ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。 作:ゔぁいらす
今日も今日とて警備任務の指示やら管理で大淀と一緒にせっせと仕事中だ。
『ハーイ!定時連絡デース!金剛が愛を込めて電探、偵察機、目視オール異常無しを報告するヨー!』
今警備に当たっている金剛から定時の連絡が届く。
「あーはいはいわかったわかった。それじゃあ引き続き警備頑張ってくれよ」
『Yes!頑張りマース!それじゃあまた後でネー!ちゅっ♡』
仕事といっても異常がないかどうかの定期連絡を聞いたりするだけなんだけど基本異常無しの報告しか入ってこない。
それが一番なんだろうけどやっぱり何もないところでただ待機するだけってのはやっぱり退屈だ。
「はぁ・・・・ヒマだなぁ」
「まあそう言わないでよ。平和なのはいいことでしょ?」
「そうなんだけどさぁ・・・特にやることもないのに執務室で座りっぱなしってのも退屈だし・・・俺本当に要るのかこれ?」
「もう!仕事なんだからちゃんとして!ほら机にもたれかからないの!」
机に突っ伏そうとした側から大淀がこっちにやってきて姿勢を直そうとしてくる。
「なんだよ大淀〜俺の親じゃないんだからさぁ」
「そうですよ親じゃなくて秘書官ですっ!だらけている提督を叱責するのも秘書艦の勤めですから」
「はいはいわかったよ・・・お前は相変わらず真面目だよなぁ」
「謙が不真面目すぎるだけだよ!あ、そうそう謙・・・・ちょっといい?」
「ん?どうした?」
「今日1日頑張ってくれたらご褒美あげる!」
「なんだよ藪から棒に・・・」
「なんでもいいじゃない!ほら!午後も私と一緒にお仕事がんばろ!ほら背筋伸ばして」
「あ、ああ」
大淀に喝を入れられた俺は気分を入れ替えて姿勢を直した。
でもご褒美ってなんだ・・・?
すごく気になって仕事どころじゃないんだけど!
ああ・・・むしろそんなこと言われたら楽しみで今の時間をすごく長く感じてしまう。
それからしばらくして執務室のドアが勢いよく開き那珂ちゃんが入ってくるや否や俺の目の前に立って机をバンと叩いた。
「むぅ〜那珂ちゃんヒマ〜!」
那珂ちゃんの声が執務室に響き渡る。
「うわぁびっくりした!そんな事言われても俺仕事中だし・・・」
「だってヒマなものはヒマなんだもん!那珂ちゃん退屈すぎてこまっちゃう!」
那珂ちゃんは今日非番でさっき早速出かけて行ったのだが30分もしないうちに帰ってきたと思ったらこれだ。
「それじゃあ訓練でもしてたらいいだろ?吹雪達に付き合ってやってくれよ」
「やだやだ!なんでせっかくのオフのに訓練なんかしなくっちゃいけないの!?それに那珂ちゃんはオフとお仕事はきっちり分けるオンナだから」
大前提で那珂ちゃん男だろ・・・ってもう突っ込むのはよそう。
「そ、そうか・・・でもさっき出かけるって言って出てったばっかじゃないか・・・急に帰ってきてどうしたんだよ」
「どうしたもこうしたもないよ!見渡す限り山と道路でこの辺り何もないんだもん!最寄りのカラオケボックスですら歩いて2時間ってどういう事ぉ!?この炎天下そんなに歩いたらお肌ボロボロになっちゃうじゃん!」
那珂ちゃんの言う通りこの辺りの徒歩圏内に娯楽施設なんてものはない。
百歩譲ってあっても街のご老人が集まる集会所くらいだ。
買い出しの時なんかに通り過ぎると中で楽しそうにご老人が麻雀やら将棋やらに勤しんでいたりする姿を見かけるんだけど俺たちが立ち寄るような場所ではない。
那珂ちゃんが怒るのも無理はないとは思うんだけど俺にそれをぶつけられたところでどうすることもできないんだよなぁ
「俺に言われてもなぁ・・・ショッピングモールにでも行ってこれば良いんじゃないか?」
「もう行き飽きたの!それに一人であんなところ行ったって楽しくないもん!阿賀野ちゃん誘おうと思ったけど今警備任務中だし!あっ、そうだ提督!大淀ちゃん貸してよ!ねぇねぇ大淀ちゃん!那珂ちゃんと一緒にコスメショップめぐりでもしようよぉ〜」
「いやいや大淀も仕事中だからさ」
「ごめんなさい那珂ちゃん。誘ってくれて嬉しいんだけど私は秘書官としての仕事があるからまた今度・・・ね?」
「むぅ〜!そんなの全部提督に任せれば良いじゃん!たまには休まないと体に悪いし行こうよ〜」
那珂ちゃんは大淀を無理やり連れて行こうとする。
確かに大淀は休みなくいつも俺より先に執務室に来て色々やってくれているし警備任務の期間に入ってからはまだ一度も休んでいない。
この間俺が休みを貰った時ですら俺の代わりをしてくれていた高雄さんたちの手伝いをしてたくらいだ。
「な、なあ大淀?もう書類の整理も終わったしさ?あとは任務の引き継ぎの管理と定時の連絡だけだし俺一人でできるからたまには遊んで来たらどうだ?」
「えっ?でも私は・・・」
「遠慮すんなって!俺は大丈夫だからさ」
「さっすが提督!話がわっかるぅ!ほら大淀ちゃん!提督もそう言ってるし行こっ」
「本当に良いの・・・?」
「だから大丈夫だって!」
「そ、そう・・・・ですか。け・・・提督がそう仰るならお言葉に甘えてお仕事お任せしますね」
大淀は少し名残惜しそうに言った。
「やったー!それじゃあ提督!大淀ちゃんの事借りて行くねー!バイバーイ!!」
「ああ。でも晩飯までには帰ってくるんだぞ」
「わかってるって!それじゃあいってきまーす!大淀ちゃんまずは着替えなきゃ!早く早く!」
「行ってまいりま・・・ちょ!那珂ちゃんあんまり引っ張らないで!」
那珂ちゃんは大淀を連れて執務室を後にした。
「はぁ・・・・」
一人になった執務室に俺のため息が虚しく響く。
強がってはみたものの話し相手がいなくなると尚更暇だ。
一人になってしまってはここを離れることもままならないしどうしたものか・・・
それからしばらく暇を持て余しているとコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「入っていいぞ〜」
投げやりにそう言うと高雄さんと吹雪が執務室に入ってくる。
「失礼します・・・って提督!大淀はどうしたの?」
「大淀なら那珂ちゃんに連れて行かれましたよ」
「連れて行かれた!?」
「ああいやそういえば大淀最近全然休みなかったなって思って那珂ちゃんの外出に同行させたんですよ」
「あらそう・・・そろそろ警備が私たちの担当時間なので寄らせてもらったんですけど一人で大丈夫?もし必要なら愛宕を呼んでくるけど」
「いえ、一人で大丈夫ですよ」
「あらそう?それなら私たちはそろそろ行きますね。もし何かあったら遠慮なく愛宕を呼ぶのよ?」
そんなに俺一人に任せるのが心配なんだろうか?
なおさら意地になってきたし別に秘書艦なんか居なくたってそれくらいやり遂げられるってところを見せないとな・・・
「わかりました。それじゃあ気をつけて行ってきてください。吹雪も熱中症とかには気をつけるんだぞ?」
「うん!それじゃあ行ってくるね!」
「ああ。行ってらっしゃい」
吹雪と高雄さんを送り出してしばらくすると
「hey!提督ゥ〜!ただいまデース!」
「ただいま〜提督さん」
金剛と阿賀野が警備終わりの状況報告にやってきた。
「異常なし、天気も晴天で暑かったですけど何事もなかったデース!」
「右に同じでーっす。はぁ阿賀野疲れちゃったなぁ・・・ってあれ?大淀ちゃんは?」
「ああ大淀なら那珂ちゃんの外出に付き合って出てったよ」
「あ〜そういえば那珂ちゃん今日お休みだったっけ。いいなぁ〜大淀ちゃんお休みもらえるなんて〜」
「お前もこの間休み貰ってただろうが!それに大淀は警備任務期間に入ってからまだ一回も休みも取らずにずっと秘書官として働いてたから休んで貰っただけだ!お前はちゃんと休みもあるだろ」
「む〜いいじゃん別に羨ましがるくらい・・・あっ、そうだ提督さん!秘書官が居ないと寂しいでしょ?阿賀野が代わりやってあげよっか?有事に備えて待機とはいえどうせ暇だしぃ〜」
「えっ、いや別に・・・」
別に一人で大丈夫だと言おうとした次の瞬間
「あ〜!アガノずるいネー!秘書艦の代理ならワタシがやりマース!タカオが不在の間ケンの手伝いしてた実績もあるしネー!」
「はぁ!?」
「もぉ〜金剛さんはずっとその時やってたからいいでしょ!?」
「いや・・・あの・・・」
また厄介なことになってきたな・・・
「提督さんは阿賀野と金剛さんどっちが良いの!?」
「えっ?」
「ケン!選ぶデース!もちろんワタシでしょうけどネー!そろそろティータイムですし優雅なティータイムをお約束するヨー?」
「物で釣るなんてずるい!阿賀野だってお菓子用意するから良いでしょ提督さん!」
いやいやそう言うことじゃないんだけど・・・
「さあどっちデース!?」
二人が強く詰め寄ってくる。
どっちも要らないなんて言える空気ではなくなってしまった。
とりあえず遠回りに一人でも大丈夫だって伝えなきゃ
「あの・・・二人とも気を使ってくれるのは嬉しいんだけどさ・・・」
「あっ!グッドなアイディアを思いついたネー!」
金剛が突然話を遮る。
俺の話も聞いてくれよぉ・・・
「グッドアイディアって?」
阿賀野も金剛の話に食いついた。
もう俺が口をはさめるような状況じゃない
「これから交代でケンの秘書官をやるんデース!それでケンがgoodだと思った方が今後秘書艦の代理をやるってことでどうデース?」
「つまり阿賀野と金剛さんで勝負ってことね・・・!良いじゃない!乗ってあげる」
いつの間にか秘書艦代理を奪い合う戦いに発展してしまった。
「それで、先攻と後攻はどうやって決めるの?」
「ここはジャンケンといくデース!」
「うん!負けないよ〜」
俺は残った給食の揚げパンかっての・・・
そうこうしているうちに阿賀野と金剛のジャンケンが始まる
「それじゃあいきマース!じゃんけんポン!・・・NO〜!負けてしまったデース・・・」
「やったぁ!それじゃあ阿賀野が先に秘書官できるんだね」
「言い出しっぺだからしかたないデース・・・制限時間は1時間!絶対それ以上は認めまセーン!」
もう俺そっちのけだなおい
「うん!それじゃあ阿賀野準備してくるから提督さん待っててねー!」
「ここはひとまず阿賀野に譲るヨ・・・それでもあとで満足させてあげるからケンそれまで待っててネー!」
二人が出て行ってまた部屋はしーんと静まり返る。
そんな時高雄さんから定時連絡が入ってきた。
『こちら高雄です。目視電探偵察機共に異常なし。静かな海です。ところでそちらは一人で大丈夫?』
「むしろ一人の方が気楽でしたよ・・・」
『何かあったの?』
「えーっとかくかくしかじかで・・・」
俺は高雄さんに今の状況を伝えた
『はぁ・・・呆れたあの子ったらまたそんなしょうもないことを・・・金剛も金剛よねせっかく提督が一人で頑張ろうとしてたのに』
「そうですよ全く・・・」
『でも一人で頑張ろうとした姿勢は褒めてあげるわ。吹雪ちゃんも心配してたけど大丈夫だって伝えておくわ。ひとまず二人の対応も頑張ってね。それじゃあ定時連絡終わります』
高雄さんの優しい言葉が身にしみる。
確かに一人でもこれくらいできるって証明ができなくなってしまったのは少し悔しい気もするけど高雄さんに褒めてもらえたんだからそれはそれで良しとするしかないか・・・・
それからしばらくして執務室の扉がバンと勢いよく開く
「失礼しまぁす♡お待たせしましたぁ〜」
「なっ・・・!?阿賀野!?」
阿賀野はさっきまでの制服とは打って変わっていつもかけていないメガネにメイド服というなんとも秘書艦離れした格好で執務室に入ってきたのだ。
「阿賀野・・・!なんだよその服は!!」
「え〜良いでしょ?いつもの格好で秘書官したって面白くないしこっちの方が可愛いかなーって。そんな細かいことなんか良いじゃない早速紅茶入れてあげるね!」
阿賀野は俺の話を振り切り少し慣れない様子で紅茶を入れてくれた。
「はいどーぞ!阿賀野の愛情たっぷりの紅茶だよ」
愛情ってお前ただ持ってきたTパックにお湯かけただけじゃないか・・・
「あ、ありがとう・・・いただきます」
試しに一口飲んでみるが甘い・・・凄まじく甘い!
市販のミルクティーなんかよりずっと甘いぞこれ・・・
別に甘いものが嫌いなわけじゃないけど流石にこれは・・・
第一これ本当に紅茶なのか!?紅茶風味の砂糖水だろ!
「なあ阿賀野・・・・?」
「どうかした?」
「これ砂糖何本入れたんだよ・・・」
「5本だよ!それと隠し味にガムシロップも少々・・・」
「五本!?入れすぎだろ!」
「頭使った時は甘いものが良いんだからこれくらい甘くしたって良いでしょ?」
「それにしたってやりすぎだろ!」
「いっけなぁい阿賀野気合い入れすぎちゃったかも〜テヘッ」
阿賀野はいつにも増してあざとく振る舞う
「テヘッ・・・じゃねえよ!」
「えーでも阿賀野疲れた時はこれくらい入れて飲んでるんだけどなぁ・・・」
「マジかよ・・・」
「そんなドン引きしなくても良いじゃない!艦娘になってからお腹もいっぱい減るし甘いものだっていっぱい食べたくなっちゃったんだもん!」
艦娘になるとそんなことになるのか・・・
でも幾ら何でも阿賀野の体が心配になるレベルの甘ったるさだ。
「と、とりあえず食うもんにまでとやかく言うつもりはないけどほどほどにしろよ?」
「はーい・・・それじゃあこれも片付けちゃうね」
阿賀野が紅茶を片付けようとするが別に飲めないほどってものでもないしせっかく作ったものを捨てるのも勿体無い。
「ああいいよ勿体無いし飲むわ」
俺は意を決して甘ったるい紅茶を口の中に流し込む。
後半は溶けきっていない砂糖がドロドロと口の中に入ってくるがなんとかカップに入っている分を全てを口に含んだ。
「わぁ〜全部飲んでくれたんだありがとうおにーちゃん♡」
「ブーッ!!ゴホッゴホッ!!」
阿賀野が突然お兄ちゃんなんて言うもんだからやっとの事で口に含んだ紅茶を勢いよく吹き出してしまった
「大丈夫お兄ちゃん?」
「お兄ちゃん?じゃねえよ!第一阿賀野お前俺より年上なんだろ?」
「えーダメ?提督さんメガネっ娘好きで妹萌えだと思ったから喜んでもらえると思ったんだけど・・・それに年上って言ったって一歳二歳の差じゃない誤差よ誤差!」
「はぁ!?」
金剛と愛宕さんも同じようなことを言ってたけど一体俺の評価がどこでそうなってしまったんだ?
「はぁ?じゃないよ大淀ちゃんが好きで吹雪ちゃんにお兄ちゃんなんて呼ばせてるんだからきっとそうかなーって」
「ちちちち違うわ!別に俺は大淀のメガネが好きなわけでもないし吹雪が俺のことをそう呼ぶのは強制したわけでも頼んだわけでもなく吹雪が勝手に・・・・」
「ふぅん・・・そうなんだ でも提督さんのことお兄ちゃんって呼ぶの悪くないかもってちょっとだけ思ったんだけどなー」
お前は悪くなくてもこっちは寿命が3日は縮んだわ!
「とにかくもうその呼び方はやめろ!業務どころじゃなくなるだろうが」
「はーい・・・私長男だからそうやって男の人に甘えてみたかったんだけど提督さんが嫌ならやめまーす」
今しれっと男って言ったけど触れないでおいてやろう。
「はぁ・・・全く・・・」
「それじゃあ提督さんが吹いちゃった紅茶片付けちゃうね。あっ、そうそう!お菓子も持ってきたから好きに食べてくれて良いよ」
阿賀野はスナック菓子やらチョコレートを持ってきていた袋から取り出して机の上に置くと俺の吹き出してしまった紅茶を雑巾で拭きはじめた。
阿賀野はこちらに背を向けてしゃがんでいるがいつものミニスカートだったらパンツがこちらに丸見えになっていただろうが今日はメイド服でロングスカートだったのでパンツがこちらに見えることはなかった。
なんだか安心したような少し残念なような・・・・
それからしばらく阿賀野はおとなしくなったかと思えば
「ねえねえ提督さん。それじゃあ好みの子のタイプってどんな子なの?」
急にそんなことを聞いてきた
「はぁ!?なんつう事聞くんだよ」
「だってー特にやることもないし秘書艦とコミュニケーションを取るのも提督のお仕事でしょ?」
「だからってそれを教えてやる義理はないだろ」
「えー良いじゃない阿賀野だけに教えて?誰にも言わないからお願い!持ってきたポテチ全部食べて良いからぁ・・・」
「ね?って言われてもそんなポテチごときで買収されるわけないだろ!!」
「そこをなんとか〜お願い!」
阿賀野にじっくりと見つめられると断るに断れなくなってしまう。
男だって前提があったって顔はほぼ美少女なんだから仕方ない・・・のか?
「し、しょうがねぇな・・・じゃあちょっとだけだぞ?」
「やったー!」
「えーっと・・・清楚で優しくて・・・ちょっと年上でしっかりしてて・・・スタイルもそこそこ良さ目で・・・」
「うわなにそれ・・・ちょっと女の子に幻想抱きすぎじゃない?」
さっきまで笑顔だった阿賀野は真顔でそう吐き捨ててきた
「べっ、別にどんな子が好みかって聞かれたんだからちょっとくらい幻想抱いてても良いだろうが!」
「ふぅん・・・それじゃあ阿賀野は好みのタイプってことだ」
「どこがだよ!第一お前は男だろうが!それに暇つぶしにナンパされに行くような奴を清楚とは言わんわ!」
「ええ〜釣れないなぁ提督さん・・・でも他は大体あってるでしょ?」
確かに初めて阿賀野にあった時すごくときめいてしまったのは認めざるを得ない。
距離も近いし優しいし・・・でもそれも一瞬で打ち砕かれたんだよなぁ
そんな阿賀野と初めて会った時のことを思い出すとなんだかおかしくなって笑いがこぼれてしまった。
「なに笑ってるの提督さん」
「ああいやここに着任して阿賀野と初めて会った時の事思い出しちゃってさ・・・女の子と手なんか長らく繋いだこともなかったしまさか風呂にまで入って来るなんて思わなかったしそれ以上にまさか男だったなんて思うはずもなかったし我ながら凄まじい経験を一気にしたなって」
「そんなこともあったね〜提督さんウブすぎてすっごく可愛かったもんちょっとからかいたくなっちゃって」
「ウブで悪かったな!」
「まあそう怒らないで。あれからもうそろそろ半年だけど提督さんのおかげで阿賀野もこれまでより楽しく艦娘やれてるしすっごく感謝してるんだよ?」
阿賀野は笑顔でそう言った。
改めて言われるとすごく照れるな・・・
「そ、そうか・・・?まだまだ一人じゃなにもできない駄目な提督だと思うけど・・・」
「こーら!自分でそんなこと言わないの!あっ、そうだ!提督さんずっと座り仕事だと肩こっちゃうでしょ?マッサージしてあげる!阿賀野結構自信あるの」
「そ、そうなのか・・・じゃあお願いしようかな」
「まかせて!」
阿賀野はそう言うと俺の後ろに回り込んで肩に手を置いてゆっくり揉み始めた
「あっ、やっぱりこってるね・・・ちゃんと頑張ってる証拠だよ?」
「そ・・・そうか?」
阿賀野の絶妙な力加減は肩のこりをほぐしてくれそうですごく気持ちがいい。
ただ一つ手の動きがなにやらいやらしいのを除けばだけど・・・
「ほら・・・どんどんこりがほぐれていってるのわかる?」
「あ、ああ・・・阿賀野そこもうちょっと強くやってくれないか?」
「ん?ここ・・・?」
「あーそこそこ・・・!」
自分でもわかってなかったけど結構肩ってこるもんなんだな・・・
はぁ・・・本当に阿賀野マッサージ上手いな・・・なんだか頭もふわふわするような・・・というかなんか後頭部にふわふわしたものが当たってるんですけど!?
「な、なあ阿賀野・・・?」
「ん〜?何?」
「なんか頭に当たってるんだけど・・・」
「おっぱいだよ」
「おっぱい!?」
「だってそっちの方が気持ちいでしょ?ほらほらもっと頭を阿賀野のおっぱいに預けて♡」
阿賀野はさらに俺の後頭部に胸をぎゅぎゅっと押し付けて来る
「や、やめろ!一応仕事中なんだぞ!しかもそんな偽乳当てられたって嬉しくないからな!」
虚勢を張ってはみるもののやはり柔らかいし肩もみも相まってなのかすごく心地が良い
くそぉ・・・!これが男だって事実を持ってしてもこんな気持ちになってしまう自分が悔しい
「え〜偽乳って言うけど提督さん本物触ったことないのにそんなのわかるの?」
「う、うるさい・・・!本物のおっぱいはこんな簡単に後頭部に押し付けたりするものじゃないだろうが!おっぱいはもっとこう・・・」
「はぁ・・・やっぱり提督さん女の子に幻想抱きすぎ。女の子だって好きな男の子にこれくらいならやってあげるよ?」
「だ、だからお前は男で・・・」
「細かいことは良いじゃない。ほ〜ら♡阿賀野にもっと頭も身体も預けてもっと気持ちよくなろ?」
阿賀野は耳元でそう囁いてくる。
別に肩を揉まれているだけのはずなのに凄まじくイケナイことをしてもらっているような気分にもなるし阿賀野の甘い声とおっぱいと肩もみの三連コンボでもう頭がどうにかなりそうだ
「あっ、阿賀野・・・!」
「ふふ〜ん♪ど〜ぉ?気持ちいいでしょ?阿賀野のこと秘書艦にしたいって思ってくれた?もし阿賀野の事代理じゃなくてちゃんとした秘書艦に選んでくれたらもっと気持ち良い事してあげる♡」
こいつ完全に色仕掛けで俺を落とすつもりだ!
でもそんな事したら何より俺に仕事を任せてくれた大淀を裏切ることになる
それにこんなこと毎日されてたら気持ちいいんだろうけど刺激で身が持ちそうにない
「わ、悪いけど俺の秘書官は大淀一人だけだ・・・!」
「ふぅん・・・やっぱりダメか・・・」
阿賀野は少し残念そうに言って手を止める
「そうなんだも何も秘書官代理を決めるのが今回の目的なんだろ?俺を籠絡して正式な秘書官の座まで勝手に奪おうとするな!」
「えへへ〜バレちゃった?ま、朝の書類の整理とかお部屋のお掃除とか大変そうだしそれはそれで良いけどね〜」
「バレちゃった〜?じゃねえよ!!」
そんなことを話していると
「そろそろワタシのターンデース!」
金剛が勢いよく扉を開けて執務室に入ってきた
「えっ、もうそんな時間!?」
「そうデース!」
「う〜もっと提督さんのことからかいたかったのにぃ〜」
「良い加減俺をおもちゃにするのはやめろ!」
「えへへ〜それじゃあ提督さん!楽しかったよまた後でね〜」
阿賀野はそう言って部屋を出て行ってしまった。
「アガノも出て行ったしワタシのターンネ!よろしくおねがいしマース!」
「お、おう・・・」
「まずは早速紅茶入れてあげるネー!お茶菓子のスコーンも作ってきたヨー!本当は今日のティータイムに駆逐艦の子達と食べようと思ってましたがケンと一緒に食べれて嬉しいネー!」
金剛がバスケットに入ったスコーンを机に置いた。
焼きたてなのかほんのり甘い香りが漂ってくる。
「そんなのもらっちゃって良いのか?」
「張り切って沢山作っちゃったからまだ残ってるんデース!残った分はまた明日駆逐艦の子達にあげるから気にせず食べてくれていいヨー!それじゃあ紅茶が出来上がるまでジャストアモーメント少し待っててくださいネー」
「そ、そうか・・・」
ちょうどさっき甘ったるい紅茶を結局飲み損ねてしまったのでこれはありがたい。
それからしばらくして
「紅茶入れたヨー!一緒に飲みまショー!」
金剛は手際よく紅茶を二つ用意して部屋の隅に置いてあったパイプ椅子を俺と向かい合うように置いてそこに座った。
「どうぞ召し上がってくだサーイ!」
「あ、うん・・・いただきます」
金剛に促されスコーンを一つ口に運ぶ。
ほんのり温かで甘さも控えめで中身はしっとりしていて文句の付けどころのない美味しさだ。
紅茶も相変わらず一級品で上品な香りが口いっぱいに広がる。
「すごく美味いよ!」
「そんなに褒められると嬉しいネー!ワタシも食べマース!」
金剛の作ったスコーンと紅茶を二人で堪能した。
俺がスコーンを頬張るところを金剛は嬉しそうに見つめてくるので少し嬉しいような恥ずかしいようなそんな気分になる。
そして手は止まらずあっという間にスコーンを完食し、口の中を洗い流すように紅茶を〆に飲み干した。
「ふぅ〜ごちそうさま」
「どういたしましてデース!ケンが美味しそうに食べてくれたからワタシもベリー嬉しいネー!」
金剛は無垢な笑みを浮かべる。
一見可愛らしい少女に見える金剛だけど長峰さん達が艦娘やってた頃からのベテランなんだよな・・・
一体いくつぐらいなんだろう?
いやこの事を考えるのはよそう。
「ん〜どうしたデース?」
「ああいやなんでもない」
「そうですかーそれにしても定時連絡の記録を付ける仕事以外は特にやることもなさそうで暇ですネー・・・お掃除も行き届いてるみたいですしオオヨドのそう言うところは尊敬しマース」
金剛の言うように毎日大淀は俺より早く執務室に来て軽めに部屋の掃除をしてくれていて、その仕事っぷりには頭が下がる。
それに大淀が褒められるとなんだか自分の事のように嬉しい。
「そう言うのは大淀に直接言ってやってくれ」
「そうですネー!じゃあオオヨドの事めいいっぱい褒めてあげなきゃいけないネー!こんどお茶にでも誘ってあげるデース!」
「大淀も金剛の紅茶には勝てないって言ってたしきっと喜ぶと思う」
「oh!オオヨドそんな事言ってたデース!?嬉しいネー」
金剛はまた嬉しそうに笑った。
そこだけ見たら本当に可愛らしい女の子なんだけどなぁ・・・
それからしばらくして高雄さんからまた定時の連絡が入り、途中で金剛に代われ言われたので代わると金剛はしゅんとしてしまった。
「高雄さんからなんか言われたのか?」
「そうなんデース・・・年長者なんだからケンの事困らせるんじゃないって釘刺されちゃたデース・・・タカオ怒ると怖いからネーって誰が年長者デース!?キャリアは確かに長いけどワタシはまだまだピッチピチデース!」
一人で喋って一人で突っ込んでるよこの人。
しかしそんな言葉に過剰に反応する辺りそこそこ良い歳なんだろうなぁ・・・そうは見えないけど
「あっ、そうデース!」
「ん?なんだ?」
「アガノにはなにしてもらったんデース?メイド服着てましたケド・・・それにメガネもかけてたネーやっぱりケンメガネフェチだったんデース?」
「だから違うって!別にメガネが特別好きなわけじゃないからな!なんかいつの間にかそんなことになってただけで・・・」
「そうでしたか まあ良いデース!それでアガノにはどんなことしてもらったんデース?参考にしたいネー」
「あ、ああ・・・肩もみとか・・・」
流石に胸を押し付けられたとかそんな事は口が滑っても言えないな
「肩もみデース!?気持ちよかった?」
「ま、まあなかなか」
「そうですかーふっふっふ〜実はワタシもマッサージ得意デース!」
「そうなのか?」
「もう肩はやってもらってるなら他のところマッサージしてあげるネー!う〜ん・・・それでは海の家での立ち仕事も多そうだから足はどうデース?」
「じゃ、じゃあお願いしようかな」
「それじゃあ脱いでくだサーイ!」
「ぬ、脱ぐ!?なんで!?」
「なんでって・・・靴脱がないとマッサージできないヨー?」
なんだ靴下か・・・でももしかしたら足臭いかもしれないし脱ぐ前に確認しなくちゃ
「あ、ああ靴ね・・・わかったちょっと待っててくれるか?」
俺は椅子を回転させ金剛に背を向けて靴を脱ぎ気づかれないように足の匂いを嗅いだ
・・・・暑いし蒸れてるからかちょっと臭い・・・けどこれくらいなら大丈夫・・・だよな?
俺は不安を残したまま靴下を脱いでもう一度嗅いでみる
すると
「heyケン!なにしてるんデース!?」
急に後ろから声をかけられて体が強張ってしまった。
「あ、ああいやなんでもない!」
「あ〜わかったネー!足の匂い気にしてるんデース?別に少々臭くたってワタシは気にしないヨー?臭いまで愛してあげマース!」
う・・・バレてた・・・・
「ち、ちげーし!靴下脱ぐのに手こずってただけだし!」
「ふぅん?そうなんデース?」
金剛は不敵な笑みを浮かべた。
でもそこまで臭くないはずだし・・・大丈夫だよな
「そ、それじゃあお願いします・・・」
俺は金剛の方に椅子を回転させ足を金剛に向けると金剛は俺の前に跪くと鼻をくんくんと動かした。
「うぅん・・・年頃の男の子の足の匂いがするネー・・・」
やっぱり匂ったのか!?
もっと念入りに足洗っとけばよかったな・・・
「ごめん臭かったか?」
「NONO!これくらいの年の男の子の足の匂いデース別に臭いわけじゃないネー!それどころかワタシこの匂い嫌いじゃないネー・・・」
それはそれでどうなんだよ・・・
「そ、そうか・・・」
「はい!それじゃあ足のマッサージ始めるヨー!」
金剛はそう言うと足を手で触り始めた。
「ふわっ!」
金剛の手は少しひんやりと冷たくてそれにくすぐったかったので変な息が出てしまう。
「ん〜?くすぐったかったデース?」
「あ、ああ 足なんか滅多に他の人に触られることなんかないからさ」
「そうですよネー!それじゃあやっていきマース!覚悟は良いデース?」
「へっ・・・?覚悟・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
次の瞬間金剛は足の裏を指でぎゅぎゅぎゅっと押し始めた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「もぉ〜ケンったら大げさネー」
別に大げさに声を上げている訳ではない。
すごい力で足のツボが押されているのだ。
その力はまさに女性のそれではなく金剛の男の部分を感じさせるものだった。
「それじゃあここ押しマース!ハートのツボデース!ケンはチェリーでウブだからきっとワタシたちにドキドキして心臓も疲れてると思いマース!だからそこの疲れを取ってあげるヨー!」
「ちぇ・・・チェリーは余計だしそんなのいら・・・」
俺がそこまでいいかけると
「えいっ!」
また金剛はグリグリと足の裏を刺激してくる
「あいでででででででで!やっやめっ・・・・!あぁっそこだめっ!もっと優しくっ・・・・痛くしないでええええええええ!!!!」
それからしばらく金剛の足つぼマッサージは続き、自分でも恥ずかしくなるくらいに情けない大声を出してしまった。
「ふぅ〜これで一通り終わったヨー!」
「はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・」
金剛の言葉を聞いて凄まじい虚脱感に襲われる。
それと同時に終わってみるとなんだか少し気持ちよかったようなそんな気にもなった。
でももう二度と受けたくない
「ちょっと痛かったと思うけどこれだけやればきっと元気になれるヨー!」
金剛は得意げに親指を立ててそう言った。
「は・・・はは・・・そうだといいんだけどな・・・」
すると扉が勢いよく開き
「提督さん!?すごい声聞こえたけど大丈夫!?ってててて提督さんどうしたの!?何されたの?主にお尻とかは大丈夫!?」
阿賀野が執務室に入ってくるや否や力の抜けた俺の方へ駆け寄ってきた。
「アガノー!人聞きの悪いこと言わないでくだサーイ!ただ足のマッサージをしてあげてただけデース!」
「そ、そうだったんだ・・・・よかったぁ」
「よ・・・よくない・・・」
俺は声を振り絞る
「提督さんの声聞いて飛び込んで来ちゃってちょっと早いけどそろそろ1時間経ったよ」
「むぅ〜!まだあと5分27秒くらい残ってるネー!」
「提督さんのことこんなにしちゃったんだからもう終わりでいいでしょ!」
「嫌デース!もっと秘書官やってたいヨー!!ケン?もっとマッサージして欲しいところないデース?」
もうこれ以上は俺の体が持ちそうにないぞ・・・
「ああもうこれ以上やったら提督さん死んじゃうからもうおしまい!ね?提督さんもそう思うでしょ?」
阿賀野の問いかけに俺はこくりと頷いた。
それから俺はなんとか足の痛みも引いてきて脱いだ靴と靴下を履き直した。
「それじゃあそろそろ結果教えて欲しいな〜提督さん?」
「そうデース!忘れてました!どっちが秘書艦代理にふさわしいか選んでくだサーイ!」
「う、うーん・・・・」
阿賀野はマッサージがめちゃくちゃ気持ちよかったけどなんかいかがわしいマッサージ店(行ったことないけど)みたいだったしそれ以外はうーん・・・・
でもなんだか同年代の友人の様に接してくれる阿賀野と居ると退屈でも気は楽になる様な気もする。
金剛は確かに仕事もそつなくこなせるし紅茶とスコーンも美味かったし・・・けどもうあのマッサージは受けたくないしなぁ・・・・
そんな二人のことを思い返すたび大淀はいつもひたむきに秘書艦の仕事をしてくれていることが頭によぎる。
やっぱり秘書官は大淀が一番だ。
あいつのひたむきな姿をいつもすぐ側でいつも見ているし精一杯真面目に見えないところでも頑張っている事も金剛と阿賀野に秘書艦をやってもらって再確認できた。
それに秘書艦の代わりは今思えば高雄さんがやってくれるしな!
無理に二人で白黒つける必要なんかないじゃないか
「さあケン!早く!」
「提督さん?もちろん阿賀野の方が良いわよね?」
二人が詰め寄ってくる。
「・・・・・・今回は引き分けで!」
その答えを聞き二人はぽかんと口を開ける
「waht!?何故でーす!?」
「なにその煮え切らない答え!」
「いやあの・・・・二人とも良いところもあったんだけど・・・でもどっちが秘書官に向いてるかって聞かれても二人とも得意なとこもダメなところもある訳だろ?俺にそれを選べって言われてもどっちかなんて選べないし・・・」
「・・・・・・そうなんですネー・・・」
金剛は俺の言葉を聞いて静かにそう言った。
やばい・・・怒らせちゃったかな
次の瞬間
「と言うことは次からもワタシとアガノ両方が秘書官代理・・・ということで良いのデース!?」
「は?」
「ケンは欲張りネー!代理にするならワタシだけとかアガノだけとかそれだけじゃ満足できないんですネー!」
「い、いや違うけど・・・」
「もう提督さんったらそれならそうと素直に言ってくれたらよかったのにぃ〜」
阿賀野も俺の言葉をかき消す様に金剛に同調する。
「だから違・・・・・まあ良いか」
なんだか否定するのも疲れてきたしまた高雄さんも大淀もいない状況で秘書艦代理を頼む時は二人にじゃんけんでもやってもらって勝った方にお願いしよう。
「今回はドローですが次は負けまセーン!」
「それはこっちのセリフなんだから!次は秘書艦のポジションも阿賀野がしっかりいただいちゃうよ!」
「いやだからそれは目的変わってるからダメだ」
「またばれちゃった♪テヘッ!」
阿賀野はまたあざとくすっとぼける。
「だからそれやめろ!」
「えへへへ〜」
「阿賀野楽しそうネ・・・でもワタシもケンと一緒に秘書艦できて楽しかったデース!」
なんだか一人でやるよりどっと疲れたような気もするが阿賀野と金剛はどっちも清々しい顔をしてるし艦娘同士の親交を深める良い機会になってくれた・・・・よな?
そしてその日の警備任務も終わり、俺は明日の準備に取り掛かろうとしたが明日使う書類やら日誌やらの整理が一人でやる分には思ったより大変だった。
二人に手伝ってもらおうと声をかけたが阿賀野には「めんどくさいからやだ〜」と断られてしまい、金剛には「今から日課のランニングなので手伝えまセーン!ソーリーケン!それではいってきマース!」と逃げられてしまった。
結局昼間のあれはなんだったんだと不平不満を漏らしながら一人寂しく書類を片付けながら大淀へのありがたみをひしひしと感じる。
やっぱり一人でやるのって大変だし心細いな・・・
そしてなんとか仕事の後片付けを終え、夜約束通り夕飯前に帰ってきた那珂ちゃんや大淀、それに他の艦娘たちと共に夕飯を済ませ部屋に戻ろうとした時の事
「ね、ねえ謙ちょっとこっちきて?」
大淀に声をかけられ誰もいない廊下に連れ出された。
「ん?なんだ?」
「今日は仕事ほっぽり出しちゃってごめん」
「ああいや俺が勝手にやった事だから気にすんなって」
「そう・・・ありがとう。でも謙がちゃんとできてるか心配で・・・」
「あ、ああ・・・大変だったなぁ」
大淀がいなかった時に起こった事を教えたら流石に怒られそうだから黙っておこう
実際最後の方は俺一人で片付けたんだし嘘はついてない
「それでね?今朝も言ったけど・・・・謙にご褒美があるんだ」
そういえばそんな事言ってたな
「ご・・・ご褒美・・・?」
「あのね?今夜私の部屋に来てくれない?」
「えっ!?」
「この間言ったでしょ?私がお願いしたら一晩二人っきりで過ごしてくれるって」
「え、ええ!?で、でもそれって俺たちにはまだ早いんじゃないかなーって」
「・・・もう本当に謙は相変わらずエッチなことしか考えないんだから・・・バカ・・・」
大淀は恥ずかしそうに言った。
「だ、だからそんな顔赤くして今のお前に言われたらそうかもしれないって勘ぐっちまうだろ!このあいだのこともあるし・・・・」
「こ、このあいだの質問は忘れてよ!ただ久しぶりに謙と遊びたくなっただけ・・・だから・・・」
なんだよそれ・・・でもそれとご褒美にどんな関係があるんだ?
「・・・んでご褒美ってなんだよ」
「それはナイショ・・・と、とにかく!今夜の11時くらいに私の部屋に来て!それじゃあまた後でね!!」
大淀はそう言うとそそくさと部屋の方へ走って行ってしまった。
多分この間俺が愛宕さんの部屋で事故とはいえ一晩過ごしてしまったことに対抗意識的なものがあるんだろう。
でもなんでだ・・・・?
あいつとは徹夜で遊んだりすることだって何回もあるような仲のはずで久々にそうやって遊びたいって言われただけなのにすごくドキドキしてる自分がいる。
あいつは秘書官の大淀で・・・そのす・・・・嫌いじゃないし可愛いとか思っちゃったりしてるど・・・・あいつは俺の親友の淀屋なんだ。
俺たちの間にあるのはそんな複雑なものじゃなくて友情のはずなんだ。
何回も自分に言い聞かせてきたそんな言葉をまた何度も心の中でくりかえす。
でも俺の胸の高鳴りは全く治る気配がない。
ひとまずこんな廊下で突っ立ってても何も起こらないし時間もまだあるしそのままとぼとぼと自室へと歩みを進めた。
本当に一晩あいつと何事もなく過ごすことができるんだろうか?
そんな一抹の不安とそれとは別にどこからか沸いてくる高揚感が俺の胸の中でせめぎあっていた。
いつも拙作を読んでいただきありがとうございます。
今回同人誌を出してとあるイベントにサークル参加するプロジェクトを一人で勝手に立ち上げました。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=208251&uid=190486
詳細は上記URLの活動報告に書いているので応援してくださると嬉しいです。