ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
春風に連れられて僕は海水浴場に向かっていた。
結局お兄さんには見栄を張ってはみたけど胸のドキドキが治らない。
それどころか海水浴場に近づくたびに鼓動がどんどん早くなっているような気がする。
まさか長峰さんがあの長門さんだったなんて・・・それに僕を××鎮守府に着任させたのも長峰さんが手を回してくれてたからだったなんて私知らなかったし・・・あまりにもよくできた話だったけど長峰さんが艦娘だったのならそんなことにも合点が行くような気がする。
それにお父さんとお母さんが死んだのは私のせいだと僕の目の前で長門さんがぐしゃぐしゃに泣きながら僕に頭を下げてきたことはいまだに忘れられない。
そんな長門さんが素性を隠して身寄りのない僕を引き取ってくれてそれに学校にすら行く気が起きなかった僕に勉強を教えてくれたり色々な事をしてくれていたんだ。
「出来れば君にそんな道は歩んで欲しくない」
そんな長峰さんの言葉の意味が今になってようやくわかった。
長峰さんはずっと僕のお父さんとお母さんを助けられなかった事を後悔しているはずなんだ。
艦娘になるという事はそんな救えなかった人たちへの後悔を背負って行きていかなければいけないそう思うと長峰さんの言葉が僕にずしりと重くのしかかった。
僕は何も知らなかったばっかりに長峰さんの思いを自分の憎しみと復讐がしたいなんていう一時の感情で無下にしたんだ。
そう思うと自分がどれだけ愚かだったかを痛感させられてしまう。
昨日は一晩中そんな事を考えてあまり眠れなかったけど長峰さんにちゃんと会って話さなくちゃ・・・!
天津風としてでなく僕自身として!
そんな事を考えているうちに何年か前に作られた更衣室へとたどり着いた
「それでは天津風、着替えましょうか」
春風がそう言ってなんのためらいもなく男子更衣室の方へ歩いて行く
「ちょっと待ちなさい春風!!」
「あらどうしました?」
「なんで男子更衣室に入ろうとするのよ!?」
「なんでって男なのですから当然でしょう?」
「そ・・・そうだけど私たち男だけど艦"娘"なのよ!?それなのに男子更衣室を使うなんておかしくないかしら・・・」
「おかしいことなんかありません。脱いでしまえばすぐに男とわかるのですから」
「そ・・・そうだけど・・・」
でも私艦娘になってからなんだかおっぱいもお尻も大きくなってきてるし本当に男子更衣室なんか使って良いのかしら・・・
そんな事を考えていると
「あ〜天津風ちゃんに春風ちゃん!おっはよ〜」
朝からセミの声にも負けないくらい騒がしい那珂さんの声が聞こえてきた。
「あら那珂さん。おはようございます」
「も〜那珂ちゃんでいいってば〜!」
那珂さんは頬を膨らませて怒ったような素振りを見せてみる。
この人も僕と同じで男の人なんだよね・・・
僕もこれくらい吹っ切れて女の子になりきれていたらこんな事で悩まなくて済んだのかな・・・
「天津風、なにをぼーっとしているのです着替えますよ?」
「えっ・・・でも・・・」
男子更衣室に入ろうとするのを尻込みしていると
「2人とも着替えないなら那珂ちゃんお先に着替えちゃうね〜」
そう言って那珂さんは女子更衣室に堂々と入って行こうとするので
「ちょ・・・ちょっと那珂ちゃん待って!!私たち男の子なのよ!?」
とっさにそう呼び止めると
「ええ〜だってそこに艦娘の方は女子更衣室をお使いくださいって書いてるじゃない!それじゃあお先にね〜」
那珂さんはそういうと女子更衣室の中へ消えていった
よく見ると長峰さんの字で【本日貸切の為艦娘の方は女子更衣室をお使いください 長峰】
と書かれた張り紙が貼ってある
そっか・・・今日僕たちだけの貸切だったんだった・・・
でも女子更衣室に入るのもなんだか緊張する・・・!!
「は、春風女子更衣室に入るわよ!!」
僕は春風を連れて女子更衣室に足を踏み入れた。
なんだか本当に男として超えてはいけない事をしてしまったような気がするけどもうブラジャーもつけてるしパンツだって女の子用のだし思い返してみたらもうすでに僕・・・いいや私は女の子みたいな生活を送ってるじゃないか。
そして更衣室に足を踏み入れると
「阿賀野ちゃん!?起きてよ!!なんでこんなところで寝てるの!?」
那珂さんが何故かいびきをかいて女子更衣室の中で寝ていた阿賀野さんを起こしていた。
なんでこんなところで寝てるんだろうこの人・・・
「・・・・んぁ?あれ?那珂ちゃん?俺・・・じゃなかった阿賀野どうしてこんなところで寝てるの!?」
「こっちが聞きたいくらいだよ!阿賀野ちゃん誘いに行っても居ないし先に行ってるのかと思って来てみたらいびきかいて寝てるんだもん」
「あれ〜?阿賀野どうしたんだろ・・・提督さんと更衣室の前に居たところまでは覚えてるんだけどそれ以降の記憶がなくって・・・」
「も〜阿賀野ちゃんしっかりしてよ!ほら天津風ちゃんたちも来てるんだよ?」
那珂さんがこちらに話を振ってくる
「あ、おはようございます・・・」
私は頭をぺこりと下げた。
「2人ともおはよー!なんで寝てたのかわからないけど早く着替えて海行かなくっちゃね!」
阿賀野さんは立ち上がるや否や服を脱ぎ始めた
「きゃぁ!」
私は反射的に手で顔を覆う
「あら?天津風ちゃん結構ウブなんだ〜阿賀野のおっぱい気になってたりする?なーんちゃってわかるよ〜阿賀野も男の子だからね〜」
阿賀野さんがニヤニヤとこちらを見つめて来た
「ちっ・・・違います!そんな肉の塊要りません!」
私はとっさにそう返してしまったがやっぱり胸に目がいってしまってドキドキする反面心の奥底ではまだ自分も男なんだと少し安心した。
それから阿賀野さんはそのままショートパンツを下ろすとパンツには不自然な膨らみができていて、そこから私のなんかよりずっと大きなアレがぼろんと姿を現しやっぱりこの人も男なんだという事を再確認できてまた少し安心した。
それを気取られないように私はそそくさと水着に着替えると
「あ〜天津風ちゃんの水着可愛いね」
那珂さんがそう褒めてくれた
「そ、そうかしら・・・?男の子に見えない?」
「うん!十分女の子に見えるよ〜でも那珂ちゃんの方が可愛いからね!」
そういうと那珂さんが服を一気に脱ぎ捨てた。
「きゃぁ!急に脱がないでよ!!」
しかしそこには裸ではなく水着姿の那珂さんが立っている
「えへへ〜那珂ちゃん服の下に水着を着ていたのでした〜ど〜お?似合ってるでしょ?キャハ☆」
那珂さんはそういうや否やあざといポーズを決めてこちらに感想を求めてくるので
「え、ええ・・・似合ってると思う・・・わ・・・」
と返事をしておいた。
なんだか更衣室に居づらくなった私は
「春風、私先に海に行ってるわね」
そう春風に言い残して海の家に向かった。
きっとあそこに長峰さんが居るはず。
育田さんも先に話しておくって言っていたし長峰さんも私と似たような心境のはずだ。
そして海の家に着くと
「いらっしゃいませ〜なの・・・・」
育田さんが何やらまな板の上で野菜を切っていた
「あっ、育田さん!?何してるんですか?」
「あっ天津風ちゃん・・・イクのせいで色々しんどい思いをさせちゃってごめんなさいなの・・・」
育田さんは作業を止めて私に頭を下げて来た。
「い、いや育田さんのせいじゃないですよ・・・それより長峰さんたちは?」
「2人なら中に居るはずなのね。長門〜陸奥〜天津風ちゃんが来たの〜!」
育田さんが呼んでからしばらくすると海の家に備え付けられている簡易的な事務所のような場所から奥田さんが出て来た
「おはよう天津風ちゃん・・・いやソラくん。昨日も会ったけどソラくんとして会うのは久しぶりだね」
「そ、そうですね・・・」
奥田さんもお兄さんや育田さんのいうことには長門さんに付き添っていたもう1人の艦娘の陸奥さん・・・なんだよね?
陸奥さんの姿の時の奥田さんとは少ししか会ったことがないけどすごく美人だったのを覚えている。
それがまさか奥田さんだったなんて・・・
「あ、あの・・・長峰さんは?」
「ああ・・・ごめんねソラくん。彼なんだか急に会うのが怖くなったって言って部屋から出て来てくれなくって。ソラくんもきっと勇気を出してここまで来てくれたはずなのに君なんかよりずっと気が小さくて我ながら情けないよ・・・でも今日のうちには絶対引きずり出してくるから他の艦娘の子と海で遊んで待っててくれないかな・・・?」
奥田さんは申し訳なさそうにそう言った。
「は、はい」
やっぱり長峰さんも私と同じ気持ちだったんだ。
会うのが怖い。私もそう思ってた。
でもそう思っている相手に無理やり押しかけるのはもっと怖かった私は渋々奥田さんに言われた通りに海で遊んで待つことにした。
ふと海水浴場に目をやると既にお兄さんが大淀さんと吹雪の3人で楽しそうに遊んでいる。
なんであんなに楽しそうなのよ・・・私も・・・
「私も混ぜなさーい!!」
私はなんだか居ても立っても居られなくなってお兄さんたちの方に向かって走った。