浦の星男子学院。
浦の星女学院の姉妹校で、その名前の通り男子校だ。
そして俺は浦の星男子学院の水泳部に所属している。
水泳部の朝は15分間のストレッチから始まり、10分×3の体幹トレーニングで終了。
朝練自体は自主参加で人もまだらの中、1人の男が近づいてきた。
「瑠璃来ていたか」
「あ…先輩お疲れ様です。」
「ん」
水泳部の主将剛ツヨシ先輩。
バタフライでは全国常連選手でもある。
眼光も鋭くて肩幅が広い、尚且つ身長もあるためよく怖がられる事が多いが実は…。
「…腹が減った」
「そ…そっすか。朝食べてないのですか」
「5杯は食べた」
「けっこう食べましたね」
「どんぶりで」
「めっちゃ食べましたね」
少し抜けている所がある。
どんぶり5杯ってやばくね?取り敢えず先輩との話を切り上げて体幹に入ろう。
はぁ…水に浸かりたい。
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「はぁ~~~……」
学校が終わり帰り道。
まさかのプール点検により、今日の部活は一先ず休みとなった。
俺の癒しを返してくれ。
「はぁ…曜の家行こ」
とりあえず自転車を押しながら曜の家に空の弁当箱を渡す。
「今日も美味かったな……ん??」
たまたま海の方を見たら、見慣れない制服を着た美少女がジーっと海を眺めている。
観光客か??しかし周りに誰もいないなら迷子の可能性もあるな。
「あんた大丈夫か!?」
「……」
聞こえてないみたいだ。
仕方がない…俺は自転車を駐車し美少女の元へ向かおうとした時だった。
バッシャーン!!っと誰かが飛び込む音がしたと同時に美少女がいなくなっており、着ていたであろう制服が無造作におかれていた。
「噓だろ!?まだ4月だぞ!?」
俺は制服のブレザーを脱ぎ海へ飛び込んだ。
運がいいことに深く潜っていなかったためか、女の手を掴み何とか浜辺に引き上げる。
彼女は俺がいることに驚いたのか目を丸くしている。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「ゲホゲホ!はぁ…はぁ」
海に飛び込んだ際に少し水を飲んでしまい息が苦しい。
落ち着いてきたと同時に女を見る。
「おいアンタ!!」
「は…はい!!」
「こんな寒い4月に海に入るバカがいるか!!死んだらどうするんだ!?」
「え…えっと……ごめんなさい」
何か事情でもあるのか?一先ず反省していそうだ。
鞄から乾いたタオルを取り出し、水着姿の彼女に渡す。
「あ…ありがとうございます」
彼女はタオルを受け取り、体を拭き始める。
俺はそれを確認してから自分の体を拭く。
「…」
「…」
聞こえるのは、海の波の音と風の音のみ。
き……気まずい。
それによく考えてみろ、水着の美少女に濡れた制服を着ている男。
知り合いにでも見られたら色々めんどくさ…
「ルーくーん!!!」
ちくしょう!一番見つかりたくないやつに見つかった!!
俺のことをルーくんと呼ぶのは1人しかいない。
あいつ……高海 千歌が俺を見つけるや否や全速力でこっちに向かって来ている。
「夕方なのに元気だなお前は」
「そんなことないよ!」
そんなことあるだろ。
高海のアホ毛が犬の尻尾のように揺れているが、きっと気の所為だろう。
すると高海は、いまだ水着姿の彼女に指を指し。
「そんなことよりルーくん!!」
「人に指を指すものじゃないぞ」
「この子誰!?」
「何て説明すればいいのか…」
「まさか…曜ちゃんに黙って彼女でも作ったの!?」
「何で曜が出てくるのだよ、関係ないだろ」
そこで曜の名前が出てくるのは謎なのだが…。
というか、高海の元気さにあっけにとられている彼女はまだ水着だった。
俺は脱いでいたブレザーを拾い彼女の肩にかける。
「寒いから早く着替えろよ」
「ご…ごめんなさい」
「いや、謝られても…」
「ちょっと!千歌を無視しないでよ!!」
あ~~めんどくせぇぇぇ!!!
とりあえず俺は一から高海に状況の説明をした。
「な~んだ!そういうことだったんだね」
「そうそう…だから変な誤解はしないでね」
何とか説明し理解してもらい一安心
そして、先ほどまで水着を着ていた彼女も制服を着て、俺のブレザーを渡してきた。
「あの…黒澤くん…制服ありがとう」
「ん…もう変なことするなよ桜内」
高海に状況の説明をしている時に彼女の事もわかった。
桜内 梨子サクラウチ リコ。
東京出身でピアノをやっているとのこと、しかしあることからピアノが弾けなくなったそうだ。
そしてそのトラウマを払拭し、海の音が聞く為に海へ飛び込んだようだ。
うん…わからん…。
「私は…海の音が聞きたくて」
「だったらダイビングショップに行けよ…近くにあるし」
どうやら自分の体は二の次のようだ。
にしても体張りすぎだろ。
さてと、俺は曜に弁当箱届けて帰ろう。
「そんじゃ高海、あとよろしく」
「えぇ~!!ルーくん帰るの!?」
「制服濡れたし早く帰りたいからな」
倒れている自分の自転車を立たせて乗る。
クソ…濡れたYシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。
「そんじゃ頼んだぞ」
「む~…仕方がないな…」
「じゃ、桜内も」
「うん…ホントにごめんね」
「おう」
挨拶をすませて、自転車を進める。
早く用事を終わらせて風呂に入ろう。
「そうだ!!ルーくん!!!」
……今度は何だ…。
進んだ道を戻り、高海の前に止まる。
「…何?」
「そ…そんな顔しないでよ…顔怖いよ?」
ついつい顔に出ていたようだ。
と言うよりも早く本題を話してほしい。
「ルーくん私ね」
「おう」
「スクールアイドル始めようと思うの!」
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『瑠…瑠璃…』
『ん?なんだよ姉ちゃん』
『わ…わたくし…スクールアイドルを始めようと思っていますの』
『え!?ホントに!?それならライブがあったら応援しにいくよ!!』
『!?…ありがとうございます。その時は期待していますわ』
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「?…ルーくん??」
!!…スクールアイドルと聞いてつい昔の事を思い出してしまった。
高海こちらを不思議そうに見ている。
「そっか、スクールアイドル頑張れよ」
「うん!ルーくんも応援してね!」
「おう!頑張れよ」
「へへへ!ありがと!」
高海は嬉しそうに笑みをこぼし、桜内の所へ戻る。
俺はそんな高海の後ろ姿が太陽のように眩しかった。
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