王の財宝をフル活用したら人類滅んだ 作:容疑者X
そうだ、敵を作ろう。
よっす、こんにちは。またもや俺だ。前置きはいらないかと思ったら意味不明すぎたんで前置いていこうと思う。思えば長い付き合いだ。会うのはせいぜい四度目か? 合間合間で幾つ世界の始まりから終わりまで見たか憶えてないが、体感時間で三億年くらいか。みんなそろそろ俺の名前憶えてくれたかなー? 名乗ってねえのに憶えられてたらホラーだが。
じゃあ、三度目以降の話をしようか。神様ムーブをやめた瞬間世界が滅亡に突っ走った後、何回か同じことを繰り返してみたんだが、どれもこれも最後は庇護を失った絶望と不安を他へ叩きつけて、諸共滅ぶ一途を辿った。過程で何人か心を壊しても見たんだが、信仰への依存度が高くなりすぎて、戦死を殉教と呼んで一切躊躇わない。宗教を多様化してみても、俺という分かりやすい対象があるせいで、どんな内容でも確実に一神教になってしまい、やっぱりいなくなると滅ぶ。多神教なんかもいた時はあったんだが、即座に邪教徒だの異教徒だの言われて殺されてたからな。だが内臓を晒して火あぶりはやめて差し上げろと。見てるこっちが吐くわ。
移動してきたこの世界もその一つ。特筆するなら、やたらと種族が多かった。そのくせ全く交流していなかった。それぞれが作っている独自の生活文化を一切絡ませることなく過ごしていた。固まっている一角もあるから、顔を合わせることが多い種族くらいはわかるだろうが、生活にまるで関わっていない。誰も彼もが自給自足。逆にすげえと感心したよ。そんな世界でも、神様ムーブで交流を図ったら一気に発展して一気に破綻した。本当に目を瞠る発展ぶりだった。時代が数か月で二千年は進んでたね。限度ってもんを知らねえのかと。
そこで俺は考えた。縋りつく唯一がいなくなるのを恐れ、取り戻すために方向性は違えど誰もが同じ行動をとるってことは、その逆もあり得るのじゃないかと。
縋りつくのではなく、突き放したくなる邪悪。とどのつまりが種族を超えた全人類に対する敵対存在、魔王や邪神なんかを作ってみればいいんじゃないかと。誰もが突き放すために一致団結するのじゃないかと。
実際、どこでも聞く話だ。人が団結するのに分かりやすいのは共通の敵。細かく言うと、敵の敵は今だけ味方。後の対策はするけど、今はそれ以上に優先して排除しないといけないのがあるから、せいぜいお互い仲良くしましょうってなもんで、それぞれ互いを利用し尽くさんと暗躍を始めるわけだ。少なくとも、敵が健在な間は、かつその敵が気を抜かせてくれない場合は、互いを守護しつつ監視しつつ、その団結は続くだろう。戦争などする暇はない。
そんなわけで、作ってみました共通の敵。仮称『脅威』。訳もわからないまま人間を憎み、滅びを求めて何度も襲いかかり、苦戦しているから警戒している。だというのにそれでもまだ人間を甘く見ている哀れな
そんな存在が現れたと、方々で暴れさせて喧伝してやった。
実際、共通の敵が出てきてすぐに団結とか無理なのはわかるので、そこはやっぱり信仰の力を借りる。
過去に一度だけ、新しく出したものとは雲泥の差こそあれなかなかの脅威を作って世界を危機に陥れ、俺降臨。これこれこうすれば脅威を打破できますよー、と教えてやり、実践。それを記録に残させる。
前例は大事だ。もっと言えば自分が最初ではないというのは安心を生む。過去に同じようなことをやって成功したのだから、そこから探れば糸口が見つかる、と考えれば気は休まるのだ。その目論見は見事に成功し、祭壇に現れ、前例と同じように助言を与えることを拒否される事は無かった。ただ、その当時に生きていた奴がまだいたのは本気で驚いた。しわっしわだったけどな。ボロボロ泣いてたのは正直引いた。
さて、指示はこうだ。
数多の種族の中でリーダー格の種族たちを集めてパーティーを作り、水に棲む者にこの世で最も美しい水を用意させ、その水で火と土を愛する者に武器を作らせるなど、それぞれにしかできず、かつ他種族と関わらざるをえない仕事を割り振り、こなせば倒せる程度の脅威を作る。
誰もが力を合わせなければ手に入らない装備や、突破できない罠などを設置し、時にはつり橋効果でパーティー内の恋愛なんかも楽しませる。おかげで仲の悪かった種族でも、少なくともパーティー内ではとても和やかに楽しげに話していた。
超頑張った。実際すごく順調だったし、ダレそうになる度に脅威が国をいくつか滅ぼしたりしていたから、パーティーも各種族も誰もが死に物狂い。意気軒昂な有様で、これは失敗する方が難しいだろうと高をくくっていたんだよ。
失敗した。
水に棲む者たちは水の選定を怠って、火と土を愛する者たちはそんな水で武器など作れるかと突っぱね、鞘を作った巨人族は魔神族の編んだ精緻な紋様型の魔方陣をダサいと一蹴して独自の紋を彫り、魔法の服の原料である蜘蛛人族の糸に魔力を籠める紡ぎ姫族は汚いからと糸に触れてすらいなかった、などなどエトセトラエトセトラ。
お前らええ加減にせえよ? さすがに絶叫した。絶句した後絶叫した。言ったよ、俺は。ちゃんとやんないと世界滅ぶからちゃんとしろよーって、柔らかい言い方で、かつ無駄に威厳出して言ったんだよ。まるきり無視しやがって。
いや、無視されるのは別にいいんだ。信用されなかったんだろう、別にいいさ。だけど信用できないのを理由に、交流必須な他種族突っぱねてどうするよ。いやいやわかるよ、これまで平気だったんだから平気だろ、と言いたいんだろうさ。平気じゃねえんだっつったんだけどな。まさかここまで排他的とは。
結果、滅ぼされはせずとも痛手を負った脅威が本腰を入れて人類滅亡。襲い掛かってきた脅威は消滅させた。まあ、戦争以外の滅亡を見られたのだから良しとしようか。今度同じことをやる時はもう少し過去の事例を増やしてみるのがいいだろう。さすがにはるか昔に一回だけ助けてくれた神様を信じろってのは無理があったんだろう、うん。
今度はもうちょっとうまくやろう。とりあえず、あまり願いを叶えない神様、って感じでどうだろうか?