ・・・びっくりさせんなよ」
俺は胸を撫で下ろした。
本当に今日だけで何年分寿命が縮んだ事か
「ふわぁ・・・・阿賀野もそろそろ眠くなってきちゃった・・・それじゃあお休み・・・提督さん」
「あ、ああ。お休み阿賀野・・・」
・・・・・・・・・
とはいってみた物の俺の頭の中には阿賀野の「大好きだよ」と「愛してるぜ?」という言葉が何度もリフレインして離れないし阿賀野のいびきはうるさいしなによりずっと背中に胸が当ったままだったので結局その日は眠れなかった。
そして次の日
「う〜ん・・・よく寝たぁ〜!」
阿賀野が心底気持ち良さそうな声を上げながら身体を起こす
「そりゃ良かったな・・・」
俺は半分不貞腐れながら言った
「あっ!提督さんおはよ〜あれ?提督さんなんだかしんどそうだけど寝れなかったの?」
阿賀野は呑気に尋ねてくる。
誰のせいだと思ってんだよ!!
そう言ってやろうと思ったが俺はぐっと堪えた。
それからしばらくして携帯電話に着信が入ってくる
高雄さんからだ!
よかった・・・これで迎えにきてもらえる
「はいもしもし!大和田です!」
俺は意気揚々と電話に出た
『もしもし提督?おはようございます。話は大体愛宕から聞きました。私も昨夜は病院に泊ったので今からそちらに迎えに行こうと思うのですがどこにいるんです?』
「え・・・えーっと・・・・ホテルなんとか?ってところですえーっと漢字五文字でなんて読むかわからないんですけど・・・」
『え、ええ』
「所得の得に王に久しいって書く漢字と中州の州と詩集の詩に亜空間の亜の真ん中が無い奴です」
『ああホテルエクスシアですね。昔よく愛宕と行ってたので場所は大体把握してます・・・ってそこラブホテルじゃない!!あなた大淀ちゃんというものがありながら阿賀野と一線超えちゃったんですか!?』
高雄さんの声が急に大きくなる
「いっ・・・いえ・・・!!他に泊るような場所が見当たらなくて仕方なく・・・・!断じてやましい事はしてません!」
『そ・・・そうなのね?あの辺り本当に何も無いですから仕方ありませんよね・・・わかりました。そこなら30分もあれば着けますから待っててください』
「わかりました。それじゃあお願いします」
俺はそう言って電話を切った
「高雄なんて言ってた?提督さんやましい事がどうこうって言ってたけど・・・?」
「なんでもない・・・それより30分もすれば着けるってさ。早く出る準備しないと」
「それじゃあ提督さん!またあのお洋服着なきゃだね♡」
阿賀野は嬉しそうに見つめてくる
「あっ・・・」
そうだ。外に出れる様な服って言えば着てきたあの服しか無いんだった・・・・
阿賀野が着てきた男物の服はサイズが合わないし・・・・
くそおおおお!!二度とごめんだって言った次の日にまたする事になるなんて・・・・とほほ・・・
「それじゃあまた着せてあげるね提督さん!ほら立ってたって」
そのまま阿賀野にされるがまままた俺は女装させられてしまった。
「うん!メイク今日はすぐ取れるように薄目にしたけどぜんぜん可愛いよ提督さん!それじゃあ阿賀野も着替えてくるね」
阿賀野はそう言うと洗面所へ入っていった。
それからしばらくして男装した阿賀野が洗面所から出てくる
「おまたせっ!それじゃあ行こうかマイハニー?」
阿賀野は爽やかな笑みを浮かべて手を差し伸べてきた
「だっ・・・だから俺はお前のハニーでもなんでも無いっての・・・・!でも・・・この服脱ぐまでは多少付き合ってやらない事もない・・・かな・・・」
俺はそう言って阿賀野の手をとった。
そしてフロントでチェックアウトを済ませてホテルの外で待っていると見慣れた車が俺達の前で止まった。
そしてドアガラスが開き高雄さんが顔をのぞかせる
「お待たせしました提督!昨日はお楽しみでしたね」
高雄さんはにやにやとしていた
「だからなんにも無かったですってば!なあ阿賀野!?」
「うん・・・高雄。提督さんったら凄いんだよ・・・?あんな事やこんな事・・・ああっ!思い出すだけでも恥ずかしいっ!!」
阿賀野は恍惚とした表情で言った
「こら!!語弊のある言い方をするんじゃない!!本当になんにも無かったですから!!」
「そうなの・・・?まあ阿賀野がそんな感じなら多分何も無かったってわかりますけどね」
「え〜なにそれ〜!」
阿賀野は頬を膨らませた
「提督、着替えを取りに戻る時間がなかったので途中で服、買ってきました。もちろん男ものの服です。阿賀野のも買ってあるから途中のサービスエリアのトイレかどこかで着替えましょう。それじゃあ乗ってください。急ぎますよ」
「は〜い。それじゃあ提督さん、どうぞ。ヒールでバランス崩してこけないようにね?」
阿賀野が後部席のドアを開けてくれた
「あ・・・ありがとう」
俺は後部席に乗り込み阿賀野もそれに続いた。
そして車は走り出し、途中にあったサービスエリアのトイレでなんとか服を着替える事が出来たが高雄さんの買ってきた服はなんというか・・・その・・・センスがちょっと変わっていたのだがそこには突っ込まない事にした。
そこから車に乗ってやっとの事で鎮守府にたどり着く。
「はあ・・・やっと着いた・・・・大淀怒ってるだろうな・・・」
時計は午前11時を指している。いつもなら書類の片付けも大体片付いている頃だ。
ひとまず阿賀野と別れ自室で制服に着替えて執務室へ向かおうと部屋から出るとばったり那珂ちゃんと遭遇する
「あっ!提督、おはようございま〜っす!!帰ってたんだぁ」
「え・・・ああ・・・うん・・・」
昨日のデートをこっそり見ていた事を思い出し少し申し訳のない気分になってしまう
「提督、話があるの」
「な・・・なんだ!?」
もしかして尾行してたのバレてる!?
「あのね・・・・」
なんだ・・・!?なんなんだ?
俺に緊張が走る
「大淀ちゃんの事なんだけどね・・・?」
「あ、ああ・・・」
大淀の事?なんだなんだ・・・!?
「今度大淀ちゃんの事泣かせたら那珂ちゃんが大淀ちゃんの事貰って行っちゃうから!だから大淀ちゃんの事大事にしてあげてね」
「・・・え?」
「知ってたよ大淀ちゃんが提督の事好きだって。大淀ちゃんにはこの事言って無いんだけど提督には言っておこうと思って!それだけだからそれじゃあまったね〜!」
那珂ちゃんはそう言うと走り去ってしまった。本当に忙しい人だな・・・
しかし大淀ちゃんの事大事にしてあげてね・・・か・・・
そう・・・だよな・・・・
俺は肝にしっかりと命じ、執務室へ向かった。
うう・・・ただいつもどおり執務室に入るだけなのに後ろめたさとかもあって入り辛いなぁ・・・
でもここで足踏みしてたって何も変わらないし・・・
「大淀!昨日は心配かけて悪かった!今帰ってきたぞ」
意を決して執務室の扉を開けて頭を下げる
「謙・・・!お帰りなさい!ずっと待ってたの・・・・心配したんだからね!」
大淀は少し拗ねた様に言った
「あ、ああ・・・本当に悪かった・・・」
「これからはもっと提督としての自覚を持って行動する様にしてくださいね提督」
「はい・・・」
「うん!反省してるみたいだしこれ・・・お土産」
大淀は何やら手のひらサイズの袋を取り出した
「あ、ありがとう。開けても良いか?」
「ええ。もちろん」
袋を開けると中にはイルカのキーホルダーが入っていた。
「これ・・・私も同じの買ったの!那珂ちゃんがこう言うのプレゼントしたら良いんじゃないかって言ってくれて・・・・」
「ありがとう。それじゃあ早速携帯に付けるよ」
「喜んでもらえて良かったわ。それでは提督、こちらも片付けてくださいね?」
大淀はにっこりと笑うと書類の束を机に置いた
「な・・・なんだこれ・・・?」
「なんだこれって今日の書類ですよ。今朝は高雄さんも居なかったのでまだ片付いてない分がありますし・・・それに急に居なくなる提督にお灸を据えようと思って待ってたんです。それでは書類の整理お願いしますね提督。では私は他に用事もありますので失礼しますね」
大淀は笑って書類の束を渡して執務室を出て行ってしまった。
大淀お前やっぱり俺が居なくなった事怒ってんな?
まあ仕方ないか・・・はあ・・・・
結局その後は一人で書類の整理やらをやって一人で業務をやる大変さを自分の身を以て知る事になったのである。
もう勝手に出て行ったりしない様にしなきゃな・・・
そう心に決めつつ書類を一枚一枚片付けていった。