黒澤家の長男です。   作:カイザウルス

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第16話

東京遠征は無事に終わりを迎えた。

そして現在帰りのバスの中だ。

隣では遠征で疲れた珊瑚がぐっすり寝ている。

今回の遠征はかなり良かった方だ、特にメドレーだ。

蛍の成長スピードが予想よりも速かった。

この調子でいけば、メドレーで全国も夢じゃない。

しかし……それとは裏腹に……。

俺は携帯でスクールアイドルのイベントを調べて順位を確認した。

 

「最下位か…」

 

あの時といっしょだ、あのキラキラ輝いていた3人の時と…。

俺は拳を握り、いまのAqoursが解散しないことをただ願うことしか出来なかった。

その後、無事に学校に着いた。

軽くミーティング後をし解散、その足で駅に向かいAqoursの帰りを待つ。

しかし…会って何を話す?あの時、何もできなかった俺がいったい何ができる?頭の中に流れた2年前の不甲斐ない自分の姿に、嫌悪感を抱いた。

 

「瑠璃?」

「ん?…ダイヤ。ただいま」

「ええ、おかえりなさい」

 

俺の名前を呼ぶ声に気付き振り返ると、そこにはダイヤがいた。

きっとルビィを迎えに来たんだろう。

すると俺のとなりのベンチに座り、Aqoursの帰りを待つ。

 

「なんて話しかけますの?」

「……わかんない」

「はぁ…普通考えとくんじゃなくて?」

「うっせ…ダイヤはなんて話しかけるんだよ?」

 

俺に聞くということは、自分はもう決まっているのだろう。

そう思い興味本意で聞くと、ダイヤは少し考え口を開いた。

 

「おかえり…と言おうと思っていますわ」

「……そっか」

 

すると階段からAqoursの面々が出てきた。

その表情はとても暗い。

ダイヤはAqoursの面々に近づき、

 

「おかえりなさい」

 

ただ一言。

するとルビィは目に涙をためダイヤに抱きつきながら泣き出した。

…悔しい思いをしたんだ…今日ぐらい存分に泣いた方がいい。

俺はルビィの頭を撫ですぐに幼馴染である曜の前に立った。

 

「……瑠璃くん」

 

曜…お前まで泣きそうな顔をするなよ…。

俺は曜が被っている帽子を深くかぶせて、頭に手を優しく置き。

 

「帰るぞ」

「うん……ッ……うん」

 

そうとう悔しかったのだろう。

曜は瞳から大粒の涙をこぼした。

涙をみんなに見せないように、目元を隠している。

 

「曜ちゃん…」

 

曜の後ろから千歌の声が聞こえた。

 

「悪いな千歌、曜は俺が送ってくから」

「あ、うん…お願いします」

 

俺の知っている、明るく元気な千歌とは別人のように弱々しい。

その顔わ見てあの時の姉ちゃんを思い出した。

 

「なぁ千歌」

「ん?なに?ルーくん?」

「…やめるのか?」

「…え?」

 

しまった。

あの時の後悔を思い出してつい聞いてしまった。

続けるか続けないかは彼女たちの自由だ。

 

「すまん。忘れてくれ」

 

俺は曜を連れてその場を去った。

走らせてから、曜は一言も話さなかった。

俺も夜風にあたりながら自転車を走らせている。

 

「瑠璃くん」

「ん~?」

「喉乾いた」

 

泣いて喉が渇いたのだろうか?この先に自動販売機があったはずだ。

 

「はいよ」

 

自動販売機の横に自転車を止めて、ジュースを買う。

ベンチに座り買ったジュースを曜に渡した。

 

「ほらよ」

「ん、ありがと」

「…少し落ち着いたか?」

「……」

 

返事がない。

自分の飲み物を開けて飲む、夜の海を見ながら曜が落ち着くまで待つ。

風が吹き、水面に細かい波が立つ度に潮の香りが鼻腔をくすぐる。

この塩のにおいは何だか落ち着くような気がする。

すると、

 

「私さ、今回のイベント…自信あったんだ」

「…おう」

 

曜が口を開いた。

 

「ダンスも…歌も…ミスなくて……今までで1番の出来だった」

「おう」

「だけどさ…順位は最下位…更には0人だよ?」

 

0人。

会場の誰ひとりAqoursの踊れに心を震わせた人がいないということだろう。

曜は内浦の暗い海を見ているが、その瞳は涙をためている。

自然に曜の頭をそっと触れた。

 

「俺はさ、お前らの踊りや歌を見たわけじゃない。けど涙をためるぐらい悔しっかたんだな」

「…うん」

「お前らは頑張ったよ。だから我慢すんなよ」

 

触れた曜の頭を撫でた。

すると曜は瞳から、大きな涙が絶えずあふれ出した。

 

「うん…ッ!……うんッ!」

 

曜は俺の撫でている手をどかし抱き着く。

いきなりの事に少し驚き困惑したが、親友の涙を見て少し落ち着いた。

 

「よしよし…頑張ったな」

「うっ…ううッ…!!」

 

こんなに泣いてる曜は初めてだ。

子供のように泣き出した曜を、俺は優しく腕を回して抱きしめた。

そしてその後、何とか泣き止んだ曜だったが、恥ずかしかったのか今は両手で顔を隠してる。

 

「今頃かよ」

「うるさい!こっち見ないでよ!」

「痛ッ!?」

 

肩をグーで殴ったぞこいつ!?俺は元気を取り戻した曜を見て一安心した。

他のAqoursのメンバーが気になるが、そっちはダイヤが何とかしているだろう。

すると曜は赤い顔でこちらをジーっと見ていた。

 

「何だ?恥ずかしいのは収まったか??」

「……瑠璃くんってさ、何でそんなに私たちを気にかけてくれるの?」

 

私たちとはAqoursのことだろう。

気にかけているか…。

 

「違うよ曜」

「ん?」

「気にかけてるんじゃないよ。これは―――贖罪だよ」

「贖罪?」

 

俺があの時のしっかりと動いてれば、姉ちゃんの涙の理由を聞ければ、果南姉にもっと気にかけていれば、鞠莉姉を信じなければ…。

あの時の事は後悔がどんどん蘇ってくる。

だからこそ今回のAqoursを気にかけていたところもある。

 

「…少し昔話してもいいか?」

「うん。聞かせて」

 

曜は真剣な目でこちらをジッと見た。

 

「あれは……2年前の話だ」

 

昔の記憶を、糸を手繰るように思い出し曜に話した。

 

 

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