黒澤家の長男です。   作:カイザウルス

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第10話

本日は部活の自主練日。

うちでは1週間に1度は自主練日を設けている。

そんな俺も軽く泳ぎ、今は運動後のストレッチの真っ最中だ。

今日は、Aqoursに取って大事な日だ。

どうやら理事長がAqoursの活動を認めるには、ライブをして浦女の体育館を満員にするのが条件のようで、今日がそのライブの日だ。

そういえば理事長って誰だろう。

ストレッチも終わり、更衣室に向かう途中。

 

「あ、黒澤先輩」

「げ…黒澤…」

「おお蛍に……誰だっけ?モブ?」

「峯岸 珊瑚ミネギシ サンゴです!」

 

そうそう!珊瑚だ!珍しい名前の奴だ。

とりあえず俺は珊瑚の額を鷲掴みし力を込める。

 

「それで?…げっとはなんだ?」

「痛痛痛痛ッ!!すみません!すみません!」

「たく…そんなに俺が嫌いか?」

「大っ嫌いですよ!!」

 

こいつは思ったことを正直に答えてしまう性格で、よく敵を作るらしい。

しかし、気持ちを隠さずに答える奴は嫌いじゃない。

イジリがいがあるし。

 

「それで?今日は早いなお前ら」

「今日は浦女でスクールアイドルのライブがあるみたいなので、行ってみようと思っています」

「…俺は興味ないけどこいつに誘われました」

 

蛍はどうやらスクールアイドルオタクのようで、よく更衣室で熱く語る姿をよく見ている。

そしてそんな蛍の話を聞いたりしているのが、珊瑚だったりする。

 

「じゃあっちで会うかもな」

「黒澤先輩もスクールアイドル好きなんですか!?」

「違う違う、Aqoursは俺の友達がやっていて誘われたんだ」

「マジで!?」

 

ん?

俺と蛍の会話に急に入ってきた珊瑚。

すると蛍がニヤリと笑いながら口を開いた。

 

「こいつ興味ないっていいながら、Aqoursのチラシ貰って来ていましたよ?」

「お前!それは言わない約束だろ!!」

「へ~~」

「ニヤニヤするな!!」

 

何だかかなり仲良しの様子の2人だ。

更にこいつらは現在の1年の中では、トップを争うほどの実力もある。

俺の同期の数人もこいつらに抜かれている。

 

「柳石!俺は先に行ってるぞ!!」

 

少し不貞腐れながらその場を後にした。

蛍も一礼して珊瑚についていく、そんな姿を見て頬が緩む。

さてと、さっさと着替えて浦女に行くとしよう。

俺は軽くシャワーで汗を流し、着替えて浦女の体育館へ向かう。

途中差し入れで飲み物も買っていく事にしよう。

曜から体育館のとある部屋にいると連絡があり、その部屋に向かう。

Aqoursと書かれた紙が扉に張られている部屋を見つけた。

 

「お~い、入るぞ?」

 

ドアノブに手をかけ、扉を開くと。

 

「わぁ!ルーくん!?」

「え!?瑠璃くん!?」

「黒澤くん!?」

 

下着姿のAqoursの3人が目の前に広がっていた。

おっと…着替え中でしたか…。

女子の下着姿を不注意とはいえ見てしまった俺は、この後に何が起こるか瞬時に把握。

 

「「「ッ!?き」」」

「ちょっと待った!!!」

 

叫びそうなところを止める。

言い訳を考える為に、全力で脳を回転させ答えを見つける。

 

「確かに見た俺も悪い!…しかし!ドアに着替え中という貼り紙を貼り付けて置くべきじゃないか?3人とも……だが見たのは変わりない……という事で!!」

 

ネクタイを緩めワイシャツを脱ぎ、水泳部の過酷なトレーニングで鍛え抜かれた上半身をさらけ出す。

ついでにチャームポイントは…上腕三頭筋だ。

 

「俺も脱ぐからおあいこでどうだろうか!?」

「「「出てって!!!」」」

 

3人に怒鳴られ出ていきました。

なにが、俺も脱ぐからおおあいこでどうだろうか?…だ。

思ってもいないことを口走ってしまった。

その後3人が着替え終わるのを待ち、全力で土下座した。

 

「ほんっっっとぉぉぉに、すみませんでした!!」

「はははは…」

「……」

 

曜は苦笑いしながら頬を書いているが、桜内に関しては軽蔑する目で俺を見ている。

しかし高海は違った。

 

「ほら、私たちも紙貼ってなかったしね!ね!曜ちゃん!」

「そ…そうだね!ほら梨子ちゃんも」

「…ノックはしてほしかった…」

 

本当にその通りです!!何故俺はノックしなかったのかが、わからない。

次から気を付けよう。

 

「すみませんでした」

「……次から気を付けて」

「ありがとうございます!」

 

何とか許しをいただき、顔を上げる。

今度はみんなしっかりと衣装を着ていた。

 

「3人とも似合ってるよ」

「でしょ~?曜ちゃんが作ったんだ!」

 

昔から裁縫が得意だった事は、俺も知っているけど、衣装まで作るとは凄すぎる。

 

「やるじゃん」

「それほどでも~~」

 

えへへっと笑みを浮かべ、ほんのり頬を赤くする曜。

すると高海が口を開いた。

 

「それで?ルーくんは何しに来たの?」

「そうそう…これ差し入れ」

「みかんジュースだ!」

 

小さめのパックに入っているジュースを渡して話を進める。

 

「緊張はしているかなって思って見に来た」

「そっか!ありがと!」

 

そう言うと高海は鼻歌を歌いながらライブの準備を始めている。

意外とこういう事には強いようだ。

しかし、それと打って変わり桜内は緊張している様子だ。

 

「桜内は緊張中…だよな」

「発表会とは違う空気だし、緊張するわよ」

 

発表会?あ~ピアノか、まぁ同じ音楽関係でも種類は違うし、そんなものなのだろう。

そんな中で俺はある事を思い出し話す。

 

「失敗するって思うから緊張するんだよ」

「え?」

「俺も最初の水泳の大会は緊張したけど、いまは緊張しないんだよ。なんでだと思う?」

「…慣れたからじゃないの?」

 

確かにそれもあるだろうけど、俺が言いたいのはそうじゃない。

 

「俺は失敗しないし、いつも通りにやるって心掛けているからだ」

「いつも通り?」

「桜内だってたくさん練習しただろ?だから大丈夫だ」

 

俺は親指を立て笑顔で話した。

すると桜内は深呼吸し、こちらに目を合わせた。

 

「ありがと、少し安心したわ」

「それは良かった!衣装も似合って可愛いし、自信持て」

「……黒澤くんって自覚ないの?」

「え?何が?」

「はぁ…ありがと!練習通りに頑張るわ」

 

自覚?…ああ可愛いってのか、あんまり意識しなかった。

意識なく言うのも気を付けた方がいいのだろうか?っと考えていると。

桜内は緊張が少し解けた様子だ。

ついでに曜の様子は……何かすげぇこっち見ている。

 

「何だよ?」

「別に~、私には一言ないの?」

 

一言?曜には必要ないだろう……と思ったが曜にはアレだろう。

俺は右手の拳を前に出した。

 

「頑張れ!会場で見てるからな」

「!!…うん!任せて!」

 

そう言うと曜は、自分の拳を俺に合わせて元気よく頷く。

この一連の行動は、曜のルーティンのようなものだ。

飛び込みの大会の時や、水泳の大会なんかでやっていることだ。

曜は満足したのか、ステージを見に行こうとしていた桜内と高海についていく。

あ、そうだ。

 

「衣装似合ってて可愛いぞ!」

「わざわざ言わなくていいよ!ありがと!」

 

曜をおちょくって見たが、成功のようだ。

その証拠に曜の耳が、少し赤くなっているのが見えた。

3人がステージの確認をしに行ったのを見送り、俺は3人のライブが見やすい場所へと向かった。

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