小学四年生になった新学期の朝。
いつからか一緒に過ごすようになった由比ヶ浜と学校まで歩く。妹の小町は今日は他の友達と行くらしい。俺を置いて先に家を出て行った。
「ハッチー! やっはろー!」
「ふぁ〜〜、おはよ……」
「反応わる!? ……ねむたそうだね。またゲーム?」
「ああうん。まあな」
「やりすぎはダメだよ?」
「わーってるよ。お前は俺の親かよ」
「ち、ちがうし! 親っていうか……お、おくさ……あー!! なんでもないし!/////」
「お、おう。そうか」
ん?今こいつ何て言おうとしたんだ?とりあえず聞かなかったことにしよう。うん、その方がいい。
「結衣と八幡は相変わらず仲がいいな」
「あ! はやとくん! やっはろー!」
「おはよう」
「うす」
目の前で眩しいほどのキラキラオーラを撒き散らしながら俺も由比ヶ浜に挨拶をしてくるのは葉山隼人。イケメンで頭脳明晰、運動神経抜群、みんなの憧れだ。俺は憧れないがな。
俺と隼人は腐れ縁ってやつで幼稚園からの友達だ。俺の友達はこいつと由比ヶ浜だけだがな。
「みんなクラスおんなじだといいね!」
「ああ、そうだね。去年は俺、八幡とも結衣とも離れてたからな」
「俺は嫌だけどな」
「えー! ハッチー! ひどい!」
「俺は平和に過ごしたいんだ。お前ら……て言うか隼人といたら、平和に過ごせないだろ」
「じゃ、じゃああたしはいいの?」
「…………」
「むし!?」
嫌ではない。だが、由比ヶ浜の事を考えれば一緒ではない方がいい気がする。いつまでも俺といることがいいとは思わない。
けど、あの時のことがまだ頭に残っているのなら──
「……どっちでもいい」
「はは、全く八幡は素直じゃないな」
「そ、そっか……/////」
おい、何故そこで照れる。
「そ、そういえば! 今日からはやとくんのともだち? が転校してくるんだよね?」
「おいおい友達は疑問形かよ」
「ああ、そうだよ。女の子なんだ。ちょっと変わってるけど、優しい子だよ」
「へ〜〜、そうなんだ。その子もクラスおんなじだといいね!」
そんな会話をしていると学校に着いていた。
「おー!! ハッチー! はやとくん! クラスおんなじだね!」
「そうだね。俺も二人が一緒で嬉しいな。一年間よろしく」
「チッ」
「あーー、ハッチー今舌打ちしたー!」
「お前よく舌打ちって知ってたな」
「ば、バカにしすぎだし!」
隼人曰く、隼人とその子は親同士が仲が良いため知り合ったらしい。会ったことがあるのは2、3回。その時もあまり話はしなかったらしい。
おい、友達じゃねーだろそれ。顔見知りだ、顔見知り。俺だったら会ったときに無視されるまである。
新しい四年三組の教室で先生の話を聞いている。あ、ちなみに一学年四クラスな。俺の前の席は隼人。チッ、キラキラしやがって、前が見えねーだろうが。
何でも今日は新しい友達が増えるらしい。
あのー先生、それって友達じゃなくてクラスメイトだよね?新しい友達とか俺に絶対出来ないし。期待させるのはやめて。
て言うか、絶対朝話してた子だよな。
そんなことを考えているうちに前の扉が開き、入って来た女子にクラスの男は皆そろって声を上げた。お前らいくら可愛いからって露骨すぎんだろ。
「今日からこの学校に通うことになった雪ノ下雪乃です。よろしくお願いします」
黒板の前に立つ黒髪の女の子は丁寧にお辞儀をしてそう言った。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
一限目が終わり、雪ノ下はクラスの連中に質問攻めに合っていた。まあ、あの容姿だしみんな気になるのだろうな。俺はならないけど!
「お前は行かなくていいのかよ」
由比ヶ浜は雪ノ下と席が近いため、周りを生徒たちに占領されて、俺の所まで避難してきていた。隼人はまあいつも通りみんなの中心だな。雪ノ下との中継役か、ほどほどにしとけよ。
「あー……あたしはちょっとね……なかよくはしたいと思ってるんだよ?でも、今人が多いしちょっとね……」
「……そうか」
「ハッチーは雪ノ下さんのことどう思う?」
「どうって? あれか? 容姿とかか?」
「うん」
「外見は普通に可愛いんじゃねーの。中身はどうかは知らんが。な、なんだよ」
「……あ、あたしは?」
「は? ……知らん」
「はー?ちゃんと答えてよハッチー!ほらこっち見て」
「小町の方が可愛いな」
「また小町ちゃんにまけた!?」
「これで0勝10敗だな」
「かてる気がしない……そうじゃないし!ハッチーのシスコン!!」
ふっふっふ、残念だったな由比ヶ浜結衣よ。その言葉は俺にはノーダメージだ!
授業も終わり、帰りの挨拶を済ませれば放課後。他の奴らはすぐに教室を飛び出し遊びにでも行ったんだろう。今教室には俺と由比ヶ浜と雪ノ下、あとは雪ノ下に群がる奴数人。
明らかに嫌そうな顔してんだろ、やめとけよしつこい奴は嫌われんぞ。
「ハッチー、一緒にかえろー」
「いやだ」
「そくとう!?」
はいはい断ってもどうせ一緒に帰るんだろ。分かってますって、ほら、すぐ俺の腕持つんじゃねーかよ。恥ずかしいんだよやめろ。
由比ヶ浜に引かれ、教室を出ようとすれば雪ノ下が赤いランドセルに教科書を詰め込み1人で帰る準備をしていた。
「あのー、雪ノ下さん。よかったら一緒にかえらない?」
「その男にそう言えって言われたの? 貴方卑怯ね」
「いやいや違うから。なんでそうなる。大体俺は一人で帰りたいんだ。一緒に帰るなんてむしろこっちから願い下げだ」
「あらそう? 貴方変わってるのね。普通私みたいに可愛い子とは帰りたいと思うのだけれど」
「普通はな、だが俺は普通ではない。だから俺にはその一般論は当てはまらない」
「むぅ……」
痛い痛い!あの、由比ヶ浜さん?そんなに抓られると痛いんですけど。
「ハッチーもゆきのんもむずかしいことばっか話してて分かんないし! あたしだけ仲間ハズレみたいじゃん!!」
「ゆ、ゆきのん?」
「由比ヶ浜それは違うぞ、確かにお前には難しかったかもしれない。だが、それ以前に俺と雪ノ下は仲間では無い。したがってお前は仲間外れではない」
「なんかバカにされた!?」
「そうね。確かに私とこのアブノーマル君は仲間ではないわ」
まじかよ。こいつ意外と毒舌だな。
「あら何か?」
「いや、何も」
「ゆきのんもハッチーもかえろ! ね?」
「ちょっ、おい」
「あの由比ヶ浜さん? だっけ、その……ゆきのんと言うのは一体……」
「雪ノ下雪乃だから、ゆきのんだよ。ダメ?」
そんな子犬みたいな目をウルウルさせたら多分、雪ノ下も断れないだろ。
「べ、別に嫌ではないわ。た、ただ……その慣れてなかったからびっくりしたのよ」
「そっか!良かった!じゃ、三人でかえろ?」
「フフフ、そうね。特別に貴方と帰ってあげるわ。感謝なさい。えーと……」
「比企谷八幡だ」
「ヒキガエルくん」
「おい、ナチュラルに間違えんじゃねえ」