【完結】朝起きたら辺り一面焼け野原になっていたんだが   作:ゆっくり実験

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本日二話目。

魔神王の不可解にも思える行動や主人公の矛盾があるような行動にも理由がありますので気長にネタばらしをお待ち下さい。プロット的には三話後くらいに。





第四特異点

 

 

 

 第四特異点、魔霧満ちるロンドンの街。

 

 藤丸立香達カルデア一行は、魔霧を生み出していた黒幕達とその後に現れた災厄達を撃破し、回収し損ねていた聖杯を取りに戻り、

 

 

────其処で、絶望に遭遇した。

 

 

 数多の英霊がまるで虫けらのように蹂躙されていった。傷つけるどころか、ソレの髪一本動かすことすら出来なかった。圧殺され、焼殺され、斬殺された。

 そこには藤丸立香と、マシュ・キリエライトしか残されていなかった。

 

 

────グランドキャスター、魔術王ソロモンと名乗ったソレは、あらゆる希望的観測を踏み潰した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…マスター、下がってください!」

 

 それでも、人類最後のマスターたる少年と、彼の相棒である盾の乙女は、恐怖はあれど、それを飲み下して、毅然と敵に立ち向かっていた。

 諦めはしなかった。いつだって前を向き続けることが道を開くと信じていた。

 

 魔術王は彼らを見つめると何かに想いを馳せるよう目を細め、ゆっくりと指先を持ち上げた。

 

 初めての動きに彼らが警戒を強める中、上空に魔方陣が浮かび上がり、そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

────空から少女が落ちてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…は?」

 

 ぽて、と軽い音を立てて地面へと墜落した意識の無い少女にマスターたる少年は困惑しつつも、急いで駆け寄った。

 罠である可能性は勿論考えたが、彼は目の前で倒れている人間を見捨てられるほど冷酷にはなれなかった。

 ドクターに精査を頼もうとするが、通信が()()()()()()だということを思い出す。

 

 地面に転がされた少女はどう見ても普通の人間だ。…いや、普通の人間?

 

 黒い髪をした少女の服装は、彼が生きていた時代のもの、つまりは現代のものだった。

 

 

 

「────選べ」

 

 厳かに魔術王は告げる。その言葉に思考を断ち切られた少年は顔を上げる。

 

 そうして突きつけられるのは究極の選択。

 

「その人間を救うためにはお前達がそれを連れてカルデアへ帰還する必要がある。だが、その娘には私の魔術が仕込んである。そのまま連れ帰ればカルデアの終わりは避けられない」

 

 魔術王はなんら心を籠めることなく、ただ客観的な事実を述べるように告げた。

 

 

 

「簡単な二択だ、人類諸君。

 

 たった一人を救うために、世界を滅すか。

 世界を救うために、たった一人を殺すか。

 

              ────選べ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 藤丸立香は目の前の人間を見捨てることをしなかった。

 

 彼の答えを聞いた魔術王は憐れむような視線を彼らに向けると、消えるように去っていった。

 

 同時に、おそらくカルデアで試行し続けていたのであろう強制的なレイシフトが始まり、彼らは慌てて少女のことをドクター達に説明しながらその手を掴んだ。

 

 

 

 そして、レイシフトが無事終了すると同時に少女の右腕から赤い光が迸る。

 マシュは咄嗟に宝具を展開するが、それは意味のないことである。

 何故ならそれは攻撃ではなく、世界を繋ぐ魔術であった。

 

 

 魔術王は少女を擬似的なマスターにすることによって、彼女と()()()()()()()()()。彼女の全ては彼の手の中にある。

 

 つまり。

 

 

 

 凄まじい魔力が吹き荒れ、空間が捻れ狂う。カルデアの防壁は意味を為さず、門は当然の様に開かれた。

 

 

 

 

────魔術王が、人類最後の砦に顕現した。

 

 

 

 

 

「では、返してもらおう」

 

 手を一振りしただけでそこにいた全ての人間の動きを停止させると、我が物顔で魔術王が転移したのはドクター・ロマンの目前。

 

 指先を向けるとドクターの手から指輪が浮き上がり、勢いよく魔術王の手に飛び込んでいく。

 

 ドクターの悲痛な声無き叫びに一瞥をくれただけで、魔術王は倒れた少女の側へと降り立った。

 

 

 十の指輪、最後の一つが魔術王を名乗る者の手に渡った。それは極小でも繋がっていた人類の勝利への道筋が閉ざされたことを意味していた。

 

 

 

 

────人類の終了は、ここに確定されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 確定した勝利に何の感慨も感じさせない声で、

 

「戻るぞ。いつまで狸寝入りしているつもりだ、()()()()?」

 

 魔術王は少女に告げる。

 

 

 そして、少女はその蒼い瞳を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

「おはようございまーす!」

 

 こきこきと首を鳴らしながら挨拶。挨拶は大事ですね。

 

 場所はカルデア、時刻は不在(ふめい)、レポーターは眠れる少女こと()でお送りしまーす。

 

 つーかマスターって。どこら辺が?

 サーヴァントとマスターの関係って言っても、ラインの繋がりによって居場所を把握するサーヴァントシステムの一部のみを特化させたものに過ぎないし、なによりマスターに対する敬意…、いやそれは当たり前か。

 

 あー。

 

「じゃあ終わらせて帰りましょうか」

 

 ゲーティアはそれに対して何も答えずに外への門を開いた。

 

 お?

 

「皆殺しにしないんですか?」

 

「もはやその価値もないだろう」

 

 ふーん。まあ、いいけど。

 

 ゲーティアの隣に立つ。口すら動かせない状態のカルデア職員の皆様方に、にっこりと笑って別れを告げる。

 

 

「ではでは、皆様ご機嫌よう。良き終末をお過ごし下さい」

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 災厄は去っていった。

 だが、その箱(カルデア)には希望も残ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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