またまた紅魔館にて。ここは前も言ったように妖怪屋敷だが、一人だけ人間が住んでいる。その名は『十六夜咲夜』。時を操る(主に止める)特殊能力を持っており、どこぞの吸血鬼が思い浮かぶが、元ネタがまるっきりそれらしい。二つ名が『完全で瀟洒な従者』というつまり完璧なメイドさんということだ。本来ならば居眠り常習犯の紅美鈴に対して叱り、妖精メイドたちを仕切る完全なメイド長。
これが皆が知っているであろう十六夜咲夜のこと
―――――だが、現実は違った。
紅魔館廊下内にて、咲夜は妖精メイド数人(匹)を集めて、廊下の雑巾がけを行おうとした。
「はい、じゃあ皆!バケツに水がたっぷり入っているからそれに雑巾を絞って拭いてちょうだい」
「「はーい」」
妖精メイドたちは咲夜に言われた通りに雑巾を次々に水バケツに入れてから絞り始める。そう言う咲夜は幻想郷には珍しきモップを持っている。それを水につけるためには大きな別のバケツが必要なので、妖精メイドたちのすぐそばにそれが置かれていた。
(私も掃除しなきゃ、お嬢様に大目玉喰らっちゃうわ)
いつも通りの危機感を感じながら咲夜はモップを大きめの水バケツにつけようとしたが、妖精メイドたちが雑巾を絞っていたためか床が水浸しになっていて滑ってしまう。
「きゃっ!」
バッシャーン!という盛大な音を立てて、咲夜と周りにいた妖精メイドたちはびしょ濡れ状態となる。
「あ~~!お嬢様に怒られちゃう~。へっくしゅん!」
咲夜たちは急激な寒さに思わずくしゃみをする。これはまずいと思って咲夜は服を取りに行こうと立ち上がるが、結局床が水浸しのままなのでまた足が全て顎からぶつける。
「いった~~」
「全く何をしているんですか咲夜さん……」
「め、美鈴……」
門番という仕事を一旦休み、趣味のガーデニングをしている最中の小鉢の水を替えようと廊下を歩ているところを鉢合わせたのだ。
「足にダメージを受けすぎました……捻挫レベルです」
「はぁ……おんぶしてあげますから早く着替えましょう」
「はーい」
美鈴に背負ってもらって咲夜は自室にまで移動する。咲夜は片足を引きずりながら別のメイド服へと着替えようとクローゼットを開ける……が、中から大量の衣服がクローゼットに収まり切れなくなって飛び出してくる。
「きゃああ!?」
「ちょおおおお!」
美鈴は心配で咲夜の部屋にいたが、突然咲夜が視界の中から消えて服のみが残ってしまった。
「な、何してんですか!?ってか服多っ!」
「うぅ……どじった~~!」
ドジっ子メイド長の一日は常に悲劇が纏わりついていた。
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