堕ちた魔法科高校の優等生   作:人里桐

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さて、流れが中途半端ですがシリアス(?)にはいります。


襲撃

 

「はぁ……」

 

ここ最近、ため息をつく回数が増えた気がするな……と、オサムはぼんやり考えながらため息をついた。彼は現在駅に向かう道中の途中だ。

今日は結局、クラスメイトと一言も話さなかった。昨日模擬戦(あんなこと)をしたばかりなのだから、無理はないだろう。今日学校で話したのは恵美だけだ。一緒にご飯を食べようと言われ、多いに目立った。(余談だが、二科生になる前から恵美と二人で昼食をとっている)

その恵美は家の用事で早退した。また縁談だろう。親は今だに恵美が断るのを学習していないのだろうか? それとも学習していてなお諦めていないのか……。そもそも恵美も恵美で何故断るのかは教えてくれない。「こういうのはいくら親でも決められるのは嫌」と言っていたが、一人くらい好みの奴がいてもおかしくはないのではないかと思う。

 

「まあ考えても仕方ないか」

 

一人でそう呟く。そもそもどうしてこんなことを考えているのか、とも思いそこで思考を止める。

彼は駅へ向かうのを止め、喫茶店に入っていった。彼は普段、直で家に帰ったりはしない。家に帰ると()()()()面倒臭いからだ。二科生になる前から彼の家族は何かと面倒臭かった。故に彼は喫茶店で宿題を一通り済ませ、しばらく時間を潰してから帰路につく。本当は最低限家に寄り付きたくないのだが、夕飯時には戻らないとやはり父親がいろいろ面倒臭い。

今日の彼もそうした。家までにかかるのに30分。夕飯はいつも7時なのでオサムは大概、6時半少し前に喫茶店を出る。5月なので、外はもう暗い。そして出た直後──

 

視線を感じた。

 

彼は実戦魔法師であるわけではない。魔法の才能は飛び抜けていても、実戦を経験しているはずがない。それでも分かるほど明確な敵意の視線だった。こういうことが少しでも分かるのは、(ひとえ)にモノリス・コードの練習を少しでも重ねていた結果だろう。

 

(何だ……?)

 

ここまであからさまだと、ズブの素人か、あるいはたかが高校生にそうする必要(敵意を隠す必要が、である)がないと考えられているか。正直、オサムは暗い中襲撃(かはまだ不明だが)を受けるようなことをした覚えがない。強いて言えば昨日の模擬戦だが、あれだけで襲撃(仮)をかけることはないだろう。もしかけるにしても、実力の差を昨日の模擬戦で証明したのだし、リスクが高すぎる。大体、同じ学校の生徒を襲撃しても何も意味がない。

いずれにせよ、何がしたいのだか分からない。オサムは自分のポケットの中にある特化型CADに右手で触れながら、あまり人のいない場所に車椅子を動かす。この時間帯、丁度魔法科高校の生徒が部活から帰る頃だ。巻き込むわけにはいかない。しかしこの行動は、同時にオサムを孤立させることにもなるわけだが、彼は気が付いていない。こういう行動の端々にオサムは一科生特有の(おご)りが見られる。

 

枝道を通り、行き止まりの場所にたどり着く。まだ敵意の視線は消えていない。オサムが振り返って声をあげようとした時──

 

「ッ!?」

 

物陰から人が飛び出して来た。途中からオサムの意図が分かっていたのだろう。もっとも、パターンの一つとして段取りの中にあったのかもしれないが。敵(仮)からしたらオサムが自ら人気のない場所に移動してくれたのだ。これ以上楽なことはない。

 

(速い!……自己加速魔法か? しかし想子(サイオン)波動を感じなかった……)

 

魔法には発動する時に不可避の反動が生じるはずなのだ。魔法を使えるところを除いて、一般的な高校生であるオサムが軍事用のハードテーピングで肉体を強化していることなど看破出来るはずがなかった。10年後と違い、この国はまだ沖縄や佐渡への侵略を経験していない。全員が全員、軍事に心得があるわけではないのだった。

 

(やるしかない……!)

 

手にナイフを構え、人間とは思えないスピードで迫ってくる人影を見てオサムは瞬時に判断した。慣れた手つきで特化型CADを取り出す。敵は三人、対処出来るはずだ。

 

この時襲撃者の誤算が一つだけあった。

オサムはあくまでも高校生レベルであり、実戦的な訓練はしていないと思っていた。それにオサムは車椅子。

つまり、実戦では恐れるに足りないと思っていたのだ。

これは全くの事実であり、オサムに実戦的な技術は全くないに等しい。モノリス・コードはあくまでも試合──つまり競技だ。

だがそれと実戦でも恐れるに足りないのとは違った。セオリー通りにいけば襲撃者の予測は間違っていなかった。しかし、現実は間違っていた。

 

オサムがCADの引き金を引く。

 

彼等の誤算は──

 

 

三人の男達は足首に違和感を覚えた。しかしそれを気にせず迷わず足を踏み出す。そして体重をその足に移行した瞬間、それは起きた。

 

 

 

 

グシャリと音がして足首が潰れた。

 

 

 

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

男達が一斉に倒れ、足首を抑える。酷《むご》い光景だった。くるぶしの辺りが一気に潰れていた。その潰れ方からして、加重がかかったのは横ではなく縦。走っていた時の自重で耐え切れなくなったような感じだ。ドクドクと、倒れたペットボトルから水がこぼれるように血が流れ出る。骨が砕けて潰れた肉にめり込んでいた。腱が半ばからちぎれたような感じになっていた。ぐじゅぐじゅとしている真っ赤な肉が痛々しい。

 

これが彼の特異魔法。生れつき収束系統が飛び抜けている理由。

 

 

瞬間老化《コンバージ・アシッド》

 

 

原理としては非常に簡単。対象を中心に酸性の気体分子や活性酸素を収束する。それによって対象の細胞等が急激にダメージを受ける。よって急激に老化が進む。到底細胞の再生速度が追い付くスピードではない。今のは勢いよく走っていたので、耐えられなくなって潰れてしまったのだ。足首だけ、年齢が大体150歳。普通、人間は生きていないレベルまで老化した足がハードテーピングされた脚力に耐えうるはずがなかった。

 

「はあ……」

 

のたうちまわる襲撃者達。それを見てオサムはため息をついて、警察に連絡する。

 

 

やはりため息が多い。

 

 

オサムはそんなことをぼんやり考えながら、警察に状況を説明していた。

 

 




瞬間老化《コンバージ・アシッド》は非生物にも使える魔法ですが、欠点があります。まあここで言うのもアレなんで……伏せときます(笑)
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