この人ならざる『ヒト』に祝福を!   作:ヴァニフィア

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会話がすごく長いです。


ウィズは悪い人じゃないよ!

「スー…スー…」

「おーい、ルミー。そろそろ時間だから起きろー?」

「ぅ…ぅ〜?あ…時間?」

「ああ、そろそろ真夜中だ。墓場に向かうぞ。」

「ふあ…ぁ…ふぅ、起こしてくれてありがと、カズマ。」

「ルミは夜には弱いからな。まぁ本当なら寝てた方がいいんだろうけど。寝る子は育つって言うし。」

「そうかもね〜。まあ、とりあえずクエスト向かおっか…」

 

……………

 

「あ、起きたのですね。」

「うん、ごめんね?夜はどうしても弱くて。森の中には明かりなんてないから日が沈んだらすぐ寝るってのが多かったんだ。」

「なるほど、松明もないということだな。」

「ルミは普通に街での生活に慣れてたりしますからあまり実感はわきませんけど、色んなところでそういう生活の影響を受けてたりするのですね。」

「あー、かもしれないね。」

「じゃあ向かいましょうか!それにしてもなんだか冷えてきたわねー。大物でもいるんじゃないかしら?」

「おいアクア、フラグ立てんな。ゾンビメーカー一体討伐で帰るんだからな。とりあえず行くぞ。」

 

……………

 

「敵感知に引っかかったんだが…なんかピリピリする…しかも、数が少し多いぞ。全部で四、五体いるような気がするんだが…」

「カズマ、そういう時は直感を大事にした方がいいよ。危ないって思うなら、一度見つからないようにしながら様子を見よう?」

「ああ、そうするか。」

 

音を立てないように五人は墓場を移動して行く。少しすると、青白い光が見えてきた。近づくにつれ、それが魔法陣から出ていること、さらに、その隣に人影がいることを確認できた。

 

「…?めぐみん、どうしたの?」

「いえ、その………あれは、本当に、ゾンビメーカー、なのでしょうか…違う気がするのですが…」

「どうする?こんな真夜中に墓場にいるなんてアンデッドに違いないだろうが…とりあえず慎重に近づいて様子を…」

「あぁぁーーーーーっ!!!」

「ちょ、アクア⁉︎」

「おい待て!」

 

カズマが相談していると、人影を見たアクアが飛び出してしまった。

 

「リッチーがノコノコこんなとこに現れるとは不届きな!成敗してやる!」

「や、やめ、やめてえぇぇぇ!いきなり現れて魔法陣を壊そうとしないでくださいいぃぃぃ!」

「うっさい!どうせロクでもないこと企んでるんでしょ!こんなものこうしてやるわ!」

「ど、どうしたのアク…ん?ああぁぁぁぁぁ!」

「お、おいルミ⁉︎」

「ルミまでどうしたんですか⁉︎」

 

アクアを止めている人影を見て、ルミもまた走って飛び出していった。

 

「ダメ!やめてアクアー!」

「ちょ、ルミ離しなさいよ!邪魔しないで!」

「お願いです止まってください!これは成仏できずに彷徨っている魂たちを天に還すための魔法陣なんです!ほら、空に向かって登ってるでしょう⁉︎」

「リッチーのくせに善行なんてしなくていいのよ!そんなことはプリーストに任せてあなたはおとなしく浄化されなさい!ターンアンデッド!」

「きゃー!身体が消えちゃう⁉︎成仏しちゃうー!」

「止まって!止まってよアクア!聞いてよー!」

「リッチーなんてこの世から消えてしまえば」

「かくなる上は…やぁっ!」

「へ?ぶべらっ⁉︎」

 

アクアが魔法を使うために突き出していた手を掴み、そのまま地面に叩きつけた。

 

「一本背負いが決まったぁぁぁ⁉︎」

「ア、アクア大丈夫ですか⁉︎」

「きゅ〜………」

「完全に気を失ってるな…打ち所がよっぽど悪かったのか?」

「あ、危ないところでした…あ、ルミさんですか?」

「「「へ?」」」

「うん、そうだよ。ごめんね?アクアが言うこと聞いてくれなくて…」

「お、おい、ルミは知り合いなのか?リッチーと?」

「ああ、待って待って!ウィズは悪い人じゃないよ!私の友達だよ!」

「リッチーが友達って、どこで知り合ったんです?」

「ああ、そうそういるものではないだろう。」

「え?普通に街で会っただけだけど…」

「街⁉︎」

「お店やってたよね?」

「あ、はい…その、ずっと赤字なのですけど…」

「マジですか…」

「えー……リッチーってダンジョンの奥とかにいるもんなんじゃ…」

「いえ、そんなところで暮らす理由は無いですよ。リッチーは元々人間ですし…あ、すいません、自己紹介がまだでした…私はウィズと申します。おっしゃる通りリッチーです。」

「ウィズってリッチだったんだね。あれ?でもお店赤字だったんじゃないの?」

「ルミ、リッチではなくリッチーですよ。最上位のアンデッドモンスターです。」

「そうなの?って、アクア大丈夫かな…ちょっとみてるね。」

「とりあえずは目覚めさせないようにしてくれよ。話が進まないような気がするから。」

 

ルミは自分が気絶させてしまったアクアを介抱し始めた。

 

「ところで、あなたは先ほど彷徨っている魂たちを天に還していると言っていたが本当なのか?」

「あぁ、そういえばそうだ。そこで気絶してるのが言ってたけど、そんなことそれこそリッチーの仕事じゃないだろ?何か理由はあるのか?」

「えっと…私がリッチーというのは言った通りなのですが、リッチーはアンデッドの王、なんて言われるくらいですから魂たちの声が聞けるんです。ここに埋葬された方々は集団墓地ですからあまり裕福でない方が多く、ロクに葬式もしてもらえなかった人が多くて、天に還れずここを彷徨っています。一応アンデッドの王な私としては、定期的にここにきて、天に還たがっている子達を送ってあげているんです。」

「…なんというか、すごくいい人ですね…」

「ああ…アンデッドでなければ教会のシスターとしてもやっていけそうだ。」

「少しホロリときた…だけど、それって街のプリーストに頼んだりしないのか?普通ならそっちの仕事だろ?」

「そ、その…この街のプリーストさんたちは………えっと、お金がないと…後回し、というか…その…あの…」

「つまりこの街のプリーストは金儲け優先のやつばっかで、金を貰えないこんなとこには寄り付きもしないってことか…」

「え、と…そう、なります…」

「ここにプリースト代表みたいなやつはいるけど、たぶんこいつがアクセルの街で一番金使い荒いしな…ゾンビを呼び起こすのだけでもなんとかならないのか?俺たちが来たのだって、ゾンビメーカーを倒してくれって依頼だったし。」

「あ、そうだったんですか…その、私の魔力に当てられちゃって勝手に目覚めちゃうみたいなんです…ここで埋葬される人たちが迷わず天に還ってくれれば私がここに来る理由は無くなるんですけど…ど、どうしましょう?」

 

カズマは少しの間考えてから、アクアの方をチラッと見た。

 

「そうだな………ルミ、アクアを起こしてくれないか?」

「え?あ、了解!」

「んで、起こしてる間にみんなに言っておく。多分アクアのことだ。街の中でウィズが暮らしてるのを知ったら、俺たちの目の届かないところでウィズを浄化しにかかる可能性がある。ここにいた理由だけ説明して、墓地の魂を浄化すればウィズは近寄らなくなるっていう感じに話を合わせてくれないか?アクアを会わせるにしても、今すぐじゃさっきの二の舞になるだけだろうからな。」

「そうですね…アンデッドとはいえ、これほどの良識人をみすみす失うのは忍びないです。」

「うむ、エリス教徒としては本来許されることではないが、私も同意見だ。」

「そういうことだ。ウィズ、すまないが店でジッとしてたりしてしばらくアクアに見つからないようにしてくれないか?」

「はい、そのぐらいなら大丈夫です。お店の在庫はまだありますし、その、少しアクアさんが怖いので…」

「じゃあ、そういうことで…」

「…ん〜…んにゃ⁉︎」

「カズマ!アクアが起きたよ!」

「何?何が起こったの⁉︎」

 

アクアは目を覚ましてキョロキョロと周りを見回す。

 

「アクア、お前は負けたんだ。お前が気づかないうちに意識を刈り取られたんだよ。」

「な、何言ってるのカズマ?め、女神である私がリッチーなんかに負けるなんて…やだもーカズマさんったら冗談ばっかりクスクスー…え?本当に…?」

「ならどうして気絶してたんだって話になるだろ?」

「………そ、そんな………」

「そこでなんだがな、アクア。お前がこの墓地の魂たちをしっかり浄化するんなら、こっからは離れてどこかへ行ってくれるそうだ。どうする?」

「………わかり、ました………浄化します………」

「よし、それで決まりだな。これでここには近づかないんだな?」

「はい、ここから離れることにします。それでは。」

(またね、ウィズ!今度遊びに行くよ!)

 

……………

 

「女神が…負けるなんて………」

「いつまでも落ち込んでいても仕方ないですよ?」

「でも、私はいったいどうすればいいの…アンデッドにも勝てないなんて………」

「………カズマ、ちょっと言い過ぎたんじゃないかな?ほら、めぐみんがカズマの口撃力はすごいって言ってたし。」

「いいんだよ。明日になったら戻ってるって。」

「それにしても、戦闘になるなんてことにならなくてよかったですよ…」

「ああ、相手はリッチーだものな。」

「そんなに強いのか?」

「ウィズは強いとは思うよ。お店の魔道具で過去を見たんだけど、なんかすごい魔法使ってたし。相手を氷漬けにするような魔法。」

「カースド・クリスタルプリズンですかね…氷系統の最上位魔法でしょう。それに、リッチーですから、あちらにその気があれば触れただけでも各種状態異常が付与されたり魔力や体力を吸い取られますし、魔法に対する耐性だって高いです。アクアの浄化が少しでも効果があったのだって本来ありえないですよ。」

「なんであんな奴の話なんかするのよ!私負けたのよ?あいつの話なんてせずに私を慰めてよ!目一杯甘やかしてよ!」

「ア、アクア、とりあえず落ち着け。アンデッドにだっていい人はいるかもしれないだろう?」

「でも…でも…」

「本当にウィズは悪い人じゃないよ!いい人なんだよ?お店を開くのはあんまり向いてない気はするけど…」

「先入観だけで物を見るなって言うだろ?アクアも一回落ち着いて、次に会った時はちゃんと話を聞けばいいじゃないか。」

「でもアンデッドなのよ?」

「この世界にいて人間に危害を加えてないなら立派にこの世界の住人だろ?見守ってこれ以上道を外れないようにする方がよっぽど女神らしいと思うぞ。」

「…そ、そう?女神らしい?ほ、本当に?」

「それが実践できればな、女神様?」

「…な、なら少しくらいそうするのも、悪くないかもしれないわね…」

「機嫌治ったか?じゃあ帰るぞー。」

「そうですね。もうここに用はありません。」

「そういえば、なんでここに来たんだっけ?」

「何をいってるのだルミ。ゾンビメーカーの討伐………あ。」

「…原因は解決したけど討伐はしてねえぞ…」

 

こうして、カズマパーティーは初めてのクエスト失敗を経験した。




アクアはカズマにおだてられた!
アクアはレベルが上がった!
アクアのカズマへの信頼が2上がった!
アクアはウィズへの恐怖心を覚えた!
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