俺の大会まで残り1週間と数日が切った。
そして今日は、姉ちゃんたちが東京から帰って来る日。
部活が終わり次第、速攻で家に向かった。
イベントの結果を聞く為とイベントの雰囲気など…Aqoursなら好成績を残して、これから様々なイベントに呼ばれるかもしれない!っと想像が膨らんだ。
そして玄関を開けて。
「ただいま~」
「おかえりなさい」
「おかえり」
母さんと父さんが玄関にいた。
これから出かけるのだろうか?すると父さんは俺を見ながら。
「部活か?」
「うん!もうすぐ大会だからね!」
「……そうか。無理はしないようにな」
「うん!そう言えば姉ちゃん帰ってきて…「シーっ」…???」
母さんが俺の口に人差し指をあて、静かにするようにと目でこちらを見た。
とりあえず頷くと手が離れていき、すぐに笑みを浮かべて
「いまはそっとしてあげて?東京で疲れているみたいだから」
「??…わかった」
「いい子ね。あなた行きましょう」
そう言うと父さんと母さんは、どこかへ出かけた。
確かにこの数日、色々あったら疲れるか…Aqoursの話はまた今度にしよう。
俺はそのまま手洗いうがいをして自分の部屋へ。
自分の部屋へ向かう途中、姉ちゃんの部屋の襖が少し空いている。
開いた隙間から姉ちゃんの部屋覗くとそこには、Aqoursの衣装を顔に押し付けながら泣いている姉ちゃんの姿が……。
「うっ…うう……これで…これでいいんですわ」
衝撃的だった。
あの強い姉ちゃんが声を我慢して泣いている。
俺は何もできず自分の部屋へ向かい、ベットに横になった。
先ほどの光景が脳裏から離れない……東京で何かあったのかと思い直ぐに、電話をかけた。
「もしもし?」
「あ、鞠莉姉?俺だけど……」
「ああ、瑠璃?どうしたの?」
鞠莉姉が出たが……流石に姉ちゃんが泣いていたなんて言えない。
「お…お疲れ様!イベントどうだった?姉ちゃん寝ちゃってさ…」
「イベント………色々あったけど大丈夫よ!次は花火大会でのイベント頑張るわ!」
ん?色々?何だろう?それと、何だか違和感がある回答だ。
俺は“色々”とは何か聞こうと口を開こうとした瞬間。
「ごめんなさい瑠璃。マリーとってもスリーピングなの…また後日改めて話しましょ?」
東京から沼津までの移動に東京で何かがあった事で、体力を消費したのだろう。
「わかった。後日連絡頂戴?」
「もっちろん♪それじゃ!グッナイト!」
「う……うん。おやすみ」
鞠莉姉からは後日連絡が来る。
俺はもう1人の人物…果南姉に電話をかけるか迷っている。
しかし果南姉も同様に疲れているだろう。
そう思い俺は、鞠莉姉から連絡が来るのを待った。
そして……待って1週間がもうすぐ経とうとしていた。
いまだに鞠莉姉から連絡はない…それどころか最近Aqoursの3人で集まっている様子が全くない。
1つだけわかったことがある、“東京スクールアイドルワールド”のホームページを見るとAqoursの順位は最下位になっていた。
思うに、ショックで姉ちゃんは泣いていたんだろうと予想している。
そんなことを思っていた矢先の出来事だった。
「やめた?」
「ええ、スクールアイドルはもうやめましたわ」
耳を疑った。
あんなに楽しそうにアイドル活動をしていた姉ちゃんが…。
「ははは、面白い冗談だね?」
「…冗談ではありませんわ。だからあなたも、大会に集中しなさい」
「そんな…納得できるわけないじゃないか!」
俺はホームページで見つけたイベントの順位を見せながら、姉ちゃんに訴えた。
「最下位だったんでしょ?また頑張ればいいじゃん!」
「ッ!?…とにかく!もうやめましたの!もうスクールアイドルの話をしないでください!!」
姉ちゃんはそのまま家を飛び出した。
俺はその後ろ姿を見ることしかできなかった。
ハッと我に返り、直ぐに果南姉に電話を掛けた。
「もしもし、瑠璃?」
果南姉の声を聴いた瞬間、何かが溜まっていたかのように果南姉に吐き出した。
「姉ちゃんがスクールアイドルやめるって!!ど……どういう事!?」
それを聞いた果南姉は何かを察したのか、深く深呼吸をしてから話しだした。
「……私とダイヤはあの時歌えなかったの。やっぱり学校を救うなんて無理なんだよ」
意味が分からなかった。
こんな事を言うこの人は本当に果南姉なのかと思った。
俺の知っている…俺の好きな松浦 果南はこんなことで挫折しない。
俺は深く追求しようとした思った瞬間、
「悪いけど……もうスクールアイドルをやらない」
そういいながら電話を切られた。
また再度掛けなおしたが電話が繋がらない。
一体…Aqoursで何が起こってるんだ…まったく検討がつかない。
急に姉ちゃんが辞めて、果南姉まで辞めた。
もしかして鞠莉姉が何か知っている?俺は鞠莉姉にメッセージを送信する。
すると鞠莉姉から、直ぐに返事が来た。
『連絡できなくてごめんなさい。直接話したいから瑠璃の大会後、ここで待ち合わせしましょ!』
メッセージには位置情報も添付されている。
色々あったが数日後は大会だ……大会後に真実が聞ける。
いったんAqoursの事を忘れようと心に決めた。
しかし、そう簡単には行かなかった。
その後の大会では、コンディションが悪く、まったく大会に集中できなく結果は予選落ち。
中学最後の大会は最悪の結果で幕を閉じた。
悔しい思いを胸に俺は、直ぐに添付された位置情報を頼りにとある公園へ。
少しの遊具とベンチしかない、小さな公園だ。
周りを見る限り鞠莉姉は来ていない。
とりあえず待つことにした。
ようやくAqours現状を知れる!久々に鞠莉姉に会える。
そんなことを思いながら待った…日が沈み始めたが待った……日は完全に沈んだが待った………近くの家から美味しそうなカレーの匂いがしたが待った…………誰も来ない。
携帯を確認したが何もメッセージはない。
自分の中の黒い感情が芽生え始めた。
裏切り?バックレた?そんなことない!鞠莉姉がそんなことするはずない。
俺はホテルオハラに向かった。
そこなら確実に鞠莉姉に会える!そう思い自転車を走らせた。
ホテルオハラに着き、ロビーにいるスタッフさんに話しかけた
「すみません。鞠莉ね…じゃなくて小原 鞠莉さんの友人の黒澤 瑠璃なんですけど、鞠莉さんはいらっしゃいますか?約束があるのですが…」
「お嬢様ですか?少々お待ちください」
スタッフはこちらに一礼して何処かに向かった。
近くのソファーに待つこと数分、先ほどのスタッフがこちらに向かってくる。
立ち上がり話を聞く。
「黒澤様、お待たせして申し訳ございません。お嬢様なのですが……」
「はい」
何だろうか?急な用事でも入ったのはだろうか?それならそれでメッセージをすればいいのに
「今日の午前中に留学の話を受け入れ、海外へ行かれました。どうやら数年は内浦に戻らないとのことです」
「―――は?」
俺の中の黒い感情が爆発した。
その後、裏切られたショックからなのか気が付いたらベットに横たわっていた。
帰りの記憶が曖昧だ。
そして俺の中では今までの事が頭を駆け巡り1つの仮設にたどり着いた。
Aqoursの解散…姉ちゃんの涙…果南姉が歌えなかった…鞠莉姉の留学……裏切り。
あぁ…そうか
「鞠莉姉がAqoursを潰したのか…姉ちゃんを泣かせて、果南姉のやる気を削いだ。全部鞠莉姉が悪いのか」
鞠莉姉…小原 鞠莉は裏切りものだった。
頭の中では嫌なことがグルグルと回る。
いままであの人を信頼していた俺がバカだった。
俺はAqoursを潰したあの人を、絶対に許さない。
行き場のない怒りがこみ上げて枕に、それをぶつけ目を閉じた。
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そして現在に至る。
自分の過去の話を終わらせて曜を見る。
「これが理由かな…俺がもう少し気を使って行動していたら、姉ちゃんと果南姉はスクールアイドルを辞めずに済んだと思うよ」
「今思うと…あの時の瑠璃くん、少し荒れてたもんね」
その後に親父との一軒もあったのだが、それは別の話だ。
実際にあの時は無我夢中で泳いでたからな…。
「ま、お前らは歌えただけでもすごいと思うよ。そろそろ帰るか」
「…うん」
何かを考えている様子の曜を尻目に自転車に乗る。
曜も後ろに乗り込み、俺はバランスを取りながら前へと漕ぎ始めた。
すると曜が口を開く。
「瑠璃くんは、いまのAqoursは続けるべきだと思う?」
曜からの質問に少し戸惑った。
俺の本心からは続けてほしい…しかし俺は答える資格がない。
「そういうのは……昔のAqoursとか気にせずに、今のAqoursのみんなが決めることだと思う」
「そうだよね、ごめん」
「謝んなよ」
きっと先ほどの話を聞いたうえでの質問だったのだろう。
俺は内浦の風を感じながら、曜を家まで送った。
その後、家に帰り俺は直ぐに眠りについた。
翌日、今日は遠征の疲れを癒す為に部活は休みだ。
そして俺はある人からの着信音で起きた、画面には“千歌”と書いてある。
昨日のこともあったので、眠い目をこすりながら出た。
「はぁ~…もしもし?」
「あ、ルーくん?ごめん!起こしちゃったね」
「いや、大丈夫だ。どした?」
電話の内容はAqoursのことだろうと予想し、話を続ける。
千歌は深呼吸をして話しだした。
「Aqours続けることにしたよ!」
「!!…そうか、よかった。それなら頑張ってくれ」
「うん!もちろん!…ありがとね」
「ん?何が?」
何かをした覚えが全くない、急な感謝の言葉に理解ができない。
すると千歌がまた話しだした。
「あの時の“やめるのか?”って言葉が私を動かしてくれた」
「ん~?よくわからんが、それは良かった」
俺の言葉に千歌が動いてくれたのなら、あの時の失言は成功だったのかもしれない。
「そ…それでなんだけど……えぇ~、ほんとに言うの?」
「千歌ちゃん?」「わ…わかったよ…」
ん?何やら騒がしいな…。
それよりも何だかんだ千歌の様子がおかしい。
すると電話越しで再度深呼吸し、よしっと気合いを入れて話しだした。
「明日!お礼したいので!ご飯行きませんか!?」
…………は?お礼?いやそんなことよりご飯?
「また急な提案だな」
「え!?ええっとその……迷惑かけちゃったから……お礼したくて…」
徐々に声が小さくなっていった千歌。
明日は、部活もないため学校が終わったら帰る予定出し、予定はないな。
「予定もないし構わないぞ?」
「ホントに!?」
「あ…ああ」
先ほどの態度が噓のように元気になった千歌。
急に食いついて来て、びっくりした。
「それじゃ明日、学校終わりに駅に集合ね!!」
「了解」
「明日楽しみにしててね!バイバイ!!」
勢い良く電話を切られた。
まだ話終わってないのにな…まぁ明日になればいいか。
てか異性と出かけるなんてまるでデー……ト?
その瞬間、何かが俺の顔を熱くさせた。
「ッ!?」
え?明日まさかのデート!?いやいや、千歌だぞ?ぜっっったいに千歌は意識してないはず。
普通に友達とご飯の感覚でいいはずだ。
けど…あの戸惑い方……まずいな、明日どんな顔で会えばいいんだよ。
俺はそんなことを思いながら、今日1日を過ごした。
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≪桜は蜜柑の背中を押す≫
ルーくんとの電話を切って隣を見る。
「ふぅぅぅ…これでいい?梨子ちゃん」
「うん!よくできました」
Aqoursの作曲担当の梨子ちゃんがニコニコと嬉しそうな表情をしている。
千歌はある罰ゲームを受けてます。
罰の理由は、今回のAqoursの騒動を1人で何とかしようと考えたから。
みんなから罰ゲームを受ける中で、梨子ちゃんだけ趣向が違っていて、その内容はというと
「何で罰ゲームがルーくんとご飯なのさ~」
「千歌ちゃん喜ぶかなって」
「……梨子ちゃんは意地悪だ」
私がルーくんの事を好きなのを知っているのは梨子ちゃんだけ…。
どうしてこんな事をするのか分からない。
「ねぇ千歌ちゃん」
「…なに?」
「確かめてほしいの」
「?」
「千歌ちゃんは本当に黒澤くんが好きなのか…」
…どういう事だろう?私がルーくんの事を本当に好きなのか?
「もし確かめて…それでも曜ちゃんを応援するなら止めない」
「梨子ちゃんは曜ちゃんを応援しないの?」
だから千歌の事を後押ししてるのかと思って聞いてみた。
すると梨子ちゃんは直ぐにそれを否定した。
「そんなことないわ!黒澤くんと曜ちゃんも似合ってると思う!…ただ」
「…ただ?」
「千歌ちゃんが2人を見る目が少し悲しそうだったから」
「ッ!?」
図星だった。
ここ最近…特に“瑠璃くん”って呼んだあの日から私は曜ちゃんに少し嫉妬していた。
けどルーくんと曜ちゃんが付き合っても、私は祝福できる!それは自身がある。
けど明日のルーくんとのご飯を楽しみにしてる自分もいる。
また溢れてきそうなこの“恋”。
「…わかった。明日ルーくんとご飯いって確認する」
「千歌ちゃん…」
「それで終わり!曜ちゃんにも悪いし、別の恋を探す!」
そう決めて私は決心した。
今回で最後にしてこの“恋”に終止符を打つ。
次回、千歌ちゃん回!