魔弾の王と戦姫 魔弾が紡ぐ未来   作:開閉

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 二つを混ぜた話です。


第十二話 竜好きの戦姫と緑青の幼竜

「もうすぐね。久々に会えるわ」

 

「……キュウ」

 

 レグニーツァの公宮の一室で穏やかに待つ美女。ジスタードの南部にある公国、ポリーシャを治める戦姫、ソフィーヤ=オベルタス。

 くるくると緩やかに流れる金色の髪に、ベリル――緑柱石の瞳と穏やかな雰囲気を宿し、長身の見事なスタイルを足元まで存在する、薄緑のドレスやその身に纏う宝石は彼女の魅力を引き出していた。

 そして、彼女の手には彼女の瞳と同色の宝石と黄金の輝きが美しい、輪と円環が組み合わさった神秘的な造形の杖がある。これは彼女の武器だ。

 それと、他にも彼女の胸元に諦めた表情で項垂れてるゼニスとは違う、緑青色の鱗が特徴の飛竜の子供――名はルーニエも目立つ。

 

「向かう場所がブリューヌで良かったわ」

 

「キュ~……」

 

 ――自分には全然良くない。

 そう言ったルーニエを女性は撫でる。彼女がレグニーツァに向かっているのは、ジスタードを出る前に親友の容体をこの目で見ておきたかったからだ。

 目的地がブリューヌであったからこそ、ここに向かっても差ほど不自然にはならなかった。

 

「最近は調子が良いらしいけど……」

 

 彼女は諦めから、発することも止めたルーニエを撫で続けながら、思案も続ける。もしかして治療法でも見つかったのだろうか。そうだとすればそれは喜ばしいことだ。

 そのおかげで、話し合いすることが出来る。仮に病気が改善されてなければ、会うことが叶わなかったかもしれないのだから。

 ――でも、どんな医師を見つけたのかしら?

 今までかなり手を尽くしてはいたが、それでもほんのちょっと抑える程度の成果しかなかったと聞いていた。それがいきなり改善の兆しを見せた。

 

「魔法みたいね……」

 

 それにもう一つ気になる点もある。体調の改善は手紙を通して知ったが、書いてあったのは何故かそれだけで、『誰』が『どんな方法』で良くしたのかは一切書いてなかった。

 ――まるで、それを隠しているかのように見えるけど……。

 そうする理由が分からなかった。普通は名医に会ったとでも記せば良い筈なのに。何か知らせたくない訳でもあるのだろうか。

 無理に問いただしたくないし、可能なら聞けるぐらいで良いだろう。

 

「……それにしても、あっちは大丈夫かしら?」

 

 ライトメリッツに一旦視線を向ける。自分の親友――エレンの現状は自分を不安がらせた。

 ――確か、ティグルヴルムド=ヴォルン。

 内乱の真っ最中にあるブリューヌのアルサスを治める伯爵の名で、エレンに捕まって捕虜となり、行動を共にしている人物だ。

 聞いた話では、様々な欠点こそ有れど民のためにしっかりと悩み、命を懸ける人物。それと、弓を軽蔑しているブリューヌにしては、珍しい弓の使い手で天才的な技量の持ち主だとか。

 

「そういえば、エレンは彼が一本の矢で上空にいた飛竜を射落としたって、言ってたわね」

 

 これは親友の冗談だろうと女性は思っている。

 

「こっちも今の所は問題無さそうだけど……」

 

 今の所なのは、レグニーツァが攻め込まれる可能性が有るからだ。エレンと因縁のある戦姫、エリザヴェータが。普通ならば、それは難しい。

 

「あの言葉があるのよね……」

 

 ジスタードの国王が言った台詞、『ジスタードの国益をこそ第一に考え、軽挙妄動は慎むようにせよ』。この台詞のある部分を使えば、簡単に動けてしまうのだ。

 

「……杞憂であればいいけど」

 

 そうなってくれないのが世の常、不安で仕方なかった。

 

「――駄目ね。久しぶりに再開するのに、こんな雰囲気はいけないわ」

 

 今の気持ちを振り払う。そのために、ルーニエからすれば何故かの理由で幼竜を撫でる。

 ――……逃げたいよう。

 そんな心境は、残念ながら届かなかった。どういう訳か主から無理矢理預けられ、逃亡しようにも場所がよくわからないので無理がある。

 ――誰か助けてー!

 幼竜の悲痛な叫びが、客室に響き渡った。

 

 

 ――――――――――

 

 

「……ん?」

 

 そんな哀れな叫びが鳴った瞬間、この公宮で寝泊まりしている青年が耳をすませた。

 

「どうした? マサト?」

 

「いや、今なんか、悲鳴みたい声が上がったような……気のせいかな?」

 

「わたしには聞こえないが……?」

 

 九つの年の差のある二人は、耳に意識を集中させて部屋を確かめるも、悲鳴らしき声は聞こえない。

 

「やっぱり、気のせいか。それよりも、今日は思わぬ経験を得れる機会だな」

 

「うん」

 

 サーシャ、オルガ、エリザヴェータに続く四人目の戦姫。光華の耀姫(ブレスウェート)の称号を持つ女性、ソフィーヤ=オベルタス。持つ竜具は、光の力を宿す錫杖とか。

 彼女はサーシャに面会しに来たらしく、体調にはまったく問題ないため、手続きなどの時間は掛かったが、それ以外は難なく通った。今頃は、会っているかもしれない。

 そして、サーシャに頼んで、その後にソフィーヤに余裕があればオルガと彼女を軽い雑談をさせてもらうことになっている。ただ、その際は自分もいないとならない。自分とソフィーヤの話に入らせてもらうからだ。

 

「しかし、ソフィーヤ殿は何の用で来たのだろうか」

 

「さぁな。アルシャーヴィン様はオベルタス様とは親しい仲とは言ってたけど」

 

 しかし、レグニーツァとポリーシャは離れている。親しい相手とはいえ、わざわざ面会の為だけに来たとは少し考えにくい。何かのついでにここに立ち寄ったと考えた方が自然だ。

 

「……どうでも良さそうだ」

 

「正解」

 

 オルガはソフィーヤに興味津々だが、今のマサトは特にどうでも良い。興味が全く無いわけではないが、さっき言った通り、レグニーツァとポリーシャは離れている。親しい間柄そうなので、問題も早々起きないだろう。

 何よりも、今自分が一番気にすべきはエリザヴェータだ。その事に多忙なこともあって、今マサトがソフィーヤに興味を持つ理由が無かった。

 会話も、ソフィーヤはサーシャとの面会が終わったあと、オルガと少し話をするための最低限の事務的なものをして、オルガと交代する。それで終わりだ。

 要するに、マサトにとっては新しい戦姫がサーシャに会いに来た、それだけでしかないのだ。

 

「ちなみに、お前はオベルタス様と会ったことは?」

 

「前に一度だけ。悪い印象は感じなかった」

 

「あるのか」

 

「うん。……だから、オベルタス殿には失礼ではあるが、この恰好で良かったと思ってる」

 

 今のオルガは別人に見せるよう、かつらで違う髪色と髪型になっている。あと、マサトのちょっとした方法で目の色も違う。

 これなら、一度しか会っていない彼女に気付かれる恐れは先ず無いだろう。

 

「念のため、雰囲気もちょっと変えとけ」

 

「……どうやって?」

 

「ほんわか~みたいな感じになれば行ける。多分」

 

「……多分?」

 

 そこは絶対と言ってほしいと思うオルガだった。

 

「……とりあえず、やってみる」

 

「ん。じゃあ、それまで間があるし――」

 

「待って」

 

 オルガと話をしようとしたマサトだが、真剣な表情の少女に止められる。

 オルガは耳を済ませると、何かに気付いたのか、静かに窓の方へと歩き、窓を一気に開く。

 

「――誰だ?」

 

「キュイっ!?」

 

 ――何だ、この鳴き声?

 獣や鳥、虫とも違う奇妙な鳴き声に興味を抱いたマサトが窓を見る。

 

「これは……竜?」

 

 見えたのは、緑青色の体をした、蝙蝠のような一対の翼に、硬質の角や爪、尻から伸びる短い尾を持つ、可愛らしい竜の子供だった。

 

「翼を持つ竜……飛竜(ヴィーフル)と呼ばれる種だ」

 

「何で竜がここに?」

 

 マサトも本で竜についてはある程度知っている。数は少なく、山奥などの人気の無い場所で暮らし、成体の身体は槍や剣、矢を容易く弾き、素材にすることが出来ないほどに堅固だと。

 滅多に遭遇しないはずの存在が、どうして突然公宮に現れたのだろうか。二人は疑問に思っていた。

 ――え、え~と……。

 その竜の正体は、ソフィーヤが連れていた飛竜、ルーニエだった。実はソフィーヤから離れるべく、駄々をこねて客室にとどまったあと、部屋から抜け出し、公宮周りを飛び回っていたのだ。

 

「何処からか迷い込んだか、気まぐれでここまで来た子か?」

 

「多分。その内のどちらかだと思う」

 

 竜は通常、人気のない山奥に暮らしており、滅多に人前に姿を現すことはない。

 なので、二人がそう思うのは無理もない。ソフィーヤが竜が一緒であることを知らないため、尚更だ。

 ――自分を野生と思ってる?

 一方、ルーニエは二人が勘違いしていると知り、この機会を活かそうと考える。

 ――しばらくここにいたる。

 苦手なソフィーヤと折角離れれたのだ。少しの間、そうしても罰は当たらないだろう。

 自由気儘に二人の許可なく部屋に入り、ベッドで丸くなろうとしたが、その途中で止まる。マサトがルーニエの首をむんずと、猫みたいに掴んでいたのだ。

 

「こら、許可なく入ろうとするな。入りたかったら、ちゃんと言え」

 

 ――何だお前! 首掴むな! 離せ!

 手足を振って、じたばたと足掻くルーニエだが、マサトには当たらない。

 

「言、え」

 

 気迫が込められた区切りながらの言葉に、ルーニエは思わずビクッと怯む。コクンコクンと頷くと、入りますと竜の声で言った。

 

「言ったか?」

 

 ――い、言った! ちゃんと!

 冷たい眼差しで確認する青年に、若干怯みながらも幼竜はしっかりと頷く。

 

「そうか。じゃあ――吸収」

 

 黒銃を取り出し、ルーニエの身体に付着している雑菌の生命を体ごと吸い付くした。

 

「良いぞ。入りな」

 

 ――……何だったんだろう、今の。

 許可を貰ったので、とりあえずルーニエは改めて二人の部屋に入室する。

 

「いらっしゃい。あとさっきは悪かったな。けど、自分の場所に勝手に入られるのはお前だって嫌だろ? 人と竜で違いはあるけど、最低限の節度は守らないとな」

 

 ――……まぁ。

 確かにその通りだ。自分だって、寝床やお気に入りの場所に勝手に入られるのはあまり気分が良くない。

 今のでマサトが怒ると怖そう、ちゃんと節度を守りさえすれば良いと分かり、ルーニエは素直に従うことにした。

 

「そっちはオルガのだから、駄目。こっちなら好きに寝転がっていいぞ」

 

 ――分かった、そうする。

 ルーニエはてくてく歩き、マサトのベッドに身体を預けると、ゴロゴロし出した。

 

「ははっ、お気楽だな」

 

「……」

 

「どうした?」

 

 ――な、なに?

 さっきから違和感を感じていたオルガはルーニエに近付くと、まじまじと見つめたり、嗅いだりする。

 

「やっぱりだ。この子、ほとんど汚れてない。それに臭いもキツくない」

 

「そういえば……」

 

 さっきは気付かなかったが、そう言われるとオルガの言う通り、身体が綺麗すぎる。野生にしては妙だ。

 

「本当に野生の子か?」

 

 ――そ、そうだよ!

 鋭い指摘に、ルーニエは焦りながらも頭を上下に振る。

 

「ちょっと怪しいけど……何か悪いことをしたいわけじゃないんだろ?」

 

 ――うん。

 ルーニエはここで憩の一時を味わいたいだけなのだ。危害を加えようなど、そんなことは一切考えていない。

 

「なら、良いだろ。気にする必要もない。その内、自分で帰るさ」

 

「……それもそうか。済まなかった」

 

 追求はしないのなら、問題はない。ルーニエは気にすんなと言い、とりあえずマサトのベッドでゆっくりする。

 その途中、青年と少女が難しいことを話していたのが何となく気になった。何の話と訪ねると、青年はこれからのための大事な話だよと返した。

 ――頑張ってるんだ。

 二人が断片的にしか話さないため、内容はルーニエにはさっぱり分からない。しかし、二人のがマサト、オルガと呼ばれ、一生懸命なのは目を見ればよく伝わって来た。だからだろうか、ルーニエは頑張れと呟いた。

 

「応援してくれたのか?」

 

 ――そう。

 見事に当てた青年に向かって、首を縦に振る。

 

「ありがとう。そうだな……。お菓子持ってこようか?」

 

 幼竜に礼を言ったあと、マサトはそう提案する。しばらく考えていたため、丁度休憩にしようと思っていたのだ。

 この後も頭をしっかりと動かすためにも、休憩や糖分補給は必須。なので、お菓子も貰うことにした。

 ――お菓子! 食べたい、食べたい!

 食欲旺盛な竜としては、断る理由は全く無い。なので、食べたいとお願いする。

 

「了解。じゃあ、お前とオルガ」

 

「あと、マサトの分もしっかりと」

 

「分かってるって。俺もちゃんと食べるよ。あと、お前はここで待っててくれ。目立つからな」

 

 ――そうしとく。

 出ている最中に、ソフィーヤに発見される恐れがあった。ここで大人しくするのが一番だろう。

 

「オルガ。俺が持って来るまで、その子の相手をしてくれる?」

 

「分かった」

 

「お前も暴れたりすんなよ」

 

 分かってると頷いたルーニエを見て、マサトはゼニスのお菓子を貰いに部屋を出た。

 

 

 ――――――――――

 

 

「では、ご案内致します」

 

「感謝します」

 

 何度か面識のある年老いた従僕に案内されながら、女性は親友の部屋へと向かい、その間に話も聞く。

 

「彼女の様子は?」

 

「ここ最近は体調を崩されることなく、最低限では御座いますが、至って健康そのものです」

 

「名医でも発見されました?」

 

「えぇ。ただ、その人物は少々特殊なのですが……」

 

 いきなり、天井から現れた。と言っても、信用出来ないだろうし、こう表現するしかなかった。

 一方、特殊という表現に、ソフィーヤは強い違和感を抱く。一体何者なのだろうか。

 その人物についての話をもっと聞きたいところだが、重要な人物でも有りそうなのでサーシャに聞くことにし、意識を彼女の方へと向けた。

 

「そろそろ……かな?」

 

 懐中時計の予想からサーシャがそう呟くと、コンコンと扉が叩かれた。

 

『アレクサンドラ様、ソフィーヤ様が来られました』

 

「入れて欲しい」

 

『はっ。では、ソフィーヤ様。刻限は半刻までとさせてもらいます。――どうぞ』

 

 六十分の制限時間を貰い、ソフィーヤが入室する。

 

「やぁ、ソフィー。会えて嬉しいよ」

 

「わたくしもよ、サーシャ。元気そうで何よりだわ」

 

 愛称で呼ばれた光華の戦姫、ソフィーは椅子をベッド付近に置いて座り、親友である煌炎の戦姫との抱擁を交わす。

 サーシャもそれに応え、久々の対面に心が満ちるのを感じる。

 それからは色々と他愛のない話をし、少しすると呼鈴を鳴らして従者に果実酒とお菓子を用意させる。

 二人分の葡萄の果実酒と、大麦を焙煎して挽いたはってい粉で作った、シフォンケーキが運ばれる。

 

「あらあら、美味しそうなお菓子ね」

 

「うん、僕も食べるのは初めてのだよ」

 

 これもマサトが提案した菓子のため、まだ食べたことは無かった。

 

「そうなの? それに、貴女の分は小さいわね」

 

 サーシャのは、ソフィーの半分にも満たない量しか無い。

 

「食事の量や物を制限されてるから」

 

 お菓子が食べれるのは最近からで、数日に一度、厳選されたのを少量だけだ。

 

「厳しいのね」

 

「身体の為だから、仕方ないよ」

 

 寧ろ、制限されてる中で菓子まで許してくれるのだ。優しい方である。

「それより食べて」

 

「えぇ」

 

 フォークで先を切り取り、刺して口に運ぶ。しっとりした生地の食感と、他の材料で際立たせた大麦の風味や甘味がとても良い。

 

「美味しいお菓子だわ。良い料理人ね」

 

 ――それと、提供者もね。

 口には出さず、心の中でそう呟くサーシャ。ケーキのあとは果実酒で喉を潤す。ソフィーも同様の順で舌を満足させる。

 

「満足したかい?」

 

 従者が食器を片付ける中、友人に感想を問う。

 

「とても。けど、ルーニエちゃんにも食べさせたかったわ」

 

「じゃあ、後で用意するようにするよ」

 

 サーシャが話すと、片付け中の従者は分かりましたと恭しく一礼。全ての食器を運び、丁寧に退室する。

 

「それにしても本当に元気ね。まるで、病気にかかる以前、とまでは行かないけど、前に見た時よりは遥かに良くなっているように見えるわ」

 

「ふふっ、凄い医師が見つかったからね」

 

「一体、どんな人なの?」

 

「残念だけど、秘密――と言いたいところだけど、教えて上げる。但し、条件が一つ」

 

「それは?」

 

「話の際、その人物が出す要求を飲むこと」

 

「念のため、聞いておくけど……変な要求をしたりはしないわよね?」

 

「当たり前だよ」

 

 と言うか、あれがそんなことを要求するとは思えない。そんな人物なら、とっくにあの世行きである。

 

「どこまで良くなったの?」

 

「発作は無くなって、最低限の運動だけなら何とか」

 

「そこまで?」

 

「まぁ、これが限界だけどね。戦闘は止められてるし。でも、日時生活を過ごすなら問題ないよ」

 

 それでも、前に比べれば遥かに良くなっているのは確実だ。

 

「今度会うか、手紙でエレンにも伝えないと。絶対に喜ぶわ」

 

「だろうね。エレンの状況は?」

 

「早ければ、ミラとの騒動が終わって、今は例の人とアルサスに向かう、ってところじゃないかしら?」

 

「そっか。何事も無ければ、それに越したことは無いけど……」

 

「……確実に一悶着はあるでしょうね」

 

 内乱のブリューヌでそこの大貴族を相手に小貴族と異国――ジスタードの戦姫や兵が介入する。これで、何事も起こらないはずがなかった。

 

「こっちも心配している余裕なんて無いか。――来そうだ」

 

 その一言で、ソフィーは瞬時に悟った。

 ――エリザヴェータ。 ソフィー個人としては、病気で戦えないサーシャに代わってあげたい。

 しかしだ、戦姫である自分が介入すれば、レグニーツァとルヴーシュだけの問題では済まなくなってしまう。

 更に、今は公務中。しかも、ジスタード国王直々の命令。そんな状態で私情で他国に介入する訳には行かなかった。

 ――……こういう時、戦姫って辛いわね。

 国王の次の地位のため、大きな権威を持つも、それ故に自由には動けない。サーシャに申し訳なく思うソフィーだった。

 

「そんな顔しないで。お互い立場があるんだから」

 

「……そうね。ところで、手はあるの?」

 

「あるよ。それが何かは言えないけど」

 

「サーシャ、貴女まさか……」

 

 言えないといったことから、つい自分で戦う気ではないかと思ってしまうソフィー。

 

「違う、僕じゃない。代わりに戦う人がいるんだ」

 

 ――サーシャの代わりに戦う人? 

 自分やサーシャを含めたジスタードに七人いる戦姫は、何れも卓越した武勇と超常の武器の持ち主。例え相手が千の兵でも、打ち倒す実力者ばかり。

 戦姫を倒すには、圧倒的な兵力差か優れた知謀、同じ戦姫をぶつけるしかないと言えるほどだ。そして、エリザヴェータも戦姫の一人。

 その彼女を可能性だけとは言え、倒せる人物がいる。興味を示さない筈がなかった。

 

「誰かは聞けない?」

 

 サーシャの友人として、出来れば色々話したいため、その人物に顔合わせしたい。

 

「残念ながら」

 

 可能なら秘密にしたいのだろうと分かり、潔く諦める。

 

「じゃあ、今度は僕が聞かせて貰おうかな。どうしてここに?」

 

 仕事ではあるが、特に隠す理由も無い。ソフィーは何の抵抗もなく話す。

 

「この前、ブリューヌのアルサスで、エレンとティグルヴルムド卿がテナルディエ公の軍と戦ったでしょう? それが切欠で、わたくしがブリューヌに使者として赴くことになったの」

 

「なるほどね」

 

 ソフィーは外交が上手い戦姫だ。所持する竜具は錫杖型の為、他国で謁見などの際に取り上げられる可能性は低く、それ故に暗殺などには対処しやすい。使者としては、これ以上無い適任者だろう。

 サーシャが納得すると同時に、テナルディエの話をしていたおかげで、ソフィーは一つあることを思い出した。それについて聞くことにする。

 

「サーシャ、唐突だけど、ブリューヌのテナルディエ家に仕えている、竜を調教可能な人物について何か知らないかしら?」

 

「竜を……調教?」

 

 それを聞き、サーシャは眉を潜めた。

 

「エレンからの頼み事で調べているの。レグニーツァは海と接していて、貿易で様々な国の人が来るでしょう? 噂で聞いたことは無い? 僅かな情報でも良いの」

 

「いや、聞いたことが無いよ。竜を調教できる人物だなんて。お伽噺とかじゃないよね?」

 

「違うと思うわ。エレンは二頭の竜を見たって、ちゃんと言ってるもの」

 

 親友は嘘を付く類いの人物ではない。であれば、本当のことなのだろう。

 

「そっか……。けど、ごめん。心当たりが全く無い」

 

 マドウェイや港の一つリプナの長から沢山の話を聞いているが、竜を調教する話は流石に初めてだ。

 

「そう、例の人物は知っているかしら?」

 

「さぁ、僕も今初めて聞いた話だし……。尋ねてみないとわからないな」

 

 マサトは異界人なので、知る由も無いが、それは言えないのでこう誤魔化すしかなかった。

 

「そう。ごめんなさいね、変な質問をして」

 

「別に構わないよ。ただ、竜を操る者なんだから非常に注意した方が良いと思う。万一があったら危ないしね」

 

「えぇ、そうね」

 

 残念ながら収穫は無し。主な話も終わったので、また雑談をしていくと、扉が叩かれる。刻限を迎えたようだ。

 

「時間が来ちゃったね」

 

「そうね、もっと話したかったけど……仕方ないわ」

 

 二人の公国は離れており、互いに忙しい身。しかも片方は病人だ。簡単には会えない。

 

「余裕があれば、帰りの際も立ち寄るわ」

 

「楽しみにしてる」

 

「それと、エリザヴェータのこと、エレンには――」

 

「……出来れば隠してほしい」

 

 向こうにも事情があるはずだ。やむを得ない事態になるまでは余計な心配を掛けたくない。

 

「分かったわ。じゃあ、またね」

 

「うん。またね」

 

 別れの挨拶を済ませ、ソフィーは静かに退室する。

 

「楽しかったな。ふふっ」

 

 親友と久々に直接話せた。小さいが、サーシャにとっては充分過ぎる時間だ。

 

「彼に感謝しないとね」

 

 マサトがいなければ、こうしてソフィーと話せたなかっただろう。その事実が、サーシャを喜ばせた。

 

「――さて。個人の時間はここまで。ここからは」

 

 戦姫として、今迫る脅威に対しての、考え事をせねばならない。

 

「とにかく、できることはしないと……」

 

 動けない自分が出来ることなんて、高が知れている。

 それでも、自分は公主としての役目を精一杯こなす。それが自分の責務なのだから。

 

「僕も彼も……そう簡単に君の思惑通りに進ませる気は無いよ。エリザヴェータ」

 

 雷渦の戦姫がいるであろう、ルヴーシュに向け、煌炎の戦姫はそう言い放った。

 

 

 ――――――――――

 

 

 ――うまうまっ!

 そんな一方、緑青の幼竜が公宮の今日のお菓子、シフォンケーキを貪っていた。ルーニエだ。

 

「美味い?」

 

 ――すっごく!

 ソフィーがいないこともあり、何の心配もなく安心して食べられるのだ。その気分も合わさってか、美味しさが増している気がした。

 

「そりゃ、良かった。提案者としては嬉しいな」

 

 厨房の人達に無理を言って、ケーキを大量に貰った甲斐もあったと思うマサトだった。良い食いっぷりである。

 

「オルガは?」

 

「美味しい。マサトはこんなものも知っているのか」

 

「作ったのは、厨房の人達だけどな」

 

 自分は知っているのを話しただけである。

 

「それでも、マサトが話したから食べられる。だから、ありがとう」

 

 ――ありがとー。

 少女に続き、幼竜もペコッと頭を下げ、次のを瞬時に平らげる。

 ――うぅ、本当に美味しいよぉ……。

 一時ではあるが、久々の平穏の時のお菓子。味も良く、これで嬉しくない筈がなかった。そのせいか感激してしまい、両目が涙が溢れる。

 

「え、えぇ? 涙が出るほど美味かった?」

 

「本当にどういう子だ?」

 

 ――お、驚かせてごめん……。

 びっくりさせてしまったことをルーニエは謝る。果実水で喉を潤し、また別のケーキを口にしようとする。

 

「待った。これ」

 

 マサトは近くにあるジャムの一つを取り出し、ケーキに軽く塗る。

 

「食べな」

 

 ――頂きまーす。

 ジャム塗りのシフォンケーキを一口かじる。苺のジャムのようで、苺の甘味と酸味が良いアクセントになり、普通のとは違う味わいがある。

 

「そっちはどう?」

 

 ――こっちも良いな!

 その後も、幾つかのジャム塗りのケーキの味をルーニエは楽しんでいく。自分の分が無くなる頃にはかなりの満腹感により、暗い気分が吹き飛ぶ。

 ――ごちそうさまー。

 

「沢山食べたなー。ほいっと」

 

 布巾で幼竜の口元に付いた食べ滓を優しく取る。丁寧な扱いに、ルーニエはまたありがとと告げた。

 

「満足した?」

 

 ――とても!

 満面の笑みを、緑青色の幼竜は浮かべる。

 ――ふにゃ?

 硬くはあるが、温かい感触が自分の頭に伝わる。見ると、マサトが掌を当てて撫でていた。

 

「ご、ごめん。つい撫でちゃった」

 

 その可愛さに、マサトはついつい撫でてしまう。嫌がるかと思ったが、ルーニエは特に抵抗を見せず、むしろ続きを促す。

 

「良いの?」

 

 ――良いよ~。

 じゃあ、お言葉に甘えてとマサトは撫で撫でを再開。その内、オルガも気になったのかわたしも良いかと尋ね、ルーニエは許可。男女で幼竜の身体を撫でていく。

 

 ――は~、落ち着く~。

 今日初めて会った人間の掌の暖かい感触を味わいながら、ルーニエはこのままここで暮らしたいなと思う。

 ――ご主人は、苦手な相手の元に送り出すし……。

 主人にはお世話になってるとはいえ、強引に苦手な相手の元に送られて不満に思わないはずがない。

 それに比べ、目の前の相手は厳しいところは有れど、それさえ守れば寛容で優しい。

 主人への不満や現状から、本気ではないが、彼に鞍替えしたやろうかと幼竜は考える。そのさまも可愛らしい。

 

「ははっ、やっぱり可愛な。お前」

 

 ――それほどでも~。

 上機嫌からか、可愛いと言われるも、ルーニエはまったく怒らなかった。逆に機嫌が更に良くなる。

 

「ちょっと抱いても良いか?」

 

 ――や、やり過ぎないなら……。

 撫で撫でから抱き締め。ある人物のことから徐々に危険な予感がし、ルーニエはついつい警戒してしまう。

 

「……どうした? 何か、警戒してるみたいだけど……?」

 

「確かに……」

 

 ――そ、その……。

 おろおろと迷う幼竜。二人がソフィーと同じ行動を取るか不安なのだが、本当に心配そうな表情で見てもいる。十数の間悩み――いっそのこと、言うことにした。

 ――実は……。

 自分が野生ではなく、人に飼われている竜であること。今、色々あって主人ではなく、その知り合いと一緒にいること。その知り合いが苦手な相手であることを動作や鳴き声、表情を駆使して必死に伝えた。

 二人も真剣にかつ、首の頷き確かめながら聞いたため、時間は掛かったが大体を理解する。

 

「え~と……。つまり、お前は誰かに飼われてて、でも今は違う人と一緒にいる」

 

「しかし、その相手は嫌がる自分に何度もお構い無しに迫るので、隙を見てここに来た、であっているか?」

 

 ――そうそう!

 声が読めないので、相手が誰なのかまでは流石に分からなかったが、ほとんど正解のようだ。

 

「そっか……お前も辛いんだな」

 

「にしても、飼い主もその人物も酷いと思う」

 

 苦手な相手に預ける。嫌われてるのに無理に迫る。マサトとオルガはその二人に憤慨し、思わずルーニエに同情する。

 ――分かってくれるの!?

 二人が自分の境遇に同情してくれた。ルーニエは感激のあまり、思わず涙目になって抱き着き、頬擦りしていく。

 

「わわっ、こんなに泣きながら甘えるって……」

 

「本当に酷いということか……」

 

 でなければ、ルーニエがこんな態度を取るはずが無かった。

 ――う~ん、アルシャーヴィン様に頼んで、引き取ってもらえるか聞いてみるか?

 そう思い、ルーニエにその事を話そうとした時、扉が叩かれた。

 

『――宜しいかしら?』

 

 扉の向こうから、穏やかで透き通った女性の声が聞こえる。オルガとマサトその声の主が誰かなのか分からなかったが、幼竜だけは違った。

 ――こここ、この声は……!

 

『わたくし、ソフィーヤ=オベルタスですわ。少し話したいことがあって』

 

 話の時間が来たかと、マサトは答えようとしたが、その途中である光景が見えた。

 

「うわっ、ど、どうした?」

 

 自分を心配する声が出るもルーニエには届かない。緑青の幼竜にとっては、冷たい目をしたマサトと同じかそれ以上に恐ろしい存在の声。

 まるで、伝わる振動で地震が発生しそうなほどに震えており、顔を真っ青で冷や汗が大量に流れていた。

 

「何で、こんなに怯えて……?」

 

 ――入れないで……! 入れないで!

 マサトに必死に抱き付き、涙目で彼女を入れないようにルーニエは懇願する。

 

「え、えと、どうしよう……?」

 

 オルガに意見を求めるが、彼女もどうしたら良いのか判断出来なかった。

 

『あの、都合が余程悪いのかしら?』

 

「え、えと、その……」

 

 サーシャに頼んで用意してもらった折角の話なのだが、この状態では出来ない。二人共困っていると、部屋の向こうから走ってくる音が聞こえた。

 

『あ、あの、ソフィーヤ様! 大変です!』

 

『どうしましたの?』

 

『客室にいるはずの、お連れの幼竜様の姿が無いのです!』

 

『え、えぇ!?』

 

 幼竜という単語を聞き、マサトとオルガの視線がルーニエに向けられる。

 

「お前、もしかして一緒にいた相手って……」

 

「ソフィーヤ=オベルタス……様?」

 

 ――お、終わった……。

 この世の終わりが訪れたかのように、ルーニエはガクッと項垂れた。

 

 

 

 

 

 ――どうしよう、これ?

 現在、自室にいる青年は何とも言えない表情だ。というのも。

 

「る、ルーニエちゃん? そろそろこっちに――」

 

 ――絶対にやだーっ!

 ルーニエが自分の腹に全力でしがみつき、ソフィーの呼び掛けを一切拒否しているのだ。顔も見せようとしない。

 

「ま、マサト殿、どうかルーニエちゃんを説得してください。お願いします……」

 

 ソフィーはマサトの名を口にしているが、これは既に自己紹介済みだからだ。

 ちなみに、その名前とマサトの誤魔化しからソフィーは彼をヤーファ人と認識している。

 

「る、ルーニエ? 一旦、オベルタス様の所に戻って――」

 

 ――マサトは、あの女の味方をするの!?

 涙目でルーニエは訴える。同情してくれたのに、自分よりもソフィーの味方をするのか。ルーニエにとっては、裏切り以外でしか無かった。

 

「……すみません、無理です」

 

 相手が戦姫とは言え、涙目で訴えてくる子供を差し出すのは流石に罪悪感が半端無かった。

 

「うぅ、ルーニエちゃん……」

 

 しょぼんと落ち込むソフィー。そのさまには、戦姫としての威厳がまったく無かった。

 

「……自業自得な気もしますが」

 

「はぅ!」

 

 そこに、ジト目のオルガが容赦ない追撃を仕掛ける。その言葉はソフィーの心にグサリと深く突き刺さる。

 ――遠慮無いな!?

 驚くマサトだが、オルガからすれば、サーシャに続く年長の戦姫。

 さぞかし立派な人なのだろうと思っていたのに、ルーニエに何度も強引に迫っていた相手と知り、印象は下降の一方だった。こんな人と話して経験になるのかと思う始末である。

 ちなみに、オルガの言葉にルーニエはもっとやれ、もっとやれと促していたりする。

 ――このままじゃ、多分、話が進まないな。

 こういう時は強引にでも、話を進めるのが一番である。

 

「と、とりあえずお話ですが……」

 

「え、えぇ。先ずはわたくしから良いかしら」

 

 何時までもへこたれている訳にも行かないので、無理矢理意識を正す。

 

「どうぞ」

 

「では、お言葉に甘えて。サーシャ――アレクサンドラから聞いたけれど、貴方は彼女の医師なのね?」

 

「――はい」

 

 ――愛称呼び。本当に仲が良いんだな。

 とは言え、サーシャはソフィーを信頼しているからといって、自分が彼女を信頼する理由にはならない。

 尋ねられない限り、自分から何かを言う気は一切なかった。そう思っていたが、彼女の口から出た台詞はマサトの意表を突いた。

 

「先ずは、お礼を。彼女の身体を良くしてくれて、ありがとう」

 

 彼女の礼に数秒にも満たない間だけだが、マサトは驚いた。直ぐに平常に戻るが。

 

「自分は自分のやるべきことをしただけです。失礼ながら、他国の戦姫の貴女にわざわざ礼を言われる理由がありません」

 

「えぇ、その通りね。けど、彼女の友人として言って置きたかったの。そのおかげで、今日彼女と話が出来たのかもしれないから」

 

 そう言われると、マサトとしてはその言葉を受け取ることしか出来なかった。自分がいなければ、今日サーシャとソフィーが会えなかったのかもしれないのだから。

 ――まぁ、まだまだ完治への道は程遠いけど。

 それに、仮に完治が出来ても、まだ一つだけ大きな壁が残ってもいる。空気や気持ちを悪くするだけなので、サーシャに言ってないし、この場でも言わないが。

 

「にしても、随分と若そうにも見えるけど、今は幾つなの?」

 

「今年で……二十二ですね」

 

 誕生日はもう過ぎているので、今は二十二だった。

 

 

「……年上?」

 

 身長は平均的だが、顔は童顔なため、自分より下だと思っていたが、年上、しかも二つも上なのは予想外だった。

 彼も気にしているかもしれないので、何時までも驚くのは止める。

 

「ごめんなさいね。若く見えたものだから」

 

「よく言われます」

 

 向こうの世界でもそうだが、此方でも実年齢を知った時は大抵驚かれる。相棒のゼロを筆頭に、サーシャやオルガもそうだった。

 特に、サーシャは一つだけとは言え、年上だったことに。オルガも一回り近く離れていたことに驚いていた。

 

「改めて……そんなに若いのに、難病を治療出来るだけの知識や腕を持ってるなんて、本当に凄いわ。どこで身に付けたのかを聞いても?」

 

「昔、色々と頑張った。たったそれだけです」

 

 それ以外は話す気は無い。暗にそれを示している言い方だが、ソフィーとしては聞くことが無いために何も尋ねなかった。

 

「謙虚なのね」

 

「事実ですよ。他に聞きたいことはありますか?」

 

「あと一つだけ。――竜使いに関して」

 

 その台詞にピクッと、黒銃のゼロは僅かに反応を示したが、マサトはソフィーに集中していたので気付けなかった。

 

「竜使い、ですか?」

 

「えぇ、ブリューヌのテナルディエ公爵は知っているかしら?」

 

「最低限の情報だけなら」

 

 ブリューヌの内乱の兆しが出てから、万一に備えて個人で調べていた。

 良くも悪くも、大物の名。レグニーツァは海路からブリューヌの北方に繋がる場所のため、調べればそれなりの情報を得れたのだ。

 

「その公爵がどうしましたか?」

 

 こうは言っているが、既に大体は読めている。おそらく、テナルディエの元にその竜使いとやらがいるのだろう。

 

「彼の元に、さっき言った竜使いがいるらしいの。貴方は旅をしていたのでしょう? その人について、知っていることはない?」

 

「残念ながら、そんな人については存じません。ただ、そんなことが出来る相手なのですから、気をつけた方が宜しいかとは思います。余計な御心配かもしれませんが」

 

 最高戦力である戦姫の一人に忠告しても、余計かもしれないが、一応はしておきたい。

 

「ご忠告ありがとう。そうさせてもらうわ」

 

「話はこれで全部ですか?」

 

「彼女の友人としては。わたくし個人としては、もう一つ頼みがあるのだけれど――」

 

「その前にこちらの要求をお願いします。貴女の戦姫としての経験を、このレナータに貰いたいのです」

 

「その子に?」

 

 マサトの手の動きと同時に、オルガが一歩前に出て頭を下げる。

 

「この子は、今は使用人ですが、将来の為にも沢山の経験を学びたいのです。国王陛下の次の地位にある戦姫の貴女の話なら、特に良い経験になるかと思いまして」

 

 てっきり、自分に関する要求かと思いきや、使用人――本当は放浪中の戦姫――との会話。これにはソフィーは少し驚いた。

 ――いい人、なのかしら。

 自分よりも他人。余程の思惑が無ければ、早々出来ないだろう。それはともかく、その程度の頼みなら断る理由もない。受けることにした。

 

「わたくしの話で良ければ、喜んで」

 

 マサトは二人の邪魔にならぬよう、抱き着いたままのルーニエと共に距離を取る。

 ソフィーはオルガと正面から向き合い、オルガににっこりと微笑む。

 ――……あら?

 少女を見たソフィーに、少し違和感を感じた。何処かで会ったことがあるような。そんな感じがするのだ。

 しかし、黒の髪と瞳の少女。何処にでもいるだろうし、街や村で見た人と勘違いしているのだろうとソフィーは判断した。

 

「では、お願いします。……ただ、ルーニエのような話は御勘弁です」

 

「そ、それは出さないで貰えると……」

 

 ――……これ、大丈夫かなあ?

 若干の不安な空気が流れながらも、竜好きの耀姫と今は使用人の月姫の話し合いが始まった。

 

「オベルタス様。戦姫になった直後はどうでしたか?」

 

「やっぱり、大変だったわ。忙しい両親に変わって面倒を見てくれた祖父の元で読み書きを学んでいたけど、それでも最初はどうすれば良いか分からなかったもの。騎士の娘だし、戸惑いも多かったわ」

 

 ――騎士の娘。

 ソフィーの生まれや心境を知り、オルガはある程度の共感を示す。自分は騎馬の民の族長の孫だったが、それでも生まれ育った故郷とブレストとの差には呆然とし――逃げてしまった。

 ――……出すな。

 逃げ出した時のことを思い出し、鬱屈した想いが表情に出そうになるも、オルガは寸前で抑える。

 今の自分はあの時とは違う。一から進み直すためにここで使用人として暮らし、ソフィーと話し合いをさせてもらっているのだ。内の負を飲み込み、しっかりと向き合う。

 

 

「そんなに大変でしたのに、どうやって乗り越えたのですか?」

 

「一つは、官僚達の助けもあるわ。でもそれ以上にわたくしの両親の存在が大きかったと思うの」

 

「それは……?」

 

「わたくしの両親ね。いい年をしながらすっごく仲が良いの。娘のわたくしが見て呆れるほどの」

 

「悪いよりは、遥かに良いことだと思いますが……」

 

 急に両親ののろけ話をされ、オルガは少し戸惑い気味だ。離れたところにいるマサトも脳裏にハテナマークが出ている。

 両親の仲の良さと、ソフィーが頑張れる理由。それが繋がらなかった。

 

「わたくし達は統治者。判断一つで統治下にいる民達の人生を大きく変えてしまうことだってあるわ。良い方にも、悪い方にも」

 

 絶大な権力を持つ戦姫。その地位を剥奪するには竜具が離れるか死ぬまで不可能。その気になれば、幾らでも悪事を働け、多くの民達の人生を狂わせることが出来るだろう。

 

「それに気付いて怖くなった時があったわ。そんな時、わたくしは仲の良い両親を思い出して、もう一つ気付いたの。振る舞い次第では、わたくし達は多くの人を苦しませる。だけど、逆に二人と同じ様な人達や、必死に生きている人達の生活を守ることも出来る」

 

 ――……そう、か。

 身近な幸せや努力を理不尽から守る。それこそがソフィーが辿り着いた答え。

 

「そう思えたら、少しずつ恐れが消えていって、戦姫の立場を背負えるようになったの。仕事は次から次へと来るから、苦労や課題は一行に無くならないけど――最近では、自分が戦姫であることを誇りに思えるようになって来たわ。それを教えてくれた両親も、勿論わたくしの誇りよ」

 

 一切の不純物の無い笑みを、ソフィーは浮かべた。

 ――……凄い。

 ルーニエへの態度から、ついつい自分はソフィーが戦姫に相応しい人物なのかと思ったが、それはとんでもない間違いだった。

 欠点はあれど、彼女もまた立派な戦姫の一人で、逃げ出した自分よりも遥かに凄い人物だったのだ。自分の見る目の無さを、オルガは心底恥じた。

 

「参考にはなったかしら?」

 

「……はい、とても。話していただき、本当に感謝します」

 

 光華の戦姫、ソフィーヤ=オベルタス。彼女の意志を知り、自分はまた一つ学ぶことが出来た。オルガは心からの感謝を込め、頭を下げる。

 

「貴女の為になれたら何よりだわ。頑張ってね」

 

「……はい」

 

 最後まで自分の立場を言わないことに、オルガは後ろめたさを感じざるを得なかった。

 

「……あと、ここからは個人として貴方達に頼みたいのだけれど……」

 

 耀姫の表情が柔らかななのから、何処か困ったものへと変わる。離れた場所にいるマサトはルーニエに一旦離れるように言い、二人に近付く。

 

「それはもしかして、ルーニエの……?」

 

「え、えぇ……。貴方達、ルーニエちゃんになつかれてるでしょう? 出来れば、私とあの子の仲を取り持ってくれたり……」

 

「別に良いですが……」

 

 今日会ったばかりだが、ルーニエとはそれなりの仲にもなった。

 自分達の力でソフィーとルーニエの仲が良くなれば、互いの為にもなる。二人は仲を取り持つことにした。

 

「ですが、そもそも何であの子は貴女を嫌っているのですか?」

 

「ある程度知りましたけど、根本の理由が分からないので……」

 

「そ、それは、その……」

 

 気まずそうにソフィーは目を泳がせる。しかし、何時までもこうするのは時間の無駄。

 意を決し、飼い主がライトメリッツの戦姫、エレオノーラ=ヴィルターリアであることと、自分が昔の出来事から嫌われていること、最後に自分とルーニエが一緒にいることになった経緯を話した。

 

「なるほど……」

 

 ――まさか、ヴィルターリア様のとこのだったとは思わなかったな。

 今危機が訪れる切欠と言い、最近何かと彼女の名を聞いている。

 

「ですが、報酬と引換にルーニエを苦手な貴女の元に送るなんて……酷くありませんか?」

 

「そうです。ルーニエは貴女達の玩具ではありませんよ」

 

「……返す言葉も無いわ」

 

 エレンへの批判だが、ジト目で見てくるマサトとオルガに、ソフィーは素直に反省する。

 ルーニエと一緒にいれることだけを喜び、あの子の心情は完全に無視していたのだから。

 

「……そんなに好きなんですか? ルーニエのこと」

 

「……一目で夢中になって」

 

 マサトは大体が読めた気がした。初対面で彼女がルーニエを気に入り、可愛さのあまり強引に抱き締めた。多分、そんなところだろう。

 大抵の者は初対面の出来事で相手を判断することが多い。そして、ルーニエは子供だ。どんな人なのか分からないのに、無理矢理抱き着かれ、強烈な苦手意識を抱いてしまったのだろう。

 ――ルーニエが俺達になついた、というより、俺と親しくなったのも十中八九、それが原因だろうなあ……。

 苦手な相手と常にいる中の不満。それから解放された反動と、苦しみを理解してくれたのが合わさった結果、自分達は短時間の付き合いながらも親しくなったのだろう。

 

「わかりました。出来る限りはさせてもらいます」

 

「そうですね。ルーニエの為にも」

 

「本当に!?」

 

 希望に満ち溢れた緑柱石の両眼で迫られ、マサトとオルガは一瞬怯んでしまった。

 

「ただ、期待はしないでくださいよ?」

 

「今の印象も最悪ですから」

 

「……それは言わないで」

 

 ソフィーの頭に思い浮かぶルーニエとの出会い。見た瞬間に気に入ってしまい、感情が暴走してしまったが故の過ちであり、今日まで続いてしまった。しかし、それも今日までかもしれない。

 

「では、早速。――ルーニエ~、ちょっと来てくれるか?」

 

 ――……良いけど。

 ルーニエはマサトに近付くとぎゅ~っと抱き着く。ソフィーをまったく見ようとせず、ソフィーは落ち込んだが、直ぐに引き締める。

「え~と、ルーニエ。今から、お前とオベルタス様の、まぁ、仲直りの話し合いを始めようかと――」

 

 ――そんなのしないもん。

 ソフィーへの感情からか、ルーニエは即座に拒絶。相当嫌らしい。それを抱き締めを強くする態度で示す。

 ――うーん、これは簡単には行かないな。

 マサトは顔の動きでソフィーに伝えると、思案する。これほど嫌がっていると、一日にも満たない短時間で解決するのは、不可能だろう。

 それでも、可能な限りはやって置くことにする。

 

「ルーニエ、とりあえずだけでも聞いてほしい。オベルタス様は悪い人じゃありません」

 

「わたしもそう思います。欠点は有りますが、それと同じかそれ以上に美点も持っている立派な人です」

 

 ――……本当~?

 しかめっ面のルーニエ。二人はそうは言ってるが、今まで何度も嫌な目に気分になっている幼竜からすれば、欠片も信用できなかった。

 

「ただ、ちょっと可愛がりすぎるところがあるようで――」

 

 ――だったら、それ直せ!

 顔だけをソフィーに向け、ルーニエは文句の鳴き声をあげる。少なくとも、謝罪とそうしない限りは許す気は一切ない。その怒りように、ソフィーはしょぼんと落ち込む。

 

「まぁ、落ち着きなさい」

 

 ここから説明が必要だ。オルガに自分がやると目で伝える。オルガは自分よりもマサトが適任だろうと、首を縦に頷いて了承。マサトは説明を始める。

 

「――ところで、お前はお腹空いたらご飯は食べたい?」

 

 ――……そりゃ、まぁ。

 急に話が変わったことに幼竜は少女、戦姫と同じ疑問を抱いたが、とりあえずそうと頷く。

 

「寝たいと思ったら、寝たい? 退屈だと思ったら、動きまわりたい?」

 

 ――……うん。

 次々と質問されるが、何れもそうしたいのでまた頷いた。

 

「オベルタス様がお前を見て、可愛がりたいのもそれらと似たこと。御しにくいんです」

 

 難しく言うよりは、簡単な例えの方が分かりやすいのは何時でも同じ。特に相手が子供なら尚更だ。

 ――な、なるほど……。

 むむと、その説明に少し唸るルーニエ。自分だって、食べたい時は食べたい。動きたい時は動きたい。寝たい時は寝たい。それらは自由にしたいものだ。

 ソフィーが自分に迫るのも、それらと似たものなら簡単には直せないだろう。

 ――けど~……。

 だからと言って、はいそうですかと簡単に納得出来るかはまったく別だった。

 

「それに、主人がいるだろ? その主人は、お前を撫でたり抱き締めたりするだろ?」

 

 ルーニエはコクンと頷く。忙しいので毎日必ずとは行かないが、余裕があればエレンはそうしてくれる。

 

「オベルタス様もその人も、差こそあれど、お前に向ける気持ちは同じなんですよ」

 

 ――……そっか。

 エレンとソフィーが同じ気持ちで、自分に接している。苦手意識はまだあるが、今までのように思うのには僅かな抵抗があるのをルーニエは感じ、ソフィーを複雑な気持ちで見る。

 その態度を見て、マサトは一定の成果が出たのを確認する。あとは、もう一つだけだ。但し、それはルーニエにではない。

 

「――オベルタス様、貴女はどうしますか?」

 

「わ、わたくし?」

 

「はい。貴女は純粋な気持ちで今まで接して来たのでしょうが、失礼ながら、ルーニエの迷惑になっていたに過ぎません。――どうされますか?」

 

 ――確かにその通りね。

 悪意は無くとも、ルーニエに迷惑になっていたのは紛れもない事実。幼竜からすれば、無理矢理と言っていい。

 謝罪をし、かなり難しいだろうが、今までの態度を改めねば駄目だ。先ずはそれを行動で示さねばならない。

 軽く一呼吸。その間に意識をしっかりと引き締め、幼竜と向き合う。

 

「ルーニエちゃん。今までこちらの都合だけで振り回しただけじゃなく、そっちの気持ちを全部無視して、本当にごめんなさい」

 

 深々と頭を下げるソフィーに、ルーニエはやはり複雑な気持ちだ。

 

「嫌われても仕方のないことだけれど、あなたさえ良ければ、わたくしに一からやり直す機会を与えてほしいの。……勿論、嫌だと言っても、受け入れるわ。その場合、もう関わったりはしないわ」

 

 今までと違う、真っ直ぐな眼差しで見つめるソフィーに、ルーニエは迷う。彼女が本当に謝っているのがよく伝わったからだ。

 

「ルーニエ、しっかりと考えて答えを出すんだ。後悔しないように」

 

 ――……後悔。

 ソフィーがただ謝っただけなら、ルーニエは今までの不満から即座に拒絶していた。しかし、その前のマサトの言葉があり、出来なかった。

 数十の時間、うーんうーんとルーニエはひたすら悩んだ後、こう呟く。

 ――……そこまで言うなら、機会をあげる。

 幼竜のその台詞を、青年は耀姫に伝える。

 

「――ありがとう」

 

 ソフィーはルーニエに微笑むと、マサトに頭を下げ、感謝の言葉を告げる。

 

「後は御自分で頑張ってください」

 

 自分に出来るのはここまで。一新された関係が良いものになるか、悪いものになるかは、これからの彼女次第である。

 

「えぇ、そうさせてもらいますわ。では、そろそろ失礼させて貰いますわね。ルーニエちゃん、もうしばらくだけ付き合ってくれるかしら?」

 

 公宮の誰かにルーニエを預け、ライトメリッツに返す選択も無くはないが、気まぐれな竜が親しくもない相手に従うとは考えにくい。マサトは忙しいだろうし、残りは自分しかいなかった。

 ――まぁ、良いよ。

 これからのソフィーを間近で見る機会だ。この間に彼女とどう付き合うかを決めれば良い。

 

「ルーニエ、お菓子が残ってるけど」

 

 ――じゃあ、最後に一つだけ。

 先の分で結構お腹が膨らんでいるため、一つだけにしておいた。

 ――頂きます。

 時間も無いので、ルーニエは口を大きく空けて自分のケーキを一気に丸飲みする。

 ――ごちそうさん。

 先のもあって、それなりに満足したのか、幼竜は自分の唇をペロンと一舐めした。

 ――本当に直ぐ食べたなー。

 さっきの光景に、流石に少し驚いたマサトとオルガは何となくルーニエの頭を撫でる。

 ルーニエはその感触を少しの間味わうと、ちょっと名残惜しそうに離れ、ソフィーの側に移動する。

 

「それでは、そろそろ」

 

「前まで案内しましょうか?」

 

「それぐらいならさせてもらいます」

 

「そこまでお世話になるのは遠慮しちゃうわ。お気持ちだけ」

 

「では、また」

 

「機会があれば」

 

「えぇ、こちらこそ。ルーニエちゃん、行きましょう」

 

 ――ばいばい~。

 一礼すると、青年と少女は戦姫と幼竜を見送った。

 

「上手く行くだろうか?」

 

「さぁ、それはオベルタス様次第だろ。俺が関与することじゃない」

 

「そうだな」

 

「それよりも経験にはなったか?」

 

「凄くなった」

 

「良かったな。――じゃあ、付き合ってくれ」

 

「――了解だ」

 

 思わぬ良い一時を過ごせた。しかし、何時までのその気持ちに浸る訳には行かない。この公宮の主の戦姫と同じ様に、二人は驚異に備えるべく、部屋に戻っていった。

 

 

 ――――――――――

 

 

 パタパタと自分の横を飛ぶ幼竜と一緒に公宮の廊を進みながら、耀姫は今日を振り返る。

 ――今日は思わぬ一日になったわね。

 親友との楽しい話し合いに、青年や少女の会話。最後はルーニエとの仲が改善された。

 オルガもそうだが、その主な切欠であるマサトには感謝してもしきれない。何か贈り物の一つでも渡さねば、気が済まなかった。

 

「ルーニエちゃん。あの二人はどんなものが好みかしら?」

 

 ――う~ん……。分かんない。

 幼竜は頭を悩ませるが、二人といたのは短い間だ。よくよく考えれば、自分は二人を全く知らなかった。

 ソフィーは幼竜の悩む態度の可愛らしさに、思わず抱き付きたい衝動に駆られたが、グッと堪えた。

 ――駄目……駄目よ、ソフィーヤ=オベルタス! 我慢するのよ!

 ここでルーニエを抱き締めるのは差ほど難しくはない。しかし、その瞬間、自分は幼竜との良き関係を得る道を遠ざけてしまい、何れは永遠に失なうことになるだろう。

 そうなれば、あの二人も自分を白い目で見るのは想像に難くない。ルーニエとの関係、二人のためにも迂闊な愚行は厳禁。

 ソフィーは何度も深呼吸し、必死にこの衝動を抑制する。呼吸は乱しながらも何とか鎮まっていった。

 ――だ、大丈夫?

 その様子を心配し、ルーニエがソフィーの身を案じる。

 

「大丈夫よ、ルーニエちゃん……! これはわたくしが自分で乗り越えなくてならない試練なのよ……!」

 

 ――そ、そう。……頑張ってね。

 何故か出た冷や汗を流しながら、ルーニエはソフィーを応援する。

 ――とりあえず、今度会った時にサーシャに聞いてみましょう。

 今は仕事が先だ。気を引き締めると移動を再開。レグニーツァの公都から出ると、馬にソフィーは騎乗。目前に写る夕焼けに染まった広大な大地を見渡す。

 

「出発しましょう」

 

 ――おう。

 レグニーツァでの色々な一時を過ごした光華の耀姫は、目的地のブリューヌに向けて、役目を果たしに馬を走らせたのであった。

 

 

 ――――――――――

 

 

 翌日。レグニーツァの公宮に報告がもたらされる。隣の公国、ルヴーシュから、その公国を統治するエリザヴェータ=フォミナ率いる四千の兵が、レグニーツァへ攻め込んできたと。

 冬が近付く秋の終わり頃。レグニーツァとルヴーシュ、二つの公国の戦いが始まる。

 

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