黒澤家の長男です。   作:カイザウルス

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第15話+小話

太陽がまだ顔を出してない時間帯に俺は目を覚ました。

いつもより荷物を多めに準備した、部活の鞄を持ち1階へ。

PV撮影から数日経過した今日は、東京遠征の日だ。

そしてなんと、あの時のAqoursのPV撮影は見事に大成功したようで、Aqoursは東京のスクールアイドルのイベントに参加する様だ。

そのため奇妙なことに今日、Aqoursも東京に向かうとルビィが言っていた。

何か軽く朝ごはんを食べようと思い、居間に向かうと

 

「おにぎり?」

 

“瑠璃”っと書かれた紙にラップしてあり、2つおにぎりが置いてある。

隣にはお湯を入れてできる味噌汁。

母さんだろうか…ありがたい。

 

「いただきます」

 

用意された味噌汁にお湯を入れて、おにぎりを2つ頬張る。

中身は梅とおかかだ。

しかし…。

 

「母さん塩加減間違えたか?少ししょっぱい」

 

せっかく作ってくれたおにぎりだ。

残さずいただき、味噌汁に喉を通した。

しっかりと手を合わせ。

 

「ごちそうさまでした」

 

お皿を流しに置き、東京に向うために黒澤家を出た。

学校に到着し、準備されているバスに乗り込み指定された席に座る。

そう言えば俺の隣は誰だろう?すると1人の1年が徐々に近づき、俺と目が合う。

 

「はぁぁ…最悪」

「そんないやそうな顔するなよ珊瑚」

 

俺の隣は珊瑚のようだ。

 

「何で黒澤さんが、隣なんだよ」

「仲が良いからだろ?」

「仲良くねぇよ!」

 

ムスっとした表情で俺の隣に座った。

あのメンバー発表以来、珊瑚は俺のことを“さん”付けで呼ぶようになった。

たまに敬語が抜けるが…距離は大分近くなった。

珊瑚は欠伸をしながら座る。

 

「朝は辛いか?」

「いや、友人から服のアドバイス頼まれて…ふぁ~……少し夜更かし」

「律儀な奴だな、男なんて黒ズボンと白シャツとかでいいだろ」

「いや、女子なんすよ」

「ああ…わからんな」

 

お洒落はよくわからない、俺自身興味がないというものがある。

もし何かあったら俺も珊瑚に頼もう。

 

「黒い羽着けだすし、白塗りにするし、着け爪長いしで散々っす」

 

黒い羽?白塗り?何それ怖。

駅とかにいたら絶対避けるわ。

再度欠伸をし、眠そうにしてる珊瑚。

 

「眠いなら寝た方がいいぞ」

「…なんで?」

 

俺は鞄から取り出したアイマスクを着けながら話した。

 

「体力ないとこの遠征ついていけないよ」

「…了解」

 

珊瑚は深く座り、眠りに入った。

俺もさっさと眠ることにしよう。

バスの揺れが心地よく、俺は直ぐに眠りに入った。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「え!?ルーくんも東京来てるの!?」

「うん、部活の遠征みたいだよ」

 

千歌ちゃんは少し興奮気味に答えた。

私たちAqoursは無事に東京の秋葉原に到着した。

各々観光したのちに、千歌ちゃんが行きたがっていた神社を見た後の出来事だった。

 

「もしかして明日のイベントに来るのかな?」

「部活で来ているから、難しいんじゃないかしら?」

 

千歌ちゃんが見に来てほしそうに、話したが梨子ちゃん言う通り難しいと思う。

するとヨハネこと……津島 善子ちゃんが思い出したかの様に口を開く。

 

「そう言えば、珊瑚も遠征だって言ってたわね」

「珊瑚??」

「ふ…あたしの最初のリトルデーモンよ」

 

ギランっとポーズを決めて話し出す。

善子ちゃん曰く、中学の知り合いで私の堕天使の能力を見破った男だそう。

すると花丸ちゃんが

 

「つまり堕天使モードで引かなかった、唯一の友達ってことであってるずら?」

「堕天使モードって何よ!!」

 

きっと善子ちゃんにとっては大事な友達何だろう。

みんな何だか見に行きたそうな状態に私は閃いた。

 

「それじゃ、瑠璃くんが泳いでる所行ってみる?」

「「「「「え?」」」」」

 

そこから私たちは、瑠璃くんの遠征先であるスポーツセンターに移動した。

去年の遠征と同じなら、出入りは自由だったはず。

 

「わ~!広いね~!」

「色んなスポーツの大会でも使われる施設みたいだよ!」

 

この施設はかなり広い。

有名選手も利用するぐらい

みんなは珍しそうに周りを見ながら、観客席に向かう。

観客席に続く扉を開くと大きな声が辺りを響かせた。

 

「お前ら気合いたんねぇえぞぉぉぉ!!!」

「腑抜けた泳ぎしてるんじゃねぇ!!」

「やる気ないなら帰れよ!!!」

 

相変わらず凄い熱気だ。

私は去年見に来ているし、こういった感じの空気なんかは慣れているが。

後から入ってきたみんな絶句している。

特に1年のルビィちゃんが、熱気に当てられ怖がっている様子だ。

 

「ルビィちゃん大丈夫?」

「う…ちょっと怖い」

「曜さん、丸…ルビィちゃんと外で待っていていいですか?」

「うん、外のベンチで少し休んどいで」

 

ルビィちゃんと花丸ちゃんは観客席を後に出ていった。

そして善子ちゃんはジッと誰かを見ている。

目線を追うと男の子がいた、そしてその隣には浦男水泳部の主将さんが

 

「はぁ!はぁ!クッソが!!」

「珊瑚少し休め」

「まだ!…いけます!!」

「ダメだ休め。怪我したら意味ないぞ」

「チッ……うっす」

 

観客席まで声が聞こえた。

そして男の子は、悔しそうな表情でベンチに座った。

 

「ねぇ曜」

「ん?どうしたの?」

「競泳の練習って辛いの?」

 

凄く真剣な表情で私に聞いてきた。

友達思いの善子ちゃんは心配をしているのだろ。

 

「ここにいる人達は、みんな全国を目指している人達だから練習はかなりきつい方だと思うよ」

「そうよね…」

 

複雑そうな表情をする善子ちゃん。

友達の辛そうな表情を見て何か思うところがあるのだろう。

しかし、辛いだけじゃないのが部活だ。

 

「けどね…ほら見て」

 

男の子の方を見ると、瑠璃くんがどこからか出てきて話しかけていた。

何故かくねくね動きながら。

 

「あれれ~?俺に“見てろ”って言ったのに~」

「…うるさいあっちいけ」

「こんなことで疲れていちゃ……まだまだだな~」

「あああ!うるさい!泳げばいいんだろ!!??」

 

瑠璃くん何やっているの?後輩をいじめている様にしか見えない。

しかし次の瞬間、善子ちゃんはフフフっと笑い出した。

 

「珊瑚楽しそうね」

「楽しそうなの?」

「ええ!ほら!」

 

再度、男の子改め珊瑚くんを見ると薄っすら微笑んでいるようだった。

 

「珊瑚の扱いが上手なのね!あの人は」

 

先ほどまでとは打って変わり、嬉しそうな表情をする善子ちゃん。

……なんか怪しい。

 

「ねぇ善子ちゃん」

「善子じゃなくてヨハネ!」

「珊瑚くん好きなの?」

「…………ふぇ!?そ!そそそそんなわけないでしょ!!??えっと…そう!リトルデーモンに気を遣うのは、主人の勤めよ…。だからその…好き……とかじゃないんだから~~~!!!」

 

そう言うと善子ちゃんは観客席から出ていった。

へ~そっか、善子ちゃんも“恋”してるんだ。

 

「剛先輩!次なんですけど……」

「ああそうだな」

 

瑠璃くんの声に反応してついつい目で追ってしまう。

去年と比べて幼さが消え、大人びた彼は私の好きな人。

胸からこみ上げてきた熱は、徐々に顔を熱くさせた

 

「やっぱり…かっこいいな~…」

「曜ちゃん?」

「ッ!?な、なに梨子ちゃん!?」

 

梨子ちゃんが話しかけてきたのに少し驚いた。

しかし、その姿を見た千歌ちゃんがニヤニヤしながら

 

「曜ちゃんルーくんの事見すぎだよ~!さっきから話しかけてたよ!」

「うぇ!?ご…ごめん梨子ちゃん!」

「…気付いていたけど、曜ちゃんは黒澤くんが好きなの?」

 

まさかの質問に少しうろたえた。

てか千歌ちゃんに言われるぐらい見とれていたのか私…。

こんな姿を見れば、まぁ梨子ちゃんも気づくよね。

 

「……瑠璃くんは気が付いてくれないけど、うん…好きです」

「…そっか、素敵だと思う!頑張ってね」

 

梨子ちゃんは綺麗な笑顔でそう答えてくれた。

友達に応援されると、恥ずかしいけど嬉しく思う。

 

「うん!ありがと梨子ちゃん!」

 

私も、梨子ちゃんに笑顔で返した。

すると千歌ちゃんが飛び上がり、私と梨子ちゃんに抱き着きながら。

 

「よ~し!私たちAqoursも明日のイベントがんばるぞ~~!!!」

 

千歌ちゃんは水泳部の熱気に当たり気合が入ったみたいだ。

こうして私たちは水泳部にも負けないぐらいに気合いを入れ直し観客席を後にした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

≪桜は蜜柑に触れた≫

 

 

「ははは…みんな寝ちゃったね」

「そうね…遠出だしきっと疲れちゃったのよ」

 

私と梨子ちゃんは明日のイベントのこともあって眠れなくなっていた。

そんな時、梨子ちゃんが私の顔を見て口を開いた。

 

「曜ちゃん…黒澤くんが好きだったのね」

「そうなんだよ!もう好き~ってオーラが出ているのに、全くルーくんは気づかないんだよ」

「ふふ…黒澤くんらしいわね」

 

ホントにルーくんは鈍感すぎるんだよ!っとそんな話をした時だった。

 

「千歌ちゃんは?」

「…え?」

「千歌ちゃんも黒澤くん好きでしょ?」

「―――ッ!?」

 

ばれた?いや、そんなことない!私がルーくんに対しての気持ちは心にしまった。

親友の好きな人を好きになるだなんておかしいんだから。

 

「な…何を言ってるの?ルーくんは曜ちゃんの好きな人だよ?親友の好きな人を好きになるわけないじゃん!も~変な梨子ちゃん」

「…この間ね、千歌ちゃんが黒澤くんと2人で話をしてたところ見たの」

「―――!?」

「何時もの“ルーくん”から“瑠璃くん”って呼んでたから驚いたわ」

「な…名前を呼んでみただけだよ~」

 

やめて

 

「今日、黒澤くんに会いに行く時に嬉しそうだったし」

「友達に会うなら普通だよ!」

 

お願い…この気持ちに名前を付けないで

 

「泳いでる黒澤くんを見てる時の千歌ちゃん…………曜ちゃんと同じこ「やめて!!」……」

 

気が付いたら私は梨子ちゃんの口元を抑えていた。

ハッと我に返り、直ぐに距離を取った。

 

「ご…ごめん梨子ちゃ「好きなんだよね?」ッ!?」

 

確信に触れられた。

隠したはずの気持ちが見つかった。

また隠さないといけないのに……私の次の言葉は言いたいことと真逆のことだった。

 

「好きだよ…ルーくんが。瑠璃くんが好き」

「……やっぱり」

「けどダメだよ」

 

私は眠っている曜ちゃんを見る。

可愛い寝顔でぐっすり眠っている彼女が微笑ましい。

 

「先にルーくんを好きになったのは、曜ちゃん。私は2番目だから!親友の背中を押すのが私の役目だもん!」

「…そう」

 

私はまたこの“”をしまった。

絶対に見つからないよう…“恋”に鍵をかけた。

 

「ねぇ梨子ちゃん…このことは2人だけの秘密ね?」

「…………わかったわ」

「心配してくれてありがとう!……ほら明日は早いよ!おやすみ梨子ちゃん!」

「…おやすみ千歌ちゃん」

 

私は目を瞑り闇へ落ちた。

また目が覚めたら私は、曜ちゃんの“親友”で瑠璃くん……ううん、ルーくんの“友達”に戻る。

私はいつも通りにこの“”を抑えつけた。

 

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