この人ならざる『ヒト』に祝福を!   作:ヴァニフィア

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冒険者についての説明回なのでギルドの人の説明が長くなってます。


冒険者になりたいんですけど

町の中に入り案内に沿ってしばらく歩くと、ギルド兼酒場に着いた。とりあえず三人で席について、水をもらう。

 

「本当に文字が読めるようになってるんだな。おかげでギルドの場所もなんとかわかったし。」

「うーん、なんか変な匂い?」

「まあ、酒場も兼ねてるから仕方ないわね。しんどいなら冒険者カードを作ってすぐに出た方がいいわよ。」

「うー…そうする…ところで、それってどうやるの?」

「とりあえず受付の人に聞いてみるか?」

「あ、そうだね。私が聞いてくるよ。早く済ませたいのは私だし。」

 

早めに出たいと思っているルミがひとまず一人で受付の人に話しかけてみた。

 

「すいませーん。冒険者になりたいんですけど、どうしたらいいんですか?」

「あら、お嬢さん大丈夫なの?冒険者になるのは大変なのよ?危険だし、あと何年か待ったほうが…」

「大丈夫!これでも体は丈夫だから!それにカズマたちもいるし!とにかく教えてくれませんか?」

「そう?それなら無理しないって約束してくれるなら…あ、手数料としてお金がかかるんだけど、持ってるかしら?」

「ごめんなさい!また来ます!」

 

踵を返してカズマとアクアの元に戻った。

 

「カズマー、てすうりょう?っていうお金がかかるんだって。」

「え?マジで?…なぁ、アクア…金って…」

「あんたに組みつかれてた状態でどうやってお金の準備ができると思うのよ。」

「うっ…くそ…昨日の俺を殴りたい…ゲームとかだとこういう時は最低限用意されてるのに…」

「ね、ね。私が家から持って来た食べ物とか売れないのかな?」

「あー…きついんじゃないか?そういうのって許可とかいると思うし。武器ならまだしも足りないだろうしなぁ。武器はさすがに売りたくないだろ?」

「それなら、今度は私の番ね。女神の本気、見せてあげるわ!」

 

そう言って、アクアは二人から離れて行った。

 

「アクア、行っちゃったね。」

「ああ…どうすんだろうな。…ん?なんか神官っぽい人に話しかけてるな。」

「………そこはかとなく失敗しそうな気がするんだけど気のせいかな?」

「気のせいじゃないんじゃないか?…ってか、ルミも結構言うな…」

「そう?思ったこと言ってるだけなんだけど…ところでカズマ。この匂いってなんなの?」

「あー、酒じゃないかな。俺も飲んだことはないけど。この世界の法律ってどうなってんだろ。もしいけるなら飲んでみてもいいかもなぁ。…お?帰ってきたぞ。」

「…アクア、どうしたの?」

 

経緯を聞くと、自分を崇める教団の人からお金を借りようと神官に声をかけたが、後輩の女神を信仰する信徒だったらしい。それを聞いて気まずくなり帰ろうとしたところでお金を恵んでもらったそうだ。あまりの惨めさにショックを受け、目が死んでしまっている。

 

「アクア、元気出してよ。とりあえず冒険者登録はこれでできるんだから。」

「うぅ…グス…うん…」

「じゃあ、さっきも言った通りルミからでいいぞ。その間俺はアクアをなだめとくから。」

「あ、うん、わかったよ。…アクアは悪くないからね?」

 

少しの間は再起不能だろうアクアと、カズマを置いて、ルミはこの世界の通貨であるエリスを1000エリス受け取って改めて受付に向かった。

 

「お姉さーん。てすうりょう持って来ましたよー。」

「あら、さっきのお嬢さん。それなら、カードを作りましょうか。でも、もう一度言うけど、本当に無理はしないようにね?じゃあ少し説明するわ。まず、冒険者と一般人の違いはわかるかしら?」

「んー?強さとかかな?」

「うーん、少し違うわね。実は、強さは冒険者になろうが一般人だろうがどちらでも経験値を手に入れれてレベルが上がってちゃんと強くなるのよ?でも、一般人は厳密にはわからないのに対して冒険者ならステータスとして数値化されるわ。あ、レベルっていうのは…そうね、強さの目安かしら。急に強くなった時…壁を超えた時とでも言ったらわかりやすいかしら?そういう時にはレベルが上がってるの。それと、カードのこの欄を見てくれる?」

「スキル?」

「ええ。さっき言ったレベルが上がったりするとスキルポイントが手に入るのだけれど、それを使ってスキルを覚えられるの。そうね…プリーストのヒールっていう回復魔法とかがスキルの例としてわかりやすいかしら。」

「じゃあ、特別な技が欲しかったら冒険者にならなきゃいけないんだね。」

「剣士の人の技みたいに、練習して習得してたりして初めから特技がある人もいるけど、基本はそういうことね。後、倒したモンスターがこの欄に記載されていくから、これを見せればクエストを達成できてるかの確認を私たちができるようになるの。逆に言えば、カードがないとクエストをクリアしてるのか判別できないから、クエストを受けたいなら冒険者になってほしいってことね。」

「ふむふむ…ふぁ…」

「…」

「…?」

 

あくびをしてしまったせいなのか、数秒間沈黙が続いたのが気になって、ルミは受付嬢を見た。

 

「?…おねーさん?えっと、ごめんなさい、あくびしちゃったの…」

「…あ、いえ…えっと、そんなことないの。あくびくらい悪いことじゃないわ。むしろかわい…コホン、とにかく、続きを説明するわね。」

「???」

「じゃあ次は…と言っても、カードの説明は大体終わったからあとは記入ね。この紙に身長、体重や年齢、それに身体的特徴…まあ、髪の毛のこととか目の色とか、他の人から見て見分けがつきやすいところをこの欄に書き込んでほしいの。わかる範囲で大丈夫よ。」

 

紙とペンを渡されて、必要事項を書いていく。

 

「んーっと、身長と体重はわかんないな……年齢は10歳で…特徴は黒い長めの髪で茶色っぽい目かなぁ…あ、あと耳が少し変わってる?………書けました!」

「はい、じゃあ預かるわね。……うん………うん…うん?ねぇ、ルミちゃん…であってるわね?この耳が少し変わってるってどういうことなの?」

「あ、それはこういうことです。」

 

ルミは髪で隠れている耳を見せた。

 

「なんか、私の耳って少し変わってるみたいで、カズマがけもみみ?とか言って…お姉さん?どうしたの?」

「………はっ!い、いや、なんでもないわ…ええ、なんでもないわよ…似合っててすごく可愛い…いやいや…そうよ…私はアクシズ教徒なんかになんてならないんだから…誘惑には…え、ええっと、じゃあこのカードを触ってくれるかしら?それで、ルミちゃんのステータスが表示されるわ。」

 

そう言われて、ルミはカードに触れると、それぞれの欄に数値が入っていく。ただ、それがどの程度のレベルなのかはわからないので、一度受付嬢に渡すことにした。

 

「この能力値って、いいの?」

「あ、ちょっと待ってね。…えっ⁉︎えぇぇぇぇ⁉︎…あ…んー…?これは、なんて言ったらいいのかしら…驚くぐらい凄いんだけど、素直に喜べないかも?えっと、まず、歳の問題もあると思うけど、他の能力値に比べて知力は低め。それと運も人並みだけど、他の能力値はとても高いわ。大人の冒険者よりもかなり上かも…だけど、問題が器用値の表記がおかしいことなの。それと、そのせいか職業の欄も自動的におかしな文字が出てて…固定されているみたいで選択肢はこれしかないみたいだし、それに、初期のスキルポイントがほとんどないわね。この能力値ならいくらかあってもおかしくないと思うんだけど…」

「んー?あれ、ホントだね。職業のとこは後でカズマとアクアに読めるか聞いてみようかな…」

「まあ、それはともかくとして、能力値は高いから冒険者として自信を持てると思うわ!本当なら、この能力値は器用値次第でアークウィザード以外ならつけるぐらいなんだけど…知力が低めとは言っても平均値はあるし…あ、それはともかく、職業は分かり次第伝えてね。もしかしたら新職業が現れたのかもしれないし。では、冒険者ギルドへようこそ!これから頑張って下さい!応援してますよ!」

「あ、はい!よろしくお願いします!」

 

そうしてカードを受け取って二人のところに戻っていった。

 

「ただいまー。」

「おかりー。どうだったの?」

「能力値は高いんだって。知力と運はそうでもないって言われたけど。あと、職業の名前とかが見たことない文字だった、って………うぁー…ごめん、やっぱり外出てる…」

「微妙に酒の匂いで酔ってきたのか?おんぶとかいるか?」

「ううん、出るぐらいは一人で大丈夫だよ。二人は登録してきてよ。待ってるから…」

 

 

それから十分ほどたつと、カズマが微妙にトボトボとギルドから出てきた。理由を聞くと、何か目立った能力値があればいいなと思っていたが、冒険者に向かないと言われるぐらい低かったかららしい。運は異常に高かったらしいが。

 

「それで、カズマは少し落ち込んでるんだね。」

「運以外取り柄がないって言われたからな…そうも言われたらこんな気分にもなる…しかも、アクアが見ての通り調子に乗ってるからな…」

「すごく高い能力値で上級職についたって言ってたっけ。あーくふりーすとだっけ?」

「アークプリーストな。…見ての通りカードをみんなの前でなんかいじってるよ。あ、そういえばカードの文字がなんか変なんだって?」

「あ、そうだ。見てもらおうと思ってたんだ。ほら、これー。」

「うわ、能力値凄い高いな…ん?器用値がなんか文字化けみたいになってるな…んで、職業は…何故かこれは日本語だ…うたわれるものって書いてるぞ。」

「うたわれるもの…」

「聞き覚えあるか?」

「…ううん、ないかな…」

「そうか…聞きなれないが、もしかしなくても転生特典関係のゲームの名前とかだと思うんだけどな。それでも思い出せそうもないか…それが職業ってことになるのか?」

「多分そうじゃないかな。スキル欄はまだレベルが5だからか何もないけどね。」

「…あ、本当だな。あれ?なんでもうレベル上がってるんだ?」

「なんか、モンスターとか生き物とか野菜とかを倒したり食べたりしてたら上がるんだって。受付の人が言ってたよ。魂がどうとかみたいな。」

「あー、そういえばそんなことも言ってたか。三年この世界にいた割には低い気がするけど、そんなに上がりにくいのか?」

「それは多分みんな…ああ、ギギリたちね?がほとんど敵を倒してくれてたからかな。私は弓で追い込むだけの時が多かったし。鍛えたりしてたら多分もっとレベルが上だったんだと思うけど、基本的には悠々自適にのんびりしてたからねー。お家の屋根の上でひなたぼっこしたり、みんなとかくれんぼしたり。」

「なんか楽しそうだな。そういうのも。魔王を倒せたら、俺ものんびりするのもいいかもなぁ。そういや、風呂もあったしルミのとこで過ごすのも悪くないかもな。」

「私のお家に来るなら、毎日狩りを手伝ってもらうよー。」

「あー…それは慣れるまできつそうだなー。グータラ生活ってわけにはいかないか。」

「グータラはダメだよー。アクアがなにかいってたじゃん。なんだっけ?ひきにーと?」

「ルミ、それは忘れてくれ…その言葉は俺に効く…真っ当に生きているならそんな言葉は聞かないはずだし本当に忘れてくれていいからな…?」

「?…うん、わかった。ところで、明日からどうするの?クエストとかって行くの?」

「いや、俺たちはほぼ一文無しだからな。装備とかも整える金もないんだ。あ、ルミの武器貸してくれないか?そしたら、すぐにでもクエストを受けれるかもしれないし…」

「あ、うん。いいよ。何使うの?」

「うーん…使いやすそうなのはこの中だと刀か?その小さめのやつ。二本あるし片方借りていいか?」

「うん、いいよ。どうぞー。」

「ありがとな。…うん、重さ的にこれなら俺でも振れそうだ。ちょっと素振りを………あれ?おっかしいなぁ…」

「どうしたの?」

「いや、なんていうか振ろうとした瞬間に体から力が抜けたっていうか…どうなってるんだ?」

「はー、やっぱり称えられるのはいい気分になるわね。ん?あんた何やってるの?まさかルミの刀を奪おうとか思ってないでしょうね?」

 

カズマがルミの刀を見つめているのをみて、外に出てきたアクアが声をかけた。

 

「俺はそんな鬼畜じゃないからな⁉︎子供から物を取り上げたりしないって!…って、そうだ!このルミの刀なんだが、俺が振ろうとしたら力が抜けたんだ。アクアは何か心当たりとかないか?」

「あーそれ?転生特典だからじゃない?基本的に、転生特典はそれを受け取った人にしか本来の力を引き出せないようになってるから。」

「あー、そういうことか…そうなると装備を整える金が必要になって来る…すまん、ルミ。しばらく一緒にクエストに行くのは無理そうだ…多分働いて装備の分は稼がないといけない。」

「ううん、全然大丈夫だよ!あ、でも私もどうしよう…カズマとアクアがいるから大丈夫とも言ったから一人で行くのは止められるかも…私も一緒に働こうかな…力には自信あるし…」

「そうか…本当ごめんな。…とりあえず今日からは馬小屋生活確定か…タダで泊まれるらしいし…」

「お金がないのは今はどうしようもないもんね…私もそれでいいよ。」

「ちょっと、女神であるこの私が馬小屋でなんて眠れるわけないでしょ?そこんとこちゃんと考えて!」

 

……………

 

「すー…すー…」

「くかー。」

「………ルミはまあ、こういうのも慣れてるだろうからわかるんだが、結局アクアもグッスリじゃねえか………俺も寝るか。」




うたわれるもの用語
小さめの刀…ルミの持っている刀の中では小さな刀。モデルは偽りの仮面及び二人の白皇の登場人物、オウギの刀。
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