ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
長峰さんに海水浴場の警備の事を聞き忘れてしまったから愛宕さんに聞く事にした。
全く・・・理由はどうあれ前任の提督なら引き継ぎ作業と行事の予定くらいは教えておいてくれても良いだろうに・・・
俺はそんな不満を浮かべながら鎮守府に戻り天津風と一旦分かれて愛宕さんを探す。
「この時間どこに居るんだあの人」
長峰さんに出さなきゃ行けない書類もあるわけだしせめて夕飯までにこの用件については片付けておきたい。
愛宕さんを探してあてもなく鎮守府を彷徨い歩いていると工廠の隣に設かれていた酷く錆びた灰皿の前で愛宕さんが一人煙草を吸っているのを見つけた。
愛宕さんって煙草吸うのか・・・
その姿はいつものような愛宕さんでもオッサン臭い素(?)の愛宕さんの様でもなく遠くをぼんやりと見つめて物思いに耽っている様に見えた。
そんな彼・・・?彼女・・・?ああもうどっちでも良いや!愛宕さんを沈みかけの夕日が照らしていてなんだかなんというかほがらかな感じでもだらしない感じでもないどこか哀愁が漂ってる様な雰囲気を醸し出していて話しかけ辛い。
そんな愛宕さんを影からそっと観察していると煙草を吸い終えたのか灰皿に煙草を捨てたので今しかないと思い声をかけてみる事にした。
「あの・・・愛宕さん?」
「あぁ・・・?あら提督。タバコ吸ってるところ見られちゃったわね・・・」
声をかけると一瞬低い声で睨まれたが俺だと気付くといつも通りの朗らかなお姉さんの様な口調で答えてくれた。
「見られちゃマズいんですか?」
「そう言う訳じゃないんだけど高雄に止められてるの。だ・か・ら・高雄には黙っといてね♡代わりにおっぱいもませてあげても良いわよ?」
愛宕さんはいつもの様におどけながら胸を強調して見せびらかしてくる。
やっぱりいつも通りの愛宕さんだ。
「要りませんって!」
「あら・・・そう。つれないわね」
「つれないも何も男の胸なんて触っても嬉しくないです!」
「またまたぁ〜強がり言っちゃってぇ〜私自身こんな綺麗で大きくて柔らかいおっぱいが自分に付いてる事に興奮してるのにぃ〜」
はぁ・・・やっぱり口調はどうであれ根幹がスケベ親父なのは変わらないらしい。
そうだ!また忘れる所だった俺はひとまず今日届いた書類の事を聞いてみると
「あらごめんさい。提督にはまだ言ってなかったわね。私ったらうっかりしちゃってたわ。てへっ」
愛宕さんはあざとく誤摩化してきた。
「はぁ・・・そう言うのは良いですから・・・急に知ってる前提で書類が来たから訳分からなくて困ってたんですよ」
「あらあらごめんなさいね。そういう書類は高雄が・・・って今日は提督が一人で書類の整理やってたんだったわね。あの子・・・間の悪さは相変わらずね」
愛宕さんは多分長峰さんに向けてそんな皮肉をこぼした。
「で、なんで艦娘達が海水浴場の警備なんてしなきゃいけないんです?」
「それはね、まず鎮守府の形が5年前に大きく変わったんだけれど提督はなんで大きな鎮守府でなく点々と各所に新しく小さな鎮守府を大量に配置したか分かる?」
「えーっと・・・・大きな建物を構える程深海棲艦が出てこなくなったから・・・ですかね?」
「それもあるけどもっと大きな理由があってね、深海棲艦が現れてから海に面した街の地価が急激に下がったり観光資源としていた物が取れなくなったりって壊滅的な打撃を受けたのよ。だからあの大きな戦いの後に艦娘達の平和利用って名目で残った人材を分散させて海沿いの街を復興させようってプロジェクトが立ち上がったの。ここもその一つ。だから今の私達の仕事は深海棲艦から人々を守るだけじゃなくてこの××町の復興の協力もお仕事のうちってこと。だから長門と陸奥は鎮守府からは退役したけどここで漁師をやり始めて町民の立場からこの町を復興させようって思ってる訳。それに警備に私達みたいな美女が居たらお客さんだって増えるでしょ?ふふっ♡」
愛宕さんはあざとく笑ってみせた。
自分で美女とか言うなよ・・・確かに黙ってればスタイルも良いしめちゃくちゃ美人だとは思うけどさ
でも大前提としてこの鎮守府の艦娘は皆男な訳で・・・
ってかそう言う大事な事はもっと早く教えてくれよ!初めて聞いたわそんな事
「えーっと・・・初めて聞いたんですけど・・・」
「えっ!そうだったの・・・!?てっきり高雄か長門に聞いてると思ってたわ」
「聞いてません!」
「ごめんなさいね。ちゃんと引き継ぎが出来てたら良かったんだけど前の提督が行方不明になっちゃったからそうもいかなくってぇ〜」
行方不明も何も前の提督はアンタなんだろ!?
と言ってやりたかったがやはり何か訳ありみたいだし言ったらまた男の愛宕さんに思いっきり反論されそうだったからやめた。
「あっ、いえ・・・この段階で聞けただけまだなんとかなりそうですし・・・」
「それにしても今年は沢山新しい子が入ってきてくれたからゆっくり出来そうだわ。去年なんか私と高雄とイクちゃんと阿賀野しかいなかったしもうずっと警備警備で嫌になっちゃったわよ・・・碌にナンパもできやしねぇ・・・」
愛宕さんは最後にぼそっとそうボヤく
「本音洩れてんじゃないですか!それに高雄さんが居るんですから忙しかろうが暇だろうがナンパはダメですよ!!」
「冗談よ冗談♡でももうそんな時期なのねぇ・・・提督がここに着任したのがついこの間の事みたいで・・・私も老けたわね・・・でも提督、あの時と比べたら少しは大人びたんじゃない?気のせいかしら?」
いつも子供扱いされてからかわれていると思っていた愛宕さんから意外な言葉が飛び出した。
確かにまだここにきて半年も経ってないけど色々な事があって毎日大変だったし・・・
自分ではあまり実感として湧かなかったが少しは提督としてやっていけてる事を認めてくれたって事なんだろうか?
「・・・・それは褒め言葉として受け取っても良い奴なんでしょうか?」
「褒めてるわよ!お姉さんのお褒めの言葉は素直に受け取っておきなさい♡何回か怒鳴っちゃったけど実は結構ちゃんと出来てる方だと思ってるのよ?なんだかんだで私達の事気味悪がらずに受け入れてくれてるし・・・それってなかなかできない事よ?」
「え・・・そうですか?自分ではそんな事全然考えてませんでした」
「私は結局提督である事を捨てる方法しかあの時は思いつかなくて結局他人に偉そうな事言えないんだけどね・・・」
愛宕さんはどこか寂しそうに笑った。
「それじゃあ愛宕さんは何で提督を辞めて艦娘になろうと思ったんですか・・・」
「えーっと・・・・それはね・・・」
「それは・・・・?」
俺は覚悟を決めて息を飲むと愛宕さんは何かに気付いたのか遠くの方を見て何かの匂いを嗅ぎ始めた。
「くんくん・・・・今日の晩ご飯はカレーかしら!そろそろお腹も空いたし工廠にいる高雄も呼んで晩ご飯にしましょうか。高雄ったら私が呼びに行かないとずっと艤装とかバイクとか弄ってるんだから・・・それじゃあ私は先に高雄を呼びに行ってるから提督は先に食堂行っててくれて良いわよ〜それじゃあ提督、また後で」
そう言うと愛宕さんは立ち上がって工廠に入っていった。
くそぉ!上手く躱されたか・・・
なんか凄くモヤモヤするぞ
でもあんまり軽率に艦娘になった理由なんて聞く物じゃないのかもしれないな・・・
まあいいや。
珍しく愛宕さんに褒められたし一応目的も達したし
俺は足取り軽く食堂へ向かう。
食堂に着くとカレーのいい匂いが漂っていて人も集まり始めていた。
奥のテーブルでは初雪を吹雪達が囲んでいて何やら楽しそうに話している。
この様子なら初雪は大丈夫だろう・・・
そんな4人を微笑ましく眺めていると
「はぁ〜お腹減った・・・」
阿賀野がそう呟きながら食堂に入ってきた。
「あっ、提督さん。今日は早いんだね・・・ってあの子誰?」
阿賀野は初雪を指差して尋ねてくる
「なんだ、お前も知らなかったのか」
「も・・・?どういう事?」
どうやら俺より先に居た阿賀野ですらその存在を知らなかったようだ。
俺は簡単に阿賀野に初雪の事を教えた。
「ああ〜あのお部屋に居る子かぁ・・・高雄がたまにあの部屋の前で誰かと喋ってるのを見た事あったけどそれがあの子だったんだ・・・ってそれじゃああの子阿賀野より先輩って事!?挨拶してこよ〜っと」
そう言うと阿賀野は話している4人の方へ向かって行き初雪に挨拶を始める
「初めまして〜・・・かな?私阿賀野!去年ぐらいからここで艦娘やってま〜す☆よろしくね!」
「どどどどどうも・・・初雪です・・・こちらこそよろしく・・・」
阿賀野のテンションに付いていけなかったのか初雪はびくびくとしながらそう返事をした。
そうこうしているうちに高雄さんと愛宕さん。それに金剛もやってきて食堂に艦娘が全員集まった。
「全員揃ったみたいだねーそれじゃあ那珂ちゃんのスペシャルカレー用意するねっ!ほーら・・・大淀ちゃんも!」
那珂ちゃんがそう言ってカレーをよそい始めるとひょっこり大淀がカレーを二皿もって厨房から出てきてこっちへ歩いてくる。
「あっ・・・あの・・・提督!」
「なんだ大淀・・・」
「あの・・・・その・・・・今日、カレーの具材・・・私が切ったの!それで・・・感想が聞きたいから・・・一緒に食べてくれる?」
大淀はもじもじとそう言ってテーブルにカレーを置いた。
その指には絆創膏が何枚も張られていて野菜を切るのに苦戦していた事を伺わせる。
それにいつもは吹雪と良く一緒に食べているが今日は初雪たちと食べてるし・・・
阿賀野もたまに誘ってくれる・・・というより急に有無を言わさず俺の隣に座ってきたりするけど今日は金剛と食べてるみたいだ。
なんだか珍しい組み合わせだなぁ
このテーブルには俺と大淀しか居ないし別に断る事も無い。
「ああ、いいぜ」
「そう・・・それじゃあ・・・召し上がれ。ちょっと形は悪いけど謙に美味しく食べてもらおうと思って頑張ったの・・・」
「じゃあ頂きます。それにしてもお前が料理したがるなんてなー」
とりあえず俺はカレーを一口運んだ。
野菜はごろごろしていて少し大きいような気もするが別に食べられない事は無い。
ただジャガイモは少し芽が残っていたのか食べると口が少しひりひりと痺れたがこの位別に大した事じゃないし淀屋が・・・・大淀が俺の為に頑張ってくれたんだしこれくらいの事は黙っていよう。
それにこのカレー美味いな・・・那珂ちゃん一体隠し味に何使ってるんだろう?
「どう・・・?」
大淀がこちらに感想を求めてくる。
「あ、ああ。美味いよ!野菜も食べ応えがあってさ」
「そう!良かった・・・!那珂ちゃんに教えてもらった甲斐があったわ!」
大淀は嬉しそうに言った。
「まさかアレだけ毎日カップ麺かコンビニ弁当で済ませてたお前が料理する気になるなんてな」
高校時代の淀屋はいつもそんな感じのものしか食べなかったし自炊はしないのかと尋ねれば別にそんな事してるだけ時間の無駄だと答える様なヤツだったのにやっぱり艦娘になって変わったなぁ・・・
「私一人だったらこんな事思わなかったと思う。でもね。謙に喜んでもらえたら嬉しいなって思って・・・それで那珂ちゃんに色々教えてもらっててね・・・今まで全くしてこなかった事ばっかりだから上手くいかないけど・・・それでも少しずつ上手くなってる気がするの!」
大淀は嬉しそうにそう言った。
この間のデート・・・?の甲斐あってか那珂ちゃんとも上手くやってるみたいだ。
「最近那珂ちゃんと仲良くやってるみたいで安心した。それまで他の艦娘と話してる所とかあんまり見かけなかったから結構心配してたんだぞ?」
「そ・・・それは・・・その・・・皆謙に色目使うし・・・別に私は謙だけ居れば良かったし・・・」
「はぁ?俺に色目?そんな色目なんか使われてな・・・・」
そう言いかけた所で昨日の晩阿賀野にされた事を思い出してしまう。
でも阿賀野の本心が俺には分からない。
ただただいつも俺をからかってる様にしか見えないんだけど・・・・
でも実際昨日の事は不可抗力とはいえ大淀に知られたくないし罪悪感に駆られてしまう。
ああもう!!どうしたら良いんだ俺は!!
「どうかしたの謙?もしかしてカレーやっぱりマズかった・・・?」
そんな大淀の声で我に返ると大淀は俺を心配そうに見つめていた。
まずい・・・あらぬ心配を大淀にかけさせてしまってるみたいだ。
「いっ、いや!なんでも無い!!ああすげぇ美味い!!大淀が俺の事想って作ってくれたんだから当たり前だけどすっげえ美味いわこのカレー!!」
俺は何とかしなければと残っていたカレーを勢い良く口の中に搔き込んだ。
「そ・・・そう・・・?謙がそう言ってくれるなら私も嬉しいけどそんな一気に食べたら喉に詰まっちゃうよ・・・?」
そんな大淀の心配をよそに俺はカレーを完食した。
「はぁ・・・美味かった。こんどは那珂ちゃんの手伝いじゃなくてお前が一から作った料理も食べてみたいな」
「うんっ!今日はお手伝いだけだたけどいつか絶対謙においしいご飯作れる様に頑張るからもう少しだけ待っててね」
「ああ。待ってる」
それから大淀と他愛のない会話をしつつ夕飯を済ませ部屋に戻ろうとすると宿舎の玄関には大量にAmaz●nのダンボールが山積みにされていて高雄さんがそれを困った顔で見つめていた。
「あの・・・これ一体なんなんです?」
「あら提督。これですか?全部初雪ちゃん宛ての荷物なの・・・たまに大量に送られてきて困ってるんです。いつもは私が部屋の前まで運んでるんだけど・・・はぁ・・・あの子一体なにやってるのよいつもいつもこんなに買物して・・・」
高雄さんは呆れた様に呟いたがどこかそれ以外の感情もこもっている様に見えた。
「なんだか初雪の母親みたいな事言うんですね」
俺がそう言うと高雄さんは少しハッとなったような顔をした。
「そうね・・・確かにそうかもしれないわ。私が勝手にそう思ってるだけかもしれないですけど・・・」
高雄さんは嬉しそうな・・・でもどこか寂しそうな表情を浮かべる。
「高雄さん・・・?気に障っちゃいましたか・・・」
「いえ!そんな事は無いですよ!!ただ言われてみれば私、初雪ちゃんの事いつの間にか自分の子供みたいに見てたのかなって思っただけで・・・でも結局過干渉できないでたまに話をして荷物を届けて髪を切ってあげる事くらいしか出来なかった訳ですし・・・もしそうならダメな母親ですよね・・・」
「そんな事無いですよ!きっと初雪も言わないだけで高雄さんに感謝してると思いますよ・・・?俺が簡単に言える事じゃないかもしれませんけど」
「そうだと良いんですけどね・・・さーて湿っぽい話してないでこれ、初雪ちゃんの部屋まで持っていくので提督も手伝ってください!今日はいつもより量も多いので!」
高雄さんは有無を言わさず俺に積まれたダンボールの一部を手渡してきた
「うわっと・・・!」
ダンボールの大きさはまちまちで大きな物もあったが重みはない。
一体何が入ってるんだろ・・・?
まあいいや。
とりあえず乗りかかった船だし初雪の部屋まで運ぼう
「これ、初雪の部屋の前まで運べば良いんですよね?」
「はい。残りも何回かに分けて運びましょう」
高雄さんも積まれたダンボールを何個か持ち上げた。
そして2人で初雪の部屋の前にダンボールを置いては玄関に戻りまた荷物を初雪の部屋の前に置いて行った。
そんな事をしていると何も知らないであろう初雪がとぼとぼとやってきた。
「んぁ・・・・?これ全部私宛の・・・・?」
初雪も部屋の前に積まれたダンボールに圧倒されているようだった
「全部私の・・・・?じゃ無いでしょ!?こんなにいっぱい何買ったの!?別に中身まで確認させろとは言わないけどあんまり無駄遣いしちゃダメでしょ!?やっと部屋から出てきてくれたと思ったそばから何やってるのよ全く・・・」
高雄さんが初雪に詰め寄る。
「いいじゃんべつに・・・それにこれ・・・私が買ったんじゃなくて勝手に送られてくるんだもん・・・・」
「勝手に!?どこから!?」
「あの・・・えーっと・・・・ああもう・・・!高雄さんには関係ない・・・でしょ?」
「関係無い事無いわよ!ここまで誰が運んであげたと思ってるの!?・」
「それは・・・・高雄さんだけど・・・・」
そんな高雄さんと初雪の言い合いを見ていると本当に初雪と高雄さんが母と娘のような関係に見えてきてしまった。
いや。性別的には父と息子なんだけど・・・
「今日は量が多かったから提督にも手伝ってもらったのよ?」
「・・・え・・・あ・・・・そう・・・なんだ・・・・ありがと・・・」
初雪は恥ずかしそうにこちらにぺこりと頭を下げてきた。
「いやいや。どーってことないって。それより今日はどうだった?久々の仕事・・・?というか演習だったと思うけど。天津風も初雪の事褒めてたぞ?」
「・・・うん・・・・良かった・・・あれくらいなら今の私でもできる・・・!」
初雪は得意げに鼻息をふんと吹いた。
「そりゃ良かった。その調子で明日からも頼むな!」
「・・・・やだ・・・・」
「へっ!?」
「・・・まずは週一からって言ったでしょ・・・?それに・・・この荷物片付けなきゃ行けないし・・・・明日はお休みする・・・・来週から本気出す・・・・・おやすみ・・・」
初雪はそう言うとそそくさとダンボールを部屋の中に押し込んでそのまま部屋に入って鍵をかけてしまった。
「ちょっと初雪ちゃん!?返事しなさい!!」
高雄さんがドアを叩くが向こうから返事は無い。
「はぁ・・・・ごめんなさいね提督折角手伝ってもらったのに・・・」
高雄さんが俺に頭を下げてくる。
「そうだわ。お礼と言ってはなんですが何か飲み物奢らせてください。」
「えっ、いいんですか?それじゃあお言葉に甘えて」
俺と高雄さんは俺を宿舎玄関口にある自販機へと向かい、高雄さんはサイフから小銭を出して自販機に入れた。
「何お飲みになりますか?」
「あっ、それじゃあミルクティーで」
「はい。どうぞ。今日は書類の整理に荷物運びまで手伝ってもらって本当にお疲れさまでした提督・・・それなのに初雪ちゃんがあんな態度で・・・本当に申し訳ないです」
高雄さんは自販機から出てきたミルクティーの缶を俺に手渡してくる。
「いえいえ。それでも初雪にしたら出てくるだけでも大きな一歩だったと思うんです。それにさっきの高雄さん、本当に初雪のお母さんみたいでした」
「そう・・・かしら・・・・」
「ええ。もう本当に親子みたいでしたよ」
「親子・・・かぁ・・・そうかも知れないですね。私・・・その・・・男ですから子供は授かれませんけど提と・・・いえ。愛宕と一緒に暮らしてやっぱりそういう気持ちがあったのかも・・・だから初雪ちゃんをいままでずっとお世話してきたんだと思います。おかしいですよね?血も繋がってないし男なのに勝手にお母さんぶるなんて・・・」
高雄さんは自嘲するが俺はそうは思わなかった。
実際初雪が引きこもった原因も仕方が無い事だと思うしきっと無理に出そうとする訳にもいかないと高雄さんもずっと悩んでいたんだろう。
でもそうやって初雪の事を気にかけてあげていたのならば血がつながって様が性別がどうだとかでなく親子に見えるし親子と言えるかもしれない。
「おかしくなんかないですよ!確かに血は繋がってないかもしれませんけどそれだけ初雪の事考えてあげてたんならそれはもう家族って言っても良いんじゃないでしょうか」
「そう・・・ね・・・あの人もそんな事言いそうだわ・・・・でも恥ずかしいから初雪ちゃんにはナイショにしててくださいね」
高雄さんは笑った。
「はい!」
俺のその言葉を聞いて安心した様な表情を浮かべたさんが
「あの、忘れる所だったんですけどこれ・・・天津風ちゃんに渡しておいてくれませんか?初雪ちゃんの荷物に紛れ込んでたみたいで」
そう言って小包を俺に手渡してきた。
凄く軽くて薄目の箱だ。
「は、はい。わかりました。ミルクティーごちそうさまでした。それじゃあこれさっさと天津風に渡してきます!おやすみなさい高雄さん」
「ええ。おやすみなさい提督」
高雄さんに別れを告げて天津風の部屋がある新宿舎へ向かった
「おーい天津風ー」
部屋のドアをノックしつつ天津風を呼ぶとドアがゆっくり開くと不機嫌そうに天津風がドアから顔を出してこちらを睨みつけてきた。
「何よ?今から寝る所だったんだけど?」
「あ、ああ。なんかお前宛に荷物が来ててな。これなんだけど」
小包を見せると天津風は部屋から出てきたので俺はそれを手渡した。
「えっ・・・私宛・・?誰からかしら・・・?芹本さんから・・・!?ちょっと開けてみてもいい?」
「あ、ああ良いけど芹本って誰だ?」
「私を艦娘にしてくれた科学者の人よ。それにしても今更荷物なんて何かしらね?何か施設に忘れ物でもしてたかしら?」
天津風はぶつぶつと呟きながらガムテープを器用に剥がして箱を開けた。
「えーっと・・・・なっ・・・・・・!!!!!これって・・・」
天津風が箱の中身を見た瞬間顔を真っ赤にする
「お、おい 何が入ってたんだ?」
「なんでも良いでしょ!?あなたには関係ないの!!とっとと帰りなさいよ!!!」
天津風はそう言うとドアをバンと音を立てて閉めた。
「なんだったんだアイツ・・・・」
まあいいや。目的は果たしたんだし・・・
はぁ・・・一日が終わると思うと急に眠くなってきたぞ・・・
今日は疲れたし吹雪も部屋で待ってるだろうから早く帰って風呂入って寝よう。
俺は軽く伸びをしてから自室へと歩き始めた。