黒澤家の長男です。   作:カイザウルス

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第14話

 

剛先輩と話し合い数日。

授業が終わり、部活に行こうと思ったときに、ある噂が浦男で流れていた。

 

「浦女が統廃合?」

「ああ、何か浦女にいる彼女から連絡きてな…ほら」

 

友人が俺に携帯画面を見してきた。

俺は昔の憧れた3人を思い出しながら考えた。

あの3人も廃校を阻止しようと、Aqoursを作ったからな。

 

「とりあえず教えてくれてありがと」

「おうよ!んじゃ部活頑張れよ」

 

統廃合を聞いて今のAqoursはどう思うのだろうか?きっと驚いていることだろう。

さて、さっさと部活にいくとしよう。

今日の部活は騒がしくなる。

何たって今日はメンバー発表の日だ。

俺は部室に行き、着替えてプールへ。

何時も通りに体操をしていると、剛先輩が紙を持って入ってきた。

 

「集合!」

「「「はい!!!」」」

 

剛先輩の前に整列する。

剛先輩はみんながいるのを確認してから、口を開いた。

 

「もうすぐ東京遠征だ、その際のメンバーを発表する。まず1年から、珊瑚 個メ!」

「はい!!」

 

呼ばれた珊瑚が元気よく返事をする。

隣にいる蛍が嬉しそうに珊瑚に拍手を送っている。

 

「次2年、瑠璃 100mと200mフリー!」

「はい!」

 

他の同期たち次々と呼ばれていく。

そして次は3年。

 

「3年、銀次100mと200mバック!俺が100mと200mのバタフライ…」

 

3年生も続々と呼ばれ最後のメドレーのメンバー発表。

 

「次にメドレーなのだが……今回選んだメンバーに付いてだが、悩みに悩んで俺が今いっしょに泳ぎたいと思った奴らを入れた。よし、発表するぞ!メドレー、バック 銀次」

「は~い」

 

そう言うと銀次先輩は剛先輩の隣へ。

その表情はニコニコしている。

 

「よろしく頼む」

「ん、任せて頂戴」

「次、ブレ 蛍」

 

その瞬間周りがざわめき出した。

個人種目にも選ばれていない1年生が3年生最後のメドレーに選ばれるとは思っていなかっただろう。

蛍も困惑している。

 

「どうした蛍?前に出ろ」

「え?いや…けど」

 

まだざわめいている周りを、不安そうに見る蛍。

仕方がない…周りの奴らを黙らせるために、一言言ってやろうとした次の瞬間。

 

「ギャーギャーうるさいっすよ先輩方」

 

蛍の隣にいた珊瑚が口を開いた。

 

「こいつはアイドルオタクだし、弱弱しいし、体力も並ほど……正直俺もこいつが選ばれたのは不快です」

 

周りの奴らも徐々に珊瑚の言った“不快”に同意していく。

そしてそんな様子をジッと見ている剛先輩。

しかし、珊瑚の話はまだ終わっていない。

 

「けど、先輩方よりこいつは努力しています」

 

同意した奴らがピタッと止まった。

 

「朝、誰よりも速くプールで泳いでいるし、部活後先輩方の自主練の為にコースを開けてスクールでこいつ泳いでいるの、見たこといる奴いますか?いないっすよね?見てない癖に、ギャーギャー言うのは……浦男としてどうですか?」

 

シーンっと静まり返る。

そう蛍は見せないだけで、誰よりも努力家だ。

俺もそれを知ったのはここ最近で、剛先輩に蛍を推薦したのもそれが理由だ。

続けて珊瑚は、蛍を見て口を開いた。

 

「お前もオドオドするな!ここにいる先輩方より剛先輩が泳ぎたいって思わせて、選ばれたんだろ!胸を張れバカ!!」

 

すると泣きそうな表情をグッと堪え剛先輩を見る。

 

「お前には拒否権はある。どうだ?俺と泳いでくれるか?」

「ッ!?はい!!」

 

蛍は前に出た。

珊瑚はフンっと鼻を鳴らした。

次にっと剛先輩が続ける。

 

「バッタは俺で、フリー 瑠璃」

「はい!」

 

やはり悔しそうにする先輩方がいる。

けど安心して下さい先輩方、俺は優勝トロフィーを取りに行きます。

俺は心に誓い前に出た。

その後、メンバー発表は終わりを迎えいつも通りに練習が始まった。

そして練習が終わり、トイレへ。

その理由は簡単だ。

 

「ッ!?……黒澤…先輩……」

「今回は呼び捨てじゃないな」

 

珊瑚がトイレで涙を流していた。

俺はそれを尻目に便所へ。

 

「笑いたければ笑えよ」

「敬語が抜けているけど……今日は許してやろう」

 

便所をすまして、手を洗う。

いまだに顔を腫らして涙をこらえようとしている。

 

「来年さ…俺が部長になる可能性が高いんだよ」

「……」

「この1年間で俺がお前と泳ぎたいと思わせてくれよ」

「――ッ!?…うるせぇ!偉そうにすんな!」

 

顔の涙を拭きそのまま出口に向かう珊瑚。

途中で止まり、一言俺に言い残していった。

その一言に少し顔が緩んだ。

 

「はは。見てろよ…か」

 

相変わらず負けず嫌いで可愛げのない後輩だ。

俺はそう考える珊瑚の後をついていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

次の日、今日は海開きの為に内浦の人達が集まって砂浜を掃除する。

この行事は毎年行っている。

そんな俺も現在、水泳部のジャージを着てゴミ袋を片手に掃除をしている。

隣には曜がせっせとゴミを拾っている。

 

「どうだ曜、集まったか?」

「うん。元々ゴミが少ない砂浜だし、すぐ終わりそうだね!」

 

朝から相変わらず元気な曜。

お互い最近会っていなかったため、久々な感じがする。

 

「そう言えば曜」

「ん~?」

「昨日、インターハイのメドレーリレーに選ばれた」

 

昨日選ばれた事を報告。

しかし、反応がない。

聞こえなかったと思い曜の方向に振り向くと、笑顔でこちらを見ている曜がいた。

 

「な…なに?」

「いや~良かったね~!去年は選ばれなくてしょげてたからさ~!」

 

曜は俺の背中をバシバシ叩きながら話し始める。

 

「別にしょげてないし」

「いやいや!俺の方が速いって言ってたじゃん!」

 

去年の俺はフリーの100mしか出場出来なかった。

リレーにも出たかったけど、去年選ばれたのは当時の3年だった。

今考えれば仕方がないことだと納得ができる。

 

「けど、やったね!おめでとう!」

「!…ああ、ありがと」

 

曜は笑顔で賞賛してくれた。

照れくさいが、俺は曜の笑顔が好きだ。

そして曜は遠くにいた、千歌と桜内を見つけたようで2人の元へ。

俺はというと、続きのゴミ拾いを始めようと思った矢先だった。

 

「おはよう。瑠璃」

「うお!?ビックリした…先輩いたんで……何でパジャマ?あとナイトキャップもかぶっているし」

 

後ろから、白の水玉模様のパジャマ姿をした剛先輩がそこにいた。

 

「パジャマのギャップが凄い」

「ん?ああ、俺はちゃんとパジャマを着ないと眠れないんだ。似たようなものをあと5着ほどある」

 

いやパジャマの説明は求めてないが、ギャップが強すぎる。

きっと遠征でも持ってくるだろう。

 

「先輩1人で来たんですか?」

「ああ、本当は幼馴染と行く予定だったんだけどな。先に行ってしまったみたいでな」

 

剛先輩は、あそこにいるっと指を向けた所には松浦先輩にダイヤ…それと小原先輩がいた。

え?幼馴染だったの?すると剛先輩は松浦先輩たちのもとへ。

正直、気まずいが付いていく。

 

「果南」

「ん?あ、剛…何でパジャマ?」

 

お互いに呼び捨てで呼び合う2人。

俺はダイヤと小原先輩と目が合ったが、軽く頭を下げた。

 

「うっかり着てきてしまった」

「ははは、剛らしいね」

「そう言えば果南、イルカは出たか?」

「イルカはまだかな?けどこの間はカメ見たよ」

「本当か?それは行かなくては…果南近いうちに遊びに行く」

「はいはい、ほんと海の生物好きだよね」

「ああ、1番シャチだ」

「知ってるよ。何年の付き合いだと思ってるの?」

「10年から先は覚えてない」

 

え?なにこれ?まったく会話に入る隙がない。

更に気のせいだろうか?剛センパイは基本無表情のため感情を読むのが難しいが、少し声のトーンが上がっているような気がする。

 

「剛さんと果南さんは、親同士の仲が良いみたいですわ」

 

ダイヤが近くによって話しだした。

ついでに小原先輩は、剛先輩と松浦先輩の会話をニコニコしながら見ている。

 

「剛先輩から幼馴染だって聞いたよ。ダイヤも剛先輩知ってるんだ」

「幼い頃に何度か会いましたわ。あんまり関わりはありませんでしたけど」

 

いまだに会話している2人が少し微笑ましく思う。

 

「あの!皆さん!」

 

ん?いきなり声がした。

声のする方に振り向くと、台に登って千歌が何かを呼びかけようとしている。

何をしているんだアイツは。

 

「私たち、浦の星女学院でスクールアイドルをやっているAqoursです!!」

 

千歌が大きな声でAqoursの紹介。

すると砂浜にいる人達が一斉に千歌の方に振り向く。

 

「私達は学校を残すために、ここに生徒をたくさん集めるために皆さんに協力して欲しい事があります!!」

 

そこには俺の知っている千歌の表情ではなく。

スクールアイドルAqoursのリーダー、高海千歌の表情だった。

 

「みんなの気持ちを形にするために!!!」

 

そこからのAqours行動は早かった。

内浦の人達に協力を求めて、スカイランタンの作成や衣装の作成。

更に千歌の働きに感動した剛先輩は、浦男水泳部の全員も協力した。

Aqoursと関わりが深い俺はというと。

 

「千歌、撮影に使ったカメラはどこ持っていけばいい?」

 

Aqoursの撮影の協力をした。

と言ってもカメラから合図を送ったり、スイッチを入れたり消したりと簡単なものだ。

そのカメラを何処にしまえばいいのかわからないから、千歌に聞いたのだが返事が全くない。

千歌は、綺麗な朝日を見ながら口を開いた。

 

「私、心の中でずっと叫んでた。助けてって、ここには“何もない”って…」

 

“何もない”内浦はどこにでもある“普通”の田舎だ。

“普通”がコンプレックスの千歌にとっては、この内浦も“普通”の1つだったのだろう。

 

「でも違ったんだ」

 

クルっとこちらに顔を向けた

 

「追いかけてみせるよ!ずっと!ずっと!この場所から始めよう、できるんだ!!」

 

その表情は何かに気づき、覚悟を決めた表情だ。

また一歩彼女たち…Aqoursは進んだのかもしれない。

 

「そう言えば」

「ん?」

「曲のタイトル聞いてないんだけど、タイトルは何?」

 

すると千歌は深く息を吸い込み高らかにタイトルを。

この内浦普通に生きるひとりひとりの思いを形にした、その曲のタイトルは……。

 

 

~夢で夜空を照らしたい

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