Fate/knight of sacrifice 作:カメリア
物書き初心者による処女作です。
ぐだぐだとした文章で、安定しない口調や内容になっていると思いますが、楽しんでくだされば嬉しいです。
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少女がいたのは森の中だった。
木々が茂り、太陽の光が届かぬ魔の森。森の最奥には唯一光の射し込む夢のように美しく神秘的な空間が存在していた。其処には清らかな泉が湧いており、その中央には泉の底から生える一際大きな大樹。
うら若きその乙女はその大樹に寄りかかるように、
眠っているかのように瞼を閉ざし、大樹に寄りかかる少女。膝下まで泉の水に沈んでいる彼女は、彼女がまるでこの空間を支配しているかのように錯覚させる
……永い時間が過ぎていたような気がする。
いつのまにか意識を手放していたらしい。先程までは夕日で森が黄昏色に染まっていたのに、いまは東の空から太陽が顔を見せている。自覚というものはあまり無いが、この森で一夜を過ごしたようだ。
ふと、少女のことが気になり其方に顔を向ける。ここからは少し遠い大樹の泉は何故か消えており、其処にはただ茂る草木と大樹。それから、穏やかな微笑みを浮かべたその少女が傍らに立っていた。……目が、合った。
夜空の闇のように美しい碧の瞳。すべてを見透かすかのようなその瞳には自らの領域に踏み込んだであろう者に対しての確かな警戒心が映り込んでいる。朝日に照らされる金砂のように綺麗な髪は、月光のように淡い光を纏っているかのと思える美しさであった。微笑むその顔立ちは美の女神に愛されたとしか思えぬ程整っており、すらりとした身体と手足は雪のように白い。
……美しい。
例えるのであれば夜と月の具現化したかのような儚い乙女。あろうことかこの俺が見惚れてしまった、と男はその乙女を手に入れたいと思考した。触れれば壊れてしまうかのような儚く美しい乙女。故に目を逸らせば少女が消えてしまうかのような気がして、目が逸らせなかった。
「……あなたは、だれ」
時が止まったかのようなその空間に終わりを齎したのは凛とした少女の声。
警戒心を含んでいたその視線はいつの間にか拒絶へと変わっていた。
その問いに何も答えないでいた。
怖気付いた訳でも恐怖した訳でも無い。ただ、相手側の出方と反応を伺っているだけだ。
ふと、少女が何かを口にした。経験した事がある者は咄嗟にわかってしまう。
一瞬の事である筈なのに、すぐさま目を開くとそこにあのうら若き乙女の姿は跡形も無くなっていた。
……ただ、何処からか聞こえる美しい歌が森に木霊していた。
◆ ◆ ◆
少女はただ純粋で素直なただの町娘であった。
たとえその出生が普通ではなく、とある目的の為に操作された遺伝子だとしてもその少女にはあまり関係が無かったのだ。何故なら、少女が望むのはただひとつの未来なのだから。
少女の住む町の南西部に位置する場所にはあまり人の近寄らない森があった。元は何も無い更地だったのだが、いつのまにか木々の生い茂る光が射さぬ森があったのだ。
一度踏み入れてしまえば、運が良く無い限り二度とは森から出る事が出来ないと囁かれる不気味な森。夜な夜な美しい歌声が聞こえてくるとも噂されている。
人々はその森を"魔の森"と呼んでいた。
少女は好奇心旺盛であった。加えて勇敢でもあったといえよう。朝日の見えぬうちにそっと家を抜け出し、秋の肌寒い風を防ぐ為の防寒着をしっかりと着込んで、腰には愛用の剣。愛馬の世話を済ませてから愛馬の背に跨り、家で眠る二人には気付かれぬようにその森へと足を進めた。
森は少し遠くにあり、少女が森の入り口に着くまでには太陽が顔を出しきっていた。森の入り口に愛馬を残し、宛てもなく歩みを進める。
宛てが無くとも、何故か道は
どのくらい歩いたのだろうか。
不気味な雰囲気を醸し出していた大きな木々はいつのまにか美しい雰囲気の樹木になっており、暗かった森に光が射し込んだ。
光へと歩みを進める。
……そこは、美しい花が咲き乱れる開けた空間であった。
赤、白、黄色、橙、ピンク、紫……様々な色彩の花が咲き乱れる花畑。一瞬幻影では無いのかと目を疑ってしまうほどに素晴らしく美しい空間であったのだ。
そして、その空間には自分以外の存在がいる事も少女は気がついていた。花畑にしゃがみ込み、花輪を作っている自分と同じ年代に見える少女。歩み寄ると下を向いていた彼女は顔を上げて微笑みを浮かべる。
自分と同じ金の髪は自分よりも遥かに長く、白く繊細なその肌は穢れも何も知らぬ美しさを持っていた。碧色の瞳は潤い、自分の姿が映り込んでいるのが見える。妖精、精霊。自分の師である男が話していた美しく麗しいそのような存在は、このようなものを示すのではないかと思う程に人間離れした少女は暫く見つめあった後にすっと立ち上がる。
「はじめまして。それともこんにちはかな……アルトリア」
「……っ。貴女は誰ですか」
自分の名前を知っている事に驚いた。記憶が正しければ知り合いにこのような少女はおらず、何故私の名前を知っているのか驚いたのだ。
しかし私の問いには答えずに、少女は踵を返し去って行く。最後に「貴女の未来に祝福があることを願うよ」と残し、その姿は透けるように消えていった。まさか、ゴースト。幽霊の類だったのか……っ!?
直後に吹いた強い風に目を瞑ると、そこは森の入り口だった。愛馬が私に近寄り、頬を舐める。
……夢だったのだろうか?
でも、最後に涙を流していたあの表情は鮮明に脳に焼き付いており、夢だとは思えなかった。
「誰かに呼ばれている気がしたからです」
後に激怒する二人に少女はそう言った。それ以上は何も語らずに、ただ微笑みをひとつ浮かべていた。
◆ ◆ ◆
「ごめんね。貴方の元へはまだ届かないみたいなんだ」
少女は美しい雫でその頬を濡らした。
まだ、その場所へは届かない。
◆ ◆ ◆
神と人の血を引く暴君と呼ばれし王は、滅びゆく未来を知りながらもただその栄光を遺す為にその生命を費やした。
竜と人の血を引く騎士王は、ただ緩やかな終わりと民達の幸せを願い、理想の王として生きることを望みその生命を費やした。
……生まれながらにして神に捧げられ、生まれながらにして王として生きなければならない智慧者は、自由など無かった。その命は、自分ではない誰かの意思で費やされていった。
例えその結末が幸せで無くとも、過去は変えられないのだから悔やみようがない。悔やむだけ無駄である。
ただ、現在は。
未来は、無数に存在している。未来はひとつではない。未来は……変えられるのだ。