堕ちた魔法科高校の優等生   作:人里桐

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題名のまんまです。
一応、次回からシリアスパートをいれていきます。


日常

 

「ッ!!」

 

地面に叩きつけられた、と感じた瞬間オサムは夢から目覚めた。肌が嫌な汗でぺたぺたとして気持ち悪い。それが冷や汗であることが分かる。何にせよ、時間はいつもオサムが起きる時間より少し早かった。

 

(チッ……朝から嫌なもん見ちまった……)

 

ハア、とため息をついて、ベッドに横になったまますぐ脇にある据え置き型の端末を操作した。毎朝やっている操作なので見なくても出来る。彼の指は端末の上を踊り、表示された一つのボタンを押した。

直後、三本の機械のアームがベッドの脇から伸びて彼の体を下からゆっくりと持ち上げる。オサムはなされるがままだ。そしてそのまま脇に置いてある車椅子に同じくゆっくりと収まる。

車椅子のひじ掛けの部分にある端末を操作する。すると車椅子は殆ど減衰された電気モーターの音がなり、ひとりでに動き出した。

毎朝行うこの一連の動作、オサムはこれが嫌いだ。気にくわないのだ、自分が機械のなされるままになっていることが。動かない足を見て忌ま忌ましげに舌打ちしてから、オサムは服を着替えてリビングに出る。

 

そこでは毎朝同じ光景が繰り広げられている。違うのは食卓に乗っている食べ物くらいだ。

オサムは車椅子を動かして席につく。車椅子に座ったままなのに『席につく』というのは変かも知れないが、これは比喩に近い(?)意味だろうから問題ないだろう。

そこでは食事をとる二人の姿。

一人は父親、名は影井|武(たける)。黙々と朝食を口に運んでいる。その身をビジネススーツできっちり固め、少し皺などが目立ち始めた顔は見るからに厳格そうな人物だ。僅かに魔法の素質があるが、実戦使うには遠く及ばないので、普通の会社員として働いている。

もう一人は弟、名は影井|正(ただし)。中学三年生。いかにも真面目そうな顔立ちをしており、この時代にしては珍しく眼鏡をかけている。そう、彼は霊子放射光過敏症なのだ。だがその症状は軽い。その眼鏡が『真面目』という印象を際立たせている。以前のオサムほどでないにしろ、彼も優秀な魔法の才能を持った期待の星だ。最近は父親の性格も相まって余計、正への期待が強まっているのが分かる。もともと、軽い性格のオサムと厳格な武はあまり相性が良くなかった。そこへ魔法事故が起これば、この結果はそこまで疑問を持つものではない。

突き放されたオサム、突き放した武、それに薄々気付いている正。母は台所に篭って出て来ない。よって朝食は最近は特に非常にギクシャクとした雰囲気に包まれる。大体、正が武とオサムに話し掛け、武はそれに無愛想に答え、オサムはそれに軽く答える。これで盛り上がるはずがない。盛り上げようとしているのが正だけなのだからそれも当然だ。

そんな正が話しかけない話題が一つある。

それは魔法のこと。

彼は皆が集まる……否、兄がいる場所では正は絶対に魔法のことを口にしない。あの事故が起きてから。だが──

 

「正、最近塾の成績が上がってるみたいじゃないか。頑張ってるようだな」

 

「う、うん……」

 

父親、武はその限りではない。平然と魔法のことを口にする。いや、この言い方は正しくない。

武はオサムがいるときを好んで魔法の話題を口にする。

オサムにも父親のしたいことは分かる。発破をかけているのだ、オサムに。脚のせいで彼は二科生に落ちてしまった。もう魔法師としては使いものにならない。

だから魔法ではないもので生きろ、と言っているのだ。

オサムは何も反応を示さない。先程の父親のように黙々と朝食を口に運ぶ。これをやられ始めたとき、オサムは頭に血が上り、席を立っていた。意識させられているという点で、父親の思う壷だった。だが最近は何も反応を示さない。意識してそうしている面もあるが、興味が失せたのが大きい。父親の言うことにキレたところで、一科生に戻れるわけではないのだ。

彼は恐らく一科生に戻ることはない。例え脚が治っても戻れないだろう。

 

彼の魔法技能は確実に落ちている。

 

彼の得意とする収束・発散系統にしろ、他の系統にしろ、明らかに魔法の発動スピードが落ちているのだ。収束・発散系統はまだいい。落ちてもなお、最高峰のレベルにある。しかし他はそうもいかない。元々収束・発散系統に特化していた彼の魔法演算領域は、他の系統は一科生ギリギリというレベルだった。しかし、今はそれが落ち、完全に二科生のレベルとなっていた。これでは流石に上がれないだろう。学校側としてはオサムの二科生行きは暫定的なものだったのかもしれない。しかし、現状では上がれないだろう。

オサムくらいしか、本人くらいしか気付いていない微かな違和感。魔法式を組み立てるときに違和感のようなものが離れないのだった。

 

意識がロックされている。

 

そんな感覚だった。オサムは無駄に饒舌な父親と控えめに答える弟を尻目に、ごちそうさまを言ってその場を後にした。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「おはようオサム」

 

「よう」

 

待ち合わせ場所に来ていた恵美と合流する。二人は小学生の頃からこうして登校している。

 

「何か最近、朝の表情が冴えないね」

 

「ん? 何の話だ?」

 

「何って、オサムのことよ」

 

オサムはため息をつきたくなった。幼少の頃から一緒にいるせいか、恵美にはこういうことが直ぐにばれてしまう。オサムとしてはポーカーフェイスを保っているつもりなのだが、行動の端々(はしばし)に違和感があるのだろう。

 

「そんな風に見えるか?」

 

「うん、オサムが無理して作った顔だってまる分かり」

 

「…………はあ」

 

今度はため息をついた。どうやら隠せるものではないらしい、とオサムは悟る。

 

「いや、実は──ということがあってだな」

 

「ふーん……」

 

オサムはあまり恵美に嘘をつかない。ついても何故か(注:オサム視点)すぐにばれるし、オサムは恵美を信用している。だから嘘をつく必要性をあまり感じないのだ。

 

「オサムも大変だね」

 

「お前ほどじゃない」

 

恵美は魔法師のなかでも特に外見がいい上、性格よし、成績よし(魔法以外を含む)と完璧な少女なのだ。魔法師の家としては平凡な深河の家では、期待がかなり大きいらしい。おかげでしょっちゅう縁談が舞い込み(親が勝手に申し込む場合も多いが)、その度にばたばたしている。彼女はたまにドジなこともあるが、基本しっかりしているので表面上は何事もないように見える。しかし、その裏ではかなりの重みを背負っていることをオサムは知っている。

 

「そうか……お前ほどじゃねえもんな……」

 

「ん?」

 

「いや、何でもねえ」

 

「ふーん……」

 

オサムは恵美の事情を考えてから思った。自分の事情も彼女に比べればまだ軽いもの(注:オサム視点)だ。幼なじみである彼女がここまで頑張っているのに、自分がこの程度で折れてどうするか、と。

 

(そうとなれば、魔法の練習だな……)

 

才能に頼ってきたオサムにとって、久しぶりの言葉であり、感触だった。

 

「ありがとな」

 

「私、何もしてないよ?」

 

なんだかんだで、この少女には、側にいるだけで救われるところがあるのだった。

 

「いやいや、君が側にいるだけで、僕は救われるのさ」

 

オサムは普段の調子を取り戻し、芝居がかった仕草でそう言った。

 

「はいはい、そうですか。そろそろ急がないと遅れるわよ」

 

「そうだねハニー」

 

恵美はいつも通り応じ、オサムもいつも通り。二人は再び学校に向かう。

 

「あっ!」

 

ドサッ! という音がして恵美がこける。

 

「オサムぅ……」

 

「…………」

 

これが彼らの日常。

 

 

 

 

 

もうすぐ壊れる、日常。

 

 

 

 

 

 

 




ちょっとくさいですけど、そこは僕の文章力の低さが問題です。ごめんなさいorz
ヒロインが可愛く書けない………誰か助けて!!

ちなみにこのあと、普通に遅刻します(笑)
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