ノンケ提督が艦シーメール鎮守府に着任しました。   作:ゔぁいらす

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半年近くぶりの投稿になってしまい申し訳ありません最新話です。
こみトレの作業やらポケモンやらにかまけて居た為全く更新できませんでした。
その間に公開フォロワー数が800人を突破したりDL販売した同人誌を手にとってくださった方々が居てくださったりしてうれしかったです本当にありがとうございました。
こんな奴ですが本年はお世話になりました。
来年はもう少しちゃんとできるようにがんばりますので来年もどうかばいらすをよろしくお願いいたします。


ボンボンパニック

 忙しかった警備任務や海水浴場の手伝いも終わり、いつも通りの日々が戻ってきた。

朝から晩までぶっ続けの哨戒も従来ペースに減り、もう海の家の手伝いに駆り出されることもない。

しかしもう9月だと言うのにまだ外は夏の様な陽気で忙しくも充実していた夏を恋しく感じたりするにはまだ早い蒸し暑さだ。

そんな平和で退屈で蒸し暑い日々を過ごしている俺は今日もせっせと執務室で書類の片付けをしている。

今日は大淀が出張で居ないので一人だ。

一人は気楽だけど大淀が居ないことで一人でやる仕事の大変さや心細さが身にしみてわかった。

でもあいつに頼りっきりって訳にもいかないよな。

さっさと片付けてしまおう!

自分にそう言い聞かせ姿勢を正して仕事を再開した。

それからしばらくして執務室のドアが叩かれたので開いているぞとフランクに声をかけると長峰さんがドアを開けて執務室に入ってくる。

「失礼する」

「あっ、長峰さんでしたか。どうしたんですか?そこ座ってください」

俺は長峰さんを応接用のテーブルに通した。

そして長峰さんが椅子に座ってから俺も向かい合うようにして椅子に座った。

「それでなんのご用ですか?」

「むらく・・・じゃなかった雲人から君が月末の祭りの件についてなにも聞かされていないと聞いたのでな。その説明と引き継ぎが出来ていなかった詫びに来たんだ。こちらからもしっかりと行事の説明はしておくべきだった。すまない」

長峰さんは深々と頭を下げてくる。

元はと言えば前任の提督、つまり愛宕さんが引き継ぎをいい加減にしていたのが原因なのにここまで謝られると逆にこちらが申し訳ない気分になってしまう。

「謝らないでください。長峰さんのせいじゃないですから」

「いや、私からも愛宕にしっかり釘を刺しておくべきだったんだ それでこれは詫びと言うわけでも無いんだがとっておいてくれ」

長峰さんはそう言うと持っていたおしゃれな紙袋を机に置いた。

彼はいつもこうして会うたびに何かお土産を持ってきてくれる。

ただいつもは無骨な発泡スチロールの箱やらダンボールに入った魚介類やら野菜やら愛宕さん用の日本酒なのだが今日はなにやら雰囲気が違った。

「なんです?これ」

「出かけたついでに買ってきたチョコレートの詰め合わせだ。いつも持ってくるものが魚介ばかりだと芸もないし飽きるだろう?艦娘たちと分けて食ってくれ。あとこっちは大人用だ。」

長峰さんは紙袋から小さな箱を取り出す

「大人用?」

「ああ、と言っても愛宕と高雄用なのだが・・・中に酒が入っているチョコレートだ。あんな奴だがなんだかんだで夏の間は世話になったからな。あまり構わないでおくとあいつはへそを曲げるから・・・」

「ど、どうも・・・」

愛宕さんはいつもこうやって長峰さんに気をかけて貰っているしそんな厚意に甘えまくっている。

しかしその分漁業組合や観光協会の集まりには顔を出したりもしているので傍から見ると長峰さんに迷惑をかけているだけのようにも見えるが結構持ちつ持たれつな関係なのかも知れない。

「とにかく酒が入っているチョコレート菓子だから君たち未成年は食わないようにな」

「はい。あとで高雄さんに渡しておきます」

「まあ真面目な君なら安心だろう。それで本題なんだが・・・」

そして長峰さんは月末にある☓☓神社の秋祭りの話を初めた。

内容はざっくりとした当日までの段取り、

そして神社は雲人さんが一人で切り盛りしているのでその手伝いや巫女やら売店の手伝いと祭りで出店を一つ出して欲しいという物だった。

夏の警備の時もそうだったがこれが艦娘や提督の仕事なのか怪しいが比較的この辺りの海は平和で出撃も少ないし新人提督という手前こういった事を積み重ねて地元の人の信頼を得ていかなければならないのだろう。

大前提として断る選択肢は用意されてなさそうだし・・・

俺は一通り長峰さんの話を聞いた後頷いた。

「雑用ばかり押し付けてすまない。私がしっかりしていれば君たちの手をわずらわせることもないのだがな」

長峰さんは自嘲する様に悲しげな笑みを浮かべた。

その横顔には苦労が入り混じったものだったがお酒が入らない限り弱音を吐かない彼が見せたそんな表情に俺の胸は突き動かされた。

その顔はずるいよ長峰さん!

なにより顔が良いんだよなぁ・・・男前にも美人にも見えちゃうっていうか・・・

やっぱり俺この環境に毒されてるんじゃ・・・

「そんな事ないですよ!長峰さんだって頑張ってるじゃないですか!それどころか鎮守府のことまで気にかけてもらって・・・むしろお礼を言いたいのはこっちですよ!しっかりやります!いややらせてください!!」

俺は勢いに任せてそう言うと長峰さんは笑みをこぼした

「フッ・・・君は面白いな。愛宕や高雄、それに天津風ちゃんが君の話ばかり私にするのもわかる気がするな」

「えっ・・・?」

天津風の事は聞いたけど高雄さんたちまで!?一体何話されてるんだろう・・・?

「ああ。君は良くやっていると高雄は褒めていたぞ。そんな話を聞いていると君の指揮下で艦娘として働くのも悪くなさそうだ。」

「えっ!?それって・・・」

「フッ・・・冗談だ。今の私はしがないXX町民さ。それでは私はこの辺りで失礼させてもらう」

「は、はいチョコレートありがとうございました」

「気にするな。あ、そうだ」

ドアに手をかけると何かを思い出したのか長峰さんは手を止める

「どうしました?」

「天津風ちゃんは元気でやっているか?ちゃんと飯は食っているのか?」

二人が最後に会ったのはたった二日前くらいな気がするが長峰さんは相当心配性なのだろう。

「はい。大丈夫ですよ。」

「ならいいんだ。最近は良く話をしてくれるようになったとは言えあの子はあれでいて人に心配をかけないよう気を使う子だから心配で・・・」

そう話す長峰さんの顔はまるで我が子を思う親のように見えた様な気がした。

「大丈夫です!あいつには吹雪や春風もついてますし高雄さん達も居るんです?それに頼りないかも知れないですが俺もあいつにできるだけ辛い思いをさせないように頑張りますから」

「そうか・・・安心したよではまたな。仕事頑張れよ提督くん」

長峰さんは薄っすらと笑みを浮かべながら出ていった。

 

ふぅ・・・

勢いで引き受けちゃったけど俺にちゃんと出来るだろうか?

いや、そんな心配よりまずは目の前の書類を片付けなきゃな!

長峰さんに冗談半分だけど褒められた俺は張り切って残りの書類を片付けた。

 

「ふぅ〜終わったー!」

書類の整理が一段落したので長峰さんが置いていった祭りの概要や日程が書かれた資料に目を通しているとドアをノックする音が聞こえる

「入っていいぞー」

そう言うと朝の哨戒に出ていた天津風が哨戒を終えたのか執務室に入ってきた。

「哨戒が終わったからその報告に来てあげたんだけど。」

「おお、お疲れ様 どうだった?」

「今朝も相変わらず平和よ。随伴してた金剛さんは一足先に演習に付き合ってくれてるわ」

「そうか。そりゃよかった。」

「あ、あの・・・」

天津風は何やらもじもじとしながら俺の方を見つめてきた

「ん?どうした?まだなにかあるのか?」

「・・・・な、なんでも無いわよ!」

「そ、そうか・・・」

相変わらずたまに天津風が何を考えているのかわからない時がある。

高雄さんも言っていたが艦娘に成り立ての頃は少し精神的に不安定になるからなのかな?

それにソラくらいの年頃の子ならなおさらなのかもしれない。

でも長峰さんに任せられたからにはなんとかしてやらなきゃ・・・

そんな事を考えていると

「あら?なにかしらこれ?」

天津風がチョコレートの入った袋に気がついた様だ。

「あ、それか?さっき長峰さんが来ててお土産で持ってきてくれたんだよ。今日はチョコだってさ」

「長峰さん来てたんだ。もう少し早く帰ってこれたら会えたのに・・・残念ね」

「相変わらずお前のこと心配してたぞ?」

「もう・・・大丈夫だって言ってあるのにほんと心配性なんだから」

天津風はあきれたように言った。

彼も長峰さんの心配性なところには少し辟易としているようだ。

「なあ天津風チョコ食うか?後で食堂にでも持っていこうと思ったんだけど哨戒終わりで疲れてるだろ?」

「良いの?」

「ああ。演習前にちょっと食べてけよ。特別だぞ?」

「え、ええ。ありがとういただくわ・・・うわぁこんなにいっぱいどれにしようかしら」

天津風は嬉しそうに袋に手を入れる。

その姿は年相応の子供といったところだろう。

やっぱりいくら大人びていてもチョコであんなに目を輝かせるなんてあいつもまだ子供だなぁ

親代わりだった長峰さんが心配するのもわかる気がする。

「何ジロジロ見てるの!?」

「ああいやなんでもないなんでもない」

「そんな暇あったら机の上でも片付けたら?ほんとだらしないんだから」

天津風に言われたとおり執務机は筆記用具やらハンコやらが散らばっている。

「う・・・わかったよ・・・」

俺は天津風に言われるがまま机を片付け始める。

するとバタンとなにかが倒れる音がしたのでその音の方に振り向くと天津風が床に倒れていた。

「お、おい!どうしたんだよ!!」

俺はすかさず天津風の方へ駆け寄ると

「にゃ・・・にゃんでもにゃいわよぉ〜」

そうろれつが回らないように答えた天津風の顔は真っ赤になっているし手元にはかじりかけのチョコが転がっていてその切片から液体がたれている。

もしかして・・・

嫌な予感がしてチョコの袋が置いてあったテーブルを見てみるとよりにもよって酒の入ったチョコの箱が開けられていた。

こんなちょっとで酔っ払うくらいの酒が入っているのか天津風が異様に酒に弱いのかはわからない。

でもこのままにするわけには行かないし・・・

「な、なあ天津風・・・とりあえず医務室行こうか」

「にゃんれよぉ・・・あたひはべつにらいじょうぶらってばぁ・・・」

そう言ってよろよろ立ち上がろうとする天津風だったがバランスを崩して俺の方へ倒れてきた

「お、おい全然大丈夫じゃないじゃないか医務室行くぞ」

「やらぁ・・・べつににゃんでもにゃいからぁ・・・あれ・・・?にゃんであんたふたりいるの・・・・?」

ああもうダメだ確実に酔っ払ってるぞ・・・

「もうなんでよりによって酒の入った方を食べちゃうんだ・・・提督命令だからな!今から医務室だ!」

「やらぁ・・・えんしゅーいくのぉ」

そんな俺がふたりに見えてるような状態で演習に行きたがるなんてストイックなんだか聞き分けがないだけなのか・・・

多分後者なんだろうなぁ

「そんな状態で演習できるわけ無いだろ!?ほら行くぞ」

俺は天津風の手を引っ張って医務室に連れて行こうとするが天津風は頑なに動こうとしない

「やらっていってるれしょ〜?はにゃしにゃしゃいよぉ〜」」

「やだもやらもねぇよ!ほらいつまでも意地張ってないで行くぞ」

「いじわるぅ〜れもそんにゃにあたしにいうこと聞いてほしいんらったら・・・」

「ん?なんだ?」

「だっこ・・・してほしい」

「はぁ・・・!?」

顔を赤らめて潤んだ顔でそう訴えかけてくる天津風に俺の胸はドクリと脈打つ

「にゃによぉ〜やならあたしいむしつにゃんていかにゃいからぁ〜」

「ぐぬぬぬ・・・」

天津風がこうなったのは俺がちゃんとチョコの説明しなかったからだし・・・

しかたない・・・そうでもしないと医務室まで行ってくれなさそうだし

「・・・わかったよ・・・ほらこれでいいか?」

「・・・うん・・・れも変にゃところさわったらゆるしゃないから」

「わ、わかったよ・・・」

胸を貸すと天津風は俺にぎゅっと抱きついてくる。

うう・・・なんかすごくいけないことをしてるような気になってきたぞ・・・

と、とにかくさっさと医務室に連れて行って寝かしつけなきゃ

「・・・・よいしょっと」

俺はそのまま天津風を抱きかかえて執務室を出た。

こんなところ誰かに見られたらたまったもんじゃない・・・

誰にも会いませんように・・・

そう願いながら医務室へと歩みを進めていると

「あっ、お兄ちゃん!」

吹雪とばったり出くわしてしまった

や、やばい・・・!

「よ、よぉ吹雪・・・演習はどうしたんだ?」

「天津風ちゃんが執務室に行ったっきり帰ってこないから呼びに行こうと思ったんだけどになんで天津風ちゃんをだっこしてるの?」

「あ、えーっとこれは・・・」

一体なんて答えれば・・・

俺が頭を悩ませていると

「ふふ〜んいいれしょふぶきぃ〜」

天津風は見せつけるように俺に更に抱きついてくる

「あ、天津風ちゃん!?昼間からそんな事しちゃだめだよ!!」

吹雪は少し悔しそうにそして恥ずかしそうにしてそう言った

「ああいや違うんだ吹雪!天津風熱中症で倒れちゃってさ!医務室に運んでるところなんだよ!だから演習には行けないって春風と金剛にも伝えといてくれ!じゃあな!!」

俺は一目散にその場を逃げ去る

「あっ、待ってよお兄ちゃん!」

吹雪のそんな声が後ろの方から聞こえるがこれ以上話をしていたら天津風に何をされるかわからないし許せ吹雪・・・!

俺はそのまま医務室に向けて走った。

 

「はぁ・・・はぁ・・・疲れた・・・流石に人を抱えて全力疾走はキツイって・・・」

「にゃによぉ〜あたしが重いっていいたいのぉ?」

「ああいや違うんだよ。ほらベッドで横になって落ち着くまでゆっくりするんだぞ」

俺は天津風を下ろして医務室へ入った。

この時間は哨戒後ということもありいつも医務室を任されている高雄さんは艤装のメンテの為工廠に行っていて居ない。

そんな時は阿賀野が代わりに番をしているはずなんだけど今日もサボっている様だ。

ベッドに天津風を寝かせ医務室の使用記録を書き終えた。

「それじゃあ俺は執務室に戻るからお前はそれが治るまで寝てるんだぞ?」

「だからぁにゃんともにゃいっていってるれしょ?」

「どう見てもなんとも無い様には見えないって・・・じゃあ俺はこれで」

「まちにゃさいよぉ」

執務室へ戻ろうとすると天津風に呼び止められる

「ん?どうした?もしかして気分悪くなってきたとかか・・・?」

「ちがうわよ!ちょっとこっちにきなひゃい」

天津風が手招きをしている

「どうしたんだよ」

流石に無視はできないし天津風に言われたとおりベッドの方へ近づいた。

「そこすわりなさいよぉ」

天津風はぼんやりとした目でそう言ってベッドをぽんぽんと叩いた。

「あ、ああ・・・」

言われたとおり座ると

「ふわぁ〜なんだかあついわね・・・汗かいちゃった」

天津風は俺に見せつける様に胸元に指を引っ掛けてパタパタと風を送り始めた。

その胸元から彼の控えめに膨らんだ胸がちらちらと見え隠れする

「あ、天津風・・・?暑いのは気温もだけどお前が酔っ払ってるからじゃないか?」

「なによぉ〜!?なんでチョコたべただけであたしがよっぱらうのよぉ〜・・・もしかしてあたしのここ・・・気になってるの?・・・えっち」

「ち、違う!断じて違う!俺とお前の仲だろ!?それにお前は男で・・・俺がそんな感情抱くわけ無いだろ!?」

とは口で言いつつもぱっと見の外見は少女と寸分たがわない今の彼と酔っ払っているからか頬を赤らめ目がとろりとしている彼の姿はどこか色っぽくも見えた。

「ほんとかしら・・・?あたしが男だからって言うけど前も金剛さんの胸ちらちらみてたの知ってるのよぉ〜?」

バレてた!?

いやでもあれは金剛があんな格好してるのが悪いだろ!

嫌でもあんな膨らんでるたわわな胸が露出してたら目が行くのは不可抗力で・・・

「ち、違う・・・!あれは」

「まったく・・・ほんとにあなた嘘が下手なんだからぁ〜顔真っ赤になってるじゃない・・・ヘンタイ」

「だ、だから違うって!あれは・・・」

必死に弁解を試みようとするがなんて言えば良いんだ!?

なんて答えても天津風の逆鱗に触れてしまいそうな気がするし・・・

「はぁ・・・あたしとあなたの仲なんでしょ?あなたが嘘ついてるのなんかすぐわかるんだから。ほんとにあなたは・・・いっつもだらしなくてたよりなくて幸薄そうで・・・」

急に説教が始まってしまった。

酔うとこうなる人が居るって聞いたことは有るけどまさか天津風もそういうタイプなのか?

「ちょっとぉ聞いてるの?」

「は、はい!聞いてます」

「それにあたしたちへのかんしゃもたりてないんじゃないの?」

「・・・へっ?」

「あたしぃ〜今日のしょうかいしゅっごくがんばったのになぁ・・・」

「お、おう・・・おつかれさま・・・」

「それだけなの・・・?」

「それ以上にどうしろと・・・?給料は俺じゃどうにも出来ないぞ?」

「ちがうわよぉ・・・ほら・・・・わかるれしょ?」

天津風は猫のように頭を俺の肩に擦り寄せてきた

「ど・・・どうしろってんだよ」

「ここまでしてもわからないの・・・ばかぁ・・・頭なでなでして・・・」

「えっ、あっ・・・はい」

俺は恐る恐る天津風の頭に手を伸ばして撫でてやった

「はぁ・・・・にぃにがあたしの頭なでなでしてくれてるぅ・・・・」

天津風は嬉しそうに声を漏らす

って

「にぃに!?俺のこと!?」

「あなた以外に誰が居るのよぉ・・・にぃに・・・あたしのにぃに〜」

「つっ!!」

天津風はそう言うと俺に抱きついてきた。

「うわぁ・・・!やっぱお前おかしいぞ」

「なにもおかしくないわよぉ・・・あたしのにぃにぃ・・・吹雪だけに独り占めなんてさせないんだからぁ」

いつもどこかドライで冷めた風に接してくる天津風がこんなに甘えてくるなんて・・・・

酔っ払っただけでこんなに変わるもんなのか?

他に変なもん入ってるチョコじゃないのあれ!?

「あ、天津風・・・?俺そろそろ執務室に戻って片付けの続きしなきゃ大淀に怒られるから・・・」

「やだぁ・・・もっとあたしの事褒めてよぉ・・・」

「・・・えっ!?そ、そうだな・・・お前は不器用だけど根はいい子で・・・えーっと・・・・髪も綺麗で・・・」

「ふふっ・・・!にぃにそんな風に思ってたんだ・・・」

「べ、別に良いだろ!?」

「にぃに・・・・あたしすっごく寂しがりやなんだよ・・・?パパもママも居なくなっちゃってずっとひとりだったしみんな可愛そうな子みたいな目で見てくるし・・・」

「お、おう・・・」

「にぃには初めてあたしに会ったときから優しくしてくれて・・・・今もこうやって一緒に居てくれるからあたしのにぃになの・・・にぃにと一緒に居たらあたし寂しくないの・・・だからすごくかんしゃしてるんだよ?」

天津風の口からそんな言葉が溢れてくる

きっと天津風・・・いやソラの事を周りの大人達は皆腫れ物に触るように扱っていたんだろう。

それにこんな田舎町で友達も居ない生活なんてこの年の子供には酷すぎる。

「天津風・・・」

「にぃに〜」

「で、でもたしかに提督のお兄さんって最初は呼ばれてたけどさ・・・そんな言い方はしてなかっただろ?」

「いいでしょ・・・?今のあたしはあの頃のただのおとこのこだった時とはちがうんだからぁ・・・ちょっとくらいおんなのこみたいに甘えさせてくれたっていいじゃない・・・吹雪にだってそうしてるんでしょ・・・?あたしにだけしてくれないなんてずるい・・・」

「う・・・それはそうだけどさ・・・」

「ほら・・・触ってみて・・・まだちいさいけどおむねもやわらかくなってきてるの」

天津風は俺の右手を胸に当ててきた。

天津風の言う通り制服越しに伝わる感覚には弾力がある。

「うぉぁっ!?」

「そんな顔赤くしちゃって・・・・ほんとににぃにはえっちなんだから・・・」

「そ、そりゃこんな事されたら誰でもこうなるわ!それにこんなはしたないことしちゃいけません!」

「えへへ・・・にぃににしかられちゃった」

天津風は叱られたはずなのにどこか嬉しそうに言った

「あたしのおむね・・・変じゃない?ちゃんとおんなのこみたいになってる?」

「ん・・・ああ・・・・多分・・・」

「よかったぁ・・・これでにぃににもっとかわいいって思ってもらえる」

「あ、天津風はそれで良いのかよ・・・どれだけ胸が膨らんだって男のままなんだぞ?それにいつか深海棲艦が居なくなったときに・・・」

「いいわよぉ・・・あたしがじぶんできめたんだもの・・・!それににぃにの役にだって立てるんだから・・・それにしんかいせーかんが居なくなったってあたしはにぃにと一緒にいるもん」

「ええっ!?それは・・・どうなんだろ・・・?」

俺はその天津風の言葉に何と反してやれば良いのかわからなかった。

「だから・・・いまからにぃにと離れられないようにぃ・・・あかちゃんつくろ?」

「はぁ・・・・!?」

いきなり何を言い出すんだこいつは!!

「いや待て待て待て!お前には早すぎるしというかまず俺たち男同士だしそれに・・・」

「いいじゃない・・・出来なくてもにぃにと赤ちゃんつくるの〜」

「わぁっちょ・・・!やめろぉ!!」

俺は身構えたが次の瞬間天津風は目をつぶって口を尖らせた

「ん〜〜」

天津風はそのまま動かない

「お、おい・・・何やってんだ?」

「なにってキスにきまってるでしょぉ?すきなひとどうしがキスしたら赤ちゃんできるってママがいってたもん・・・!」

「えっ・・・あ、ああそういう事・・・」

どうやら長峰さんは性教育をちゃんとさせてあげなかったらしい

いや流石に直接子供を作る方法なんて教える方も恥ずかしいか・・・

「ほ〜ら・・・早くしなさいよぉ・・・」

「う・・・」

どうする俺・・・!そんな軽々しくする訳には・・・

しかしキスをしたらしたで純粋な天津風を裏切ってしまうことになる。

それに第一こいつは男でしかも男だった頃の事も知っている。

いやそれを言ったら淀屋も同じか・・・

で、でもやっぱりこんなのおかしいよ!

でもこうでもしなきゃ解放されなさそうだし・・・

「わ、わかったよ・・・」

俺はそのままゆっくり天津風に顔を近づけた。

天津風も顔を赤らめて俺を受け入れようとしている。

本当にやって良いのか?

相手は年下の・・・それに男なんだぞ!?

いくら天津風の頼みとは言えやっぱりダメなんじゃ・・・

しかし考える度鼓動が早くなる。

このまま天津風の酔が冷めるまで待つか?

いや・・・それもいつになるかわからないし・・・

やるのか・・・?

やってしまうのか俺・・・

俺は覚悟を決めて顔を更に天津風に近づける。

「あ、天津風・・・」

そして唇がふれあいそうになった瞬間・・・

「や・・・・やっぱりダメー!!!!!!!!」

天津風がそう叫ぶとなにかが思いっきり俺の後頭部にぶつかってゴンと鈍い音が医務室に響いた。

「ぐぇっ!一体なにが・・・・・」

薄れゆく意識の中俺の視界にはぼんやりと鉄の塊のようなものが見え、そのまま気を失ってしまった。

 

 

 

そして俺は頭の痛みで目を覚ます

「いててっ・・・!」

目を開けると俺は医務室のベッドで寝ていた

「あら提督、目が覚めたんですね」

そこには高雄さんが居た。

「あ、あの・・・俺は一体」

「天津風ちゃんから聞いたわ。転んで連装砲くんに思いっきり頭をぶつけたそうじゃない。指、何本に見える?私が誰かわかる?」

高雄さんはそう言って心配そうに指を一本立てて見せてくる

でも俺は断じて転んでなどいないし連装砲くんに頭をぶつけた記憶もない。

「は、はい・・・ちゃんと一本に見えますし高雄さんですよね」

「よかった・・・大丈夫そうね。天津風ちゃん?提督目を覚ましたわよ」

「そ、そう・・・良かったわ」

高雄さんが呼ぶと連装砲くんを抱いた天津風がひょっこりと姿を見せた。

「天津風ちゃんずっと提督のことを看病してたのよ」

「ええそうよほ、ほんと転んで頭ぶつけるなんてどんくさくて困っちゃうわ!」

そういった天津風の目は凄まじく泳いでいる。

あーこれは多分俺の頭に飛んできたのは連装砲くんだし天津風も酔った時のことはしっかり覚えてるタイプなんだな・・・まあでもここは天津風の顔を立ててやるか

「そ、そうだったのか・・・俺なにも覚えてなくてさーはははー」

「そ、そう・・・そうなのね!よかった・・・」

俺の予想したとおり天津風は心底安心したように言った

はぁ・・・早く執務室戻ってあのチョコ片付けなきゃな・・・

「それじゃあ俺もう大丈夫なんで戻りますね」

「ええお大事にね。でも頭はもう少し冷やしておいたほうが良いわ。これ持っていきなさい」

高雄さんに頭に巻くバンドタイプの保冷剤を貰い俺は医務室を後にしたすると天津風が俺の裾を引っ張ってくる

「・・・送っていくわ。また転ばれたらたまったもんじゃないもの」

「そ、そうか・・・じゃあ頼むよ」

天津風はそう言うと俺に付き添って執務室までついてきた。

「送ってくれてありがとな。それじゃあ俺は片付けの続きするよ」

「ええ。それじゃああたしもそろそろ演習に合流するとするわ。全く・・・あたなに付き合ってたせいで午前中の演習参加できなかったじゃない」

「ああ悪かった悪かった。」

「べ、別に謝らなくたって良いわよ・・・・あたしが悪いんだし・・・」

天津風は小さな声でそう言った

「ん?なんか言ったか?」

「なんでもないわよ!で、ほんとになにも覚えてないのよね?」

「ん〜?もちろん全然。でもな、キスだけじゃ赤ちゃんは出来ないぞ?」

「なっ・・・・あなたやっぱり・・・!」

「あっやば・・・」

口が滑ってしまった。

その俺の言葉を聞いた天津風は酔っ払っていたときよりも顔を赤くして身体を震わせてこちらを睨みつけてくる

「今すぐ全部忘れなさい!!行って連装砲くん!!あいつの脳天かち割って!!」

天津風はそのまま鬼の形相で連装砲くんを放ち俺を追いかけてくる

「うわぁ!!待て!完全に事故だし不可抗力だろ!!」

「うるさいうるさいうるさい!!!全部忘れるまで何回でも連装砲くんぶつけてやるんだからー!!!」

こうして俺は一日天津風に追いかけられる羽目になってしまい吹雪たちの静止のおかげでなんとか事なきを得ることが出来たが暴れまわった天津風と一緒に高雄さんに怒られることになってしまった。

 

そしてあのチョコは危険と判断してさっさと高雄さんに預けたのだが・・・・

 

 

 

「ふふ〜ん執務室になんかチョコいっぱいあったからちょっともらっちゃった〜ホントは聞いてからもらおうと思ったけど提督さん居なかったし阿賀野悪くないもんね〜」

その夜阿賀野が何故か素っ裸で宿舎を徘徊した後嘔吐するという怪事件が発生したとかしてないとか・・・・


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