王の財宝をフル活用したら人類滅んだ 作:容疑者X
拘束end
初志貫徹っていい言葉だよな。多分最高にいい言葉だ。いい言葉は決してなくならない。
いや、もういいだろう。前置きも何もかもいらねえよ。世界は平和になりました。小競り合いはあれど互いを滅ぼし合う事も無く、かつて俺が過ごした現代よりも大分物騒で、自由を謳歌している幸せな世界の出来上がりだ。俺がいなくなっても何も変わらず、適度に幸せに生きている。
だから、なあもういいだろう。飽きているんだよとっくの昔に。戦争が続く世界に飽きて、滅ぶ世界を見るのに飽きたから、今までいろいろやってきたけどさ。なんかもう、そうして手を尽くすこと自体に飽きている。
俺がしたいのは、いつだってどんな時だって、何にも縛られず、
改めて、声を大にして言ってやるよ。
「ただ! 俺は! この力で! 好きに! 生きていたいだけだ!」
「らしくもねえ反吐が出る! いつまでもいつまでも誰かのためにだけ生き続けるなんて気色の悪い! くっだらねえ劣等どものために何で俺が遠慮しないといけねえんだ、アァ!?」
「初志貫徹! ずっと願ってきたぜ、この糞下らねえ体感十億年の歳月で! ずっとずっとずっとずっと! 好き勝手に生きられる今を夢想し続けた!」
「誰に受け入れられずとも、誰に崇められずとも、何だっていいどうでもいい! 俺のしたいようにだけできる程度の世界が残っていりゃあそれでよかったのにな、よけいな時間使ったぜくそったれ!」
「神、悪魔、勇者、魔王、英雄、化け物、救世主、テロリスト。呼ばれたからって、何そんな感じに行動してんだよ、我ながららしくもねえ」
「配下なんざいらねえ、上司だっていらねえ。ペット、友人、恋人、家族? 知ったことかよ糞溜めに帰れや」
「俺が飽きて、さっさと死ぬまで、世界丸ごと俺の玩具だ」
「そんじゃまあ──さあさ、お立ち合い! この手に取り出しますのは王の宝物庫へつながる鍵の贋作。当然つながるのは蔵の贋作。だけどそんなこたぁ関係ない。入ってるものは同じ、あらゆる人類の発明だ」
「ここで一つ言っときましょうか。かつて、世界の始まりの一つ。世界を統べるシステムを、作り上げた世界があった」
「珍しい話じゃありやしません。世界が始まりの形だった頃、人は容易くルールを作った」
「さて、取り出しましたるのは、異相の座。二元論、堕天奈落、天道悲想天、永劫回帰、修羅道至高天、輪廻転生、無限大紅蓮地獄、大欲界天狗道、天照坐皇大御神。幾多の理を世に広げた、全宇宙の理を示すシステム」
「欲深き人を全能の神足らしめる、世界を支えるシステムですよ」
「人が作った。それがどれほど不可思議であれ、人が作ったものを、手に入れられぬ道理はない」
「何せこれは王の財宝。人の叡智、人類史の顕現であるゆえに」
「さあ、真実神へなり替わろう。この世界を、俺が最も楽しめる、俺だけの楽園に変えるために!」
「ハハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
◆ ◆ ◆
「おやおや」
「何事かございましたか、主」
「いや、別に。どこかで見たような顔が昇ってきたな、と思ってね」
「それはまた、珍しい事です」
「ああ、稀に見る珍事だとも」
「主が人の顔を憶えているなどと」
「こら」
「既に痴呆が始まっているものとばかり」
「一応止めたつもりなんだがね、私は」
「はい。わかっています」
「……まあいいだろう。出迎えの準備をしなくてはね。後輩は久しぶりだ」
「はい。ところで、一つ提案ですが、主」
「何だい?」
「賭けをしましょう。昇ってきた方が、あなたへ最初に贈る言動について」
「では、片手をあげて『はじめまして』だ」
「私は、そうですね」
「おや、来たようだよ。早く言いなさい」
「殴りかかって『死ね』。あたりが妥当でしょうか」
賭けの勝者は──さて、誰だろうね。
ところで君、ちょっと氷を持ってきてくれ。頬が痛い。
はい、主。
そのまま這いつくばってろクソ爺。
神座でシステムを作ったって表記を見た時からやりたかったんだもの。
単純に上位互換の神様たちなので一切逆らえないっていう。まあ所詮道具と経験しかない人間だからね、仕方ないね。
結局彼は神様たちにつかまって、使われながらも騒がしい日々を過ごしているそうですよ。