「あら、戻ってきたみたいよ」
「もー、2人ともおそーい」
手持無沙汰でソファーに座ったままの2人は、扉を開けて入ってきた胡桃と亜森にそれぞれ反応を示す。
由紀は唇を尖らせるように不平を漏らし、ブーたれた。
胡桃は、悠里にアイコンタクトで、由紀の件について話を通したことを伝える。
悠里はホッとした様子で胸を撫で下ろした。突然現れたよく事情を知らない人間に、微妙なバランスで成り立っている今の学園生活部を壊されたく無かったのだが、その懸念は一応の解決をみたらしい。
「待たせて悪い、お詫びじゃないがもう一本好きなジュースを取っていいぞ」
「やったー! くるみちゃん、りーさん、もう一本イイって!」
「ゆきちゃん今飲んだばかりでしょ? お腹壊しても知らないわよ」
「あたしはさっきの飲みかけがあるから、後でもらうよ」
「さて、飲みながらでいいから聞いてくれ。……まず、自己紹介をしよう。お互いまだちゃんと名乗ってなかったろう?」
パイプ椅子を掴みソファー近くに持ってきた亜森は、そう三人に提案した。
胡桃は既に免許証で確認していたが、空気を読んで黙っている。
「まずは俺からだな。名前は亜森太郎、友人たちには"アモ"と呼ばれる事が多かった」
「はーい、アモさんよろしくお願いしまーす! 丈槍由紀です!」
「えぇと、若狭悠里です。宜しくお願いします」
「恵飛須沢胡桃だ、改めてよろしくな」
それぞれ名前を交換し、ようやく相互理解に向けて一歩前進した三人と一人は、改めて自分達、そして自分以外に生存者がいたことを、素直に喜んだ。
それから暫く、学園生活部のこれまでの活動について話が弾んだ。
「へぇー、学校で長期の合宿ねぇ。そりゃまた楽しそうだな。俺がいた高校じゃ合宿といえば運動部で"キツい、だるい、めんどい"と、相場が決まってたんだが」
「えへへ、そうでしょー。学校から出ちゃいけない決まりなんだけど、みんなと一緒だから楽しいんだ! もちろんめぐねえも一緒なんだよ! ね、めぐねえ」
「そうなんだ。……佐倉先生もいつも生徒達の監督お疲れ様です」
「えーアモさんひどーい。めぐねえも笑ってないで何か言ってよー」
亜森は、由紀の視線の向きから目算で幻覚のめぐねえがいる方向に当たりをつけ、労いの言葉をかける。
事情を知らない人間がいたならば、非常に滑稽に見えるこの光景も、学園生活部を構成する要素なのだ。
亜森のその由紀に対する配慮を見て、ようやく安心した悠里は、会話に参加し始める。
「あの、亜森さんはどうして私達の学校に向かってたんですか?」
「どうしてと言われると、やはりこの手紙の主に会ってみたくなったのと」
一度言葉を切り、由紀をちらっと見て悠里と胡桃に目配せをする。
「……学校の求人に、用務員の募集があったからだな」
前半が悠里に対する返答で、求人云々が由紀用のカモフラージュだった。
その返答に、疑問を覚えること無く亜森が学校に来るのかどうか、由紀は聞き返した。
「アモさんはウチの学校で働くの?」
「そうなれば良いんだけどね。せっかくここで佐倉先生と君たちにも出会えたんだし、面接担当の偉い人に俺の良い所を伝えてくれたらすごく助かる」
少し大げさに両手を広げ、亜森は答える。結局、求人云々は由紀に必要以上の違和感を覚えさせないための、いわば方便なのだ。
そして若干わざとらしいジェスチャーも、残る二人に対してのアピールでもある。
由紀の幻覚に対して、"自分には協力が可能だ"というアピールだ。
外での胡桃との会話において、明確に協力するとは言わなかったが、これが亜森なりの答えだった。
信用してもらうには、先に行動で示さなければならない。ウェイストランドで数多く学んだことの内の一つであった。
「そうだな、ゴミ拾いは良くやってたし、ちょっとした大工仕事の真似もできる。武器を持った不審者の対応だってお手のもんだ」
少し自慢げに語る亜森に、由紀は感心した様子を見せる。
一通り会話が弾んだところで、悠里は日が落ちてきたことを皆に指摘し、夕食を取りましょうと提案した。
「そろそろ暗くなってきたし、夕ご飯を食べないかしら? ゆきちゃんもくるみも……亜森さんもお腹が空いてきたでしょう?」
「そうだな、流石に腹が減ってきたよ。りーさん、今日のご飯なに?」
「おにぎりを作ってきたから、それと足りない人は乾パンね。ただ……人がいると思ってなかったから亜森さんの分が……」
若干、申し訳なさげに言葉を濁した。それに亜森は、心配はご無用だと手を振る。
「大丈夫だ。それは君たちの遠足用のものだろう? それに自分の分はちゃんと自分で用意してある」
そう言うとパイプ椅子から立ち上がり、休憩室の片隅においてあったバックからあるものを取り出した。
「今日はカレーのつもりなんだ、君たちも少しどうだい? カレーライスとはいかないが、スープなら分けてあげられるだろう」
具は期待しないでくれよ、そう言って振り返った亜森の手には、固形ルーのパッケージが握られていた。
林檎と蜂蜜が隠せてない隠し味として、良くコマーシャルで宣伝しているメーカーのものだ。
「やった! カレーだって、くるみちゃんりーさん!!」
「ゆきちゃん、喜ぶ前にお礼を言わないと」
「う、ごみん。アモさんありがとー!」
「かまわないとも」
由紀の素直な御礼の言葉に、礼はいらないと返す。
そのやり取りが終わったのを合図に、悠里は由紀に準備を手伝うよう車に行こうと誘った。
「それじゃ私たちのご飯を取りに行きましょ。ゆきちゃん、手伝ってくれる?」
「はーい。それじゃあアモさんまたあとでね」
「おう、準備ができたら呼ぶことにするよ」
車に向かう悠里と由紀を見送り、亜森は調理の準備を始めた。
そこに何故か二人について行かなかった胡桃が、亜森に質問を投げかける。
「なぁ、よかったのか? 貴重な食料だろ、カレーなんて。あたし等だってレトルトのやつが残り少ないんだぜ」
「そんなに貴重ってわけでもないさ」
亜森は胡桃達に接触する前、周囲の住宅街を探索して回っていたことを話し始める。
「この周辺は掃除したっていっただろ? その時に、そこらの家も一緒に見て回ってたんだ。生存者がもしかしたらいるかもしれないと思ってな。
それに一般的な日本人家族で、国民食のカレールーを常備してるのはよくあることらしい。実際、大半の家に何かしらのカレールーが置いてあったんだ。
これならそんなに嵩張らないし、封が開いてなきゃ腐ったりしない。それに日本の味に飢えてたからな、連邦にまともな飯は本当に少なかった」
連邦で取れる食事といったら、放射能汚染が若干ある農産物や210年以上前の缶詰やシリアル、それと突然変異で奇妙な進化を遂げた動物や甲殻類、更にはゲテモノに分類できるだろう巨大化した昆虫類などだ。
もちろん飲料水もきれいな水や汚い水を除けば、殆どが戦前の飲み物だ。
どれも、現代日本の衛生観念に生きていた亜森にはきつすぎた。そうはいっても、食べなければ死んでしまうわけで。
結局は、Radアウェイを定期的に摂取しながら、食材のことを頭から追いやることにした。
人間慣れるものだなぁと諦めと感心が入り交じる亜森であったが、キュリーに言わせれば"単に麻痺しただけでは?"と返されることだろう。
(ヌードルを、箸を使って食事しているところを、ダイヤモンドシティで見かけたときは本当に驚いたけどな)
「何にせよ、まだまだ俺の在庫には余裕はあるんだ。気にしなくていい」
そう言うと亜森は左手に取り付けているPip-Boyを操作して、きれいな水とホットプレート、そして小さな鍋を取り出した。
それを見ていた胡桃は、今しがた目にしたあり得ない光景に衝撃を受ける。
ただ、亜森が男子によくある"ええカッこしい"でスマホを取り付けているだけだと思っていたものが、某四次元ポケットのようなことをしたのだ。
そのセンスは正直どうかと思っていたので、あえて指摘してこなかったスマホもどきが、そんな隠し玉を持っていたなんて想像だにしていなかった。
「ちょっとまって、ストップ」
制止の声に動きを止めた亜森は、どうかしたのかと振り向く。
「それ、……なに?」
「それ? ホットプレートと鍋と水だけど」
「そっちじゃなくて! 腕につけてるそれっ!」
信じられない物を見たと言わんばかりに、ワナワナと震える指で亜森の左腕に装着されている謎の物体を指差した。
「ああ、Pip-Boyのこと?」
「そうその"ぴっぷぼーい"とかいうスマホもどき!」
(スマホもどき?)
そういえば、連邦をさまようことになる少し前、まだ日本で大学生だった時期に新しいタイプの携帯電話が出ていた気がする。
亜森の中では、携帯といえば折りたたみ式が当たり前だった。"タッチ? ピンチアウト? フリック入力?"ナンのこっちゃ、である。
少しばかりジェネレーションギャップを感じつつも、胡桃の疑問に答えていく。
「電話じゃないぞ、そりゃあラジオや無線を受信できるようにはなっているが」
「そういうことじゃなくてっ、何で物が出てくるんだよ! ありえねーだろ! 狸型ロボットの親戚か何かかよっ!!」
「あぁ、そういうことか。大丈夫、その反応はかつて俺も経験した。どんなに否定しても目の前に存在するからな、しばらくして気にもしなくなったよ」
その反応分かるぜ、と共感を表す亜森。
取り敢えず、胡桃の疑問に答えるために、Pip-Boyの簡単な説明を始めた。
「こいつはPip-Boy。連邦にいた頃、将軍がとあるVault……戦前の核シェルターから調達してくれた代物で、核戦争前にある企業が開発した物らしい。
その企業は大体碌でもない研究開発をしていたんだが、それは置いとこう。とにかくこいつは、装備した人間の能力を数値化したり、物を収納したりする事が可能なんだ。他にも細々とした機能があるんだが、そんなに重要じゃないな。
軍用にも開発されていた経緯があるらしくて、特に弾薬や医療物資に最適化されてる。弾薬に関してはあるだけ詰め込んでも未だに限界が見えない。
恐ろしい話だぜ、こいつの中に数万発じゃ足りない銃弾や爆発物が詰まってるんだ」
(流石に、誘導機能付ミサイルランチャーがあるとは、言わない方がいい……よな?)
全てを語ってはいないが、大凡のことは伝えられたはずだ。
「大丈夫なんだなっ! 爆発なんてしないよな!?」
爆発物と聞いて、ざざっと亜森から距離を取る胡桃。
「問題ないよ。もし問題があったら、とうの昔に俺はミンチになってたはずだ」
その言葉にイマイチ信用出来ない胡桃は、恐る恐る尋ねた。
「もし、今後問題が起きたら?」
「神に祈ってくれ。といっても神様は俺を助けてくれることはついに無かったけど」
全く安心出来ない"有り難い助言"に、深くため息をつく。
亜森は気にしていないようで、1人調理を始めた。といっても、鍋にきれいな水と固形ルーを割り入れてお湯を沸かし、最後にインスタントヌードルを足す、栄養素は二の次の"悪い例の男の料理"であったが。
「君たちにやる分は別の鍋で作るから」
「あ、ああ。ゆっくりやってくれ」
二つ目の小ぶりな鍋を用意し始める亜森に、胡桃は力なく返事をして由紀と悠里の後を追う事にした。
扉を抜けて車にたどり着いた胡桃は、既に食事の準備を終えているらしい二人に声をかける。
二人の手元には、人数分のおにぎりと大きめの水筒が用意されているのが見えた。
「おーい、ふたりとも。あっちはもう少ししたら出来るらしいぜ」
黄昏時の空には、既に星がいくつか見え始めていた。
そんな中、車のドアを開けて座席に横座りしている二人は、胡桃の声に顔を上げた。
車内灯に照らされた二人の顔は対照的で、由紀は食事に期待しているのか楽しそうに笑顔であったが、悠里は一日外で活動した緊張感からか疲れた様子を見せている。
「りーさん、大丈夫か? 疲れたなら横になったら?」
「ん、大丈夫よ。食事を取れば元気も出てくると思うし」
「りーさん、運転してたもんね! 休んだほうがいいよー」
「ゆき、あたしだって運転してたじゃないか」
「シャベル君担いで走り回れるくるみちゃんは、体力はありあまってるでしょ?」
「ありあまってねーよっ! そんなこと言う口はこうしてやる!」
じゃれつくように遊ぶ二人に、悠里は一声断りを入れてシートの背もたれを倒し始める。
「じゃあ、私は亜森さんの準備ができるまで休んでおくわね」
「はーい、りーさんタオルケット持ってこようか?」
「お願いしていいかしら? 後ろのトランクに乗せてあるから」
了解でーす、と胡桃の手から脱出し、トランクルームのリアハッチを開けに行く。
「りーさん、今のうち少しでもいいから休んでくれよ? 夜には見張りだってやるんだから」
横になろうとする悠里に、胡桃は由紀に聞こえないように小声で話しかけた。
それに頷くと、胡桃に顔を寄せてヒソヒソと話し始める。
「分かってる、ゆきちゃんには頼めないものね」
「多分アモのやつも見張りを手伝ってくれるだろうけど」
「……、随分信用してるのね? まだ会ったばかりなのよ?」
信用するには早すぎやしないか?
怪訝な表情で、胡桃に対して疑問をぶつける。
「信用してるってほどじゃないんだけど、……ゆきのことに関しては協力してくれてるだろ?」
「そうだけど……」
由紀のことに関しては、悠里自身から言い出したことだったので言葉に詰まった。
悠里は、気が気でないのだ。武器を持った年上の男が、女子高生の集団に友好的に近づいてきたという事実は、疑心暗鬼を生み出すには十分だった。
そんな懸念に、明確な答えがあるわけではなかった胡桃は、"少しは安心材料に成るのでは?"と調理中の亜森の様子を簡単に伝えた。
「カレーがなんだって言ってたけど、変なもの入れてる様子も無かったし」
胡桃の言い分にハッとした。そこまで思い至っていなかった悠里は、自分よりも亜森を信用しているような態度を見せていたはずの胡桃の慎重な観察力に、正直頭が下がる思いだった。
「確かめるために少し残ってたの?」
「そんなに深く考えてたわけじゃなかったんだけど、結果として"お前を見ているぞ"って伝わってはいるんじゃないか?」
("ぴっぷぼーい"とかいうスマホもどきには驚いた)
一度にあれこれ伝えても混乱するだけだろう、胡桃の当初の予定では、亜森が話した内容を今夜にでも伝えるつもりだった。
しかしながら、それが胡桃自身も話半分以下にしか信じていないような代物では、ありのまま悠里に伝えたところで必要以上の不信感を植え付けるだけに終わるだろう。
不信感が亜森に対する攻撃的な態度として現れ続ければ、今のところは友好的な態度を取る彼とて、いつまでも我慢できるとは思えなかった。
我慢の限界がどういった形で現れるのか、胡桃には想像できない。いや、想像したくなかった。
(何であたしが、こんな気苦労を背負い込むハメになるんだ?)
考えたところで、答えが出るはずもなく。
亜森が言うように、そういう役回りなのかも知れないなぁと、胡桃は内心ため息をつくのであった。
「なら……少しは信用してもいいのかしら」
胡桃の思いを知ってか知らずか、悠里は僅かではあるものの、前向きに考えることにしたようだった。
「一度も銃を使って脅そうとしてこなかったし、少しくらいはいいんじゃないか?」
「そうね、疑ってばっかりも疲れるもの」
シートの背もたれに背中を預けたままの悠里は、"実際疲れちゃったわ"とトーンを落として呟いた。
その様子を見た胡桃は、少し明るい話題に変えようと、とりあえずパッと思いついた亜森がいることのメリットを口にする。
「それにだ、りーさん。銃を持ってるんだからあたしらの遠足も、もっと安全にやっていけると思うんだ」
「それが私たちに向かってこないかどうかを、心配してたんだけど」
「……そのつもりならもうやってると思う。だいたい、今更お互いに会ってないことには出来ないだろ?」
それを言われてしまっては、反論もできない。しかし、もう時計の針は戻せないのだ。
今となっては、学園生活部の"安全"と亜森という男が持つ"不確定の危険性"を天秤にかけて、判断しなければならない。
そして可能な限り、学園生活部側に天秤を傾ける必要がある。それが、胡桃なりの選択だった。
「そうよ、ね。今は私達以外にも生き残りがいたことを喜ばなくちゃ」
胡桃の言い分に頷くように、悠里は瞼を閉じた。
「それがいいさ、もしかしたらもっといるかもしれないだろ? 可能性がゼロじゃなくなったんだ、期待できるさ」
胡桃なりの励ましに、小さく頷く。ひとまず遠足中は疑問点を脇に置いておこう、それを解消するには学校に戻ってからでも遅くはないはずだ。
悠里は前向きに考えることにして、ようやく休むことにした。
そこにタオルケットを手に、由紀が戻ってきた。
「奥のほうに仕舞ってあったから時間かかっちゃった、りーさん寝ちゃった?」
「ああ、それかけてあたしらは静かにしてようぜ」
「うん」
由紀はタオルケットを悠里にかけてあげると、自身も後部座席に乗り込んで静かにドアを閉めた。
時間が来るまで、悠里の側にいるつもりのようだ。
それを見届けた胡桃は、そのまま車に背を預けるようにして、星が見えつつある空を見上げた。
しばらくして、準備ができた亜森に呼ばれた3人はガソリンスタンドの休憩室へ移動した。
学校を出発する頃には予定してなかった、今の世の中では貴重となってしまった暖かい食事を、学園生活部の3人は新たな生存者である亜森と共にするのだった。
「具のないカレーって何ていうかこう残念だよな、なんか」
「和風出汁の粉末も入れたから、蕎麦屋のカレーうどん風にはなってるだろ。いい加減にしろ」
「(蕎麦屋ならカレーそばにしとけよ、そこは)」
「ふふふ」
「うどん欲しくなるねー。ねぇりーさん、学校に帰ったらカレーうどんにしない?」
やいのやいのと、初めての食事会にしては楽しい時間を過ごした面々は、それぞれ食事の片付けを行い、明日に向けて休む準備を初めた。
先に片付けが終わった胡桃は、悠里と由紀に先に車に行っておくように一言断りを入れ、亜森に話しかけた。
「なぁ、アモ。夜の間の見張りのことと、明日あたしらが行く予定のモールについてなんだけど」
「おう、寝袋取り出すからちょっと待ってくれ」
Pip-Boyからかなり使い古した様子の寝袋を取り出し、3人が並んで座っていたソファーに広げる。これが今日の亜森の寝床のようだ。
その様子を見ている胡桃は、もう驚くことを諦めたようで何も言わなかった。
「それで、見張りと明日のことって?」
「見張りについては、あたしとりーさんで順番に見張るつもりだったんだけど。それにアモも参加して欲しい」
「もちろんだ、当然協力するよ」
任せな、そういうように大きく頷いて、ホルスターの10mmピストルに手を添える。
「ありがと、そこんとこは頼りにするぜ」
「もう一つの、明日行く予定のモールの方は?」
亜森の疑問に、遠足の最終目的地であるショッピングモール『リバーシティ・トロン』に向かう予定であることを告げた。
「ああ、朝起きて早い内にこのガソリンスタンドで給油してから、ショッピングモールの方に向かうつもりなんだ。でも、あたしは電気が通ってないスタンドで給油する方法が全く分からない」
「だいぶ前にテレビの特集か何かで、災害が起きてから停電になっても手動で給油する方法があるってやってたのは知ってるんだけど」
「なるほど、それを知らないかってこと?」
「そうだよ。アモ、知ってる?」
胡桃の問いかけに、亜森はある程度確信を持って答えた。
「いや俺も知らないけど、こういうのは大抵マニュアルがあるはずなんだ」
「じゃあ、そいつを探せば」
「給油が、できる」
「よし! それじゃ、最初アモはそのマニュアルを探してくれ。あたしらの方は、車で見張りをしてるから」
「いいぞ、期待しててくれ。ああそれと、見張りにはコイツを使ってみてくれるか」
亜森が新たにPip-Boyを操作して、金属製で黒い筒状の物体を取り出し胡桃に手渡した。
「なんだこれ? 望遠鏡か?」
「それは暗視スコープ。予備の部品として色々と溜め込んでいるんだけど、その中の一つなんだ」
しげしげと角度を変えつつ眺める胡桃。
片側から覗き込むと、予想以上の明るさに驚く。
「へぇ、これがねぇ。……うわっ、眩しい! 全部緑色だ」
「ランタンの明かりで屋内は明るいからね、光が強すぎるところや昼の間は覗かないようにしてくれ」
暗視スコープを目から外し、便利な物があるなと感心する。
「分かった、これがあれば暗闇でも危険を見逃したりしないな」
「過信はするなよ?」
「分かってる、任せとけ」
意気揚々と出て行く胡桃を見送り、ランタンの揺れる灯りに照らされた事務所兼休憩室を見渡す。
前持って確認した時は、備え付けられた書類棚や事務用デスクは責任者の管理が徹底していたのか、全て鍵がかかっていた。
「さて、……ロックピックは将軍ほど経験がないんだけど、やるしかないか」
亜森は、ぼやきながらヘアピンとマイナスドライバーを取り出し、胡桃達が交代で呼びにくるまで、全ての鍵穴と格闘することになる。
結局、マニュアルが見つかったのは最後の鍵がかかっていた引き出しの奥で、翌朝寝不足気味だった亜森は一時間ほど出発を遅らせたのだった。
・ゴミ拾い・大工仕事・不審者の対応(物理)
いずれもVault居住者の日常である。
将軍であるネイトには、これに異性コンパニオン達とのロマンスも含まれます。
え? 主人公にはロマンスは無し?
非モテにはハードルが高すぎやしませんかね?
・Pip-Boy
Falloutシリーズには欠かせない象徴的なキーアイテム。
将軍がVault88からゲットしてきたものを、亜森に渡したようだ。
Fallout4では現実のスマホとの連動機能を実装したが、日本語は知らない子状態。
Fallout Shelterの日本語化共々、待ってますよー。
・弾薬と医療品が最適化云々
実際、ゲーム難易度ノーマルでは重量が設定されてない。
この作品ではこういう設定でいきます。
・某狸型ロボット
タヌキじゃないよ、ネコだよ。
しかし誰も突っ込んでくれない模様。
・暗視スコープ
暗闇でも見通せる、素敵ですばらなアイテム。
なお作者は長距離用より中距離派。
この倍率がちょうどいいんです、はい。
・連邦の食事事情
大抵のものは放射能汚染あり。
Radアウェイは経口摂取か静脈注射か、プレイヤーによっては意見が別れるのではなかろうか。
・ダイヤモンドシティのパワーヌードル
初めて訪れたときのインパクトは忘れられない。
なお、良くミニニュークをプレゼントされる模様。
一発なら誤射でしょう? へーきへーき。
・"ガソリンスタンドでランタン使うとか常識ないの?馬鹿なの死ぬの?"
実際引火の危険性が高いのは、給油中の燃料注ぎ口か、燃料タンクの通気口か。
どちらもガソリンの気化ガスの濃度が高い空間の場合。
数ヶ月も営業していないようなスタンドの休憩室なら、まぁ大丈夫ではないか。
現実で同じことをやったら?
フィクションと現実を混同するようなやつは、危険物や火を扱う資格はない。
・ロックピック
将軍にかかれば、鍵なんて無いも同然。
主人公?
練習はしたよ、練習は。
・遠足の最終目的地ショッピングモール『リバーシティ・トロン』
二万文字超えたけど、まだ日付は超えてないんだ。
もうすこし待ってね。