がっこうぐらし with ローンワンダラー   作:ナツイロ

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※誤字報告ありがとうございます。修正適応しました。


第11話 夕食のカレーと新たなクエスト発生

 ほんの少し休憩するつもりが、一時間ほど眠ってしまった亜森は、妙な暖かさを覚えながら目を覚ました。

 

(何か羽織ってたかな?)

 

「アモ、起きたか? そろそろメシの時間だぞ」

 

 声が聞こえる方へ薄目を開けて見れば、胡桃が足を組んでパイプ椅子に座っていた。

 他の面々は、他の部屋に居るのだろう。ここには見当たらない。

 伸びをしながら身体を起こせば、掛けられていたタオルケットがはらりと落ちる。

 

(暖かかった理由はこれか)

 

「これは恵飛須沢が?」

 

 欠伸を噛み締め椅子に座り直した亜森が、タオルケットを丸く包みテーブルへ置いた。

 

「あ、あぁ。何か疲れてるみたいだったし、夜で肌寒いかなって思って」

「助かったよ、よく眠れた」

「それなら良かった。もうメシが出来てるから、早く行こうぜ」

 

 テーブルのタオルケットに手を延ばした胡桃は、それを小脇に挟み椅子から立ち上がる。

 

「もしかして、待たせてたか?」

「ん、まぁ少しは。でも、皆揃ってから食べた方が良いだろ?」

 

 "ほら、行こうぜ"と、せっつく胡桃に続くように、亜森も部室を出た。

 食事をする部屋に向かえば、既に皆席について亜森と胡桃を待ちながら、今日の体育祭を話題に花開いていた。

 部屋に入って来た亜森を見た面々は、彼が無事に帰ったことに安堵を覚えつつも、用意していた料理を配膳し始める。

 

「良い匂いがするなぁ、これはカレーだな!」

 

 "遅れてすまん"と謝罪を入れながら、亜森は手を洗って自分の席に着く。

 自身の好物が夕飯であることに、嬉しさを隠しきれないようだ。

 胡桃も寝室にタオルケットを置いて戻って来たようで、亜森の斜め隣りの自分の席へ座った。

 

「アモさん、お仕事お疲れー!」

「お疲れ様でした」

「大丈夫でしたか?」

「あぁ、ありがとう。目的は十分果たせたから、心配要らないよ」

 

 "詳しくは食事の後でな"と小声で伝え、食事の挨拶をする。

 久し振りのまともなカレーに舌鼓を打った亜森は、料理を仕切っている悠里にお代わりが可能か尋ねた。

 

「若狭、今日はお代わりがあるのか?」

「ありますよ。今日は体育祭でしたし、亜森さんのお仕事もありましたから特別に多めに作ってます」

「よっしゃ、大盛で頼めるかい?」

「りーさん、あたしもお代わり! 普通盛りで」

「あ、私もお代わりしたい!」

「あの、りーさん。私の分もお願いして良いですか?」

「ハイハイ、順番にね。ちゃんと皆の分あるから」

 

 差し出された皿を手に取り、悠里は順番にご飯をよそい、カレーを鍋からかけていく。

 亜森は注文通り、大盛で渡された皿を両手で受け取り礼を述べる。

 

「ありがとう、これだと結構な量の食材を使ってしまったんじゃないか?」

 

 普段は、お代わりなどは想定しない量しか料理に使用しないので、夕飯で使用した分が心配になったのだ。

 

「えぇ、いつもよりかは少し多めですけど。こういう時ぐらいしか、沢山作る事も無いので。それに煮込み料理ですから、何でも材料に出来るんですよ」

「それなら良かった」

 

 悠里が言うように、カレーの具には普段は見ない食材も含まれているようだった。

 

(これは大豆の水煮かな、こっちはホールトマト。肉の代わりに……シーチキンだな)

 

 ご飯に掛けられたルーをスプーンで掬えば、パッケージに載っているような通常よく見られる材料は入っていない。

 福神漬けの代わりに沢庵が用意されているのは、今朝の残りの分だろう。

 

(いや、好きだけどね。沢庵)

 

 ぽりぽりと沢庵を囓りながら、亜森はカレーを頬張っていく。

 他の面々も新たにお代わりしたカレーを口に運び、体育祭であった事を話題にして楽しい時間を過ごしていった。

 

 

 

 食事が終わり、自身が使った食器の後片付けをしている亜森に胡桃が近寄って来る。

 

「なぁ、アモ。この後シャワー浴びたらさ、今日の事詳しく聞いときたいんだけど」

「それはいいけど、皆でか? 恵飛須沢だけ?」

「んーあたしと、倉庫担当のみきぐらいかなぁ。りーさんも一緒が良いだろうけど、ゆきのこともあるし」

「話し合いから除け者にはしたくないけど、仕方ないか……。俺のいる寝床とは別の空き教室に回収したものをまとめるつもりだから、そっちで話そうか。トラックの中身はまた明日っていうことで」

「あぁ、それでオッケー。りーさん達には、あたしから言っとくから」

「任せるよ」

 

 胡桃は聞きたいことを聞いて満足したようで、部屋から去っていった。

 食器を洗い終え、布巾で水気を切り食器をまとめたカゴへ入れた亜森は、自身も部屋を出て一旦寝室としている教室へ戻る。

 教室で自身の荷物から着替えとタオルを用意して、亜森は誰かがシャワーの交代に呼びに来るまで、ソファーで休むことにした。

 食後の満腹感に心地よさを感じながら、ロウソクにマッチで灯りを灯す。ランタンを使うほど、光量は求めていない。

 ゆらゆらと揺れるオレンジの淡い光が、亜森の顔を照らした。

 暫く、微動だにせずロウソクの炎を見つめる。

 

(……あぁ、そう言えば。丈槍にお菓子のお土産を持ってくるって、約束してたっけ)

 

 昨日の会話を思い出し、Pip-Boyの画面を眺め操作していく。

 

(取り敢えず、缶ジュースと……恵飛須沢にもやった板チョコでいいかな)

 

 人数分の缶とチョコレートを取り出した亜森は、ロウソクを立てている机に置いておいた。

 後で、胡桃達に持っていってもらえば良いだろう。

 自身もPip-Boyから学校の水道水を汲んだペットボトルを取り出し、口に含んだ。

 

(あぁ……、日本の水はやはりうまいな。なにより、Radに怯えなくていいのが最高)

 

 亜森は、連邦の水事情を思い返していた。

 迷い込んだ初期の頃は、サンクチュアリヒルズに沿って流れている川の水を濾過すればいいのにと考えていたのだが、将軍のPip-Boyに搭載されている放射線検出器の警告音を聞いてしまえば、それも諦めざるを得ないと強制的に理解させられた。

 それから暫くは、将軍の渡すきれいな水にも恐恐としながら、口にしていた程だ。

 将軍と共に地下水を汲み上げるポンプを作り上げた時には、年甲斐もなくはしゃいでしまった。

 彼に同行できるまでに成長した頃には、水事情もかなり改善され、初期の頃の恐怖を感じる程ではなかったが、日本との違いを常に見せつけられる思いだった。

 ミニッツメンに協力してくれる居住地が増える度に、亜森自身が赴いて放射線除去装置付き組み上げポンプを無償で設置していったのは、そういった亜森の持つ日本人特有の核アレルギーから来る反動だったのかもしれない。

 その御蔭で、居住地からのミニッツメンに対する信頼とミニッツメン内部での亜森の存在感が増していったのだが、彼自身は最後までそのことには気付いていなかった。

 ペットボトルの半分ほどを消費したところで、シャワーを浴びた胡桃が呼びに来た。

 普段は二つに結っている髪も解かれ、何処かしっとりと艶がある。

 傍らには、一緒に来たらしい美紀の姿も見える。

 

「アモ。シャワー交代だ、もう行っていいぞー」

「おう、了解」

 

 胡桃に答えた亜森は、ペットボトルの蓋を閉め、机に置いた。

 準備していた着替えを手に持ち、ソファーから立ち上がる。

 

「どうする? 俺は結構直ぐに戻ると思うけど、ここで待ってるか? それとも、別の教室にいるか?」

「あ~、どうしようか。みき、どうする?」

「え、そうですね……。ここで待ってましょうか、せっかくロウソクついてますし」

「そうだな、うん。それじゃアモ、あたし等はここで時間つぶしてるよ」

「分かった。机のジュースとチョコレートは丈槍に言っていたお土産だから、後で皆で分けてくれ」

「うぉ、マジ! やったぜ」

 

 お菓子と聞いて、胡桃は小さくガッツポーズをする。

 美紀はそれを呆れたように横目で見ながら、亜森に自分達も貰って良いのか確認した。

 

「いいんですか?」

「たまには良いさ。この学校にも、壊れてない自販機が残ってるみたいだから、減ってきたらそこから補充するよ」

 

 それじゃシャワー行ってくると、亜森は二人に見送られながら歩き出して行った。

 残された二人は教室へ入り、亜森が座っていたソファーに腰を降ろす。

 

「部室にもソファー置きたいんだけどなぁ、テーブルと高さが合わないんだよ」

 

 ポンポンと座面を叩きながら、胡桃は隣りにいる美紀を相手に雑談を始める。

 

「部室のは会議用ですから、元々ソファー用じゃ無いんですよ」

「わかってるよ、ただ言ってみただけ」

 

 美紀の分かり切った答えに特に思う所も無い胡桃は、机のチョコレートを手に取り甘い香りを楽しんでいる。

 

「まだ食べちゃダメですよ。皆で分けてからと、言われたじゃないですか」

「食べないよ、見てるだけ。心配すんなって」

「見てないじゃないですか……」

 

 そう言っても、香りを楽しむ姿に説得力は見当たらず、美紀は小さく溜息を吐いた。

 会話も途切れ、美紀は手持ち無沙汰を紛らわせるように、教室を見回す。

 今座っているソファー、ロウソクの置いてある机、今は明かりのついていないランタンに、後は亜森の荷物が少しだけ。

 自分達が使っている寝室に比べて、物が少ない印象を受けた。

 

「あんまり物が無いですね。部室や寝室には、集めてきた雑誌や遊び道具が置いてありましたけど」

「ここんとこずっと地図を探してたし、この部屋にいるのは寝る時ぐらいだからなんじゃないか?」

「そうかもしれませんね……。まだ皆と出会って十日程度ですし」

 

 そう、まだその程度なのだ。

 もう随分前から一緒にいるような感覚があるが、それは短い間にかなり濃い経験を共に経験したからだろう。

 助け出されてから今までを思い出しながら、美紀は物思いに耽る。

 

 そのまま暫く、ソファーで寛いでいると、シャワーを終えた亜森が戻って来た。

 熱いシャワーを浴びて、機嫌良さげに鼻歌まで歌っている。

 

「待たせて悪い」

「いいよ、ゆっくりで。こっちも座ってただけだし」

 

 教室に入ってくる亜森を見た胡桃は立ち上がると、背伸びをして体をほぐした。

 それにつられて美紀も立ち上がり、さっさと本題に入ろうと下着と服を適当に放り投げる亜森に声をかけた。

 

「それで、今日の事と回収物資の話でしたよね。どこで話すんですか?」

「あぁ、それなら別の空き教室でしようかと。バリケード用の資材は殆どトラックに積んであるけど、それ以外はこっちに入ってるからな。空き教室で中身を取り出しながら話そう」

 

 こっちと言いながら、Pip-Boyを取り付けた左腕を示す。

 "ついでに、目録作っといてくれよ"と、美紀に面倒くさそうな作業を頼む亜森。

 呆れ顔の美紀は、元々そのつもりではあったのだが、そう言われるとやる気が削がれてしまう。

 そんな美紀の顔に察しがついたのか、亜森は"終わったら追加のお菓子やるから"と、ご褒美をエサに宥めにかかった。

 

「別に貰わなくたってやりますけど……」

「じゃあ、いらないのか。それなら、恵飛須沢いるか?」

「もらえるならもら」

「いらないとも言ってません!」

「正直は美徳だよなぁ」

「なぁ、みき。あたしも手伝うからさ、半分こしようぜ?」

「先輩……、いいですけどちゃんとやって下さいよ」

「わかってるわかってる」

「本当に分かってるんですか?」

 

 教室の隅の方へ置いていたランタンに灯りを灯し、後ろで姦しい二人を他所に亜森は教室を出る。

 

「あ、アモ。まてよ」

「ちょっと、なに無関係気取ってるんですか」

 

 追従する二人の文句に片手を振るだけで答え、空き教室へと移動するのだった。

 

 

 

 目的の教室に入った三人は、残っていた生徒用の机を使用して大きめの台を作り、目録作りの準備を始めた。

 

「そうだ、二人とも。これ渡しとく」

 

 Pip-Boyからコピー用紙を挟んだクリップボードとボールペンを取り出し、メモ用として胡桃と美紀に手渡す。

 これは職員室を物色した際に発見した物なので、連邦の放射性物質の影響は受けていない。

 連邦で手に入れた大抵のものは、Pip-Boyの検出限界を下回っているので渡しただけで健康被害が出るようなことは無いのだが、一応念のためである。

 

「どうも」

「任せとけって」

「じゃあまずは、工具類から順番に出していくから。その後は大体大きい順に」

 

 始めの内は、胡桃と美紀も次々と並べられていく埃は被ってるものの新品同然の工具類に感心しきりで、自身でも手にとっては眺めていた。

 問題は、それが用意した台に埋まりきらず、教室後ろにある生徒用ロッカーの天板を完全に占領し、ロッカー内部にまで収納し始めたことだ。

 中には宮大工が使うような大小様々なノミのセットまであり、道具からでは使う予定が何なのか分からないものまで含まれ始めている。

 二人には、ロッカー一杯に積まれた様々なプラス・マイナスドライバーを何故そんなに手に入れてきたのか理解できなかった。

 

「な、なぁ、アモ。これは?」

「鉋掛け用の鉋(カンナ)だな。木材の表面をこれで整えて手触りを良くし、長持ちさせるんだ」

「あの、こっちは何です?」

「グラインダー。ヤスリのついた部分が回転して表面を削ったり、アタッチメントを変えて硬い材料を切断したりする頼れるヤツだ」

 

 "替刃も当然まとめて持ってきたぜ"と、何処かワクワクするような表情で語る亜森に、二人は呆れ顔である。

 

(何ていうか、男子ってこういうの好きだよなぁ。何故か)

(ええ、ヤスリがあるならグラインダー?とかいらなくないですか)

 

 男の関心事に理解が及ばない女子二人がこの盛り上がりの欠ける作業を終わらせたのは、結局教室の半分以上を占領してからになる。

 

 

 

「それで、記録が終わったなら今日の事を伝えとこうか」

 

 教卓近くに用意しておいた椅子に座り、亜森は二人とは対照的に満足した表情でいる。

 女子二名は、教卓に乱雑に放られたクリップボードの様子から察していただきたい。

 どっと疲れた様子を見せる二人は、椅子の背もたれに身体を預け、口々に軽い文句を吐き出す。

 

「はぁ、やっと終わったぜ。これでご褒美無しだったら、途中で止めてたね」

「疲れました……、これならシャワー浴びる前でも良かったかも」

「すまんすまん。ジュースやるから機嫌直せ」

 

 そう言って、二人に缶ジュースを手渡す。

 それぞれが蓋を開けたところで、亜森は今日の出来事を順を追って話し出した。

 

 移動中に観察したこと、無力化されたゾンビが見当たらなかったために生存者が活動していない可能性がある。

 レンタルビデオショップで回収した物、これでかなり娯楽が増えるはずだ。

 ホームセンター周辺の様子、郊外型店舗が複数あり大量のゾンビがいて、最後には爆発で吹き飛ばした。

 

「まぁこんな感じだな。あ、昼飯は助かったよ。大きい所がポイント高かった」

「え? そ、そう。それなら良かった」

(なに照れてるんですか……味について何も言われてませんよ?)

 

 えへへと頬をかき、照れた様子を胡桃は見せる。

 そんな彼女の様子に美紀は嘆息しつつ、亜森の話で気になった点について質問を始めた。

 

「生存者がいないっていうのは、この辺り一帯もだと思いますか?」

「あぁ、それについて先に確認しておきたい事があるんだ。暫く夜間は照明をつけない様にしてるが、それ以前は気にしてたか? 恵飛須沢、どうだった?」

「あ~、確かにそんなに意識してはなかったかも。バッテリーが減るから、夜は大体ランタン使ってたけど、全く電気使わないわけでもなかったし」

「学校で夜間照明がついてれば、そりゃあ目立つ。三階の灯りなら、視界が通りさえすれば数キロ先からだって光は分かる。それでもこれまで接触が無かったということは……」

「周囲数キロは人がいない……ということ、ですか」

「生存者の可能性は、非常に低いだろうな」

「はぁ、この辺じゃあたし達だけなのは間違いないか……。以前は、誰かいないか屋上から双眼鏡で探したりしてたんだけど、いつの間にかやめちゃったしなぁ」

「その時、何か見えたりしたか?」

「全然。本当に最初の頃は火事の煙が遠くに見えたり、車のクラクションが聞こえたりしてたけど……」

「それらも、いつの間にか無くなっちゃったんですね」

「そうなんだ。それ以来、意識して学校の外を見ようとはしなかったよ」

「避難所になりそうなこの学校に、誰も現れないんじゃそうなるのは仕方ない」

「はぁ……」

 

 力なくうなだれる胡桃と腕組みをして難しい顔をする亜森がいる中、美紀は暗い話題を変えようと亜森がレンタルビデオショップ回収してきたという内容について、努めて明るい声色で聞いてみた。

 

「そ、それで。レンタルビデオショップでどんなものを回収できたんですか? DVDとか?」

「ん? あぁ、そうだよ。DVDとかジャンル問わず、それと再生プレーヤーと展示用で設置してあった液晶テレビとか……。それとゲーム機とソフトかな」

「お、マジ? テレビゲームあるの?」

 

 ゲームと聞いて、胡桃が食いついてきた。女子にしては珍しいのかもしれないが、それなりにゲームを嗜んでいるのだろう。

 娯楽が殆どなかったせいもあるが、身を乗り出して聞いてくる胡桃の興奮は本物だ。

 

「トラックの助手席に放り込んであるから、実際遊べるのは明日以降な。それにゲームやってると、屋上バッテリーの充電量に気をもんでる若狭に、あまりいい顔はされないかも」

「あぁ、それはあるかも。りーさんゲームとかしなさそう……」

 

 悠里の、普段バッテリーの心配している様子を思い浮かべる胡桃。

 調理器具や温水シャワーにも直結する事柄なので、特に頭を悩ませる問題でもあった。

 

「りーさんは、確かにそんな感じありますね。生活用電気を優先しなきゃいけないのは、当然ですけど」

「アモ、何かいいアイデアない? パァーッと発電量増やすとかさ。このままじゃDVDだって見れないかもだぜ?」

「発電量は増やせないが、屋上のとは別系統の電気を作れば良いんじゃないか?」

「それ、どうすんの? 近所の家のソーラーパネル剥がしてくるとか?」

「それも一つの手だけど、それにプラスしてバッテリーを集めるんだよ」

「バッテリーってどこから? ソーラーパネル用のバッテリーなんて知らないよ」

 

 胡桃が想像するのは、設置に百万円以上するソーラーパネルに、これまた家庭用冷蔵庫ぐらいの大きさの色んな基盤やコードにまみれたバッテリー本体。

 そいうことに興味を抱いてこなかった陸上部女子に、理系が好きそうな話題を問われてもさっぱり分からない。

 良くて家族が使っていたデジタルカメラのバッテリーか、携帯のバッテリーぐらいのものである。

 

「車のでいいんだよ、そこら辺にいくらでもあるだろ? ついでに中のガソリンでも抜いてくれば、一石二鳥だ」

「あ、待って下さい。確か、モールで手に入れた雑誌の中に、ソーラー発電のDIYについて書かれているものがあったような気が」

 

 どこにあったかなと、美紀は思い出そうと手を顎に添え、考え込んでいる。

 何しろ雑誌だけでも大量にあるのだ。

 美紀自身も、適当にタイトルをちら見しただけで、内容までは把握していない。

 

「でかしたッ、みき! 後はそれを参考に、部品を集めて組み合わさせれば」

「小さいが、テレビやゲーム機を動かせる程度の電気は作れるかもな。ガソリンも燃料式発電機に使えば、更にいい」

(最悪、連邦で作ってた物を再現すればなんとかなるだろう。……発電効率は良くないかもしれないが)

 

 亜森は、連邦で制作していた発電機の数々を思い出す。

 小型のものから風力を利用したもの、果てはVault施設で発見した設計図より再現した発電機まで。

 最後のは材料も設計の詳細も覚えていないので無理だが、燃料式や風力であれば何とかなるはずだ。

 あちこちの居住地にそれらを設置して周り、メンテナンスまで教えていたのは亜森自身なのだ。

 この件に関しては、将軍より上手くやれる自信があった。

 

「何にせよだ、そういうことを楽しむのもバリケードの補強を終えた後な。それまではアナログで我慢してくれ」

「えぇ、もっと何とか早まらない?」

「いくつも並行して、作業するのは難しいぞ。それに皆で一つのことに取り組めば、結束力も高まる」

 

 亜森は言外に"その目的のために体育祭をやったんだろ"と、伝えてくる。

 胡桃は亜森の意図を正確に読み取ったようで、はやる気持ちを抑え意見を引っ込めた。

 

「んー、アモがそういうなら良いけど。……ここ最近、アモやみきが加わって出来過ぎだったのもあるかもな。ここらで足元を固める方が、今後の為になるってことか」

「そうですね、苦労した分達成感も大きいですよ。多分」

 

 それから、回収してきた細々とした物資について話を続けた三人は、夜も更け始めた辺りで話し合いを終了することにした。

 ランタンの灯りを手に廊下に出たところで、胡桃が最後に気になっていたことを亜森に尋ねていた。

 

「そういえばさ、あいつらの集団を爆発させたって言ってたけど。どうやったの? ガスボンベでも放り込んで銃で撃ったとか?」

「いや、ミサイルランチャー」

「は? ミサイル……え?」

「地雷と手榴弾をばら撒いたところに、ミサイルを撃ち込んだ。最高にクールだった」

 

 亜森の言葉に、二人は口を開けたまま黙っていたが、廊下に響く大声で突っ込みを入れた。

 

「ばっかじゃねーのっ!?」

「馬鹿なんじゃないですかっ!?」

 

 二人は、聞く耳を持たない亜森の後ろでギャースカと騒ぎ、それは彼が寝床の教室に入るまで続くのだった。

 

 

 

 





・胡桃のタオルケット
原作の寝室の描写では、布団とセットなのは掛け布団程度しか見当たらない。
季節を特定させないためだろうが、流石に夏の時期(この作品中の季節が明確に夏というわけではない)に掛け布団はキツイので、タオルケットも備えてあることにした。


・夕食のカレー
みんな大好き国民食。
起源は何処と聞かれれば、原材料のスパイスはインド、調理法はイギリス、うまいのは日本、としか答えられない。
ちなみに、アモが日本に戻ってきた良かったと思ってる点は、食事と水とトイレットペーパー。

・シャワー
この作品に、ラッキースケベとかありません。
あるとしたら明確なスケベです。
しかし、「シャワーを浴びた女を待ち受ける男」とだけ抜き出すと、いかがわしく見える不思議。

・物の無いアモの寝床
材料と工具も手に入ったので、ここからは充実する一方になる。
実際、ベッドぐらいなら椅子を何脚かと裏打ちしたベニヤ板を組み合わせれば、できそうな気がしてならない。
まぁ、クオリティはウェイストランドレベルですけど。

・新たな発電装置を作るクエスト
"スタージェスお前つくれるだろ!"と、思った最初期の居住地クエストを彷彿とさせる。
テレポート割り込み装置を作れるのに、ベッドも作れないのかと小一時間云々。
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