魔法少女リリカルなのは INNOCENT BRAVE   作:ウマー店長

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DUEL② 「星光との邂逅」

 さて、先週の日曜日に行われたブレイブデュエルの体験会から1週間が経った。

 この俺こと結城アヤトがその間何をしていたかをご紹介しよう。

 

 まず月曜日はブレイブデュエルの体験会の2日目に顔を出した。

 体験会初日は日曜だったということもあり会場であるグランツ研究所は相当混雑していたが、さすがに平日第一弾、悪夢の月曜日ともなると来場者は大幅に少なかった。

 それでも俺と同じような春休み中の学生なんかは遊びに来ていたが、かなりスムーズにプレイができたと思う。

 ……どう見ても就職して仕事をしていなければいけないような年齢層の方々もいたが、あまり気にしないことにした。

 きっと平日休みの職に就いているのだろう、うん。

 

 そして火曜日はブレイブデュエルの体験会の3日目に顔を出した。

 やはり来場者数は日曜の比ではなく、快適に遊ぶことができた。

 3日目にしてようやくプレイのコツをつかむことができてきた気がする。

 というのも初日にプレイした時、ゲーム空間であるにもかかわらず感じるリアルさに感動したのも一瞬のことで、空を飛ぶイメージがうまくつかめずに四苦八苦してしまい、空中できりもみ回転した挙句落下して海面に叩き付けられゲーム終了となってしまったのだ。

 今日までの間対戦に手を出さずにずっとプラクティスモードで飛行の練習をしていたのはこのためだ。

 その甲斐あってかなりスムーズな飛行を行えるようになった。

 ゲームの中とはいえ、風を切りながら空を自由に飛び回れるのは爽快の一言に尽きる。

 

 そして水曜日からは一人プレイ用のターゲットシューティングモードで射撃や砲撃、近接攻撃などの練習をしていた。

 この時に気が付いたのだがスキルカードの使い方は非常に奥が深い。

『シュートバレット』というスキルカードがある。

 これは魔力弾を生成して相手に射出するという基本の攻撃スキルだが、基本故に応用が利く。

 例えば魔力弾を生成した後すぐに射出せず、手元に滞留させておけばほかの攻撃スキルと同時に発動して波状攻撃することもできるし、ノータイムで打てる牽制射撃として使えば様々な行動の隙を潰すこともできる。

 こういった応用の仕方を見つけてからというもの手持ちのスキルカードの使い方をひたすら試しまくってた。

 そんな練習を毎日続け今日にいたる。

 ……つまり、この一週間ゲーム三昧だったということだ。

 

「さて、今日からは対戦だな」

 

 春休みであることをいいことにゲーム漬けの日々を送っていたことが実家の親にばれれば少々どやされそうだが、今は頭の外へと追いやっておくことにする。

 今はしっかりと練習を重ねて確実に腕を上げておきたいのだ。

 

「ロケテストトーナメントまであと1週間しかないからな」

 

 今行われている体験会……すなわちロケテストの初日に訪れた際の帰り道に受け取ったチラシには『第0回ロケテストトーナメント開催のお知らせ』と書かれていた。

 このトーナメントはロケテスト開始から2週間後に開催されるらしい。

 そしてこのトーナメントの終了後、数日のメンテナンスと調整の後に正式なサービスが開始される。

 ロケテストの最後を飾るイベントということだろう。

 なお、参加賞は高レアリティのカードが出やすい『プラチナローダー』を回すことができるチケットらしい。

 これだけでも参加する意味は十分あるが、やはり対人戦はブレイブデュエルの醍醐味だ。

 大会というより多くの人と対戦できる機会を逃す手はない。

 

『という割には、まだ一度も対戦をしていないがな』

 

 手元から低い男性の声が響いた。

 右手に握られている“杖”を持ち上げ俺は語り掛ける。

 

「うるさいぞ『ブレイブフォース』。俺はしっかりと練習を重ねてから本番に挑むタイプなの。用意周到なの」

『心配性の間違いではないのか』

「やかましい」

 

 一言断っておきたいが、この会話は俺の脳内で繰り広げられているものではなく、ブレイブデュエルのバーチャル空間で行っているものだ。

 決して杖に話しかける痛い人ではない。

 ブレイブフォースは俺の相棒である『デバイス』だ。

 ブレイブデュエルではそれぞれのプレイヤーが武器であるデバイスを所持しており、それらには高度なAIが備わっていてプレイヤーとの意思疎通ができるようになっている。

 俺も初日は突然杖に話しかけられ驚き慌てたものだ。

 

『で、今日こそは対戦をする気になったということだな?』

「あぁ、練習は十分してきたしそろそろな」

『全く……待ちくたびれたぞ。まさか起動して一週間延々とダミーターゲットを破壊し続けることになるとは思いもよらなかったからな』

「お前ってちょっと戦闘狂(バトルマニア)なところあるよな……っと」

 

 ブレイブフォースと会話をしているうちに対戦相手が見つかったアラートメッセージが表示された。

 今まで俺が立っていた電子空間をイメージした待機場からバトルステージへと転送される。

 バトルステージはオーソドックスな『大空』ステージ。

 一面の青空が広がり、障害物などは存在しないステージだ。

 そしてステージ中央に浮かぶ空中ディスプレイを挟んだ反対側に対戦相手が転送されてくる。

 

 現れた対戦相手は小学生くらいの少女だった。

 茶色のショートカット。周りに広がる青空のように澄んだ青い瞳は宝石のアクアマリンのように美しい。

 そして身にまとっている赤紫色の上着とロングスカートが風に揺られてはためく姿は年相応の可愛らしさと共にどこかりりしさを感じさせた。

 

「対戦、よろしくお願いいたします」

「え、あぁ。よろしくね」

「私はシュテルと申します。あなたのお名前をうかがってもよろしいでしょうか」

「俺はアヤト。対戦は初めてだけど、お互い楽しくデュエルしようね」

「対戦は初めて、ですか? なるほど。それでバリアジャケットの装備がないのですね」

「……ばりあじゃけっと?」

 

 初めて聞く単語に首をかしげると、ブレイブフォースがクソデカいため息とともに口を開いた。

 

『バリアジャケットとは戦闘防護服の事だ。装着しているのとしていないのとでは防御力に大きな差が出る。前に一度説明しただろう……』

「ご、ごめん……忘れてた」

『対戦相手の……シュテルと言ったか。彼女が着ているあの服もバリアジャケットだ。彼女のものは『セイクリッドタイプ』だな。高い防御力に定評がある』

 

 なるほど、バリアジャケットを着ていないことはそれだけで大きなハンデを負うことになるようだ。

 ジャケットのタイプによって特徴もあるようだし後で調べておいた方がよさそうだ。

 

「あなたの相棒の言う通りです。さすがに素の状態のパーソナルカードだとまともな戦いにならないと思いますが……。そうですね、アヤトさん……でしたか。パーソナルカードと同じカードは持っていませんか?」

「パーソナルカードと同じ……? えっと……」

 

 俺はウィンドウを開いて自分のデッキのカードを確認する。

 まだ所持カード自体が少なく、俺のデッキ=所持カードという状態だからここを見れば所持カードが把握できる。

 

「あるよ。これをどうするの?」

 

 俺はブレイブホルダーにしまわれていたカードを一枚取り出す。

 そこには最初に作った俺のパーソナルカードと同じ絵柄が描かれていた。

 ……正直自分のブロマイドを持ち歩いているようで若干恥ずかしいのだが。

 

「ストライカーチェンジをしてください。それであなたもバリアジャケットを纏うことができるはずです」

「ストライカーチェンジ?」

「そうですね、なんと言いますか……カード複数枚を使って変身すること……とでもいえばいいのでしょうか」

『そうだな、お前がストライカーチェンジを宣言すればあとは私の方で処理する』

「知ってたならもっと早く教えてくれよ!」

『バリアジャケットについて話したときに一緒に説明したはずだが』

 

 ……ぐうの音も出なかった

 

「えっと、宣言すればいいんだよな。よし」

 

 2枚のカードを構え、それらを空に掲げる。

 

「頼むぞブレイブフォース! ストライカーチェンジ!」

『モードリリース カードフュージョン ドライブレディ』

 

 システムメッセージと共に俺の頭上に魔法陣が現れ、カードがその中に吸い込まれた。

 次第にその魔法陣は輝きを増していき、その中から一枚のカードが現れる。

 そのカードを手に取り、構えたブレイブホルダーへとスラッシュし宣言した。

 

「リライズ・アップ!!」

 

 スラッシュしたカードが光となって弾け、その光にアバターが包まれ変化していく。

 上半身は白いフード付きのインナーの上からチェストプレートを装備し、その上から黒のジャケットを。

 下半身はいくつかのベルトが巻き付いた黒のタイトパンツ。

 両手足には手甲と脚甲を装備しており、シュテルのジャケットがRPGでいうところの魔法使いだとするなら俺はさしずめ流れの冒険者といったところだろうか。

 

『ストライカーチェンジ完了。ジャケットタイプは『ブレイブタイプ』だ』

「これが俺のバリアジャケットか……すごいなこれ、ホントに“変身”って感じだ」

『感激するのはいいが、今が対戦中だということを忘れていないか?』

「あっ! そ、そうだった。ごめんねシュテルちゃん。それと教えてくれてありがとう」

「呼び捨てで結構ですよ。大したことはしていませんのでお礼を言われるほどの事ではありません。……それに」

 

 シュテルはそこで一度言葉を区切るとデバイスを俺に突き付けた。

 その視線はこちらを射抜かんとばかりに鋭く、思わず息をのむ。

 

「負けた時の言い訳にされては、たまりませんから」

 

 威風堂々とした佇まいで、シュテルはそう言い放った。

 つまり彼女はこう言いたいのだ。

 

『そちらが万全の状態であろうと自分が勝つ』と。

 

 挑発的な一言だ。受け取り手によっては憤慨するかもしれない。

 だが、自分の場合は逆に気分が高揚した。

 それだけ自分の腕に自信があるということなら、対人戦の経験値を積むという俺の目的にこれほど適した相手はいない。

 そんな思いから、思わず口角がつり上がる。

 

「さぁ、始めよう」

 

 高ぶる思いをカードに乗せて、ホルダーへとスラッシュした。

 

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