ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

88 / 97
夏季最終任務

 海水浴警備が終わった次の日、俺や鎮守府の艦娘たちは朝早くから海水浴場に呼び出されていた。

夏季最後の任務だ。

と言ってもそんな大層なものではなく例によって海水浴場の後片付けと海岸清掃の手伝いなんだけど

基本的には前にもやった荷物やらテントの搬出の手伝いだけど準備の時ほど暑くもなく一回やっていることだったからか前回よりもスムーズに進んだ。

「ご苦労様だ謙くん。そろそろキリもいいし昼食にしようか」

海水浴場のゴミ拾いを一通り終えたところで長峰さんがそう声をかけてくれた。

もう昼間になってたのか。

地味な作業を黙々やっていると時間も早く過ぎるもんだ

「はい!」

「よし!それでは飯にするか!」

長峰さんはそう言うと持っていたメガホンの電源を入れ昼休憩を伝える連絡をした。

 

 そして食堂へ向かうと愛宕さんと高雄さんと金剛が昼食を配り初めていて、先に戻ってきていたのか阿賀野が席について昼食を食べている。

「はいは〜いみなさん並んでくださ〜い♡今日のお昼は私が愛情込めてこねこねしたハンバーグよ〜それはもうおいしくなぁれ♡おいしくなぁれ♡っていっぱいこねこねしたからいっぱい食べてくださぁい♡」

昨日ハンバーグを多めに作ってたのはこっちで使うからだったのか・・・

しかし愛宕さんは今朝まで「うぇ〜やべぇ昨日飲みすぎた・・・第一なんで俺ゴミ掃除なんかしなきゃなんね〜んだよ全く・・・」とか言ってたとは思えないくらいには前回同様観光協会の人たちに愛想を振りまきまくっていた。

そんな愛宕さんめがけ観光協会の男たちは鼻息を荒くして列をなしている。長峰さんはそんな愛宕さんをみてやれやれと頭を抱えている。

「あれでも一応私たちの提督だった男なんだ・・・どうしてああなってしまった」

「今朝も昨日飲みすぎたとか言っておっさん全開でしたよ・・・」

「やはりそうか。相変わらずそうで安心したぞ。大変そうだなぁ高雄も君も」

「ええまあそれなりに・・・」

そんな話を長峰さんとしていると

「な、長峰さん!」

天津風がこちらに走ってやってきた

「おおソr・・・天津風ちゃんどうかしたかい?」

「あのね・・・?お昼ご飯一緒に食べてもいい?あたし長峰さんのこと待ってたの」

天津風は長峰さんに甘えた口調でそう言った。

そんな天津風を滅多に見たことがない俺は少し動揺してしまう。

「ああもちろんだとも!それじゃあ席はあっちだから座って待って居てくれるかな?君の分もお昼ご飯持っていくから」

「やったぁ!あたし待ってるから!」

天津風は本当に少女のように大人しく長峰さんに言われた通り席に着き、その様子を長峰さんは嬉しそうに見つめていた

いつも俺にはツンツンしてるくせになんで長峰さんにはこんなに甘えてるんだよ天津風のやつ・・・

「あ、あの・・・天津風いつもあんな調子なんですか?」

「ああ。あの日君と一緒に話をした後よく私のところに遊びに来てくれてね。天津風になる前のあの子はずっと心を閉ざしているように思えたが最近はやっと私たちにも心を開いてくれたようで色々話をしてくれるぞ」

「そうなんですか・・・」

「特に君がだらしないとか君が阿賀野くんの胸を揉んでたとかそんな君の話が大半だけどな!」

「ち、ちがいますよあれは阿賀野が勝手に・・・!てか天津風何話してんだよあいつ!!ほんとに違うんですよ!?あれは事故で・・・」

「まあそう隠すな。私も今そこでハンバーグを配っている奴に尻や胸をよく揉まれたものだ。全く・・・・・男の尻や胸を触って何が楽しいんだか・・・しかし男といっても私たちは特殊だからむらむらする気持ちもわからなくもないぞ?なんせ私も男なんだからな!だがほどほどにはしておけよ?」

長峰さんはそう言って笑った。

やっぱり愛宕さん元はセクハラ提督だったのかよ!!

このままでは俺が愛宕さんみたいなスケベな奴だと勘違いされてしまう

「だから違うんです!俺が意図的に艦娘の胸を触ってるとかじゃなくてあれは阿賀野が勝手に胸を押し付けて来ただけなんですって!」

「・・・そうなのか?」

「はい・・・」

「君がそう言うのならばそう言うことにしておこう。それより私は嬉しいんだよ」

「何がですか?」

「あの子は他人に無関心な子でな。あの子が君に会うまでは誰か他人の話なんてしたこともなかったんだ。そんなあの子が今や君や他の艦娘たちの話を私に嬉しそうにしてくれているんだよ。他にこんなに嬉しいことがあるか?もしかすると君の提督としての手腕の賜物かもしれないな」

「い、いえ・・・俺はそんな何もしてませんよ」

「まあそう謙遜するな。きっと艦娘として君たちと共に暮らしている間にあの子の心境にも変化があったんだろう。なにより同年代の子供たちと触れ合う機会すら私たちは作ってあげられなかったんだ。だから彼には艦娘になどならずに全寮制の学校に行って普通の男の子として過ごさせてあげた方が幸せだったのかもしれないと彼を送り出したその日からずっと思っていたんだ。でもそうしてしまっていたら今みたいなあの子の笑顔を見ることはできなかったのかもしれないと思うとこの選択も間違いではなかったと思えるよ」

そう言った長峰さんは息子の成長を見届ける親のような優しい顔をしているような気がした。

「長峰さん・・・」

「長話はこれくらいにして列もまばらになってきたことだそろそろ飯にしよう。まだ午後からの仕事も残っているし何より天津風ちゃんを待たせているからな!愛宕!大盛りで二つ頼む!謙くんはどうする?」

「自分の分は自分で取りますから先に天津風のところに行ってやってください」

「わかった。では先に失礼させてもらうぞ」

長峰さんはそう言うと愛宕さんと少し話をした後大盛りのご飯にハンバーグと味噌汁とサラダの乗ったお盆を二つ持って天津風の座っている席の方へ歩いて行った。

そして順番が回って来て愛宕さんの前に立つと

「提督〜午前のお仕事ご苦労様♡ご飯どうします?お・お・も・り?」

媚び媚びの愛宕さんの営業スマイルと着ていたエプロンからはみ出さんばかりの胸の谷間が俺の目に飛び込んでくる。

なんせただでさえサイズの小さいエプロンを着てるってのに胸を両腕で寄せて強調してくるもんだからもうほんとにすごいおっぱいだよ

これで中身は昨日は酔っ払って今朝二日酔いでぶっ倒れてたオッサンで性別も生物学的には男性だと思うと胸に目がいってしまっている自分がすごく悔しい

「並で」

ここで何か反応してしまうと負けだと思い、何事もないようにそう言った

「えぇ〜提督は食べ盛りなんだからもっと食べなきゃダメよぉ〜大きくなれないゾ♡」

愛宕さんはそう言うとまた大きな胸をぶにぶにと強調してくる

「いやハンバーグ昨日も食べましたしそれに成長期なんて終わってますよ」

「まあそう言わないで食べてよぉ〜昨日とはちょっと味付けも変えてあるから・・・ね♡」

愛宕さんがウインクをすると胸がまた大きくぶるんと揺れた。

これ以上話していたらそれこそ愛宕さんの思う壺だろう。

「それじゃあ大盛りでいいですよ。というか今朝のアレはどうしたんですか?」

「さぁ?なんのことかしらぁ?お姉さんわかんな〜い」

愛宕さんは盛大にすっとぼける

「だから二日酔いですよ二日酔い!散々昨日飲みすぎるなって言われたのに起きて早々トイレでゲロって・・・・むぐっ!」

さらに追求してやろうと思ったがその瞬間愛宕さんの右人差し指が俺の口に触れた。

愛宕さんはそのまま右手の指で俺の頬を撫で、背筋にはゾワゾワっとした感覚が走る

そして愛宕さんは顔をこちらに近づけてきて俺は急なことに顔を赤くしてしまう。

「ひうっ・・・!あ、愛宕さん!?急に何を・・・!?」

辺りをを見回すと観光協会の人たちがこちらを羨ましそうに見ていて口々に

「なんだよあのボウズー提督だからって愛宕さんにあんなことしてもらって羨ましいぜチクショー!」

だとかなんとか言っている

みなさん目を覚ましてください!この人実は中身はみなさんと変わらないおっさんなんですよ!!

流石に口に出すわけにも行かないので心でそう叫んでいるといつもの数割り増しで綺麗な愛宕さんの唇がぷるんと動く

「なっ・・・!」

愛宕さんは俺の顎をくいっと持って右に90度回し耳に顔を近づけてきた

な・・・何されるんだ俺・・・!?

俺の鼓動はさらに早まり息も少し荒くなってきている

落ち着け・・・落ち着くんだ俺・・・

そうは言うものの耳元に愛宕さんを感じてからまだ1秒も立っていないと言うのに凄まじく長い時間に感じてしまう。

次の瞬間

「それ以上言ったら今夜俺みたいな可愛いオンナにしてやるから覚悟しろよ?」

と低く小さな声で囁かれた。

今おかれている状況も恥ずかしいし耳元では凄まじいことを囁かれるしで俺の足は小刻みに震えている。

どうやら遠巻きに見ていた人たちからは頬にキスをされたように見えたようで観光協会の方々がこちらに羨望やら嫉妬やらの感情が入り混じった視線を向けてきたり

「あのボウズ半年そこらで愛宕さんとそんな親密になるとか何したんだチクショーそこ代われ!」

とかなんとか怨嗟に近い声も聞こえてくる。

違うんです!ただすごい低音で耳打ちされて脅されただけなんです!!

でもこれ以上言ったらそれこそもっとヤバイことになりそうなので

「は・・・はいぃ・・・」

と情けない声で返すしかなかった

「わかればいいのよ♡それじゃあ大盛りにしたから私の愛情たっぷりハンバーグうーんと食べてね提督♡」

愛宕さんは調子を戻してあざとくそう言って昼食の乗ったお盆を手渡してきたので俺はそそくさとその場を立ち去った。

横でずっと味噌汁をよそっていた高雄さんは少し申し訳なさそうにこちらに軽く頭を下げてきている。

 

そして××鎮守府様と書かれたプレートが置いてあるテーブルに向かうと既に食べ終わりつつあった阿賀野がニヤニヤとこちらを見てくる。

凄まじく嫌な予感がするが大淀や吹雪がまだ帰ってきていないのが不幸中の幸いだと思うしかないだろう

「ねえねえ提督さん!真昼間からお盛んね〜」

阿賀野は冗談交じりにそんなことを言ってくる

「ちっ・・・ちげーよただ二日酔いのこと聞いたら脅されただけなんだって」

「えーほんとにー?なんて脅されたの?」

「別にどうでもいいだろそんなこと!」

「え〜教えて欲しいな〜教えてくれたら阿賀野のおっぱい触らせてあげてもいいけど?」

「いらんわ!」

いくら男とはいえこの鎮守府の艦娘たちはおっぱいを安売りしすぎだ!

そりゃ俺だって男なんだし?おっぱいに興味が無いわけじゃないけど・・・?

流石にこうも安売りされるとなんか興味を通り越しておっぱい恐怖症になりそうだ

「えーいいじゃない教えてくれたって減るもんじゃないんだし」

「そんなおっさんみたいなこと言われても嫌なもんは嫌だ」

「えーそれじゃあさっき愛宕に顔撫でられて顔真っ赤にして足ガタガタ震わせてたって吹雪ちゃんと大淀ちゃんに言っちゃおっかな〜」

「そ・・・それだけはやめてくれ!」

「じゃあ教えてくれたら黙っててあげる〜」

「ぐぬぬぬ・・・」

こいつ・・・いつもながらに策士だ・・・

せっかくあの二人には見られてなかったのにそんなことをされてしまっては台無しだ。

「わ・・・わかったよ・・・」

「やったー提督さんだーいすき!」

阿賀野がそう言うとまた観光協会の男たちがこちらを一斉に睨みつけてきて

「あいつ・・・愛宕ちゃんだけじゃなくて阿賀野ちゃんまで・・・」

「なんつう絶倫ヤローなんじゃ・・・」

なんて言われてしまっている

せっかく最近街の人からの評価もそこそこ上がってきてたと思ったのにこれじゃあ村八分にされそうだ。

「ああもう大声でそう言うこと言うなって!!」

「えへへ〜ごめーん!で、なんて言われたの?」

「あ、ああ・・・二日酔いの事聞いたら耳元ですっげぇ低い声でこれ以上言ったら今夜俺みたいな可愛いオンナにしてやるって言われて・・・」

「え〜なにそれ〜!」

阿賀野はクスクスと笑った。

「わ、笑うなよ!前に高雄さんとお前に女装させられたりその後事故とは言え女装してホテルでお前に押し倒されたりしてからなんか怖いんだよ!!」

「へぇ〜そうなんだ・・・じゃあ愛宕なんかじゃなくて俺が今夜提督さんを前みたいにオンナにしてやってもいいけど?」

阿賀野がそんなことを低めの声で言って顔をキリッとさせてこっちを見つめてきたので身体がびくりと強張ってしまう

「ひっ・・・!」

「うっそ〜隙ありっ!」

阿賀野は次の瞬間俺のさらに乗っていたハンバーグを半分橋でつまんでぱくりと食べてしまった

「あ〜お前ー!」

「むぐむぐ・・・ごくん・・・はぁ〜ちょっと物足りなかったから貰っちゃった!ごちそうさま提督さん♡」

阿賀野は笑顔でそう言った

「お前よくも俺の貴重な昼飯を!」

「へへーんだ!それじゃあ阿賀野もう食べ終わったから行くね!ごちそうさまー」

阿賀野はトレーを持ってそのまま外に出て言ってしまった

はぁ・・・なんと言うか俺・・・艦娘たちにナメられてんのかなぁ・・・

そう思って惨めになりながら一人寂しく半分になったハンバーグを食べ始めた。

 

そして食べている間に大淀や吹雪たちと合流し、午後は海岸のゴミ拾いやらゴミ出しだ。

もう海の方は午前中で片付いたようで大淀たちと一緒にゴミ拾いをやることになった。

やはりあれだけ人が来るとゴミが結構散らかっているものでポイ捨てしているゴミを見る度疲労こっちの身にもなれと捨てた奴に殺意にも似た感情を抱きながらゴミをせっせと拾い集めた。

 

それから数時間経ってやっと後片付けがすべて終わり、長峰さんが俺たちや観光協会の人たちを集めて挨拶を始める。

「えー今年もみなさまのお陰で無事海水浴場の開放期間が終了し・・・・・」

長峰さんのクソ真面目でながったるい話が15分ほど続き、隣にいた奥田さんにメガホンが渡ると

「それじゃあみなさんお疲れ様でした!今夜は18時から××町集会所で自由参加の打ち上げがありますからぜひ参加してってくださいねーもちろん鎮守府のみなさんも参加OKでーすそれでは解散してくださーい」

と言った

どうやら今日は打ち上げがあるらしい。

愛宕さんは

「今日はいっぱい飲むわよ〜」

と意気込んでいる

昨日散々飲みまくってただろ・・・と突っ込んだらあとが怖いので黙っておくことにしよう。

結局流れで鎮守府の面々は全員(結局今日は部屋から出てこなかった初雪を除いて)参加ということになり打ち上げの会場がある集会所へ向かっていた。

いつも買い出しに行くときに通っているが入るのは初めてだ。

中は結構綺麗でそこそこの広さもあり、もう既に観光協会の人たちが何人かビールを飲み始めている。

そして18時になると長峰さんが乾杯の音頭を取り、打ち上げが始まった。

テーブルにはやはり愛宕さんが昨日作り置きしていたであろうとんかつや近海で取れた魚介類の料理なんかが並んでいてそれを食べながら鎮守府の面々だろうが観光協会の人たちだろうが関係なく労いあった。

さっきは俺の評判がガタ落ちするんじゃないかと心配していたが観光協会の人たちはなんだかんだでよくやっているとか若いのに偉いなんて言葉をかけてくれた。

そんな言葉をかけられると俺も頑張った甲斐があったと言うものだ。

ふと横に目をやると愛宕さんが観光協会の人たちにお酌をして回っている。

昨日散々高雄さんにやらせていたとは思えないくらいだ。

愛宕さんは

「あぁん♡私飲みすぎちゃった〜」

なんて言っているが昨日の半分も飲んでいない。

きっとちょっと酔って開放的になった感じの女を演じて観光協会の人たちからまた色々ゲットしてやろうって魂胆なんだろう。

まあでも愛宕さんが貰ってきてくれる差し入れは確かに美味しいし何よりお酒を貰った日の愛宕さんはすごく機嫌が良くて夕飯も美味しくなるから観光協会の人たちには悪いけどここは愛宕さんの好きにさせておこう。

でも愛宕さんはあんな感じだから俺がしっかりしなくちゃ・・・

結局愛宕さんがやらかさないか心配で料理よりそっちの方が気になって仕方がなかった。

 

それからあっという間に時間は過ぎ、宴会はおひらきになった。

提督である手前最後まで残っていたが、人もまばらになってきたので鎮守府へ帰ろうとすると

「謙くん。よかったらこれ貰ってくれないかしら〜?」

酔っ払って女性みたいな口調になっている奥田さんに大きめのレジ袋を渡された

「なんですかこれ?」

「花火セットよ〜長門が買ってきてたの。よかったらこれでおチビちゃんたちと遊んであげて。あの子達も頑張ったんだしご褒美あげなくっちゃ」

「は、はい!ありがとうございます!あれ・・・?」

「ん〜どうしたの〜?」

「長峰さんはどうしたんですか?」

「あ〜長門ね〜あそこよ〜」

奥田さんが指した方を見ると長峰さんは高雄さんに泣きついていて高雄さんはそんな長峰さんを優しく撫でてあげていた。

「ど、どうしたんですかあれ!?」

「あ〜あれね〜長門お酒飲むと泣き上戸になっちゃうのよ〜いつもの事だから心配しないであげて〜」

「そ、そうなんですか・・・」

「長門のことは私がなんとかしておいてあげるから早くそれ持っておチビちゃんたちと遊んできなさいよぉ〜」

奥田さんも結構酔ってる気がするけど大丈夫なのかな・・・

まあ高雄さんもいるしなんとかなるだろう。

「は、はい・・・・ありがとうございます」

奥田さんにお礼を言って立ち去ろうとした次の瞬間

「あ〜ちょっと待ちなさいよぉ〜」

「へっ・・・?」

奥田さんに呼び取られたと思ったら俺は奥田さんに抱きしめられていた

「お・・・奥田さん!?」

「あら〜?今の私は陸奥よ?」

「いやいやいや!!完全に男の格好じゃないですか!!」

「別に見た目なんてどーでもいいじゃない。お姉さんがせっかく褒めてあげようと思ったのにぃ〜」

ああ・・・この人も酔っ払うと結構めんどくさいタイプだ・・・

しかし気づくのが遅かった。

もう既に奥田さんは俺をがっちりホールドしているし結構な力があるせいで振りほどけない

「お、奥田さん・・・」

「むーつー陸奥って呼んでくれなきゃ嫌」

「む、陸奥さん・・・?離してくれませんかね・・・・」

「ちょっとくらいいいじゃないのー男のふりしてオッサンばっかり酒飲んだりなんだしてて若いオトコノコ成分が足んないのよぉ〜」

「男のふりって・・・・陸奥さん男でしょう!?」

「えーそうだったかしらぁ〜?すぐ終わるからお姉さんに成分補給させて♡ああっ・・・さっきまでじじいとオッサンに囲まれてたから尚更可愛く見えるわぁ・・・♡はぁ・・・若い子の汗の匂い・・・」

「むむむむむ陸奥さん!?」

奥田さんの抱擁はさらに強くなっていく。

ところどころ柔らかいところを感じるが腕の感じはやはり男のものだ。

「陸奥さん・・・苦しいですって・・・」

「あらごめんなさい。もうすぐ終わるから・・・」

すると奥田さんは俺の頬に軽くキスをしてきた。

ほんのり酒臭い香りとそれとは違う漁の手伝いの時に感じたほんのり甘いいい香りが奥田さんからはする。

流石にあの時のように鼻血を出してぶっ倒れたりはしなかったけどせめて陸奥さんの格好をしているときにやって欲しかった。

今の状態だと酔っ払ってるお兄さんにキスされただけじゃないか・・・

「お姉さんに付き合ってくれてありがと♡やっぱりあなた可愛いわ。それじゃあまたね♡」

奥田さんは俺を開放すると頭を撫でてくれた後可愛らしく手を振ってくれた。

なんだかその素振りや顔つきが美人に見えてしまったのでそんな気分になった自分が少し悔しい。

それに尚更そんなことするならせめて格好も陸奥さんの状態でやって欲しかったなんてことを思った。

結局褒められたんだか酔って絡まれて遊ばれただけだったのかよくわからなかったな・・・

「は、はい。お疲れ様でした。長峰さんにもよろしく言っておいてください」

俺は奥田さんに頭を下げて貰った花火セットを持ってとぼとぼと鎮守府へ戻った。




次回、なんだかんだで一年近く長々続けてしまった夏編最終回です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。