ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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約一年ほど続いた夏編やっと終了です。
次回からは秋変に突入の予定です。(季節感ガン無視)


夏の終わりに

 「はぁ・・・ひどい目にあった・・・」

そんなことを呟きながらトボトボと自室へと歩いていた。

なんせそこそこガタイのいい兄ちゃんに抱きつかれた上にキスまでされたんだからそうもなるだろ

でもあの人女装してたら本当に美人なんだよなぁ・・・おっぱいもでかいし・・・

って違う違う!いくら美人だろうが胸がでかかろうがあの人も男なんだぞ!?

やっぱり相当この特殊な環境に毒されてるのかなぁ・・・

そうこうしているうちに自室へとたどり着く

「ただいまー」

ドアを開けるとその先にはバスタオルに身を包んだ吹雪が扇風機の前で座っていた。

「きゃぁ!お、お兄ちゃん!?」

吹雪もこちらに気が付いたようで顔を赤くして立ち上がった。

バスタオルとぎゅっと握りしめて恥じらうその姿は本当に年頃の女の子のようだ。

そんなそぶりをされてしまってはこちらも気恥ずかしくなり俺は思わず吹雪に背を向けた。

「ご、ごめん吹雪!風呂入ってるとは思わなくて!!」

「こっちもごめんなさい!すぐに着替えてくるね!」

そう言うと吹雪は洗面所へ一目散に駆け込んで行く。

そんな姿を見て妹の風呂上がりに遭遇してしまった兄貴ってこんな感じなんだろうなぁと思った。

妹いないからわかんないけどな

というか大前提として吹雪も男の子なんだけどなぁ・・・

女の子として吹雪に接しているから危うくそんなことを忘れてしまいそうになる。

吹雪だけじゃない。

他の艦娘達もそうだ。

ちゃんと意識していないとあいつらが男だってことを忘れてしまいそうになるこの状況に俺は危機感を覚えていた。

女性に飢えすぎてておっぱいと顔さえよければ別に男でも良いやとか思い始めてるのか・・・・?

絶対ダメだ!

その一線だけは絶対に超えてはいけない。

いけないはずなんだけど・・・・

「お兄ちゃん?」

頭の中で思考を巡らせていると後ろからした吹雪の声で我に帰る。

「な、なんだ!?」

声の方へ振り向くと吹雪がこちらを見つめていた。

吹雪は寝巻きに着替えて洗面所から出てきていたようだ。

「ほっぺた少し腫れてるよ?蚊にでも刺されたの?」

吹雪に言われ頬を撫でてみるがそんな形跡はなく腫れてもいない。

「へ?刺された覚えもないし全然痒くも・・・・」

まさか・・・!

「吹雪ちょっとごめん!」

俺は一つの心当たりから急いで洗面所に駆け込んで鏡を見た

「あーやっぱりか・・・」

奥田さん・・いいや陸奥さんにキスされた方の頬には少し赤く血が滲んでいるような跡ができている。

これってもしかしてキスマークって奴か・・・!?

初めてキスマークを付けられた相手が男だとは・・・

俺は一つ大きなため息をついた

しかし吹雪にそのまま話すわけにもいかないし蚊に刺されたことにしておこう。

俺が洗面所から出ると吹雪が心配そうに駆け寄ってきた

「お兄ちゃん大丈夫なの?」

「あーもしかすると帰ってくる最中に蚊に刺されちゃったのかもなー」

俺は適当なことを言いながら虫刺されの薬を頬に塗りたくった。

吹雪はそんな俺を心配そうに見つめてくるので罪悪感がふつふつと湧き上がってくる。

「お兄ちゃん本当に大丈夫なの?」

吹雪の視線がチクチクと突き刺さってくるようだ。

やめろ!そんな目で見ないでくれ!!

「あ、ああいやただの虫刺されだから大丈夫だよ・・・多分。あっ、そうだ!これこれ!」

俺は話を逸らす為に奥田さんからもらったビニール袋を吹雪に見せた

「なぁにお兄ちゃん?」

「ああこれ花火だよ。奥田さんと長峰さんにもらったんだ。よかったら今からみんな誘ってやらないか?」

「花火・・・?あの空でパーンってなるやつ?そんなに小さいの?」

吹雪は不思議そうに首を傾げた。

「もしかして吹雪お前花火の事知らないのか?」

「もーいくら私があんまり外の世界のこと知らないからってバカにしてるでしょお兄ちゃん!それくらい知ってるし見たこともあるよ!空に打ち上げる綺麗なやつでしょ?」

「それも花火なんだけどそれとはちょっと違って手に持つ花火なんだ」

ビニール袋から花火がたくさん詰まった袋を取り出すと吹雪は更に不思議そうな顔をした。

「そんなのもあるの?私の艤装なんかよりすごく小さいけど本当にあんなのが出るの!?」

当たり前のように手持ち花火の存在を知ってるから全く気にしなかったが吹雪からしたら手持ちの花火なんて駆逐艦娘の主砲みたいなものか何かと勘違いしているのか?

ここで生活してる分には全然大丈夫だけど吹雪のやつ本当に外の世界のこと知らないんだな・・・

吹雪は艦娘になるためだけに生まれて育てられてきたんだから無理もないのかもしれない。

こんな事を思うのは俺の傲慢なのかもしれないけどそんな吹雪が少し可哀想に思えてしまう。

だからこそ俺は吹雪に外の事を教えてやらなきゃいけない。もっといろいろな事を教えてやらなきゃいけない。

提督として・・・そしてこいつのお兄ちゃんとして。

そんな使命感に俺は駆られていた。

「大丈夫だって。打ち上げ花火みたいに派手じゃないけどこれはこれで良いもんだぞ?まあやってみればわかるって!」

「そうなの?」

「そうだ。それにみんなでやればもっと楽しいぞ!」

「みんなで?」

「ああ。吹雪たちも頑張ったんだからそのご褒美に遊んでやれって奥田さんと長峰さんがくれたんだ。だから今から皆誘って遊ぼうぜ!うーん・・・そうだなぁ・・・波止場辺りでやれば良いかな」

「でも・・・もう夜だよ?」

吹雪は遠慮がちにそう言った。

「良いんだよ!たまには夜遊びくらいしたってバチも当たんないだろ?さ、早く他の艦娘達も誘いに行こうぜ?」

「うん!」

「じゃあ行くか!とりあえず春風と天津風だな!」

あの二人が居る新宿舎へ向かおうとすると

「ちょっと待ってお兄ちゃん」

吹雪がシャツを引っ張ってきた

「どうした?」

「あっちに行く前に初雪お姉ちゃんも誘っていい?」

「えっ・・・?ああ、良いけどあいつの事だし出てこないんじゃないかな」

「それでも私、初雪お姉ちゃんと一緒に遊んでみたいの・・・だから声をかけに行くだけなんだし良いでしょ?」

「ああ。吹雪がそう言うなら・・・」

と言うわけで吹雪を連れて初雪を誘いに行くことにした。

今朝は呼びに行ったが結局部屋から出てこなかったし今も多分部屋にいるだろう。

「おーい初雪ーいるんだろ?」

部屋のドアをノックして呼びかけて見るが返事がない。

「おかしいな・・・おーい初雪寝てるのか?」

続けてドアをノックしながら呼びかけると

「・・・うるさい」

ドア越しに小さな初雪の声が聞こえた

「ああよかった。もしかして起こしちゃったか?」

「ううん起きてた・・・で、何の用?私今いそがしい」

「あーそうなのか。長峰さんと奥田さんに花火セットもらったんだよ。良かったら初雪も・・・」

一緒にどうだ?と言いかけたところで

「やだ」

初雪は即答した

「即答かよ!?」

「だって蒸し暑いのに外出るなんておかしい・・・それに私いそがしいって言ったよ?」

「あ、ああ・・・すまん・・・邪魔して悪かったな。吹雪、天津風たちを誘いに行こう」

「うん・・・そうだね・・・せっかくだし初雪お姉ちゃんとも遊びたかったけど忙しいなら仕方ないよね・・・」

吹雪も残念そうに言った。

すると

「・・・吹雪・・・ちゃん・・・居るの・・・!?」

ドアがほんの少しだけ開いて初雪の声が聞こえた

「ああ。吹雪が初雪も誘ってあげたいって言ったから来たんだぞ?どうせ出てこないと思ってたけどな」

「も〜お兄ちゃんひどいよ!?初雪お姉ちゃん?忙しいなら無理にとは言わないけど・・・ちょっとでも一緒に遊べたら嬉しいな」

吹雪がそう言うと

「うん・・・・!いく!花火・・・やりたい!ぜったい・・・いくから!ちょっとまってて・・・すぐにおいつくから!どこで集まるかだけおしえて」

初雪は早口でそう言った

おいおいなんだよ・・・俺が誘った時とは大違いじゃないか

「やったぁ!波止場でやる予定だよお姉ちゃん!それじゃあ待ってるね!」

吹雪は嬉しそうにドアの隙間にそう呼びかける。

初雪の対応の差に釈然としないところもあるが吹雪が喜んでくれるならそれで良いか。

「じゃあ次は春風と天津風だな」

「うん!」

そして新宿舎の方へ向かっていると

「あら?司令官さまに吹雪ではないですか」

風呂上がりなのかいつもはくるくると巻いた髪を後ろで束ねている春風が声をかけてきた

「おお春風!丁度お前を呼びに行こうと思ってたんだよ。今風呂上がりか?」

「ええ。せっかくですから大浴場でと思いましてお借りしてまいりました。それでわたくしに用とは?」

「春風ちゃん春風ちゃん!今からみんなで花火するんだ!だから天津風ちゃんと春風ちゃんを呼びに行こうと思ってたの!」

「そうだったのですか。そう言う事ならわたくしもご一緒させていただきます」

「やったー!」

「なあ春風、天津風は部屋か?」

「ええ。お風呂ご一緒しないかとお誘いしたんですけど部屋で浴びるから良いと言っていましたから今も部屋ではないかと」

「そっか。それじゃ吹雪と春風は天津風を呼んで来てくれ。俺はその間に準備して待ってるから」

「うん!わかったよお兄ちゃん」

「それではまた後ほど」

春風と吹雪は新宿舎の方へ向かって行った。

そんな二人を見送ってから俺は波止場とは逆の方向に向かった。

たどり着いた場所は大淀の部屋の前だ。

あいつが花火なんかに興じるかどうかはわからないけどせっかくだしあいつと夏っぽいことがしたい。

でもどうやって誘おう・・・

普通に花火やんねーか?

で良いんだろうけどなんで俺ちょっと緊張してるんだろう・・・

大淀の部屋の前で考え込んでいると

「ん〜?こんな時間にこんな所でどうしたのかな?」

突然後ろから声をかけられる

「うわぁ!な、なんで阿賀野が居るんだよ」

「ひどいな〜阿賀野の部屋大淀ちゃんのお向かいなんだけど〜?」

「そ、そういやそうだったな・・・」

「で、何しに来たの?夏が終わる前に捨てに来たとか?」

「何をだよ・・・?」

「ど・う・て・い?それとも処女かな〜?どっちが受けでどっちが攻めなのかは知らないけどね〜」

「はぁ!?そんな訳ないだろ!?それに俺とあいつはそんな関係じゃ・・・」

「ほんとかな〜?ソワソワしてたしてっきり大淀ちゃんに夜這いでもかけに来たのかと思ったけど」

「ちげーよ!ただ花火に誘おうと・・・」

「花火?やっぱりそういう・・・提督さんも隅に置けないなぁ」

阿賀野はニヤニヤと右の指で輪を作ってその中に左指を出したり入れたりし始める。

やっぱり黙ってたら美少女だけど平然とこんな下ネタブッ込んでくる辺り中身はやっぱ男だこいつ・・・

「だからそう言うのじゃねーっての!長峰さんたちに駆逐艦の子達と遊んでやれって貰ったんだよ!」

俺は手に持っていたビニール袋を阿賀野に突きつけた

「なんだーつまんないの・・・ってそれじゃあ大淀ちゃんだけ誘って阿賀野のこと誘ってくれるつもりはなかったって事!?ひどーい!」

「い、いや駆逐艦達だけ集めてやるつもりだったんだけど・・・」

「む〜阿賀野いじけちゃうよ?」

「・・・わかったよ。人数が多い方が楽しいって吹雪も言うだろうし・・・でもその分片付けとか手伝ってもらうからな」

「はーい!やった〜提督さんと花火だ〜どこでやるの?」

「波止場辺りでやろうかなと・・・」

「それじゃあ那珂ちゃんも誘って良い!?」

「ああ良いよ」

「それじゃあ先行ってるねー!あっ、そうだバケツとか用意しといた方がいいよね!阿賀野がやっとくね!」

「助かるよ」

「それじゃあ提督さんまた後でね!」

阿賀野は嬉しそうに走って行く

そんな阿賀野を見送り俺は覚悟を決めて大淀の部屋のドアをノックした。

しかし返事はなく何度か呼びかけて居ると

「もーそんな呼ばなくても私は逃げないって・・・どうしたの?」

そんな大淀の声とともにドアが小さく開いた

「お、大淀!?」

そのドアの隙間から除いた彼女はバスタオルを胸まで巻いて肌には水が滴っている。

どうやら風呂の途中だったようだ。

「ご、ごめん!風呂入ってるとは思わなくて・・・」

「ほんとだよ。謙じゃないとこんな格好で出たりしないんだからね?」

「あ、ああ・・・」

「で、何の用?」

「あ、あのさ・・・花火貰ったんだけど今からどうだ?」

「え、花火・・・?」

「嫌なら良いんだ。でもお前と一緒に花火したくってさ・・・あれだろ?夏の間忙しくてそれっぽいこともあんまりできなかったしさ」

「嫌だなんてとんでもない!すぐ行くから待ってて!」

そう言うと大淀はドアを勢いよく閉めた。

それから5分ほど待っているとドアが再びゆっくりと開いた

「はぁ・・・はぁ・・・お、おまたせ・・・どうかな?」

そこから現れた大淀は可愛らしい浴衣に身を包んでいる。

息も上がってるし多分大急ぎで支度したんだろうな。

そんな大淀の姿に俺は見とれていた

「あ、ああ・・・似合ってる・・・ぞ?」

「そ、そう?よかった・・・本当は秋のお祭りで着ようと思って準備してたのまさかこんなすぐに謙に見れられるなんて思ってなかったわ」

大淀は嬉しそうに袖を振り俺に見せつけてくる。

そんな彼女に俺は胸を高鳴らせてしまっていた。

「そ、それじゃあ行こうぜ?」

「うんっ!」

そして大淀を連れて波止場の方へ向かうと

「OH!次は天津風が鬼デース!」

「むー悔しい!絶対すぐに捕まえてやるんだから!!」

そんな金剛と天津風の声、それにはしゃぐ吹雪と春風の声も聞こえてきた。

どうやら俺を待っている間に金剛と駆逐艦達がだるまさんが転んだをして遊んでいたようでその様子を初雪が遠巻きにながめていて、その奥では阿賀野と那珂ちゃんがバケツに水を汲んでいる。

どうやらみんな揃っているようだ。

「ね、ねえ謙・・・花火って」

「ああ。駆逐艦の子達と遊んでやってくれって奥田さんに言われて貰ったんだよ。でもせっかくだしお前も誘いたいなーって思ってさ」

「そ、そうだったんだ・・・そうだよね・・・」

大淀は少し残念そうでどことなく恥ずかしそうな顔をした。

「どうした大淀?」

「ううんなんでもない!でもちょっと気合い入れすぎちゃったかなーって・・・」

「そんなことないぞ?すっげえ似合ってるし・・・その・・・なんだ・・・今のお前めちゃくちゃ可愛いぞ?」

「・・・浴衣着てないときの私は可愛くないんだ?」

大淀はいじけたように言った

「そ、そんな事は・・・」

「どう言う事?」

「だ、だから・・・・」

「だから?」

「ああそうだよ!大淀になってからのお前はいつも綺麗で可愛いよ!」

「謙・・・・嬉しい」

「ああもう恥ずかしいから二度と言わせないでくれよ」

「・・・はい」

大淀とそんな話をしていると

「あっ、お兄ちゃん!それに大淀お姉ちゃんも来たんだ!うわぁ・・・その浴衣すっごく可愛いね!」

吹雪がこちらに気づき駆け寄って来た

「あっ、提督さん!やっときたの?」

「も〜おっそーい・・・よ!今日は歌のレッスンお休みにしたんだからちゃんとその分楽しませてよね!」

阿賀野と那珂ちゃんもこちらにやってきた

「・・・おそい」

「もー何してたのよ!」

初雪と天津風が悪態をついてくる

「ごめんごめん!そういや金剛は吹雪達が呼んだのか?」

「ええ。吹雪が皆で遊んだ方が楽しいからと言うのでお呼びしました」

「呼ばれたデース!ささ早く始めまショー!」

金剛は子供のようにはしゃいでいる。

「大淀ちゃんが浴衣着てくるなら阿賀野も着てくればよかったな〜」

「大淀ちゃんすっごく可愛いよ!那珂ちゃんほどじゃないけど!」

大淀は那珂ちゃんと阿賀野に囲まれていた。

「それじゃあ始めるか。せっかくだしほら。吹雪天津風春風お前ら三人が一番最初な」

俺は袋から花火セットを開けて手持ち花火をバラし、吹雪達に渡した

「こんな小さいのに花火なの・・・?」

やはり吹雪は手持ち花火を不思議そうに見つめていた

「まあまあ火つければわかるって。そうだ。誰かライターなりマッチなり持って来てるか?」

「YES!こんなこともあろうかとガスライター持って来てるヨー?」

「ありがとう金剛。それじゃあ付けてやってくれるか」

「わかったネー!はーい点けますヨー?fire〜!」

金剛が吹雪の手持ち花火に火を点けると音を立てて花火が吹き出した

「うわっ!これが花火?!小さいけど綺麗・・・」

吹雪は食い入るように花火を見つめている。

そんな吹雪の花火から火をもらって天津風と春風の花火にも火が点いた。

「よーし火傷しないように気をつけるようにな。それじゃあ花火置いとくからみんな適当に取ってくれよな」

そう言うと残りの艦娘達も花火を手に取り始める

「それじゃあ金剛、これにも火、点けてくれるか?」

「YES!点けます!fire〜!!」

金剛は小気味良く花火セットに入っていたロウソクに火をつけてくれた。

そのロウソクで花火にどんどん火が点いていき、辺りは少し花火の日で明るくなり、それからしばらく花火を楽しんだ。

「ばーにんぐらぁぁぁぁぶ!!」

金剛が花火を振り回しながら走り回っている。

「おいこら金剛!花火振り回したら危ないだろ!!それに吹雪達が真似したらどうすんだよ!!」

「えへへ〜テンション上がっちゃったネー」

良い大人が何はしゃいでんだか・・・

辺りを見回すと初雪が吹雪たちを優しい目で遠巻きに眺めている

「初雪?お前は参加しないのか?」

「私が入ったらみんな気・・・使うでしょ?それに見てるだけで楽しいから・・・」

「そ、そうか」

しばらく初雪と一緒に吹雪たちを眺めている時、

ふと初雪の方をみるといつもより目がぱっちりとしているし血色も良い様に見えた。

暗くてよくわからなくて勘違いかと思ったがやっぱりいつもとは比べ物にならないくらいにそう見える。

もしかして化粧でもしてるのか?

初雪って化粧するんだ・・・・てか今日はずっと部屋に居たはずだけどなんでする必要があったんだ・・・?

初雪の顔を不思議そうに眺めていると

「・・・なに?私のことジロジロ見て面白い・・・?」

初雪はこちらを睨みつけてきた

「あ、ああいやなんでもない」

そうごまかしていると天津風が連装砲くんの砲塔に花火を突っ込んでいる

「みてみて!!連装砲くんから火花が出てるわ!なんかビーム砲みたい!」

連装砲くんって火薬とか入ってるんじゃ・・・

それに動いてるってことはなんか燃料とかで動いてるんだよな・・・?

それって引火したらヤバイやつじゃ・・・!!

俺は急いで天津風たちの方へ駆け寄る。

「おい天津風!連装砲くんだって一応火器なんだからそんなの突っ込んで爆発したらどうすんだ!!」

「大丈夫よ。出撃の時以外は弾薬とかは高雄さんに抜いてもらってるし連装砲くんも花火で遊びたいって言うから」

「はぁ・・・びっくりさせやがって・・・ってお前連装砲くんの事わかるのかよ!?」

「え、ええ・・・最初は自分でもびっくりしたけどほんのちょっぴりだけ」

また一つ連装砲くんの謎が増えてしまった。

一体どうやって動いてどうやって天津風と意思疎通を測ってるんだ・・・?

「そ、そうなのか・・・とにかく怪我とかしないように気をつけて遊べよ?」

「はーい」

全く・・・保護者っていつもこんなヒヤヒヤした気分なんだな・・・

少し親の苦労がわかったような気がする

でもそんな連装砲くんを囲む天津風と春風と吹雪の三人は年頃の子供みたいな表情で楽しそうだ。

きっとこの年頃ならこうやって友達と遊んでいるのが普通なんだろうけど艦娘として生活している以上そんな事すら普通にさせてあげられない自分にやるせなさを感じた。

「ねえ謙?どうしたの?謙は花火しないの?ほら火分けてあげるから一緒にやろ?」

そんなことを考えていると大淀が花火を渡してくる

「ごめんちょっと考え事してた」

花火を受け取って火を分けてもらうと先から勢いよく火花が飛び出す。

そんな飛び散る火花を俺はぼんやりと眺めていた。

「謙とこうやって一緒に花火出来て私嬉しいよ?」

「俺も・・・しかし不思議なもんだよな高校卒業した後はもうお前とは会えないと思ってたのにそれから半年も経たないうちにこうやってまた一緒に居るんだから」

「本当に不思議な話だよね、私はあの頃とはもうだいぶ変わっちゃったけど」

「なあ、大淀・・・お前は艦娘になって本当に良かったのか?」

「急にどうしたの?」

「・・・いや。ああやって無邪気にはしゃいでる吹雪たちを見てたら艦娘ってそんなことすらままならない生活を送らなきゃいけなくなるしそれで本当に良いのかなって・・・それにここにいる艦娘たちは男なのに体も色々変わってて・・・・もちろん吹雪たちにはそんなこと怖くて聞けないけど」

「吹雪ちゃんたちはどうかわからないけど私は謙と一緒に入れて幸せだよ?」

「それだけでか?」

「うん!最初はそれだけだったけど最近は高雄さんや那珂ちゃん・・・それに吹雪ちゃんや他の艦娘たちと一緒に居るのも悪くないなって思ってるよ。それにこの辺りは深海棲艦も少ないし平和な方だから艦娘たちも謙が気負いするほどハードな生活を送ってるわけじゃないしきっと吹雪ちゃんは謙と会えて一緒に暮らせて幸せだと思うよ?謙と一緒にいる時のあの子の顔見てたらわかるよ」

「・・・そうか・・・そうだと良いんだけどな」

「もっと自信持って!謙のおかげで私だって高校時代は楽しかったし今だって楽しいよ?だから皆そうだなんてことは私には言えないけど・・・でも謙はちゃんと頑張ってるよ!それをサポートするために私がいるんだから・・・ね?もっとどんと構えてて・・・あっ、花火終わっちゃう・・・次のやつ持ってくるね!」

「あ、ああ・・・ありがと」

大淀の言葉で少し気が紛れたような気がした。

もっと自信持って・・・か。

本当に自信なんて持ってしまって大丈夫なんだろうか?

俺は結局肝心な時ちゃんとした指示も出せなかったし艦娘たちからは軽く見られてるような気もするし・・・

そんな俺がしっかりやれているんだろうか?

でも大淀がそう言うんだから少しくらいは自信持ったっていいよな・・・?

いつかきっと大淀にも胸を張ってそう言える様にこれからも頑張ろうと決意をした。

 

そうこうしているうちに花火はどんどん減っていき

「・・・あとはこれと線香花火だけだな」

袋から残った噴出花火を取り出して地面に設置する

「お兄ちゃん?それは手に持たないの?」

「ああ。これは置いて使うやつなんだよ」

「そうなんだ!どうなるか楽しみ!」

吹雪は目を輝かせている。

「それじゃあ金剛、そのライター貸してくれ。俺が火点けるよ」

「YES!はいどーぞデース!」

金剛からライターを受け取り噴出花火に火をつけると勢いよく火花が上に向かって吹き上がる。

俺は急いでその場を離れ、吹雪たちの方へ向かった。

「うわぁ〜これも大きくて綺麗だね!」

吹雪は嬉しそうにしてくれている。

「だろ?」

「那珂ちゃんあの後ろで一曲歌っちゃおっかな〜」

「危ないからやめなさい」

那珂ちゃんが花火の方へ向かおうとするのでなんとか止める

「ちぇーわかったよ提督〜」

 

そして一通り噴出花火も使い終え、最後に残った線香花火の入った小袋を開ける

「やっぱ最後はこれだよな」

「お兄ちゃんそれは何なの?なんか手に持った花火よりも小さいけど」

「これは線香花火って花火で小さい火の玉みたいなのがぶら下がるんだよ。それをどれだけ落とさずにできるかってのを競争したりしても楽しいぞ」

「それ楽しそう!早くやろうよ!」

「そうだな。じゃあ火、つけてやるよ あっ、吹雪それの持ち手はそっちの紙の方なんだ」

「手に持つ花火とは逆なんだね」

「ああ。火の玉は熱いから足に落とさない様に離してやるんだぞ?」

「わかったよお兄ちゃん」

俺は各自にひとまず一本ずつ線香花火を配り火をつけて回った。

「まだちょっと残ってるからあとはここに置いとくから各自勝手に取ってくれよ」

「NOOO!もう落としちゃったデース!ケン!ワンモアプリーズ!!」

「おいおい幾ら何でも早すぎるだろ・・・」

金剛に2本目の線香花火を渡してから吹雪の方へ様子を見に行くと真剣な目で線香花火を吹雪たちは見つめていた。

「初雪お姉ちゃんの玉すっごく大きいね!」

「ふふっ・・・3本まとめてるから・・・あっ・・・落ちちゃった・・・また取ってこなきゃ・・・」

どうやら初雪は一気に3本の線香花火を同時に引っ付けていたようだ

「おいおいそんなの重さですぐ落ちるし勿体無いだろ」

「・・・うん」

「お前らは真似せずに一本ずつやるんだぞ?」

「はーい!」

「ああもう!あなたが喋るから気が散って落としちゃったじゃない!」

天津風がそんなことを言っている

「はいはいわかったわかったもう一本やるから再チャレンジしろって」

俺はまだ火をつけていなかった自分の分の線香花火を天津風に渡して火を点けてやった

そしてまた自分の分の花火を取りに行こうとすると大淀と阿賀野が睨み合っている

「大淀ちゃん!どっちが長く線香花火をつけてられるか勝負よ!」

「ふんっ・・・!くだらない勝負ですけど付き合ってあげましょう」

「あはっ!まだ火も点けてないのに二人の間に火花が見えるよーそれじゃあ那珂ちゃんが審判してあげる〜あっ、提督さん!そのライター貸してくれる?」

「あ、ああ・・・」

俺は那珂ちゃんにライターを渡すと大淀と阿賀野の線香花火に火をつけた。

大淀と阿賀野はにらみ合いながら線香花火をばちばちと燃やしていた。

そして

「あーっ!落ちちゃった・・・今のは阿賀野の方が早く火をつけたからだもん!ノーカンよノーカン!」

阿賀野の方が先に落としてしまったらしい

「ふんっ・・・自分からふっかけてきたくせに見苦しいですよ?」

大淀はニヤリと笑みを浮かべた。

「う〜もう一回よ!」

「望むところです!」

大淀もなんだかんだで楽しそうだ。

さっきの艦娘たちと一緒にいるのも悪くないっていうのもあながち嘘じゃないんだろう。

それじゃあそろそろ俺も線香花火の記録にでも挑戦してみるか!

 

そして線香花火も底を突き、花火を完全に使い切った。

「終わるとなんか寂しいもんだな・・・」

「お兄ちゃん!すごく楽しかったよ」

「吹雪が喜んでくれてよかったよ天津風、お前も今度長峰さんと奥田さんに会ったらお礼言っといてくれよ?」

「えっ?」

「あれ?聞いてなかったのか?これ天津風たちが頑張ったご褒美にって二人からもらったんだぞ?」

「そう・・・だったんだ・・・お礼言わなきゃ・・・」

「お前も楽しんでたみたいできっと長峰さんたちも喜ぶぞ」

「べっ・・・別にあたしはそんな子供みたいな事・・・」

「嘘つけ十分遊んでたじゃねーかよ」

「そうですよ天津風。そんな無駄に強かるのはよくないですよ?」

「う〜・・・そ、そうよ楽しかったわよ!!」

「そうか。ならよかった。じゃあ後片付けは俺たちでやってるから部屋に戻っててくれ」

「はーい!」

「ええ。今日はこのような催しに呼んでくださりありがとうございました。楽しかったです」

「あ、ありがと・・・」

吹雪たち三人はそう言って部屋に戻って言った

「それじゃあ私も・・・みんなの引率って事で帰る・・・・」

初雪もそんな三人に着いて行ってしまった

「おいおい一応年長者なんだから片付け手伝えよあいつ・・・まあいいやさっさと片付けて帰って寝よ。おーいみんな。ゴミはこっちにまとめてくれー」

俺は残った艦娘たちと花火のゴミを片付けた。

 

「よし!これで片付いたな。それじゃあ付き合ってくれてありがとう。じゃあまた明日な」

「う〜ん・・・いつもは寝てる時間なのでベリースリーピーデース・・・」

金剛は眠そうに瞼を擦る。

お前いつも何時に寝てるんだよ・・・

「あ、ああそれじゃあゆっくり休んでくれ」

「YES・・・グッナイデースケン・・・」

金剛はそう言うとよろよろと宿舎へと戻って行った。

「それじゃあこの花火のゴミゴミ捨て場に俺が持ってっとくから阿賀野たちももう帰っていいぞ」

「うんそうするね〜おやすみ提督さん!」

阿賀野やけに素直だな・・・いつもなら着いてくるとか言いそうなのに

「それじゃあ那珂ちゃんもそろそろ寝る準備するね〜おやすみなさ〜い」

阿賀野と那珂ちゃんはそう言って帰っていった。

「大淀?これ捨てるだけだしお前ももう戻っていいんだぞ?」

「ねえ謙、一緒にゴミ捨てに行ってもいい?」

「あ、ああ・・・いいけど」

今日は阿賀野じゃなくて大淀か・・・珍しいな。

大淀がこう言う事言いだすときはいつもなら一緒にじゃなくて私がやっとくから謙はもう帰っててって感じなんだけどどうしたんだろ?

そんな疑問を抱えつつ大淀とゴミ捨て場までたどり着けゴミを捨て終えたその時

「謙?」

「どうした・・・?むぶっ!」

急に大淀が俺に唇を重ねてきた。

「ぷはっ・・・急にごめんね謙」

「どどどどどどどどうしたんだよ急に!」

「・・・ダメ・・・だった?」

「い、いや・・・ダメじゃないけど急すぎてびっくりしたと言うか・・・」

「なんかさっきまでの謙・・・すごく思いつめてたみたいだったし・・・それに阿賀野さんとの勝負にも勝ったから!」

「へっ・・・?」

「阿賀野さんとの線香花火の勝負5対4で私が勝ったの!それで勝った方が謙にキスしてもいいっていう約束だったからあんな女に謙の唇を奪われるわけにもいかないし私頑張ったんだよ?」

また俺の知らないところでそんなことを・・・

「そ、そうだったのか・・・ありがとな」

「えっ・・・?」

「ああいやさっき俺のこと励ましてくれただろ?ちょっと元気でたからさ」

「そう・・・元気になってくれたなら私も嬉しいよ?」

「明日から改めて提督として頑張らなきゃな!」

「うん!私も秘書官として全力でサポートするからね!軽巡洋艦に乗ったつもりで居て!」

「なんだよその例え・・・まあいいや。明日からもよろしくな」

「うん。不束者ですけど・・・」

「それはちょっと違う気が・・」

「ふふっ冗談よ冗談!それじゃあまた明日ね!おやすみなさい!」

大淀はそう言って一人部屋の方へ戻って行く。

その顔はゴミ捨て場の照明でうっすらとしか見えなかったがニッコリと笑顔を浮かべていた。

こんな笑顔大淀になる前のあいつがした事あっただろうか?

そんなことを考えながら大淀の背中を見送った。

「・・・よし俺も帰るか」

 

部屋に戻る途中で高雄さんと担がれた愛宕さんが愛宕さんの部屋の前に居た。

「あっ、高雄さん・・・それに愛宕さんかえってたんですね」

「おう提督様が帰ってきたぜ〜」

愛宕さんは呂律が回っていないし顔も真っ赤だ

きっとあの後また飲んでいたのだろう

「もう!今の提督はこの子でしょ?ごめんなさいね。この人あの後陸奥と二次会やるんだって言って聞かなくって・・・明日はこの人ダメだと思うから有給代わりに申請しときますね」

「は、はあ・・・」

「愛宕の抜けた分は私がきっちりやりますから。 ほーらあなたは早く休んで・・・」

高雄さんが部屋のドアを開けると

「う〜高雄も一緒に寝てくれなきゃやだよぉ〜」

愛宕さんはそう言って高雄さんに抱きつく

「ちょ・・・ちょっと!提督だって見てるのよ!?それに酒臭いからあんまり顔近づけないでっていつも言ってるでしょ!?」

「なーに言ってんだよぉ・・・提督は俺だぞ?」

「ああもうしょうがないわね・・・・ごめんなさい提督・・・この人こうなるとどうしようもないの。それじゃあ失礼しますね ほら・・・少しだけ一緒に寝てあげるからはやく着替えて」

「わ〜ってるよ〜」

高雄さんは愛宕さんと一緒に部屋の中へ消えていった。

高雄さんも大変だなぁ・・・

さ、俺も早く帰って寝るとしよう。

 

俺はさっき見たことを見なかった事にして部屋に戻り、シャワーを浴びてからいつもの様に吹雪と同じベッドに入る。

すると

「ねえお兄ちゃん?」

「ん?どうした吹雪」

「みんなとも遊べたし花火も綺麗だったしさっきの花火すっごく楽しかった」

「よかったな。またやれたら良いな」

「うん!最近毎日楽しいの!お兄ちゃんのおかげかな・・・」

「吹雪・・・そうだな!これからももっと吹雪の楽しい日が続く様に俺も頑張るよ」

「ありがと・・・お兄ちゃん!それじゃあおやすみなさい」

「ああ。おやすみ吹雪」

俺は吹雪にそう言って枕元の電気を切り眠りについた。

 

こうして俺の長い長い提督として初めての夏はなんとか無事に終わったのであった。

 

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