IS Never Say Never   作:蟹男

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絶対と聞くとダチョウ倶楽部を思い出す作者。これは書いて見るしかない!
そう思って行き当たりばったりで書き始めました。


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何処の町に行っても酒場というのは必ず有る物だ。人の歴史はそっくりそのまま酒の歴史と言っても良いんじゃないかと思うぐらいそれは生活から切り離せなくなっている。――まあ俺は偉い学者さんでも何でも無いから勝手にそう思っているだけだが。

 

とはいえ、こんな田舎町に有るような酒場にまともな物を求めちゃいけない。確かに値段は安い事は安いが、大半はその金額にすら見合うかも怪しい一応アルコールが入っていると言うだけの飲み物だ。だがそれで良い、いや、それが良いのだ。俺達の様なロクデナシが人目を気にせず飲めるのはこんな場所だけだし、これこそが気持ちを尖らせてくれる。

 

「よーう、飲んでるかぁー?」

 

酒瓶を片手に持ちながら眼鏡を掛けたキザったらしい男に近づく。するとその男は溜息を付きつつグラスの中を空にしてこちらを振り返った。

 

「飲む気になんかなりませんよ、全く……」

 

「ああん?どうしたジャックぅ?まーさかお前さんこんなやっすい酒は口に合わねえとでも言うつもりかぁ?」

 

「ま、それも無いとは言いませんが……それより明日には出発でしょう?二日酔いにならないででちゃんと操縦できるんですか、ダニー?」

 

「クハハ、言うじゃねえか!だけどこれも悪くねえんだ?何せただ真っ直ぐ進んでるだけなのに勝手に弾が避けてくれるからな。クハハハハ!」

 

一頻り笑い終えた所で向かいの席に座る。確かにコイツの言う通りもうすぐお仕事が待っているのだ、そろそろ酔いを醒ますとしよう。

 

「なあ、水くれ水。お前のその瓶中は水なんだろ?」

 

「はいはい、どうぞ飲んで下さい。……それにしても、やりにくい世の中になりましたね。何処へ行ってもISだISだと煩いったらありゃしない。お蔭でこんな所で飲む羽目になりますし――」

 

「おいおい、俺達見てえな軍人くずれの傭兵なんか元々こんなモンだろうが。それによ、そう悪い事ばかりでも無いってのはお前も知ってるじゃねえか。今の相棒が手に入ったのもそのお蔭だしな。全くIS様々だぜ」

 

「ああ、それはそうかも知れませんね。戦闘機とかの価値が下がった所為で我々でも手に入るようになりましたし、そういった企業からも優遇して貰えますしね。お蔭であと十年は乗り物にお金を掛けなくて済みそうですよ」

 

「だろ?何事も良い方に考えなきゃ損ってもんだ」

 

ポジティブに考えれば世の中は楽しい事ばっかりだ。女尊男卑?結構な事じゃねえか、面倒な事を全て女がやってくれるなんてな。

 

「しかし、どうするつもりなんです?今回の仕事……ISのコアの奪取、一つで良いとは言われましたが目的の基地には三機程配備されている筈。既存の兵器では絶対にISを倒せない――こればっかりは私も真実だと思うのですが」

 

「……絶対、絶対ねえ。下らねえな、やって見なきゃどうなるか分かんねえっての。幸い今回は基地そのものはどうでも良いって話だからな、やり様は幾らでも有る。この為に新しい武器まで買ったんだから役立てねえと」

 

「何か考えでも有るんですか?……私には勝ち目なんか殆ど無いように見えますが」

 

「――ちょっと賭けをしようや、ジャック。負けた方が全員分の酒代奢りでな」

 

あっちの方で盛り上がっている奴らを含め、合計で六人分。幾ら安い酒場とはいえ大の男達がこれだけ騒いでるんだ、そこそこの値段になるだろう。絶対に負けたくは無いが、俺には秘策が有る。懐を漁り一つのサイコロを取り出した。

 

「これで決めようぜ」

 

「私はそういうリスクが高い事はしたくないんですが……」

 

「お前はそういうと思ってな、特別なのを考えてあるんだ。実はコレ、ちょっと細工がして有って普通にやったら絶対に一が出るようになっててよ。このサイコロを振って一が出たらお前の勝ち、それ以外なら俺の勝ちだ。どうよ、これなら文句ねえだろ?」

 

「……成程、一がISでそれ以外が我々。そう言いたいんですか?はいはい分かりました、乗りますよ」

 

「良っし決まりだ。そんじゃ行くぜ!」

 

大袈裟に手を振りかぶる。

 

「あ、そうそう。ちゃんとサイコロは振って下さいね?ゆっくりとテーブルに置いて一以外だ、っていうのは無しですよ」

 

予想外の出来事に動きが止まる。

 

「チッ……止めだ止めだ。おい、野郎共!出発するぞ」

 

席を立ち仲間に声を掛ける。向こうが一枚上手だったと言わざるを得ない。悔しいので後ろ向きに奴の座っている席目掛けサイコロを投げ捨て出口に向かう。カラン、という音がジャックの居る辺りから聞こえてきた。

 

「これは……。フッ、フフフッ。やっぱりあなたに付いて来て正解でしたよ」

 

「ん、何か言ったか?」

 

「いえ別に。特別に賭けは無しにしてあげますよ」

 

「おう、そりゃ有難え。んじゃ、出るか」

 

彼らが店を離れ店員がその後片付けをしていると、一つのグラスに何かが入っているのに気付いた。適当に放り投げられた結果グラスの中へ入り込んだらしい。内側の壁面に当たり予期せぬ動きを強いられたサイコロの出た目は六、本来出る筈だった数字とは正反対の顔を上に向けそこに佇んでいた。

 

翌日、襲撃する基地の近くへと移動した俺はそこでようやく作戦を発表した。

 

「まあやる事は簡単だ、ジャック、お前は出来るだけ遠くから狙撃しろ。後で武器は渡しとく。そんで戦闘機に乗る奴は俺に着いて来て近づいたら適当に撃て。残りは隙を見て中に忍び込んで暴れろ。そんで危なくなったら帰って来い。そんだけだ、これならお前等にも分かり易いだろ」

 

「うーっす。にしてもそんなんで大丈夫っすか、ボス?ISと戦うってのに」

 

「だから大丈夫じゃねえと思ったら勝手に逃げろ。ま、ヒヨッコとは年季の違うって所見せてやんな。それじゃ、解散!」

 

一緒に戦う相棒に乗り込み、エンジンを掛ける。温まるまでの間に無線をジャックへと繋ぎ様子を尋ねる。

 

「あー、あー、こちらダニー。どうだい、調子は」

 

「まずまず……と言った所です。そろそろ始めても?」

 

「もう五分くらい待ってくれ、そしたら何時でも突っ込めるからな。始める時はちゃんと教えてくれよ」

 

「ええ、撃つ直前には」

 

「オーケイ、それじゃ」

 

発進する準備が整ったので空へと舞い踊る。ちゃんと後ろに付いてきている様で一安心だ。敵から見つからないギリギリの辺りまで来た所で、タイミング良く通信が入る。

 

「こちらジャック、そろそろ始めます。建物の外には今の所二名。ISのパイロットと基地の職員のようです」

 

「よーし、やってくれ。分かってるな……職員の方を撃て」

 

「了解。回線は繋ぎっぱなしにしておきますよ」

 

パアンッ!という音が通信機から響いてきた。少し驚かされたが向こうはその比では無いだろう。使っていた銃は確か口径がかなり大きかった筈だ、直撃していたのなら顔面はザクロの様に弾け飛んでいるに違いない。

 

「良し、命中。さっきまで随分と偉そうにしてた女が物凄く慌ててますね。顔も真っ青だ」

 

「流石だな、そのまま状況を報告しててくれ。狙うのは一般人だけで良いからな」

 

混乱が収まらぬ基地へ一気に近づきミサイルや機銃を撃ちまくる。目標はIS操縦者では無く基地全体だ。既に展開は終えているだろうから、下手に攻撃を集中させてもその機動性の高さですぐに避けられてしまう。案の定、発射した攻撃の大半はISにより無力化され残りはどうでも良い場所へと着弾した。

 

「これで終われば楽なのによ。全く、面倒な事だ」

 

更に事態は悪い方へと転がって行く。異変を聞きつけた別のIS持ちが基地から出てきてこちらの姿を捉えたのだ。

 

「聞こえますか?どうやらもう一機戦場に加わる様です。スコープで確認した所、射撃戦を得意とする奴の様ですね。ただ、混乱は収まっていないお蔭でこちらの人間も基地内部に潜入する事が出来ましたよ」

 

「ナイスだ、俺の代わりに褒めておいてくれ。今の所順調だな」

 

「私からだって声なんか届きませんよ。ま、取り敢えずあなたを信じておくとしますか」

 

報告ではこの基地に居るのは三機、その内二機こちらを迎撃するという事はもう一機は内部で活動するという事か。始めっから全戦力で来られてたら危なかったが、所詮は素人に毛が生えた連中だからそんな判断出来る訳無い。通信を別の戦闘機に乗る仲間に繋ぐ。

 

「目標は今出て来た奴だ!ロックはしないで勘で撃て!」

 

その言葉と共にミサイルが放たれる。正確な狙いを付けられず飛んで行ったそれは殆どが直撃するコースに入らなかったが、それが幸いし敵のISの動きを止める事に成功した。動きながら狙いを定めるとミスを生み建物に誤射する危険性が有るし、最悪の場合自分が盾になって基地からミサイルを守るという事も考慮しているのだろう。

 

素晴らしい自己犠牲の精神だ、涙が出そうになる。勿体無いのでそんな事はしないが、代わりに近づきながらの機銃の連射をプレゼントとした。

 

殆ど効果が無いのだろう、こちらを振り向きすらしない。そしてほぼ至近距離とも言える所まで来た時に、この日の為に特注した武器の引き金を引いた。

 

「流石俺、完璧だな」

 

ダメージが無かったので避けなくても良いと油断していたのだろう、それは完全にISを捕らえ動きを封じ込めた。さっきから迎撃の為に細かく動いていた所為で余計に身動きが取れなくなったらしい。今回俺が使ったのは、強靭な繊維で作られた特殊なネットランチャーだ。引き千切るなどまず不可能、刃物を使っても切断は難しい。網目も細かいから実体弾は発射出来ないし、そもそも武器を持つことすら難しい絡まり方だ。もしかしたらシールドも誤作動してくれるかもな。

 

これで一機戦線離脱。そう思ったその時、ドォン!という爆発音が聞こえてきた。仲間がエンジンをやられたらしい。

 

「すみません、ボス。俺は此処までのようです」

 

「そうか、今まで有難うよ。悪いが最後にもう一働きして貰えるか?」

 

「人使いが荒いですね。地獄に落ちますよ?」

 

「入れくれたら良いけどな。ま、先に行って掃除でもして待っててくれ」

 

通信が切れると黒煙を上げながら自身を攻撃した敵に向かって突っ込んでいく。背後には建物が有る所為で躱す事も出来ず、そのISは戦闘機の突進をその身に受け絶対防御を発動させる事となった。

 

「コレが俺からの手向けだ。受け取ってくれ、お二人さん」

 

その地点へ向けてミサイルを撃つ。既に事切れていたであろう仲間と操縦者の女の子を仲良く焼き尽くす。後に残っているのはISのコアだけだ。

 

丁度黙祷を終えた頃に最後の一機が姿を見せる。真っ直ぐこちらに突っ込んでくる所から考えるに、これまでとは違う近接戦に特化したタイプの様だ。相性は悪いと言わざるを得ない。

 

「お出ましですね、最後の一体が。機体のあちこちが血に染まっていますし、どうやら中に潜入した人達は仕留められてしまった様です」

 

「うわー、おっかねえなあ。酷い事する奴も居るもんだ、こんな奴に近づいてられっか、よっ!」

 

エンジンを全開にしスピードを上げる。ISの最も恐るべき点は急発進や急加速、そして急旋回がGを無視して可能であるという事だ。その所為でまともに照準に捕えられない。だが有る一点、最高速度という面においてはまだこちらの方が上回っているだろう。何せ特別にカスタムした機体だからな。

 

見る見る内に離れて行く距離。すると突然、見慣れぬ相手からオープン回線で通信が入った。

 

「待て、貴様!恥ずかしくないのか!?非戦闘員まで巻き込むなど……この卑怯者が!」

 

「ップ、プハハハハハ!姉ちゃん、それマジで言ってんのか?戦場に卑怯もクソも有るかよ!まあ仮に俺が卑怯者だってんなら……自分が安全じゃないと戦わないお前等は臆病者って所かな?」

 

「何だと……!この――」

 

強制的に通信を切断する。さぞかしお怒りの事だろう、更にスピードを上げているのようだ。このまま追い掛けっこするのも楽しいがあんまり離れすぎるのも良くない、そろそろケリを付けるか。

 

反転し基地の方へ向き直りミサイルを発射する。目標はネットに捕われ未だにその場を離れられない惨めなISだ。その事に気付いた目の前の相手は一瞬躊躇うが仲間を助けるのを選んだらしく、俺から離れてそちらへ向かう。何とか追い付いたものの、彼のブリュンヒルデじゃ有るまいし近接専用のブレードを用い無傷でミサイルを撃墜するという訳には行かない様だ。此処からでもシールドが作動し爆炎が歪んでいるのが見て取れる。

 

俺はそれに構わず二発、三発とミサイルを撃つ。良いぞ、そのまま動くなよ?こっちだけを見ていろ。

 

「よっ、と。全く、私は非力なんですからこんな重い物運ばせないで下さいよ」

 

「そう言うなよ、止めは譲ってやるからよ」

 

ISに使われる装備はかなりの数が出回っている。どの武器も様々な特徴が有るが、当然ながら共通しているのはISに有効なダメージを与える事が出来るという事だ。そして意外と忘れがちであるが、それらの武器は生身でも使用可能なのだ。

 

俺のミサイルに気を取られている所に、背後からジャックの強烈な一撃が叩き込まれる。不意を突いたその一撃は見事に二機を捉え共に絶対防御を発動させた。

 

「っし!これで終わりだな、ちゃんと仕留めてくれ。……あ、そうそう。ネットが絡まってる方は生かしといてくれよ?」

 

「え?構いませんが……一体何故?両方共始末した方が面倒が無いし回収できるコアも増えるのでは?」

 

「おいおい、あんまり追い詰めすぎると可哀想だろー?少しぐらい誤魔化す材料を残しといてやろうぜ」

 

「……成程、その卑劣な発想は相変わらずです。とてもあなたに敵いそうに有りませんよ」

 

「酷えなあ、こんな愉快なお兄さんを捕まえて。ま、頼んだぜ」

 

残ったミサイルを適当に発射し中の人間を全滅させてから基地に降り立つ。突き刺さった戦闘機に軽く祈りを捧げついでにコアを拾い、唯一の生き残りの方へ向かう。こちらを強く睨みつけてくるがそんな物はどうでも良い。絡まったままのネットを使い首を絞め気絶させ、もう一個のコアを回収する。絡みついたネットを外すのも忘れない。

 

「作戦終了!さっさと帰るぞ!」

 

「では、私も回収して下さい。スタートした地点に居ますので」

 

ジャックを拾い上げた俺は依頼主の所へ向かう。落ち合う予定の場所はまだ少し遠い。

 

「それにしても、コレは快挙と呼べるんじゃないですか?何といっても初めてISを他の兵器で撃退したわけですから。歴史に残せるかもしれませんよ、ダニー・ゲーブルという名を」

 

「……ハッ、興味ねえよ。それに、仲間がこれだけやられてるのにそんな偉そうな事言えるか。元々は一つだけ回収するつもりだったんだ、あの網で生け捕りにしてよ。捕まえてからすぐに撃って仕留めていれば誰も死なずに済んだかもしれねえのに。俺もまだまだだな」

 

「私も判断が遅れましたからね、同罪ですよ。それでも結果としてコアを二つ手に入れたんだから悪くないんじゃないですか?」

 

「こんな物の為に、命が四つ……か。ま、終わった事考えても仕方無い。精々大事に使ってやらねえとな」

 

この日、ヨーロッパのとある基地が壊滅した。様々な憶測が流れたが、公式な発表としてはIS操縦者の一人が突如乱心し基地を壊滅させたという事になっている。犯人は既に確保し事情をこれから聞き出す予定……と言うのがマスコミ各社から報道された。ISが他の兵器に敗れたという情報は一切その中に含まれてはいない。

 

使い手のモラルや兵器の杜撰な管理ばかりがクローズアップされ、真の犯人は見つかる事は無かった。だがそれも仕方無い事だろう。どんなに報道の自由を日頃から謳っていようと、ISによって生まれた騒動から収まりつつ有る世界を再び混乱の渦の中に叩き込む勇気など誰にも有りはしないのだ。

 

真実に気付いている者は少なくない。もし明かされるとすれば再び世界に変化が訪れる時なのだろう。今はまだそれが何時訪れるのか定かでは無いが、その準備を進めている人間は少なくないのである。

 

絶対が絶対で無くなるという事、その影響は計り知れない。

 




さーて、どうしようこの後の展開。
活動報告にアンケートを乗せたのでもし宜しければご協力お願いします。
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