ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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いつもより暑い朝

 耳障りなセミの鳴き声と蒸し暑い陽気、それにほんのり香る甘い香りがぼんやりとしていた意識をだんだんとはっきりとさせていく。

ぼんやりとした視界には見慣れない天井が広がっている。

そうだった。昨日は結局大淀と一緒に・・・・・

昨日の事を今思い出すだけでも朝っぱらから心臓に悪いくらいに胸がドキドキと脈打つ。

というか一緒に寝てたんだしまだ大淀は俺の横に居るんだよな・・・・?

体の左側に柔らかく暖かい感触を感じ、恐る恐るその方向に顔を向けてみると大淀が俺に体を寄り添わせるようにして眠っていた。

少し前までは男同士の親友だった彼女のその寝顔を今では凄く愛おしく感じる。

しかし本当に綺麗になったな・・・いや、今になって思い返してみればもともと気にもしなかっただけで大淀になる前からあいつは結構肌も綺麗だったし華奢だったような気もする。

そんな大淀の胸元に俺の視線は向かっていた。

理由は簡単である。

寝巻きの襟ぐりからうっすら見える以前の彼には無かった小さな膨らみが目に入ったからだ。

それは阿賀野や高雄さんたちに比べたら小さいもののしっかりと存在を主張をしている。

もう少しで乳首が見えそうなんだけど見えないそんなギリギリの状態が俺の視線を釘付けにした。

ああもう本当に朝から心臓に悪い!

「・・・・でもちょっとくらい良いよな?男同士なんだし別に・・・」

俺はそんな支離滅裂な理由をつけて彼女の胸元を覗き込もうとしていた。

朝っぱらから隣で寝て居る艦娘になった同性の友人の膨らんだ胸に女の子みたいになった乳首を見ようだなんて自分でもバカバカしくなるくらいの探究心だ。

それに以前艦娘になった彼女の一糸まとわぬ身体を見ているが目の前にある以上気になって仕方ないのが男の性というもの。

それに真っ裸よりも服からちらちらと見えるものにこうなんというか趣きを感じるんだよなぁ・・・

よし!あともう少し・・・後もう少しだ・・・もう少しで見えるぞ!!

俺は胸の鼓動を高鳴らせながら大淀の胸元を覗き込んでいると

「・・・んっ・・・うぅ・・・・」

大淀がそんな声を出して体をむくりと起こした

「おわぁ!」

「んぅ・・・?謙・・・おはよ」

「お、おはよう・・・」

よかった・・・バレてないみたいだ

しかし冷静になってみると何やってんだか俺・・・

いくら昨日大淀の事が好きだって言ったからって寝てる間に胸をみようだなんて最低だろ・・・

「謙、どうしたの?顔赤いよ?」

「えっ、あ・・・いやなんでもないぞ!?いやー今日もあっついな〜なんちゃって」

「本当にそれだけ?」

「へっ?あ、当たり前だろ?」

「もしかして寝冷えしちゃった?夏の風邪は長引くから風邪なら早く処置しないと・・・ちょっとじっとしてて」

「うわっ!ちょ・・・・!!」

大淀は俺に顔を近づけ額に額をくっつけてきた。

「なっ・・・・ななななななな!!!」

「うーん・・・熱はないみたいね。よかった。私おでこで熱測るのずっとやってみたかったの。前に長門さんに先越されちゃったけどね・・・」

大淀は額を離すとそう言って笑った。

か・・・顔が違い・・・!

こんなに顔が近くにあると昨日の事を思い出してすっごく恥ずかしいぞ

「ね、熱ないってわかっただろ?早く離れてくれよ!うわっ!」

「きゃっ!」

大淀から離れようとした拍子にバランスを崩してしまい、俺はベッドに背中を打ち付けてしまった

「いてててててて・・・・」

「謙、大丈夫?」

仰向けに倒れた俺に大淀が覆いかぶさるような体勢になっている。

なんだこれ・・・・壁ドンならぬベッドドン・・・?

「あ、ああ・・・大丈夫だけど・・・・なんか押し倒されたみたいになってね?」

「そ、そうだね謙・・・それにしてもおでこを合わせただけであんなに恥ずかしがっちゃうなんて相変わらずよね謙・・・でもそれって私のこと女の子として見てくれてるってことだよね?」

こいつこんな体勢で何言い出すんだ!?

「あ、ああうん・・・今のお前すごく綺麗だし・・・・」

「・・・そうなんだ・・・嬉しい・・・・ね、謙?」

「な、なんだよ・・・!?」

「次はおでこじゃなくて昨日の続き・・・しない?」

「へっ!?それって・・・・」

「私に言わせるの・・・?でも今は私が謙の上に居るしリードしちゃおっかな・・・・おはようのキス・・・しよ?」

「え・・・・ええ!?」

なんだ今日の大淀やけに情熱的じゃないか!?

でも昨日だってやった訳だしキスくらいなんとも・・・・・あるわけないだろ!!

やっぱ恥ずかしい!深夜の勢いで昨日はしちゃったけどやっぱり恥ずかしいぞ!

「な、なあ淀屋?」

「だーかーらー今は大淀って呼んでくれなきゃいーや」

「お、大淀・・・あの・・・・そんなキスばっかりしてたらあの・・・えーっと・・・」

ああだめだ!こんな時どうやって断れば良いのかわからん!

というか断る必要あるのか?

いや無い!

無い・・・けど・・・・

「何それ?今更恥ずかしがることないでしょ?それじゃあ私からいくね・・・大丈夫だよ?謙は目をつぶってるだけでいいから」

大淀はこちらにゆっくりと顔を近づけてきた

「お、大淀・・・・!」

そんな時だ。聞き慣れたアラームの音が水を射すように鳴り響いた。

「・・・謙、なんか鳴ってるよ?」

「あっ、ごめん俺のスマホだ」

俺は大淀に覆いかぶさられたままスマホに手を伸ばしてアラームを止めて画面を見ると時計は8時30分を指していた。

やばい!いつもはこのくらいに起きてるけど今日は大淀の部屋だし早く戻らないと遅刻しちまう!

「ごめん大淀!続きはまた今度な!お前も遅刻しないようにしろよ!!お邪魔しましたー」

「えっ、ちょ・・・謙!?」

俺は大淀の腕の間をするりと抜けて部屋から飛び出した。

 

そしてダッシュで自室に戻り部屋のドアを開けた。

「ただいま!吹雪!起きてるよな!?」

勢いよく部屋に飛び込むと

「きゃっ!お、お兄ちゃん!?」

部屋の姿見の前で制服を手に持った下着姿の吹雪が顔を真っ赤にしていた。

同室で生活して居るとはいえ一応吹雪だって心は女の子だし外見もどう見たって女の子にしか見えないから着替えは極力見ないようにしていたが今目の前には吹雪のぺったんこな胸を包み込むようにつけられた薄いピンク色のブラジャーに小さな膨らみが主張するパンツを身にまとった吹雪がそこに居る。

洗濯するときくらいには吹雪のパンツやブラジャーを見ることくらいははあるけど脱ぎ捨てられた下着とそれを付けている時とじゃ下着の印象も多少は変わる物でそんな下着に身を包んだ吹雪には多少のエロスさえも感じてしまう。

「お、お兄ちゃん!何ボーッと突っ立ってるの!?」

吹雪のそんな声ではっと我に帰った

「あっ、ごごごごめん!俺洗面所行くからその間に着替えてくれ!」

俺は大急ぎで洗面所へ飛び込んだ。

そして顔を洗ってから髭剃りやら歯磨きやら朝の準備を大急ぎで済ませる

「吹雪!もう出ても平気か?」

「・・・うん」

吹雪の声を聞いてから俺は洗面所から出た。

「ごめんな吹雪・・・大急ぎで帰って来ちまって・・・」

「ううん!私もお兄ちゃん帰ってこないし早く着替えちゃおうって思ってたところだったから・・・ごめんね・・・やっぱり男の子の身体なのに女の子ものの下着なんかしてたら変だよね・・・?」

「違う!そんな事無いって何回も言ってるだろ!吹雪は体はどうあれ女の子だ!誰かが変だって言ったら俺が絶対許さない。だからもっと堂々としていいんだぞ?」

「お兄ちゃん・・・・ありがとう私お兄ちゃん大好き!」

吹雪が抱きついてくる。

これももう慣れたものだ。

しかし常々吹雪はなんで俺のことをこんなにお兄ちゃんなんて言って慕ってくれるのか不思議に思う。

確かに家族のいない吹雪の兄代わりくらいにはなってやれるとは言ったけどまさかここまで俺のことを兄として慕ってくれるなんて思いもしなかったからだ。

親のいない吹雪はそうして家族を欲しているんだろうか・・・?

でもそれなら例え血が繋がっていなくても男でも関係なく吹雪のことを妹として可愛がってやることが前いた鎮守府で心にも身体にも傷を負った吹雪にとって癒しになるなら俺はそんな関係も悪く無いと思える。

もちろん仕事中はちゃんと提督と艦娘の関係で居るようには心がけてはいるけど・・・

俺は抱きしめて来た吹雪を抱きしめ返して頭を撫でてやる。

「ごめん吹雪、好きって言ってもらえるのは嬉しいけど俺も着替えなきゃ」

「うん・・・そうだよね」

吹雪は少し残念そうに俺から離れる。

「それじゃあささっと着替えちまうな!」

俺はハンガーにかかっていた制服を着た。

「・・・よし!じゃあ行こうか!ちょっとのんびりしすぎたかもな!」

「うん!」

吹雪と共に部屋をでて朝食を摂りに食堂へ向かう。

その道中

「ねえねえお兄ちゃん」

「ん?どうした?あっ、そうそう。昨日はちゃんと一人で寝れたのか?」

「うん!寂しかったけど私頑張ったよ!」

「そうか ごめんな留守にしちゃって・・・偉かったぞ」

俺は吹雪の頭を撫でてやる。

「えへへ・・・お兄ちゃんにいっぱい褒められちゃったし頑張った甲斐あったよ・・・それでね?」

「あ、ああ悪い。話遮っちゃったな。何だ?」

「昨日大淀お姉ちゃんと何してたのか気になっちゃうなーって」

「えっ・・・!?」

吹雪急に痛い所突いてきやがった!

どうすりゃいいんだ・・・吹雪の事ほっぽり出してあいつとイチャイチャしてたなんて口が裂けても言えない!

「あ、あの〜あれだ・・・ほら大淀と俺ってここにくる前からずっと友達だっただろ?久しぶりにその・・・なんだ・・・男と男の友情を深めあってたと言うか・・・・」

何言ってんだ俺!

たしかに間違っては無いけどそっちの方が語弊あるし男と男の友情なんて一線とうの昔にぶっ越えちゃってるんだけど!!

「あれ?鎮守府の今後の話をしに行ってたんじゃなかったの?」

しまった!そんな事言って誤魔化してたんだった

ああどうしよう!さらに弁明がややこしいことになるぞ・・・!

「え?ああもちろんしたぞ?その後熱が入っちゃって思い出話が長引いちゃってさ・・・は、ははははは」

こんな適当な嘘で誤魔化せる訳ないよな・・・?

「そうなんだ!良いなぁ私そんな仲のいいお友達も居なかったからそんなお話ができるなんてすっごく羨ましいな」

誤魔化せちゃったよおい・・・

いつものことだけど吹雪のピュアさで心が痛む・・・

「そ、そんなことないだろ!ほら春風と天津風が居るじゃないか!まだあの二人は赴任してきてあんまり経ってないけどきっと吹雪ならあの二人とも俺と大淀みたいな親友になれるって!」

「うん!そうだね私頑張る!」

吹雪は満面の笑顔で頷いた。

はぁ・・・やっぱりこんな純粋な子にしょうもない嘘を重ねるのは辛い・・・

俺と大淀はもう親友なんて間柄じゃ言い表せない所まで来てるって言うのにまた適当なこと言っちゃったかなぁ・・・

そんな罪悪感に苛まれながらも食堂に到着すると、愛宕さんが焼き魚とご飯と味噌汁というオーソドックスな日本食の朝食を用意しておいてくれていた。

「提督おはよ〜ございま〜す今日は遅いのね」

「愛宕さんおはようございます。ちょっとバタバタしてまして・・・」

「ふぅんそうなの。もうみんな朝食済ませちゃってるから喉に詰めないくらいに急いで食べちゃうのよ?」

「はい!いただきます」

愛宕さんの朝食は最高だ。

焼き魚の塩加減も最高だし味噌汁もとても美味い。

洋食が得意だって言いながらもここまでちゃんと味噌汁を作れるのは尊敬するなぁ

そんなことを考えながら朝食を吹雪と共に急いで済ませた。

「それじゃあ俺は執務室だから。吹雪は今から演習場だろ?」

「うん!今日も1日がんばるね!」

「ああ、それじゃあまた後でな」

吹雪と別れ執務室へ向かった。

「おはようございます!」

いつも通り挨拶をしながら執務室に入ると

「・・・おはようございます提督」

大淀が不機嫌そうに俺を出迎えてくれた。

どうしたんだよさっきまであんなに情熱的だったのに・・・

「おはようございます提督。これ、今日の分の資料です」

席に着くと高雄さんが机に資料の束を置いてくれた

「あ、ありがとうございます」

「それじゃあ私はそろそろ失礼しますね 後よろしくお願いします」

高雄さんはそう言うと執務室から出て言った。

大淀と二人っきりになり大淀も一言も話さないし執務室に気まずい空気が流れる

「な、なあ大淀・・・・?」

「・・・何ですか?」

大淀は不機嫌そうに答える。

俺なんか怒らせるようなことした!?

「あ、あのさ・・・紅茶・・・淹れて欲しいなって」

「たまには自分で淹れたらどうです?」

「あっ、はいすみません・・・」

大淀の冷たい視線に負け、そのまま引き下がるわけにもいかず俺はせっせと紅茶を一人で淹れて飲む

やっぱり大淀に淹れてもらった紅茶の方が何十倍も美味しいし今日は一段と渋く感じた。

でも何で急にこんな怒ってんだよ・・・

「なあ大淀・・・俺なんかしたか?」

「それくらい自分で考えてください。それに紅茶飲んだんでしたらそんな事よりさっさと仕事してください」

「・・・はい」

怖えぇ

全然心当たりが無いんだけど・・・本当に俺何したんだよ・・・

結局そのままのムードで朝の日課の書類整理を一人でせっせと片付けていると

「おっはよ〜ございま〜っす!」

「・・・おはよう」

今朝の海水浴場警備当番の那珂ちゃんと天津風が執務室にやってきた。

「二人ともおはよう」

「ねえねえ提督、大淀ちゃん?昨日の晩は結局どうだったの?」

那珂ちゃんのそんな言葉に俺の顔は急に熱くなってくるし大淀の方を見てみると大淀も顔を真っ赤にさせていた

「な、那珂ちゃん!朝から何を・・・天津風ちゃんだって居るのよ!?」

「そそそそそそうだぞ!さて何のことだか・・・」

そうすっとぼけてみるが

「なっ、昨日の晩何があったの!?あたしにも教えなさい!」

俺と大淀の反応を見て何かを察したのか天津風がこちらに突っかかってくる

「だから何でもないって!なあ大淀?」

「え、ええそそそそうですよ何もありませんでした!」

「・・・そう・・・今日は大淀さんに免じてこれ以上は聞かないであげるわ」

天津風は少し悔しそうに言った。

「え〜コホン・・・それじゃあ今日朝一の警備任務よろしく頼んだぞ?」

「はーい!朝から那珂ちゃんスマイルでやっちゃうねー」

「ま、いつも通りにやってあげるわ」

「それじゃあ行ってくるねー!ほらほら天津風ちゃん!早く早く!」

「ああもう那珂さん!そんな急かさなくたってちゃんと行きますって」

那珂ちゃんは天津風を先に部屋から出るように促し、天津風が部屋から出たところで足を止めた

「あの調子だとうまく行ったみたいだね!それにしても二人ともウブで嘘つくの苦手だなってほんとお似合いだよね〜大淀ちゃん!那珂ちゃん応援してるから頑張ってね!それじゃ行ってきまーす」

那珂ちゃんはそう言い残して部屋を出た

「あ、ああ行ってらっしゃい・・・」

そんな那珂ちゃんを見送ると、執務室はまた俺と大淀の二人っきりになってしまい気まずい雰囲気になってしまう

「・・・なあ?」

「な、何?」

「何でそんな怒ってるんだ?俺なんかしたか?」

「そんなこともわからないなんてほんっと謙って鈍いよね!」

「ご、ごめん・・・」

「いくら急いでたからってあんないいムードだったのにそれ放っぽり出して出て行っちゃうなんて何考えてるの!?」

「えっ・・・?」

「えっ・・・?じゃないよ!せっかくおはようのキスしてあげようとしてたのに・・・」

大淀は頬を赤らめて恥ずかしそうに言った。

「ごめん・・・色々ありすぎて頭の中パンクしそうになっちゃっててさ・・・」

「もう・・・それじゃあ今してくれたら許してあげる」

「い、今!?仕事中だぞ?」

「それでは今日の特別任務です。秘書官の私の唇に・・・提督の唇で封をしてくれませんか?」

「ああもうそれっぽく言っても変わらないだろ!」

「だってー謙が逃げちゃうから・・・」

「う・・・そう言われると言い返せない」

「軽くでいいから・・・ね?いいでしょ?」

「う・・・わかった・・・わかったよ!じっとしてろよ?」

「・・・はい。待ってます」

俺はそのまま大淀の方まで歩み寄り目を閉じてキスを待つ大淀の唇に軽くと唇を重ねた。

やっぱり大淀の唇柔らかいな・・・

「こ・・・これでいいか・・・・?」

「・・・うん・・・・わがまま聞いてもらってありがと・・・・それじゃあ気を取り直して仕事に戻しましょっか!」

「お前なぁ・・・・」

真面目なんだかそうじゃないんだか・・・まあでも大淀の機嫌が直ったことだしそれで良しとするか

 

そして書類の整理を一通り終え、大淀は遅めの朝食を摂りに行った。

「ふぅ〜やっと終わった」

一人になり一仕事終えた開放感から椅子に座ったまま軽く伸びをする。

それから部屋の静けさからかさっきの大淀の唇の感覚を思い出して指で自分の唇を触ったりしてみる

「・・・何やってんだろ俺」

そんな自分が恥ずかしくなってそう一人つぶやき、定時連絡以外にやることもないので部屋の片付けをしていると昼の警備当番の金剛と春風がやって来て二人は警備に向かって行った。

それからしばらくしてドアをノックする音が聞こえた。

「開いてるぞー」

俺がそう言うと天津風が私服に着替えて入ってくる

「・・・失礼します」

「どうした天津風?」

「外出許可出して欲しいんだけど」

「どうした急に?」

「別にいいでしょ!?なんであなたにプライベートの事ペラペラ喋らなきゃいけないのよ!」

「そ、そうだけどさ・・・一人で出かけるんならあんまり遠くに行くと危ないし・・・」

「もう!子供扱いしないでよ!私だってもう13才なのよ!?」

「あ、ああごめん・・・それじゃあどこに出かけるかだけは教えてくれないか?」

「・・・長峰さんのところよ」

「ってことは海の家か?」

「ええ・・・あの人とは色々話したいこともいっぱいあるしあたしの保護者になってくれた恩だってある・・・だからちょっと顔を出しに行きたいなって思ったの・・・」

結局忙しくてこの間から全然会えてなかったんだよな天津風・・・

そんな天津風なりに過去の事や長峰さんたちとの関係に踏ん切りをつけようとしているんだろう。

それなら俺が止めることもないし長峰さんも心配してるだろうから顔くらい出しに行かせてやっても良いだろう。

「そうか・・・じゃあ行ってこいよ。この間釣り具借りに行った時もお前のこと心配してたし釣りの話でも土産話に持って行ってあげてくれ」

「そう・・・ありがと・・」

「でも長峰さん仕事中だからな?あんまり迷惑かけるんじゃないぞ?」

「わかってるわよそれくらい!」

「あと夕飯までにはちゃんと帰ってくるんだぞ!?」

「ああもう!どこまで子供扱いすれば気が済むのよ!当たり前でしょ!?あなたじゃないんだからほっつき歩いて突然帰ってこれなくなるなんて事しないわよ」

「あーはいはいわかったわかった。天津風は優秀だからそれくらいわかってるよな!それじゃあ行ってらっしゃい」

「え、ええ。いってきます 許可・・・出してくれてありがと・・・お兄さん」

天津風は小さな声でそう言うと執務室から出て行った。

あの二人・・・いや奥田さんも居るから三人か。

ちゃんと以前みたいな・・・いいや以前よりも良い関係になれるだろうか?

長峰さんも天津風・・・いや天も自分の事を責めてばかりでちゃんと向き合う時間や覚悟が足りなかったんだと思う。

だけどもう正直に話せたんだからあとは時間と天自身に任せるしかないよな。

俺は陰ながら応援することしかできないけど少なくとも天津風を任せられた以上は長峰さんに顔向けできないようなことだけはしないようにしようと心に誓った。

 

そしてあっという間にその日の仕事も全て終わり、帰ってきた天津風は海の家で長峰さんたちの手伝いをしていたら大盛況だったこと。

長峰さんの娘と間違えられたのが少しだけ嬉しかったこと(これは長峰さんにいったらぶん殴るって言われたけど)

長峰さんに艦娘になってからできた友達のことを話したらとても嬉しそうにしてくれた事を俺に話してくれた。

またちょくちょく天津風を長峰さんに会わせてあげられるように俺も頑張らなきゃな!

 

それから夕食を済ませ、部屋に戻ってしばらくゆっくりしていた時、ふと昨日の那珂ちゃんの事を思い出す。

吹雪も今風呂入ってて上がるまで暇だし気になるから少し今日も聞きにいってみようかな。

そう思い立った俺は【すぐ戻る 謙】と書き置きを残して昨日那珂ちゃんが歌っていた波止場へ行ってみることにした。




次回は吹雪にフォーカスを当てた特別編をお送りする予定です。
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