ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
前回までのあらすじ なんだかんだで阿賀野と大淀がビーチバレー対決を初めてしまった。
というか1対1でネットもないビーチバレーとかゲームとして成立するのか?
「さあ勝利の女神はどっちに輝くのか!?那珂ちゃんドッキドキだよー!」
砂に書かれたコートの上で睨み合う2人を那珂ちゃんが俺の隣で目を輝かせて見つめている。
「な、なあ那珂ちゃん・・・止めなくていいのか?」
「1人の男を巡って争う2人をただ見守ることしかできない那珂ちゃん・・・ああなんて罪なオンナなのかしら・・・2人ともがんばれーっ」
那珂ちゃんは恍惚の表情を浮かべている
ああダメだ。完全に今の状況に酔ってるよこの人。
それにオンナじゃないだろあんたら・・・・
そうこうしているうちに大淀の放ったボールが阿賀野のコートに飛んでいく。
阿賀野はレシーブの体勢を取っているがなんだろう・・・なんかすごく胸を強調してるような気がするぞ
そして阿賀野はボールが到達しようとした瞬間なぜかレシーブの体勢を解いた。
「おおっとここで阿賀野ちゃんレシーブの体勢をやめたー!一体どういうことだー!?このままだと直撃ルートだぁ!!」
横では那珂ちゃんがそんな実況まがいなことを言っているけど自分から勝負をふっかけといて負けるつもりなのかあいつ・・・
そして次の瞬間ボールはそのまま阿賀野の胸に命中する。
「やぁん♡」
阿賀野の胸の弾力ではじき返されたボールは弧を描き大淀のコートに緩やかに落下した。
「いったぁ〜い おっぱいに当たっちゃったぁ〜でも大淀ちゃんのコートで落ちたから阿賀野の得点だよね〜?」
阿賀野は勝ち誇った顔で胸を強調してこちらを見てくる。
あいつまさかわざと胸に当てて・・・しかもレシーブを成功させやがっただと・・・
なんてやつだ。
「おおっとなんて事だー!!阿賀野ちゃんのおっぱいに当たったボールがそのまま大淀ちゃんのコートに打ち返されてしまったぞー!?なんという弾力なんだー!!これぞおっぱいバレー・・・いやおっぱいレシーブだぁぁぁ!!!阿賀野ちゃんのおっぱいレシーブが開幕一点をもぎ取ったぁぁぁぁぁ!!!!」
那珂ちゃんは拳を握り声を上げた。
「那珂ちゃんなんかキャラ変わってないか・・・」
「・・・あっ、きゃはっ☆そんな事ないよぉ〜あっ、そうだ 那珂ちゃん審判だったね フィフティーンラーブ!」
「いやそれテニスだから」
「えへへ〜やったぁ!胸に当たっちゃったけど早速一点ゲットだよー!提督さんもうちょっと待っててね!」
阿賀野はこちらにウインクをしてきた。
「ふ・・・ふざけないでください!胸でレシーブなんて反則です反則!!」
大淀は顔を赤くして言う
「え〜胸でのレシーブが反則なんてルールないもんねー 大淀ちゃんもしてみたらどう?」
阿賀野はそう言うと勝ち誇った様にまた胸を強調して見せた。
「ぐぬぬぬぬぬ・・・」
大淀は反論できず苦虫を噛み潰した顔でボールを阿賀野に渡した。
あいつ・・・自分の胸の大きさを見せつけるためだけにあんなことを・・・
最初からそこまで考えて勝負をふっかけたのか・・・
阿賀野恐ろしい子・・・!!
「さーてそれじゃあ次は阿賀野のサーブね えーいっ!」
阿賀野のサーブは大淀のコートに向かって飛んでいく
「ふふっ・・・!そちらがその気なら私も全力で叩き潰すまでです!」
大淀は飛んできたボールめがけて飛び上がり手を振り上げた
「ここで大淀ちゃん早速勝負に出たぁ!早速アタックだぁ!!」
しかし手はするっと空を切りボールはぽとりと大淀のコートに落下した。
「あ、あれ・・・?」
大淀は不思議そうな顔で足元に落ちたボールを見つめている。
「ラブサーティーン!!阿賀野ちゃん二点先取だぁ!!」
那珂ちゃんは指でピースサインを作って空高く上げた
「だからそれテニスだって」
もう突っ込むのもしんどくなってきたぞ・・・
それにしてもあいつのスポーツ苦手は艦娘になっても治ってなかったのか・・・
その後も阿賀野の一方的な試合が続き9対1(阿賀野が俺の方になんかアピールしようとした隙に大淀が一点入れた)で大淀が追い詰められてしまった。
別に大淀が特別弱い訳ではなく阿賀野が予想以上に強かったのだ。
「ついにマッチポイントだぁ!このまま提督は阿賀野ちゃんの手に渡ってしまうのかぁ!?」
流石に砂まみれになってるのにほぼ一点も返せていない大淀がいたたまれなくなってきた
。
「お、大淀・・・」
「いいんです謙・・・勝負を受けてしまった以上は私だって真剣に最後までやるつもりです」
「へぇ・・・でも次は阿賀野のサーブ もうあと一点だし提督さんも待ちくたびれてるだろうから降参してくれてもいいんだよ?」
阿賀野はもう勝ちを確信したのか自信満々にそう言った
でもどうするんだ大淀・・・お前このままじゃ勝ち目もないし・・・
「・・・・降参なんてしません さっき言いましたよね最後まで真剣にやると それに私はまだ負けていません!」
大淀は阿賀野を睨みつけてレシーブの体勢を取った。
「へ、へぇ・・・なかなか根性あるのね。ずっと出撃もしないで提督さんの側にいるだけの弱虫だと思ってたけどー」
「ふん!その言葉、胸にくっついた塊と一緒に後悔させてあげます!さぁ早くサーブでもなんでも打ってきたらどうですか?」
大淀は右手を出して阿賀野を挑発する。
そんな2人の様子を目を輝かせて横では那珂ちゃんは見ているが吹雪はもう飽きてしまったのか足元の砂になにやら落書きを始めていた。
「そっちがその気なら大恥かかせてあげるんだから!」
そうこうしているうちに阿賀野がサーブの体勢に入った。
その構えから相当強めのサーブを打つつもりなのだろう。
「えいっ!」
しかしボールに手を打ち付ける瞬間阿賀野は力を緩めボールはゆっくりと大淀のコートにギリギリ入るあたりめがけてゆっくりと落ちていく
「おーっとフェイントだぁ!大淀ちゃんは強いサーブを警戒して後方へ下がってしまっているが間に合うのかーっ!!!」
那珂ちゃんが声をあげる。
大淀は一体どうするつもりだろう?あれだけ大見得を切ったのになにもしないようなやつではないと思うんだけど・・・
そう思った次の瞬間大淀はボールに食らいつく。
「弱いサーブを打ったのが失策でしたね!」
大淀はゆっくり浮かんだボールをアタックで返した
「おおっと大淀ちゃんボールを返したー!!」
しかしボールは風に飛ばされコートの外へ落ちてしまう
「・・・あっ」
大淀は力が一気に抜けてその場に膝をついた
「10対1!!提督争奪☆ガチンコタイマンビーチバレー対決の勝者は10対1で阿賀野ちゃんだぁぁぁぁ!!!」
また那珂ちゃんが声を上げる。
「やったぁ!阿賀野の勝ちぃ!勝ったよ提督さん!!」
「うう・・・私・・・負けちゃった・・・」
「それじゃあ提督さん!阿賀野に日焼け止め塗ってくれるよね?」
阿賀野がそう言って俺の方に胸を揺らして走ってくる
「あ、ああわかった・・・でもちょっと待ってくれ」
俺は阿賀野に一言かけてからコートに膝をつく大淀の方へ向かった
「・・・謙・・・私負けたのになんで・・・?」
「ああ。確かに完敗だったな」
「・・・なに?バカにしにきたの?」
「い、いや阿賀野も予想以上に強かったしお前も頑張ったなって思ってさ。立てるか?」
俺は大淀に手を差し伸べた。
「う・・・うん・・・」
大淀は恥ずかしそうに俺の手を取ってゆっくり立ち上がる
「おおっとここで予想外の展開だぁ!!提督が負けた大淀ちゃんの手を取ったぁ!これは大淀ちゃんが試合に負けたが勝負には勝ったのかー!?」
「ああもううるさいな!大淀をこのまま放っておけないだろうが」
「・・・謙・・・」
「あーもうずるいよ大淀ちゃん!阿賀野が勝ったのにー」
阿賀野が頬を膨らませてこちらに歩いてくる。
その時だった。
阿賀野の水着のトップが風で飛ばされてしまった。
どうやらさっきのバレーボールをしているうちに徐々にはだけてしまっていたようだ。
そこからたわわな胸が露出する
「うおぁぁぁぁ!」
「きゃぁ!!」
俺はとっさに目を手で覆い阿賀野はとっさに胸を隠す
「おおっとここでアクシデント!ポロリもあったぁ!!」
那珂ちゃんはまだ実況を続けていた
「もー那珂ちゃんそんなこと言ってないで阿賀野の水着取ってきてよー」
「えー那珂ちゃん日に焼けるの嫌だしぃ・・・」
そんな2人を見かねてか吹雪が走って阿賀野の水着を拾って阿賀野に手渡した。
「はい阿賀野さん」
「ありがと〜!吹雪ちゃんは優しいね。いい子いい子」
阿賀野は片手で胸を隠しながら吹雪を撫でた。
「それじゃあすぐ着ちゃうね」
阿賀野は器用に水着を付け直した
「お待たせそれじゃあ提督さん、行こっか」
「け、提督・・・負けてしまったものは仕方ないですし艦娘との交流も提督のお仕事です。でも節度は守ってくださいね・・・それじゃあ吹雪ちゃん 悔しいけど私たちだけで遊びましょっか」
大淀は少し不服そうに言って吹雪と一緒に海の方へ向かって行った。
「それじゃあ那珂ちゃんもお邪魔になるといけないから退散するね」
那珂ちゃんもそう言うとさっきまで寝ていたビーチベッドへ戻って行った。
「大淀ちゃんからもお許しもらったしそれじゃあ早速・・・うふふふ」
阿賀野がこちらを見つめてくる
「な・・・何すればいいんだよ」
俺は生唾をゴクリと飲み込む。
すると
「ジュース買って来て!提督さんのおごりで」
あまりにも予想外な言葉に呆れてしまった。
「はぁ?そこまでもったいぶっといてパシリ!?」
「だってぇ〜さっきあれだけ運動したんだもん 阿賀野喉乾いちゃった〜それに阿賀野勝ったんだよ?ちょっとくらい褒めてくれてもいいんじゃない?」
「はぁ・・・・わかったよ。何がいいんだ?」
「うーんとねーそれじゃあコーラで」
「わかった。そんじゃあちょっと買ってくるから待っててくれ」
俺はしぶしぶ海の家に飲み物を買いに行くことにした。
海の家に入ると奥田さんが笑顔で迎え入れてくれた
「またまたいらっしゃーい 今度は何の用?」
「飲み物買いに来たんですよ。コーラ二本ください」
「はいはーい!それじゃあ300円ね」
俺は小銭入れから300円を取り出して奥田さんに渡した
「はいまいどありー!さっきの見てたよ〜提督くんも大変だね 僕も現役だったら混ざってたかもね〜」
「ははは・・・」
奥田さんの冗談には聞こえなかった言葉を俺は笑うしかなかった。
そして海の家を後にしようとした瞬間
「おーい」
どこか聞き覚えのある声が座敷の方から声がした
「おはようさん」
「おはようございます提督。大変だったわね」
声の方を見てみると座敷からめかし込んだ高雄さんとその向かい側にいるどこか見覚えのある金髪の男の人がこちらに歩いてきている。
「おーいなにぼーっとしてんだ?」
金髪の人が俺に声をかけてくる・・・
「なんだよそんな人の顔ジロジロと見て」
「い、いや・・・あなたとどっかで会った気がするんですけど・・・」
「はぁ?この格好でこの間会ったばっかりじゃねぇかもう忘れたのかよ。あ”ー・・・こほん・・・ぱんぱかぱーん♪・・・ってこの格好の時にあんまり言わせんな恥ずかしい・・・ 」
男の口から聞き慣れた声が聞こえてきた。
そうだ。この間鳳翔さんの店に呼びつけられた時に見た男装した愛宕さんだ。
「あ、愛宕さん!?」
「はぁ・・・やっと気付いたか」
この間はきちっとした服装だったけど今日は凄まじくラフな格好だから気づかなかった
「愛宕さんなんでまた男の格好してるんです?」
「俺だってずっと女のフリしてると疲れるんだよ。一昨日のだって協会のジジイ共は俺のこといやらしい目で見てくるし料理渡す時に手をねっとり触ってくるしでもう疲れんだよ。はぁ・・・女のフリも楽じゃねぇよ・・・」
愛宕さんはため息をつく。
一昨日裸エプロンみたいな格好をしてノリノリで料理を配っていた愛宕さんとは思えない言動だった。
「えっ・・・何ですかそれ・・・いつもより増して楽しそうにしてるように見えたんですけど」
「バーカあんなのビジネスだよビジネス 協会のおっさん共に媚びうっとけば旨い酒やら魚やらが飛んでくるからしぶしぶやってんだっての 何が楽しくて男に媚び売らなきゃいけねーんだよチクショー」
本当にいつもの愛宕さんと同一人物か疑いたくなるくらいに女性の一片も見せない彼はそう言ってまたため息をついた
「提督、彼こんなこと言ってるけど協会の皆さんに美味しそうに料理食べてもらえてまんざらでもないのよ?彼がまだ提督だった時より今の方がずっと協会の方達の食いつきも良くて美味しそうに食べてもらえるからっていつもより料理もお化粧も気合い入ってたもの」
「ばっ、バカそれを言うなっつったろ!?」
愛宕さんは恥ずかしそうに言う
「えーだってあなたが提督にそんな心にもないこと言うから・・・それに昨日のあなたすっごく可愛かったし」
「っつ・・・!そりゃ可愛いに決まってんだろ・・・お前に似てるんだから・・・」
愛宕さんは小声で呟く
「ん〜何か言ったかしら?」
「と、とにかく今日は女のフリは休みなんだよ!せっかくの休みだしこれから久々になんも気にせず高雄とデート やっぱこう言う格好の方が落ち着くぜ」
「やだデートなんて・・・・バカ・・・」
高雄さんは少女のように頬を赤らめている
「はぁ?デートにきまってんじゃねぇか?お前もその気でめかし込んで来たんだろ?」
「え、ええ・・・まぁ・・・」
「今日は久々に楽しもうな」
「・・・はい」
2人は俺の目も憚らずにいちゃいちゃとし始めた。
なんで俺ジュース買いにパシられた先でこんなバカップルのノロケ話聞かなきゃいけないんだろう・・・?
「つーわけで俺達そろそろ行くわ じゃあな」
愛宕さんはそう言うと海の家を出ようとする
「えっ、どこ行くんです?海で泳ぐんじゃないんですか?」
「いい年こいた俺たちがお前らと混ざって海で遊ぶのも変だろ?だからこれから高雄と出かけるんだよ。ここにはただ長門と陸奥の顔見に来ただけだ」
「ええ。ですから今夜は私たち遅くなるので気にしないでくださいね。それともう大丈夫だと思いますけどあまり無理はしないでくださいね。それじゃああなた・・・そろそろ行きましょ♡」
高雄さんは愛宕さんの腕に抱きついた
「つー訳だ。そんじゃ俺は高雄と楽しんでくるからお前もうまくやれよなそんじゃ陸奥ー長門にもよろしく伝えといてくれよ」
「それではでは提督、失礼しますね」
そう言うと2人は腕を組んで海の家を出ていった。
なんだったんだ今の・・・・男同士のはずなのに新婚の夫婦かバカップルにしか見えなかったぞ・・・
なんで羨ましいとか思っちゃってんだ俺・・・
「羨ましいとか思っちゃってる?」
突然奥田さんが声をかけてくる
何だよこの人エスパー!?
「い、いやそんなことは・・・」
「あの2人ほんと仲良いよね 僕たちも負けてないけど」
ふとそんな2人を見て疑問が俺の中に生まれた
「あの・・・愛宕さんってどんな提督だったんですか?他の提督に会ったことないから他の人ってどんな感じなのかなって」
思い切って奥田さんに尋ねてみると
「うーんダメな人・・・かな?あっこれあの人には秘密ね」
「即答ですね」
「うん。だってだらしないし酒癖は悪いしスケベだしタバコ臭いし・・・まあでも悪い人ではないし嫌いじゃないよ」
「それフォローになってなくないですか?」
「うーんそうとも言うかなー」
「そこ認めちゃうんですか!?」
「だって事実だし・・・でも指揮と料理はそこそこ一級品だったんだけどそれ以外何もできない人って感じ?確かにダメな人だったけど僕たちみたいな男の艦娘にも普通の艦娘の子にも分け隔てなく接してくれたから人望はそこそこあったんだよね」
「そうだったんですか・・・」
「まあでも僕は提督があの人で良かったって思ってるよ・・・一応ね まあ今となってはそんな立場もなく付き合ってる良い友達って感じだけどあれでも僕たちのこと気にかけてくれてるんだよ?」
「へぇ・・・そうなんですか」
「まあ昔話はこのくらいにして阿賀野ちゃんが待ってるんでしょ?早くコーラ持って行ってあげなきゃぬるくなっちゃうよ」
「あ、ああそうでした!それじゃあまた!」
奥田さんにお礼を言って俺は海の家を後にすると
「阿賀野ちゃんまたおっぱい大きくなってるの!」
「ひゃんっ♡ちょっ・・・イクちゃんせんぱ・・・・ひっ♡ひゃめっ♡そこ弱いのぉ・・・♡そんな激しくしちゃやだぁ♡」
そんな阿賀野の甘い声が聞こえて来た。
そういえば育田さんの姿が見えなかったけど一体阿賀野のやつ俺がコーラ買いに行ってる間に何してるんだ・・・
「おとなしくするのね!元はと言えば阿賀野ちゃんがいけないの!」
「ひゃうん♡そんなところまで入れないでぇ♡あんっ♡いやぁぁぁぁん♡」
声のする方に行って見るとさっきまで那珂ちゃんが寝ていたビーチベッドの上でスク水を着た育田さんが阿賀野の上に馬乗りになっているではありませんか。
ベッドはギシギシしなってるしこんな真昼間から一体何してんだあの2人!?
なんかのプレイなのか?
どうする・・・?こんなの提督として止めるしか・・・いやでも近寄るの怖いし・・・もうちょっと見ていたい気も・・・
って俺なんで男同士で白昼堂々まぐわってる場面を見ようとしてんだ!?
い、いけない・・・やっぱり止めるべきだ
「ちょっと育田さん!阿賀野!こんな昼間から何してんですか!?」
「も〜阿賀野ちゃん大袈裟なのね!イクはただ阿賀野ちゃんが日焼け止め塗ってないって言うから塗ってあげてただけなのー!」
俺に気づいた育田さんは手を止めてベッドから降りた
日焼け止めを塗ってただけ・・・?
その割にはなんか聞こえちゃいけない声が聞こえた気が・・・
「ほんとですか?」
「ほんとなの!ま、まぁ阿賀野ちゃんが海水浴場開放のこと教えてくれなかったお仕置きも兼ねて・・・なのね!」
ベッドでは阿賀野が艶のある吐息を吐きながらピクピクと震えている。
「あらら・・・ちょっとやりすぎちゃったの!てへっ」
「てへって・・・一体何したんですか」
「ちょ〜っと身体がこってたからマッサージもかねて日焼け止め塗ってあげただけなの!それじゃあイクは泳いでくるからあとは若いお二人に任せたのー!!海がイクを呼んでるのー!!!!!!」
「え、ちょ・・・待ってくださいよ」
俺の呼び止めなど聞く耳も持たないと言わんばかりに育田さんは海の方へ猛ダッシュで駆けていってしまった。
そして俺とベッドで横たわる阿賀野だけが残された訳で・・・
とりあえず阿賀野を起こさなきゃ
「おーい阿賀野・・・生きてるかー?」
ベッドの上で虚ろな目をして倒れている阿賀野に俺は恐る恐る声をかけてみると
「オレハドコ・・・ワタシハダレ・・・・ってはっ!て・・・ててて提督さん!?おれ・・・わた・・・阿賀野どうなってたの!?」
阿賀野は我に返ったのかベッドから飛び起きた。
「いやこっちが聞きたいんだけど・・・なんか育田さんに変なことされてたぞ」
「へ、変なことってイクちゃん先輩阿賀野が今日のこと教えなかった事と昨日L○NE既読無視した事怒ってたみたいで日焼け止め塗られるついでにあんなことやこんなことされちゃったみたい・・・はぁ・・・せっかく提督さんに塗ってもらいたかったのになーでも先輩マッサージ師の資格持ってるだけあって今嘘みたいに身体が軽いんだよー」
阿賀野はその場でぴょんぴょんと飛び跳ねて見せた。
しかし日焼け止めは育田さんが塗ってくれたみたいだし俺がやらなくて済んだってことだな。
俺はどこか残念な気もしたが胸を撫で下ろした。
「そ、そうなんだ・・・結構色々やってるんだなあの人・・・あっ、これ 頼まれてたコーラ」
「あっ、ありがとね提督さん!それじゃあいっただっきまーす」
阿賀野はそう言うとコーラを一気に飲み干した
何度見てもこいつの食いっぷり飲みっぷりはどうみても野郎のそれですごく男らしい
「ぷっはぁ!ごちそうさま!そうだ提督さんもイクちゃん先輩のマッサージ受けてみる?きもちいよ〜頼んであげようか?」
「い、いや遠慮しとくよ」
「そう・・ざんねん」
「で、これから何するんだ?もうこれ以上パシリはごめんだぞ それに大淀に釘刺されたしあんま変なこともしないからな」
「・・・ふぅん。せっかく阿賀野が勝ったのにそこは大淀ちゃんなんだ・・・・ま、いいや!ちょっと2人でお話ししたかっただ・・・・ぅげぇぇぇぇっぷ!!」
阿賀野はそう言いかけたところで大きなげっぷをした。
「ご、ごめんなさい提督さん・・・コーラ一気飲みしちゃったから出ちゃった・・・」
阿賀野は恥ずかしそうに言った
「阿賀野お前そう言うの気にしないと思ってたけどちゃんと恥ずかしがるんだな」
「もーひどいよ提督さん!阿賀野だってそれくらい気遣うもん!」
「ほんとかよ・・・いつも飯食った後にしてるだろ」
「・・・へっ・・・?見られてた・・・!?」
「見られてた・・・じゃねーよ多分みんな知ってるぞ」
「い、いやでも今は提督さんと2人きりだから・・・」
阿賀野は言葉を詰まらせてもじもじとしている
「で、話がしたいって一体何の話だよ」
「あーそうだった・・・・えーっとね 弟の話なんだけどね・・・迷惑だったら聞いてくれなくてもいいんだけど・・・」
阿賀野は言いづらそうに続けた。
弟?前に帰省した時に自分の現状を打ち明けてからたまに連絡取るようになったとは聞いてたけど俺に今までそう言った話をして来た試しがなかったから少し身構えてしまう
「い、一応聞くだけなら聞くけど・・・」
「・・・そう ありがと提督さん えーっとね・・・また帰ってきて欲しいって言われちゃって」
「えっ・・・それって急ぐのか!?」
「い、いやこれから海水浴場運営のお手伝いもしなきゃだし今すぐじゃないよ 秋頃になるかなぁ」
「秋か・・・」
「でもね、阿賀野帰ろうかどうか悩んでるんだ」
「どうしてだ?」
「だって・・・呼ばれた理由が三者面談なの うちって親が居ないでしょ?それで親の代わりに面談受けに来て欲しいって言われたんだ でもね代智の・・・弟の進路なんて怖くて聞けなくって」
「弟さん今幾つなんだ?」
「17歳の高校2年生だね」
「そうか・・・進路決め初めてなくちゃいけないくらいだな」
俺が高2の時は全くそんなことも考えてなかったが多分秋ぐらいに進路面談があった気がした。
その時とりあえず進学したいですって言ったら親と先生にめちゃくちゃ怒られたんだっけ
「弟は私と違って頭のいい子でね きっと大学に行きたいって思ってるはずなんだけどきっと私や家のこと考えて就職するって言うと思うんだ・・・私が至らないばっかりに・・・でもそんな現状は私もわかってるつもりなの だから弟になんて言ってあげればいいのかわからなくて・・・ごめんね こんな話されても困るだけだよね」
思ってたよりも難しい話題だったか・・・
そう言われても俺には阿賀野に休暇をあげるくらいのことしかできないし・・・
「俺には阿賀野みたいに兄弟も居ないし阿賀野に比べたらまだ恵まれてた環境でここまで何も考えずに来ちゃった人間だからあんまり偉そうなこと言えないと思うんだけどやっぱり行ってあげた方がいいんじゃないか?それこそ電話やらL○NE越しで話すより面と向かってちゃんと話聞いてやった方が俺はいいと思うんだ 弟さんも多分自分のこと聞いて欲しくてお前のこと呼んだんじゃないか?ごめん 俺にはそんなことくらいしか言ってやれない」
「・・・提督さん・・・ごめんねせっかくのお休みの時にこんな話させちゃって・・・うん!それじゃあわかった!阿賀野弟と会ってくる!たぶんまた提督さんに背中を押してもらいたかっただけだったのかもね・・・」
「・・・そうか また詳しい日程とかわかったら教えてくれよ」
「うん!でも阿賀野そのまま帰ってこなくなっちゃっても知らないよ〜?」
「えっ!?それは困る・・・かも」
「なーんて冗談冗談 今の私は阿賀野で提督さんの艦娘なんだから勝手に提督さんのところから居なくなったりなんてしないわよ・・・なーんちゃって!さあ暗い話はおしまい!!阿賀野たちも泳ぎに行きましょ!」
「暗い話ってお前が勝手に振って来たんだろ・・・まあいいや そうするか!」
俺は手に持っていて少しぬるくなったコーラを流し込んで海の方へ向かおうとすると那珂ちゃんが何やら大急ぎでこちらに走ってきた
「提督!大変だよ!!」
「あれ?那珂ちゃん?そう言えばベッドにいなかったから気にはなってたんだけどどこ行ってたんだ?」
「那珂ちゃんも何だか遊びたくなっちゃったから大淀ちゃんと吹雪ちゃんに混じって遊んでて・・・ってそれどころじゃないの!天津風ちゃんと春風ちゃんが流されちゃったの!!」
「流された!?」
「うん・・・遊んでる時に吹雪ちゃんが天津風ちゃんたちも呼ぼうって言うからみんなで探しに行ったんだけどどこにもいなくって・・・それでよく見たら結構遠くまで流されてたの!こっちからの声も届かないしあのままじゃもっと流されちゃうかも・・・・それにこのいい天気だし熱中症になっちゃうかも・・・どうしよう 休暇だから艤装もみんなメンテナンス中で使えないし」
那珂ちゃんは半べそをかいて言った
俺の責任だ。
遠巻きに見てやれば大丈夫だろうと思っていたが完全に失念してしまっていた・・・
いくら艦娘とはいえ天津風は・・・ソラはまだ年端もいかない子供なんだからあそこで呼び止めておくべきだったんだ
「ど・・・どうしよう・・・俺のせいで・・・」
俺は軽いパニックに陥ってしまう
「提督さん落ち着いて!とりあえず阿賀野はイクちゃん先輩探して助けてもらえないかお願いしてみる!提督さんは奥田さんに言って来て!」
阿賀野はそう言うと海の方に走って行った
「あ、ああわかった」
「それじゃあ那珂ちゃんも提督に付いていくよ 天津風ちゃんたちの場所知ってるの那珂ちゃんたちだけだし!」
俺は那珂ちゃんとともに海の家へ走った。
「奥田さん!!大変なんです・・・!!俺が目を話したせいで天津風と春風が離岸流で流されて・・・」
「なんだって!?わかった・・・すぐ何とかするから待ってて」
奥田さんはそう言うと併設された簡易的な事務所へと入った
それからしばらくしてそこから長峰さんが血相を変えて飛び出してきて俺の肩に掴みかかってきた
「どうして目を離したんだ?提督たるもの艦娘たちには絶えず目を配るのが最低限の義務だろう!?それにあの子は・・・あの子は・・・・」
長峰さんは声を荒げる
確かに長峰さんの言う通りだ
「ご・・・ごめんなさい・・・」
「こーら。今は提督くん怒鳴ってる場合じゃないでしょ?元はと言えばライフセーバーのバイトが全然集まらないし艦娘の警護だけでいいだろって言われて経費削られて今日はほぼ見回りゼロにせざるを得なかったこっちにも非はあるんだからあんまり怒らないの」
事務所から奥田さんが出て来て長峰さんを諌めた
「・・・すまなかった提督くん・・・あの子のことになって我を忘れてしまった」
「・・・いえ・・・長峰さんの言う通りですし・・・それで・・・俺はどうしたら」
「いや君は何もしなくていい 私がすぐに助ける!那珂くん、場所を教えてくれ」
「は、はいっ!こっちです!!」
長峰さんは那珂ちゃんと共に海の家を出て行ってしまった。
結局肝心な時に俺は何もできないのか
そんな無力感が俺を襲った
「提督くんごめんね あの子のことになると長門ムキになっちゃうから」
「・・・いえ これでも一応天津風のことを任された俺に責任があります・・・でも俺・・・結局何もしてやれてなくて・・・」
「そんなに気負いしなくても大丈夫よ それに長門も私結局あの子に何もしてあげられなかったんだから」
「どう言うことですか?」
「私も長門もあの子の両親を助けられなかったことを負い目に感じててね あの子との距離をどうしても縮められなかったの でもね、昨日のあの子を見てたら今までにないくらいに楽しそうにしてて・・・結局私たちはあの子を更に厚い殻に閉じ込める手伝いしかできてなかったってことを痛感させられたのよ」
「・・・奥田さん・・・」
「だから長門は尚更自分の正体をあの子に知られたくないって言ってたんだけどイクちゃんが言っちゃうからめんどくさいことになっちゃって・・・はぁ・・・」
奥田さんがため息をついた直後どこからともなくバイクのハウリング音に似た音が聞こえて来た
「さあ、こんなところで突っ立ってないで早く提督くんも見に行ってあげて 私もすぐ行くから」
「は、はい・・・!」
俺はそのまま海の家を飛び出した。
そして大淀たちが集まっていたのでそこまで走った
「大淀!2人はどうなったんだ!?」
俺は大淀に尋ねる
「あっ、謙どこ行ってたの!?あそこあそこ!」
大淀が指をさした方を見ると相当小さくなった2人の姿がぼんやりと見えた
「・・・あんなに流されたのか・・・クソッ今からでも泳いで助けに!!」
俺はいてもたってもいられなくなって海の方へ向かおうとするが大淀が俺の手を強く握って離さない
「離してくれ!」
「バカ!離すわけないじゃない!!あんなところまで泳げたとしてもどうやってここまで戻ってくるの?謙まで遭難しちゃうでしょ!?」
「だって2人がああなったのは俺がちゃんとしてなかったから・・・」
「後先も自分のことも考えないで勝手に突っ走らないで!もう謙が他の誰かのために危険な目に遭うところを見たくないの・・・・」
大淀の声ではっと我に返る
あいつにこの言葉をかけられるのは初めてのことではなかったからだ。
「じゃあどうすりゃいいんだよ・・・」
その時またハウリングのような音がしたと思ったら流された2人の元に水上バイクが向かっていき2人とマットを乗せると岸に向かって走り出す。
一体誰が乗ってるんだ?遠くてよく見えない
他に居合わせていたみんなは天津風が助かった事に安堵の息を漏らしていたが俺は安堵よりも自分が何もできなかった事に対する無力感と罪悪感に駆られていた。
そしてバイクは俺たちから少し離れた岸に止まり2人を下ろすと再び来た方向に戻って行ってしまった
「天津風ー!春風ー!!大丈夫かー!?」
バイクから2人が降りた2人の元へ駆け寄ると涙目になった天津風が俺に抱きついてきた
「おわっ!天津風!?」
きっとまた怒られると思っていただけに予想外の行動に俺は驚きを隠せなかった
「うわぁぁぁぁん!お兄さんごめんなさい!!僕が勝手な事したから!!」
「お、俺もごめん・・・あの時止めてればこんな事にはならなかったんだ・・・」
そんな俺たち2人のことを春風が微笑ましそうに見ていた
「春風!お前は大丈夫か?」
「え、ええ・・・少々暑いですがまだなんとか大丈夫です・・・でもお水をいただけるとありがたいのですが・・・」
春風は平静を装っては居るものの少し息が荒かった。
「よ、よしわかった!水だな!とりあえず海の家まで歩けるか?」
「え、ええ・・・」
「天津風お前は大丈夫なのか?」
「・・・うん」
天津風はそう小さな声で言うが俺から離れようとはしなかったのでそのまま抱きつく天津風をなだめながら春風の手を引いて海の家へ向かった。
すると海の家から奥田さんがペットボトルを二本持ってこちらに駆け寄って来た
「おーい!大丈夫!?」
「あっ、奥田さん!春風が熱中症になりかけなんです!水を早く」
「そんなことだろうと思ってとりあえず経口補水液用意しといたわ!」
奥田さんが2人にペットボトルを手渡すと2人はすかさずそれを飲み始めた
「ふぅ・・・なんとか間に合ったみたいでよかったよかった それにしても長門折角助けたのにそのまま逃げなくともいいと思うんだけどねぇ・・・」
「・・・逃げる?」
「ああまだ気づいてなかった?提督くん結構鈍チンね さっきの水上バイクに乗ってたの長門よ」
「そうだったんですか・・・って天津風!?それじゃあ長峰さんとは話せたのか・・・?」
俺が尋ねると天津風は小さく首を振った。
「あらら・・・結局まだ何も話せてないのね あっ、イクちゃんから聞いてると思うけど私の事も覚えてるかしら?」
奥田さんはそう言うと被っていた帽子を取り後ろ髪を手であげて見せた
「・・・陸奥さん・・・ですよね・・・」
天津風はまた小さな声で言った
「ごめんね・・・ずっと黙ってて・・・」
奥田さんのその言葉に天津風は何も言おうとはしなかった。
そして海の家に着くと大事を取って2人を座敷寝かせた。
そんな2人が心配だった俺はずっとつきっきりで2人を見ていたが
それからしばらくして
「お兄さんごめんなさい・・・」
横になった天津風がまた小さな声で言った
「なんで謝るんだよ」
「・・・だってあたしが勝手な事したからこんな事になっちゃって・・・春風も巻き込んじゃってそれに他のみんなにも迷惑かけて・・・」
「確かに普通ならお前が勝手な行動をしたことを怒らなきゃいけないのかもしれない でも俺にはそんなことできないんだよ・・・だってお前を怒らせたのもお前から目を離したのも全部俺なんだし・・・だから俺が謝らなきゃいけないんだよ・・・ごめん・・・やっぱり俺提督失格だよな・・・結局お前たちを助けたのも長峰さんだったし俺はただそれを見てるだけだった」
「お兄さん・・・」
そんな話をしていると長峰さんが海の家に戻ってくる
「・・・天津風ちゃん・・・大丈夫か?」
恐る恐る天津風に近づいた彼はそう声をかけた
「・・・うん 助けてくれてありがとう・・・長門さん」
「・・・その名前で君に呼ばれるのはなんだか変な気分だ。長峰と呼んでくれ」
「・・・・はい」
「天津風ちゃん・・・・いやソラくん色々話したいことがあるから今晩家に来てくれ 謙くんもだ」
「ええっ!?俺も・・・ですか?」
「・・・ああ」
なんだろう・・・やっぱり俺も怒られるのかな・・・
でも怒られたって仕方のないことをしたんだから行くしかないよな
俺はゆっくりとうなづいた
「・・・ありがとう それじゃあ私はまだ用事が残っているから失礼する」
長峰さんはそう言うとまた出て行ってしまった
それからしばらくして天津風と春風も動けるくらいには元気になってきた
「一時はどうなるかと思いましたがもう大丈夫です!司令官様ご心配おかけしました」
「元気になったって言っても病み上がりなんだからあんまり無理すんなよ?もししんどいなら先に宿舎まで戻るか?送って行くぞ?」
「いえ!わたくしはまだ遊び足りないのです!ですからご心配なさらず」
「ほんとか・・・?」
「はい!」
「そうか・・・でもあんまり遠くへは行くなよ?あとまたしんどくなったら絶対誰かに言うこと!それを守れるならいいぞ」
「やったぁ!ありがとうございます司令官様!」
春風は嬉しそうに言った
「・・・天津風はどうすんだ?」
「・・・あそびたい・・・」
天津風は聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそう言った
「ん?」
「だからお兄さんと遊びたいの!あたしだってもう大丈夫だから・・・だから今度は一緒に遊んで・・・欲しいの」
「しょうがないな・・・それじゃあさっき言ったこと守れるな?」
「・・・うん」
「よし。それじゃあまずはみんなのところ行って心配かけたこと謝りに行くか!」
「あっ、もう良いの?それじゃあ次は私・・・いや僕もちゃんと見ておくから気をつけて行ってらっしゃい」
俺たちが海の家を出ようとすると奥田さんがそう行って俺たちを見送ってくれた。
天津風たちをつれて浜辺で遊んでいた大淀たちと合流してその後育田さんが作った焼きそばをご馳走になったりスイカ割りをしたり泳いだりとさっきのアクシデントが嘘のように天津風や吹雪たちと1日海を満喫した。
そしてあっという間に貸切終了時刻の17時になりみんなは着替えを済ませ宿舎へと帰っていったが俺と天津風はドキドキと鼓動を早めながら宿舎とは逆方向にある長峰さんの家へと足を運んでいた。
「何言われるんだろうな・・・俺」
「さぁ?でもお兄さんが一緒の方が僕も心強いよ」
天津風・・・いやソラはそう言ってくれた。
そして家に着きチャイムを鳴らすと
「いらっしゃい 遅くまで付き合わせてごめんなさいね」
女装をした奥田さん・・・いや陸奥さんが俺たちを迎え入れてくれた
この格好の陸奥さんに会うのは久しぶりだったし以前頬にキスをされたことを思い出して俺の顔が熱くなった。
なんでこんな美人なんだよこの人・・・!!
「男装はしなくて良いんですか?」
「ええ。だって隠す必要ないじゃない?」
「確かにそうですけど・・・」
「それじゃあ入って」
「おじゃまします」
「・・・おじゃまします」
俺と天津風は言われるがまま部屋に入ると和室に通された
そこには長峰さんがすでに座っていた
「そこに座ってくれ」
長峰さんは置かれていた2つの座布団を指差したので俺と天津風はそれに座った
「・・・で、話ってなんでしょう?」
恐る恐る尋ねてみると
「まずは天津風ちゃん・・・いやソラくんに今までのことをしっかり話さなければならないと思ってな」
長峰さんはそのまま自身が長門という艦娘であり深海棲艦の攻撃からソラの両親を救えなかったことからその後素性を隠してソラを引き取った経緯と天津風として××鎮守府に着任できるように手を尽くした話まで全てを話した
「今までずっと黙っていて済まなかった・・・私は君がご両親を救えなかった艦娘としての私たちを憎んで居るのではないかと思うとずっと怖くて打ち明けることができなかったんだ・・・いくら詫びても許してもらえるとは思っていないが許してくれ」
長峰さんは頭を床につけた
「僕怒ってないよ・・・それに僕の方こそそんなことも知らないで無理言ってごめんなさい・・・僕も育田さんから話を聞いてからずっと謝りたくて・・・それにそんな僕のことを引き取ってくれて・・・それだけじゃなく艦娘になってからも色々気にかけてもらっていたみたいでありがとう・・・ございます」
頭を下げる長峰さんにソラはそう言った
「・・・ソラくん・・・ご両親を救えなかっただけではなくずっと嘘をついていた私を許してくれるのかい?」
「だからそう言ってるじゃん・・・」
「・・・ありがとう・・・・・ありがとう」
ソラ言葉を聞いた長峰さんは目から涙を流してまた深々と頭を下げた
そして涙を拭いた長峰さんはまた話を切り出した
「謙くん、君を読んだのはこれからする話のためだ」
「なんでしょうか・・・?」
「勝手で悪いがソラくんに艦娘をやめてもらいたい」
あまりにも突拍子も無い言葉に俺もソラも開いた口がふさがらなくなってしまう
「な・・・なんで!?元はと言えば長峰さんが艦娘になることを許したんですよね?」
「そ、そうだよ!僕・・・艦娘として頑張ってるのに」
「2人の言いたいこともわかる しかし考え直してみてもソラくんを危険な目に遭わせること自体が間違いだったんだ もし君に何かあったらそれこそご両親に遭わせる顔がなくなってしまう あの時にそう言ってでも艦娘になることを止めるべきだった だからソラくん・・・・今からでも全寮制の学校に行ってみないか?」
「で、でも僕もうふつうの男の子の身体じゃないし・・・・・・」
「ああ。しっかり女生徒として通えるよう手続きも責任をもってする だから頼む!勝手なことはわかっているが私の頼みを聞いてくれないか?謙くん!君もいきなりのことで悪いがわかってほしい」
長峰さんはまた深く頭を下げてきた
でもどうすればいいんだ・・・?
このまま俺は天津風を・・・ソラを引き止めるべきなのか?
それとも長峰さんのいう通りにするべきなのか?
どっちの方がソラにとって幸せなんだろう?
短い間とはいえ共に過ごしたソラと別れるのも辛いしきっと吹雪たちも寂しがると思う。
でもきっと死と隣り合わせになるようなこともしなくて良いし勉強だってできるし学校へ行った方が彼の為になるはずだ。
俺は一体どうしてやるべきなんだ・・・?
「勝手なこと言わないで!」
俺より先にソラが口を開いた
「僕は・・・いいや今のあたしは駆逐艦天津風なの!今は普通の男の子に戻る気も女の子として学校に通う気も無いわ!」
「ソラくん・・・?」
急なことに俺も長峰さんも目を丸くしてソラを見つめた
「確かに長峰さんの言う通りかもしれない・・・でも・・・それでもあたしは艦娘でいたいの!もうお父さんとお母さんの仇を討つとかそんなのじゃない!あの鎮守府のみんなと・・・そしてお兄さんと一緒にこれからも艦娘として生きていきたい!そこで自分にしかできない何かを探していきたいの!だから長峰さんがなんて言ってもあたしは絶対に曲げない!艦娘もやめない!!後悔だってしない!!!」
ソラ・・・いいや天津風は力強くそう言い放った
その言葉を聞いた長峰さんはクスりと笑い
「すまなかった・・・君は私の思った以上にいろいろなことを自分で考えていたんだね それならば私はこれからも君のことをここから応援しよう 押し付けで君の思いを踏みにじるような提案をしてしまって本当にすまなかった・・・謙くん重ねて勝手で悪いがソラくん・・・いや天津風ちゃんをよろしく頼む」
そう言った長峰さんの表情はどこか晴れやかにも見えた
その後陸奥さんを織り交ぜて少し話をした後俺と天津風は長峰さんの家を後にして宿舎へと向かった
「・・・なあ天津風・・・本当にそれで良かったのか?」
帰り道で俺は恐る恐る尋ねる
「当たり前じゃない!今更女子校に通うなんて考えられないし今の生活も結構嫌いじゃ無いの それに・・・?」
「それに?」
「やっぱりなんでもない!さぁさっさと帰りましょ!置いて行くわよ」
突然走り出した天津風は突然走り出した
今はこの選択が正しいかどうかなんて俺にも天津風にもきっと長峰さんたちにもわからない。
でも俺は選択が間違っていなかったと天津風が胸を張って言えるようにこれからも提督として責任をもって見守ろうと改めて心に誓った。
あれ?なんか忘れてるような気がするけどまあいいや。
「おーいまってくれよ天津風ー!」
俺は天津風を追って鎮守府へと戻った
その頃
「ぶっはぁ!少し早く着いたからついつい泳ぎ過ぎちゃったヨー!!ってあれ・・・もう辺り一面真っ暗デース!?もしかしてもうケンたち帰っちゃってマース!?ohnooooooo!ケンをこの水着で悩殺してワタシに釘付けにしようと思ってたのにぃぃぃぃ!!」
金剛の声が砂浜にただ虚しく響いていた
その夜ぬれながらとぼとぼ鎮守府に帰る彼女の姿は××町の地元紙にUMAと間違われて掲載されたとかされていないとか・・・