【完結】朝起きたら辺り一面焼け野原になっていたんだが   作:ゆっくり実験

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プロローグ

 

 

 朝、目が覚めたら辺り一面が焼け野原になっていたんだが。

 

 …え?なに?

 

 

 

 ◇

 

 

 

 意識が覚醒して、まず初めに思ったことは世界が静か過ぎるということだった。

 目覚めを促す鬱陶しい鳥たちの鳴き声も、ただ垂れ流しにされているだけだったテレビ番組の雑音も、それどころか一緒に暮らしているはずの家族の声や生活音すら全く聴こえて来なかった。まだ眠っているのだろうか。

 

 そんな日もあるのかもしれないと自らを無理矢理納得させてから、なんともなしに目覚まし時計に目をやる。すると、どうやらその時計は電池が切れたのか故障してしまっていたのか、ある時間を指し示したままピクリとも動かない。まあ、今は夏休みだしとその時計のコトは一旦思考の隅に追いやる。今は何時くらいなのかは分からないが家族がまだ起きていないとなると自分が早起きし過ぎているのだろう。…何故かカーテンを開けて外を確認する気にはならなかった。

 

 自室で簡単に身支度を整えてから、音を立てないようにゆっくりと居間へと続く階段を下っていく。静かに居間を通り抜けて洗面所へ向かいながらふと首を傾げた。

 居間にあった時計の示す時間は、自室の目覚まし時計と同じではなかっただろうか。

 

 違和感がその存在感を増していく。

 

 洗面所で鏡に映る仏頂面の少女の顔を睨みながら、その頬っぺたをひねってみる。痛い。

 分かったことは自分の頬の触り心地が良いというクソみたいな事実と、この静謐に過ぎる世界が夢ではないという現実だった。

 

 嫌な予感が鎌首をもたげていく。

 

 足音を立てないように、それでいて急ぎ足で両親の部屋へと向かう。ドアの前で深呼吸をしてからゆっくりと扉を開けていく。そうしてできた隙間から中を覗いて。

 

 そこには誰もいなかった。

 

 崩れ落ちそうになる足をなんとか支えて、居間へと駆け戻る。リモコンを乱暴に操作してテレビをつければ映るのは灰色の砂嵐だけ。

 

 チャンネルを変える。砂嵐。

 

 チャンネルを変える。砂嵐。

 

 チャンネルを変える。砂嵐。

 

 チャンネルを変える。砂嵐。

 

 チャンネルを変える。砂嵐。

 

 リモコンを投げ捨てて玄関へと走る。転びそうになりながら乱暴に靴を履いて。

 

 そして、外へと続くはずの扉を開いた。

 

 その先には────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ああ、地平線が見える。

 

 何処にでもある住宅街だったはずの其処には、視界を遮るものは何もなくて。

 

 

────燃え尽きた荒野が何処までも続いている。

 

 家屋どころか、生物の気配さえ無く、草木すら一本も生えていない。

 

 

────そうして理解する。

 

 もうこの地球上(ほし)には、自分以外の生命体(いのち)は一切存在しないのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 茫然と恐ろしくも美しい景色を眺める。

 

 こんな結末(おわり)が、────

 

 

 

────コツと、靴の音が厳かに響いた。

 

 

 

 

 

 

 勢いよく振り向いたその先、そこに()たのは人間のようなナニカ。

 くすんだ緑のタキシードを身につけ、ぼさぼさの長髪にシルクハットを被った彼はにこやかに、そして獰猛に嘲笑いながら此方を見据えていた。

 

 

 

 

「ようやく一仕事を終えたと思えばこれだ。不燃ゴミなど放っておいても良さそうなものだが、まあ然したる手間でもない。イレギュラーには消えてもらうとしよう」

 

 

 此方を見据えながらも、ちっとも気にかけてはいない様子で、ただ確認するかのように独り言を呟く彼は。

 

 

「────レフ・ライノール・フラウロス」

 

 

────この終わった世界の原因、人理焼却の黒幕たる魔神王ゲーティアを構成する一部、魔神柱フラウロスの名を冠する災厄の使いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 そうして俺は思い出した。

 

 人理修復の旅路、七つの特異点を巡る物語を。

 

 旅の果てを、マシュ・キリエライトの答えを、ドクター・ロマンの決意を、そして、人類最後のマスターである藤丸立香の────

 

 

 そうだ、俺はこの物語を知っていた。その顛末を知っていた。

 

 ならば、為すべきことは単純だった。

 

 姿勢を変える。

 呼吸を整える。

 

 では、声高らかに謳おうか!

 

 

「他の人間はどうなってもいいんで、私のことは見逃してください!」

 

 

 我が宿願たる生存を!

 

 土下座からの命乞いであった。え?プライド?他者への思いやり?…生憎と売り切れなのです。

 

 

 

 レフ教授は冷たい目で俺を見下している。だがこちらも無策ではないのだ。

 

「わ、私は知っているのです!貴方達の三千年にも及ぶ悲願(計画)を、その末路(失敗)を!」

 

 叫ぶ。言葉を畳み掛ける。

 

「私ならばその結末を変えることができる。だから、そう────

 

────魔神王ゲーティアよ、私と契約を結びせんか?…お互いの、願いの為に」

 

 

 

 

 

────そうして俺は、全人類を生け贄に生き残りを賭けた最終決戦(命乞い)に挑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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