朝日が穏やかな海に日差しが反射し、俺に突き刺さる。
今日は部活も休養だし、特にやることも無いので1日ゴロゴロするつもりだった。
しかし、昨日の夕飯後に曜からのメッセージで。
「明日、暇だよね!ダイビング行こう!朝迎えに来てね!」
とのこと、確かに暇だけど俺の予定も聞いてほしいものだ。
そんなこんな考えていたら曜の家に到着した。
インターホンを押すと元気よく飛び出してきた。
「おはヨーソロー!」
「はい、おはよ」
そのままいつも通りに、後ろに座る。
「発進!!」
「今日はテンション高いな」
曜のテンションがいつも以上に高い。
高い理由を聞いたところ、みんなで遊ぶのが楽しみだからとのこと。
それと今日は、高海に桜内もいると聞いて驚いた。
そうこう話していたら集合場所である、ダイビングショップに到着した。
てか…ここって…。
「あ!ルーくん!」
「よう高海…あと桜内も」
「こ…こんにちは黒澤くん」
相変わらず元気な高海に、美少女の桜内がショップの中から出てきた。
受付はもう済んでいるらしい。
一通り挨拶を済ませてから中に入ろうとしたが、船着き場に見覚えのある女性が重そうなものを運んでいる。
3人を先に行かせて、女性の元へ。
「こんにちは、お手伝いしましょうか?」
「え?いえ!大丈…夫…」
俺の顔を見た途端、女性は言葉を発さなくなった。
久々に会うから驚いているのだろう。
「お久しぶりです。松浦先輩」
「瑠璃!?ビックリした!久々だね」
この女性は、松浦 果南マツウラ カナン。
姉であるダイヤと同じ高校3年生で、曜とは違う幼馴染の一人だ。
そして……俺の初恋の相手でもある。
「元気してた?」
「はい、松浦先輩も元気ですか?」
「も~、松浦先輩だなんて他人行儀じゃん。昔みたいに果南姉でいいんだよ?」
昔幼い頃は良く果南姉と呼んでいた。
しかしもう高校生だし、流石に恥ずかしい。
「いえ、もう高校生何でやめときます」
「…そっか…ちょっと残念」
「ぐっ…」
松浦先輩は悲しそうな表情を浮かべた。
そんな顔をさせたくて、俺は話しかけたわけじゃないのだが…。
俺はこの人には強く出れない。
周りを確認してから。
「ふ…二人の時は呼ぶようにするよ……果南姉…」
うわ…すげぇ恥ずかしい。
松浦先輩の反応。
「…うん!そうしてくれると嬉しいかな」
クソ……本当に俺はこの人に弱いと、改めて理解できた。
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松浦先輩の操縦する船に乗りダイビングスポットへと到着した。
高海に桜内と曜は、ウエットスーツを着替え海に潜っているが。
「梨子ちゃんどう?」
「…わからない」
「ん~どうやったら聞こえるかな~海の音」
どうやら海の音っというものが聞きたくて潜っているようだ。
…よくわからないが、桜内はその音を必死に探している。
そして、今現在船には俺と松浦先輩の2人だけだ。
「瑠璃は入らないの?」
「俺は後で入りますよ」
「…」
返事が帰って来ないので振り向くと、なんか半目で見られていた。
…あ、そう言う事か。
「あ~…俺は後で入るよ…これでいい?」
「ふふ…よろしい」
満足そうに笑顔に戻る松浦先輩。
どうやら敬語なのが気に入らなかった模様。
そんなことよりも松浦先輩の格好に目のやり場が困る。
何でウエットスーツのファスナ下げているの?たわわに実ったものが、はみ出ているよ。
「瑠璃はさ」
「はい!?」
「ん?」
いけない、急に話しかけられてビックリしてしまった。
「ダイヤと仲良くしてる?」
「…まぁ仲はいいのかな?ルビィにも仲良しだねって言われたし」
「そっか。姉弟仲良しで何よりだよ」
俺個人的にはどこが仲いいのだか分からないが。
まぁ一応姉弟だし嫌いではない、突っかかるのはムカつくけど。
「それとさ」
「ん?何?」
「……鞠莉と「ルーくーん!!!」…」
松浦先輩が何か話そうとした瞬間、高海が大きな声で呼ぶ。
高海の声で松浦先輩の話声がかき消された。
「速くおいでよ~~!!」
「あいつ…ごめんま…果南姉、何か話そうとした??」
「ううん、大丈夫。あたしは船見とかないとだから、行っておいで」
「…わかった」
何か話していた気がするが、気にしないでおこう。
松浦先輩に一言断り海へ飛び込んだ。
まだ4月の寒い海だから冷たいが、透明度がよく綺麗に見える。
3人に近づき桜内に話しかける。
「どうだ?何か掴めそうか?」
「ううん」
「そっか」
悲しそうな表情を浮かべ、落ち込んだ様子の桜内。
内浦の海に来てその表情はあまり見たくないな。
「海の音ってのはよくわからないけど…いい潜り方を教えてやるよ」
「え?」
「少し深めに潜って上見てみろよ」
「上?」
内浦の海の透明度も高くキレイで有名だ。
そんな中で今日は日差しもあり、曇一つない程の快晴だと海の中は綺麗に見える。
「確かに梨子ちゃんずっと下を向いてるもんね!」
「うん、違う見方をするのはいいと思うよ」
高海に曜も賛成してくれた。
後は桜内次第だ。
「…うん、次は上向いてみる。ただ…」
「ん?」
「私、上手く潜れないみたいで…その少し怖くて…」
「ああ、そんなことか」
上手く潜れない、それなら俺が引っ張れば良いだろう。
海中にある桜内の手握り、水面に上げる。
「こうすれば怖くないだろ?」
「う…うん」
…ん?何だこの空気。
高海と曜がすごい顔している。
ついでに桜内は何だか俯いている。
「お前ら何だよ」
「いやいやいや!ルーくんそれセクハラになるよ!!」
「こんなんでセクハラになったら、男性の肩身が狭すぎるだろ」
随分とぶっちゃた事を言う高海。
それに対して曜は何だか覚悟を決めた目でこちらを見る。
「わ…私も、潜るのが怖いな~…なんて」
「アホか、お前潜るのが怖かったら飛び込み何てできないだろう」
「む~!」
何か、頬を膨らませ機嫌を悪くさせてしまったようだ。
は?俺なにかしたか?
「意味わからんこと言ってないで潜るぞ。桜内は大丈夫か?」
「う…うん!大丈夫!」
桜内に確認をとる。
高海と曜も大丈夫そうだ。
「そんじゃいくぞ?せーのっ!!」
俺の号令に合わせ、海の中へ。
右手から桜内の握力を感じ桜内を見ると、ギュッと目をつぶっていた。
いやいや、目を閉じちゃダメでしょう。
桜内の肩を叩き、上を向くように指示する。
桜内は恐る恐る目を開ける。
そこには、
「ッ!!」
太陽が水中を明るく照らし内浦の海の透明度がよくわかる。
相変わらずとても綺麗だ。
桜内も見入っている。
そんな姿を見た高海と曜も笑っている。
その時だった。
「「「「―――――ッ!!」」」」
何かが聞こえた。
海で聞こえる遠雷のような音とは違う。
これが海の音なのかは分からないが、美しい旋律が聞こえたような気がした。
3人も何だか聞こえた様子だ。
息の限界も近づいてきたため、海面から顔を出す。
息を整えるといきなり、
「黒澤くん!!」
「うおっ!?何だよ…」
「聞こえた!私、聞こえたよ!」
桜内が俺の右手を両手で持ち顔を近づける。
「梨子ちゃん!私も聞こえた気がする!」
「私も!」
徐々に集まりだす高海と曜。
すると桜内が
「黒澤くんは聞こえた?」
「…ああ、聞こえたよ。綺麗な音だった気がする」
先ほどまで不安そうにしていた表情が消え、笑顔になる桜内。
「ッ~~~~~!!やった~~~~!!!」
高海が自分のことの様にうれしかったようで、曜と桜内に俺を包むように抱き着いてきた。
その為、女の子3人と必然的に距離が近くなる。
「ちょっ!!高海!近い!近いから!!」
「ん?わぁ!?ルーくん離れてよ!?」
「お前が抱き着いてきたんだろ!?」
3人に囲まれ離れようにも離れられない。
その後、一通りダイビングを楽しみ、松浦先輩に挨拶してから解散した。
高海と桜内はバスで帰ったが、俺は曜を後ろに乗せ送る事にしたのだが、
「曜」
「……」
「お~い、曜ちゃ~ん??」
「……」
返事がないただの屍のようだ…っと冗談は置いといて。
俺が桜内と手をつないでから、返事がない。
不機嫌な曜は正直めんどくさい。
こんな状態の曜のご機嫌を取る方法は一つだ。
「曜コンビニよるぞ~」
「……」
自転車を駐車して、コンビニに入る。
曜が好きなものと水を買い自転車へ。
頬を膨らまして、コンビニのベンチで待っている曜の頬に、買った飲み物をくっつけた。
「うひゃ!?」
「ほれ、みかんジュース」
「…ありがと」
「おう」
曜の隣に座り、買った水を飲む。
曜もみかんジュースを一気に飲み、半分まで飲み干している。
喉乾いていたのか?さてと……。
「それで?何で怒ってるの?」
「!!」
ビクッと肩を動かしたが、また無視された。
とりあえず、あの時の状況を整理してみよう。
態度が変わったのは桜内と手を繋いでた時だった……。
「まさか…繋ぎたかったのか?手を」
「ッ!?」
どうやら図星のようだ。
徐々に顔を赤くしていってる。
というかそんなことかよ…。
俺は立ち上がり、手を前に出した。
「ん」
「…ん?」
どうやら曜に伝わってないようだ。
「手…繋ぎたいんだろ?ここから曜の家まで近いし…昔みたいに手繋いで歩いて行こ」
「~~~!うん!!」
ようやく可愛いらしい表情になってくれた曜なのだが、曜は手を繋がずに俺の腕ごと抱き着いてきた。
いきなりの行動に驚いたが、曜の表情は嬉しそうだ。
「えへ」
「あは…どした?」
「えへへ!」
「あはは…だからどした?」
「えへへへ!!」
「あははは…はぁ、もう好きにしろ」
そういうと曜は更に力を強めて抱きつく。
曜の胸が腕に挟むような形になってくっついているが、今更気にしてられない。
はぁ…本当に単純で可愛い幼馴染だな。
そう思いながら、ため息を吐き帰路を歩いた。