黒澤家の長男です。   作:カイザウルス

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第2話

浦の星男子学院。

浦の星女学院の姉妹校で、その名前の通り男子校だ。

そして俺は浦の星男子学院の水泳部に所属している。

水泳部の朝は15分間のストレッチから始まり、10分×3の体幹トレーニングで終了。

朝練自体は自主参加で人もまだらの中、1人の男が近づいてきた。

 

「瑠璃来ていたか」

「あ…先輩お疲れ様です。」

「ん」

 

水泳部の主将剛ツヨシ先輩。

バタフライでは全国常連選手でもある。

眼光も鋭くて肩幅が広い、尚且つ身長もあるためよく怖がられる事が多いが実は…。

 

「…腹が減った」

「そ…そっすか。朝食べてないのですか」

「5杯は食べた」

「けっこう食べましたね」

「どんぶりで」

「めっちゃ食べましたね」

 

少し抜けている所がある。

どんぶり5杯ってやばくね?取り敢えず先輩との話を切り上げて体幹に入ろう。

はぁ…水に浸かりたい。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「はぁ~~~……」

 

学校が終わり帰り道。

まさかのプール点検により、今日の部活は一先ず休みとなった。

俺の癒しを返してくれ。

 

「はぁ…曜の家行こ」

 

とりあえず自転車を押しながら曜の家に空の弁当箱を渡す。

 

「今日も美味かったな……ん??」

 

たまたま海の方を見たら、見慣れない制服を着た美少女がジーっと海を眺めている。

観光客か??しかし周りに誰もいないなら迷子の可能性もあるな。

 

「あんた大丈夫か!?」

「……」

 

聞こえてないみたいだ。

仕方がない…俺は自転車を駐車し美少女の元へ向かおうとした時だった。

バッシャーン!!っと誰かが飛び込む音がしたと同時に美少女がいなくなっており、着ていたであろう制服が無造作におかれていた。

 

「噓だろ!?まだ4月だぞ!?」

 

俺は制服のブレザーを脱ぎ海へ飛び込んだ。

運がいいことに深く潜っていなかったためか、女の手を掴み何とか浜辺に引き上げる。

彼女は俺がいることに驚いたのか目を丸くしている。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「ゲホゲホ!はぁ…はぁ」

 

海に飛び込んだ際に少し水を飲んでしまい息が苦しい。

落ち着いてきたと同時に女を見る。

 

「おいアンタ!!」

「は…はい!!」

「こんな寒い4月に海に入るバカがいるか!!死んだらどうするんだ!?」

「え…えっと……ごめんなさい」

 

何か事情でもあるのか?一先ず反省していそうだ。

鞄から乾いたタオルを取り出し、水着姿の彼女に渡す。

 

「あ…ありがとうございます」

 

彼女はタオルを受け取り、体を拭き始める。

俺はそれを確認してから自分の体を拭く。

 

「…」

「…」

 

聞こえるのは、海の波の音と風の音のみ。

き……気まずい。

それによく考えてみろ、水着の美少女に濡れた制服を着ている男。

知り合いにでも見られたら色々めんどくさ…

 

「ルーくーん!!!」

 

ちくしょう!一番見つかりたくないやつに見つかった!!

俺のことをルーくんと呼ぶのは1人しかいない。

あいつ……高海 千歌が俺を見つけるや否や全速力でこっちに向かって来ている。

 

「夕方なのに元気だなお前は」

「そんなことないよ!」

 

そんなことあるだろ。

高海のアホ毛が犬の尻尾のように揺れているが、きっと気の所為だろう。

すると高海は、いまだ水着姿の彼女に指を指し。

 

「そんなことよりルーくん!!」

「人に指を指すものじゃないぞ」

「この子誰!?」

「何て説明すればいいのか…」

「まさか…曜ちゃんに黙って彼女でも作ったの!?」

「何で曜が出てくるのだよ、関係ないだろ」

 

そこで曜の名前が出てくるのは謎なのだが…。

というか、高海の元気さにあっけにとられている彼女はまだ水着だった。

俺は脱いでいたブレザーを拾い彼女の肩にかける。

 

「寒いから早く着替えろよ」

「ご…ごめんなさい」

「いや、謝られても…」

「ちょっと!千歌を無視しないでよ!!」

 

あ~~めんどくせぇぇぇ!!!

とりあえず俺は一から高海に状況の説明をした。

 

 

「な~んだ!そういうことだったんだね」

「そうそう…だから変な誤解はしないでね」

 

何とか説明し理解してもらい一安心

そして、先ほどまで水着を着ていた彼女も制服を着て、俺のブレザーを渡してきた。

 

「あの…黒澤くん…制服ありがとう」

「ん…もう変なことするなよ桜内」

 

高海に状況の説明をしている時に彼女の事もわかった。

桜内 梨子サクラウチ リコ。

東京出身でピアノをやっているとのこと、しかしあることからピアノが弾けなくなったそうだ。

そしてそのトラウマを払拭し、海の音が聞く為に海へ飛び込んだようだ。

うん…わからん…。

 

「私は…海の音が聞きたくて」

「だったらダイビングショップに行けよ…近くにあるし」

 

どうやら自分の体は二の次のようだ。

にしても体張りすぎだろ。

さてと、俺は曜に弁当箱届けて帰ろう。

 

「そんじゃ高海、あとよろしく」

「えぇ~!!ルーくん帰るの!?」

「制服濡れたし早く帰りたいからな」

 

倒れている自分の自転車を立たせて乗る。

クソ…濡れたYシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。

 

「そんじゃ頼んだぞ」

「む~…仕方がないな…」

「じゃ、桜内も」

「うん…ホントにごめんね」

「おう」

 

挨拶をすませて、自転車を進める。

早く用事を終わらせて風呂に入ろう。

 

「そうだ!!ルーくん!!!」

 

……今度は何だ…。

進んだ道を戻り、高海の前に止まる。

 

「…何?」

「そ…そんな顔しないでよ…顔怖いよ?」

 

ついつい顔に出ていたようだ。

と言うよりも早く本題を話してほしい。

 

「ルーくん私ね」

「おう」

「スクールアイドル始めようと思うの!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『瑠…瑠璃…』

『ん?なんだよ姉ちゃん』

『わ…わたくし…スクールアイドルを始めようと思っていますの』

『え!?ホントに!?それならライブがあったら応援しにいくよ!!』

『!?…ありがとうございます。その時は期待していますわ』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「?…ルーくん??」

 

!!…スクールアイドルと聞いてつい昔の事を思い出してしまった。

高海こちらを不思議そうに見ている。

 

「そっか、スクールアイドル頑張れよ」

「うん!ルーくんも応援してね!」

「おう!頑張れよ」

「へへへ!ありがと!」

 

高海は嬉しそうに笑みをこぼし、桜内の所へ戻る。

俺はそんな高海の後ろ姿が太陽のように眩しかった。

 




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