【完結】朝起きたら辺り一面焼け野原になっていたんだが   作:ゆっくり実験

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人間

 

 

 私は、生まれた時から自分ではない誰かの記憶(ねがい)を所持していた。

 故に私には、生まれた時から自由(じんせい)というものが存在しなかった。

 私はいつだって、見ず知らずの他人の願いの為に生きなければならなかった。

 

 だから、私は世界(すべて)が嫌いだった。

 

 なのに。

 思い出(記録)の中の彼ら(オレ)は笑っているのだ。

 

 見ず知らずの他人の為に、当たり前のように自分の命を懸けていた。

 絶望の直中にあってなお、彼らは笑い合うことを止めていなかった。

 自らの意志で以て未来を勝ち取り、憎悪や嫌悪ではなく愛と希望で繋がる善良な人々。

 

 

 だから、私は、俺は────

 

 

 

 ────カルデアの人々が、大嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

「第六特異点、クリア~」

 

 ぱちぱちと、やる気の無い拍手をする。ゲーティアはそんな俺に見向きもしないで自分の仕事に没頭しているが。

 

「いいんですか?彼ら、そろそろここに到着しちゃいますよ?」

 

 やはり無言。

 

「おーい、無視しないでくださいよー。暇なんですよー」

 

 一年もこんな何もない空間で過ごすのは流石に辛すぎた。結局、俺には聖杯は与えられず、神殿での暇潰しの日々。

 まあ、監視しやすいってのはあるんだろうけどもさ。

 

 一年も一緒にいれば彼とも打ち解け…、られてはいなかった。まあそうだろう。俺の方は大分慣れてきたんだけどな、死にかけるのとか。

 

 しかし、暇だ。やはり暇だ。…仕事邪魔してやろうかな。

 

「死にたいか?」

「ひぇっ」

 

 そう思った瞬間の台詞。怖い。

 

「まあまあ、人殺しは良くないことですよ?」

 

 こちらに顔を向けないまま、ゲーティアは不愉快そうな顔で言う。

 

「…殺されないと思っているのなら勘違いだぞ。

貴様に対処すれば()()()が起きるが、あくまで面倒という程度だ。手間をかけさせるな」

 

 あまりに意味の無い脅しだ。俺が自分の命に価値など見出していないと知っているだろうに。俺が死んだところで損をするのは魔神王だけだ。俺の死なんぞ彼の仕事が増える程度の意味しか生み出さない。

 試しに自らの首を両手で締め付けてみる。

 するとゲーティアはあからさまに溜息を吐いてようやくこちらに視線を向けた。

 

「世界よりも自分の命が大切なのではなかったのか?」

 

「はい?そりゃ世界よりは自分の命の方が大切ですよ?人間として当たり前の答えでしょ?」

 

 何を言うかと思えば。お前もよく知っていることだろうに。

  

「…人間か。醜い存在だ」

 

「…」

 

 それこそ本当にお前がよく知っていることだろうに。人間の醜さ、人間の救われなさを許容できなかったからこそ、お前はこの大事業を計画したのだから。

 

 なのに、ゲーティアは自らが発した言葉に納得できていないようだった。

 

 

 …そうか、そういうことか。

 甘いとも言える行動の理由。

 

 彼は俺の記憶を読み取った。

 だから知ってしまったのだ。

 

 マシュ・キリエライトの辿り着いた答えを、

 ソロモン王、ドクター・ロマンの選択を、

 人類最後のマスター、藤丸立香の戦う理由を、

 そして、魔神王ゲーティアの、

 いや、人間としてのゲーティアの結末(答え)を、

 命を────

 

 

 

 

 つまり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────悩んでいるのですか?

 

 

 

 地球(ほし)を創り直したとして、

 

 その世界の存在(ニンゲン)は、

 貴方が憐れんだ(愛した)人間なのかを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人間となったゲーティアは命を知った。人であるからこそ人々の王たれるとも。

 未来の自分の答えを知ってしまったのだ。それも今の自分の計画を否定しかねない答えを。

 

 誰に説得されたところで彼は考えを変えなかっただろう。

 未来の自分の答えを聞いただけだったら戯れ言だと聞き流しただろう。

 

 でも、知ってしまったのは全てだった。自分が答えを見つけるまでの過程。

 答えを得るに至った理由、輝かしき生命たる彼らの生き様さえも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハ、何を言うかと思えば。まさか私が計画を中止するとでも?…馬鹿馬鹿しい。

 

 私は王として、世界の全てを修めてみせよう」

 

 

 吐き捨てるように言って彼は自らの仕事を再開しだした。

 俺など眼中にないかのように。

 

 

 …ならいいんですけどね。

 

 

 彼が目指す世界。

 終わりの無い世界。

 悲しみの無い世界。

 

 そんな世界を望む誰かも確かに存在するのだろう。彼らのように強くは在れない人間たち。

 

 まあ、そいつら皆死んでるんだけどね。

 

 

 

 

 ざまあみろ。

 人間なんて皆死んでしまえばいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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