黒澤家の長男です。   作:カイザウルス

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※今回の話は鞠莉ちゃんファンにとっては不快になるかもしれませんので、ご注意下さい。


第9話

練習終わり、久々の部活だったが何だかんだついていけた。

1年生たちはもう立ち上がる事も出来ていなかった。

さてもう夕暮れ時だし、早く帰ろう……。

自転車に乗り込み、校門から出ようとしたが何だか黒塗りの車止まっており、近くには執事のような人が…。

執事の人は俺に気がつき話しかけてくる。

 

「お待ちしておりました。黒澤様」

「は…はぁ?」

 

何だ?何かやらかしたのか俺。

すると執事は車の扉を開けて向かい入れる。

 

「どうぞ」

「…いや、俺自転車あるし」

「他の者が自転車をご自宅にお届けしますので」

「そうですか、それなら…ってならないですよ」

 

本当に何なのだ?全然思い当たる節がない。

すると次の瞬間。

 

「シャイニー☆」

「うわぁ!!」

 

後ろから急に押されそのまま車の中へ。

そして、勢い良くドアが閉まり車はそのまま進んだ。

考えが追いつかなかったが、俺の背中を押した犯人を一言文句を言ってやろうと振り向いた。

するとそこには信じられない人物が……。

 

「チャオー☆瑠璃!久しぶり!」

「え?…………鞠莉姉?」

 

小原 鞠莉。

ダイヤと松浦先輩と同い年で、幼い頃からよく知っている女の子だ。

俺にとっては松浦先輩と同様に、もう1人の姉のような存在だ。

 

「すっかり高校生らしくなって、大きくなったじゃない?」

「…」

 

久々に会えて嬉しそうに話す鞠莉姉。

しかし…

 

「何だかんだ2年経ってるものね!」

「……」

 

俺の中には

 

「久々に帰ってきて、ビックリしたわ!」

「………」

 

彼女に対して

 

「だからただいま!」

「…………」

 

喜びとは真逆の

 

「…瑠璃?」

「――――ッ!!」

 

負の感情しか湧かなかった。

 

「何で内浦に戻って来てるんだよ!!」

「…え?」

 

俺の中の負の感情がグルグル回る。

鞠莉姉は驚いている様子だ。

 

「俺がアンタにおかえりって言いながらニコやかに話すと思ったのか?ふざけんな!!」

「…そう…よね」

 

2年前に裏切られた傷は簡単には癒えない。

それにこの人は、姉ちゃんを泣かした。

 

「急にAqoursアクアも辞めて…アンタが姉ちゃんを泣かした」

 

頭に中に出てくるのは、衣装を持ってすすり泣く姉ちゃんの姿だ。

鞠莉姉は黙ったまま聞いている。

 

「何も言わずに内浦から出て行って……今さら何なんだよ」

「…それは…」

「事実だろうが!!」

 

そう言うと鞠莉姉は押し黙ってしまった。

 

「アンタの言い分は聞きたくない!これ以上俺に関わらないでくれ」

「――――ッ!?」

 

車が止まり、窓から外を確認すると家の前だ。

流石は車だ、自転車に比べればやはり早い。

ドアが開かれて外に出る。

 

「送って頂きありがとうございました。」

 

一言鞠莉姉に…………いや、小原先輩に挨拶する。

そして

 

「もう、俺の前に現れないで下さい…さようなら」

 

俺はそう言い残してその場を後にした。

小原先輩の頬には、目から流れた涙が見えたが俺には関係ない。

俺は車に背を向け、玄関を開けてそのまま自分の部屋に向かった。

自分の行き場のない感情をぶつけるように鞄を投げる。

枕に顔を埋め深呼吸する。

小原先輩が内浦に帰って来ている、ダイヤと松浦先輩は知っているのか?色々と考えがまとまらない時だった。

携帯がなっている事に気付き、画面を見ると曜からだ。

 

「はい?」

「ヨーソロー!」

 

うるさい。

耳元にいきなり大声を食らってしまい、頭がキーンとなる。

 

「なんだ?」

「部活お疲れさま!新入生達はどう?」

「ああ…中々面白い奴らが」

 

そういいながら今日1日の出来事を話す。

曜からは、桜内が作曲だけではなくスクールアイドルもやる事や、今度浦女の体育館でライブをするなどの近況報告を聞いた。

気づいたら30分ほど話していたようだ。

 

「ああ!それでねグループ名も決めたんだよ!!」

「それは良かった。それで?グループ名は?」

「Aqoursアクア!」

「…………は?」

「だから…Aqoursアクアにしたの!」

 

偶然か?あのAqoursなのか?俺の頭にとある3人が楽しそうに踊る姿が横切る。

彼女らも心のそこから笑顔だった。

そんな笑顔に俺は惹かれていき、俺に出来る手伝いを何度もした。

しかし、それが全部水の泡となって消えた。

その3人はもういないし、憧れた3人はもういない。

 

「瑠璃くん?」

「!!…ああすまん、そうかAqoursか…いい名前だと思うよ」

「でしょ?私たちも気に入っているんだ~!」

 

嬉しそうに話す曜とは違い、俺は感情が織り交ざっていく。

しかし、その感情を曜にぶつけるのは違う。

 

「そうか頑張ってくれ、応援する」

「うん!ありがと!…それじゃ、電話ありがとね!おやすみ!」

「ああ、おやすみ」

 

携帯を切って枕に顔を埋める。

今日は本当によく2年前の記憶を思い出す日だ。

ただただ行き場のない感情を飲み込み、俺は眠りについた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

次の日の朝、体力作りの一環で砂浜を走った。

というよりどちらかと言うとリフレッシュに近いのかもしれない。

昨日の出来事から胸に重りがあるように重い。

疲れた体を休ませる為、その場に座る。

そんな時に遠くから声が聞こえた。

 

「1.2.1.2」

「ん?」

 

声の方を見ると、曜に高海に桜内がダンスのステップの練習をしている。

その顔は笑顔で、かつてのAqoursを思い出す。

………あ~ダメだ、引きずってるな…あれから2年なのに。

過去を引きずる自分が嫌になる。

 

「帰ろ。帰って風呂入って部活行こう」

 

3人にバレないように帰ろうと動いた瞬間。

 

「あ!ルーくんだ!!」

 

俺を見つけるやいなや手を振っている高海。

見つかったなら仕方がない、方向転換し渋々高海たちの所歩く。

 

「おはよ!ルーくん!」

「はい、おはよ」

「瑠璃くんおはヨーソロー!!」

「はい、おはよ」

「おはよう黒澤くん」

「おはよう桜内、練習頑張ってるみたいだな」

「「なんで私たちは適当なの!!」」

 

む…バレてしまったらしい。

まぁそんな事はどうでもいいだろう。

 

「練習か?」

「うん!曲もいいものができそうなんだ!」

「おお、それは凄いな」

 

作詞と作曲はついこの間の事じゃないか?もう出来上がりそうなのは凄いな。

…それくらいスクールアイドルに本気ってことだよな。

俺は何処かで彼女たちのアイドル活動を応援していなかったんだと思う。

どうせ頑張っても、直ぐに諦める…あの頃のAqoursに勝てるはずがないと思いながら…。

 

「なぁ高海、ずっと気になってたんだけど…なんでスクールアイドルをやりたいんだ?」

「……“普通“の私でもμ'sみたいに輝きたいからだよ!」

「――――!!」

 

彼女は笑顔でそう言った。

いい加減過去の話はもう辞めよう、Aqoursは彼女たちのだ。

自分で過去に終止符を押し彼女たちを見る。

 

「お前は“普通”じゃないよ」

「え~!“普通”だよ!」

「“普通”だったらスクールアイドルって考えは思いつかないだろ」

「え~~!!」

 

何処か胸の重りが取れたように感じた。

とりあえず今はこれでいいだろう。

 

「3人とも頑張れ!応援する」

 

俺は笑って言った。

3人は顔を見合わせて頷く。

この3人なら跡を継ぐ事ができる。

だったら昔からのファンとして出来ることは、見守り応援することだ。

朝に見ていた海は、更に綺麗に見えたような気がした。

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