堕ちた魔法科高校の優等生   作:人里桐

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久しぶりになりました。すみません。
ちょっと友人とふざけてISの二次創作にも手を出していたせいで大分遅れました。
そっちはまだ投稿しません。


暗夜の戦い

 

……月が出ておらず、完全な闇にとざされているような、そんな夜。

 

硝煙の臭いが辺りに漂っていた。

 

そんな中、オサムは車椅子から落とされたために、腕だけで地面を這っていた。

 

(畜生! 前と戦力が全然違うじゃねえか!)

 

そう心中で悪態をついても状況は変わらない。そんなことはオサムにも分かっているが、悪態をつかなければやってられない状況であるのも否定出来ない。

 

先程まではいつも通りの日常だった。彼は普段通り喫茶店から出て家に向かっていたのだ。

 

そこで前回と同じように銃を持った男二人と無手の男に襲われたのだ。一見無手に見えた男が何かを隠し持っているのはすぐに分かった。端くれとはいえ彼も魔法師なのだから。

そう、無手の男は魔法師。つまり持っていたのはCAD。オサムはすぐにそれに気付き、ポーチから汎用型CADを取り出した。そして殆ど直感的に収束魔法で圧縮空気を自分の前面に作り出した。圧縮空気の障壁が作り出された直後、銃弾がそこで金属が激しく擦れるような音をたてて弾かれた。しかしその直後、オサムは自分に魔法がかかったのを感じた。

 

(まずい、間に合わない──!!)

 

そう思った直後、オサムの体は車椅子を離れ、後方に吹っ飛んでいた。移動系単一の魔法。壁に叩きつけられ、肺から無理矢理空気を押し出されたような感覚が体を襲う。オサムも負けじともう一方の手に特化型CADを取り出して引き金を引く。

 

 

相手の命運を無慈悲に刈り取る死に神の鎌、瞬間老化《コンバージ・アシッド》が発動した。

 

 

二回の拳銃の発砲音。そして二人分の悲鳴が辺りに響く。今回老化したのは手首、年齢にして250歳程度まで老化させた。肉体は既に死に、風化がその身を大きく削っている頃合いだ。そんな状態で銃を撃ったのだから、当然手は千切れ飛んだだろう。だがまだ戦いは終わっていない。今瞬間老化を発動させたのは銃持ちの二人だけ。むしろ残っているやつの方が厄介だ。

 

ここで冒頭に戻る。

 

「金本! 五十嵐! ちくしょう!」

 

魔法師の男が仲間の名を叫びながらCADに指を走らせる。

 

(やれやれ、あの雰囲気じゃあ俺が悪者みたいじゃねーか……)

 

そんなことを心の中で愚痴りながらも指は動く。

 

(奴の単一の移動魔法……単一にしては発動が遅かった……)

 

元々魔法の才に乏しいか、移動魔法が得意ではないのか、……おそらくは後者だろう。

 

(銃持ちと組み合わせたのなら……障壁系か?)

 

思考を重ねながら、オサムは汎用型CADのコマンドをうち終える。オサムは現在汎用型と特化型、両方出してはいるが、当然二つ同時に使えるわけではない。CAD同時操作は出来るだけで称賛を浴びる特異技術なのだから仕方ない。

オサムが発動したのは瞬間老化《コンバージ・アシッド》を利用した複合魔法だ。アスファルトを瞬間老化《コンバージ・アシッド》を利用して劣化、そうすることによって脆くなり、事象改変が出来やすいようになる。それを移動系単一魔法で相手にぶつけるというものだ。

瞬間老化《コンバージ・アシッド》は強酸、強塩基、活性酸素等を選別し、対象に螺旋を描くように収束して劣化させる魔法だ。かなり難易度の高い魔法だが一応収束の単一である。

つまり今の魔法は2行程でしかない。オサムにはそれくらいしか発動する余裕も速度もなかったのだ。オサムがコマンドを入力している間、相手もCADにコマンドを入力していた。オサムの予想通りであれば障壁系の魔法。それを確かめるためにオサムはアスファルトを弾として撃ち出したのだ。

障壁系の使い手はまず障壁を張る。何故なら、障壁を張れば防御面は保障されるからだ。その後は(CADの同時操作をしない限りは)銃等の武器を使って相手を制圧すればいいのだ。

あと少しでアスファルトが相手に届く。そのとき、急にアスファルトの速度が落ちた。スローモーション映像でも見ているかのようだった。

 

(減速領域《ディーゼラレーション・ゾーン》か!)

 

術式自体はありふれたもので、対象領域内の物体の運動を減速させる魔法である。今、その領域内にアスファルトの破片が突っ込んだのだ。

オサムの予想通り、敵は障壁系だったというわけだ。実力も想定内。流石に十文字家のような障壁が来るとは思っていない。

 

(しかし減速領域《ディーゼラレーション・ゾーン》か……障壁役をおおせ付かるにしては弱いな……)

 

もともと減速領域《ディーゼラレーション・ゾーン》は停止させるだけの魔法力がないときに使われる魔法。今のはアスファルトの塊を撃ち出しただけだったのでなんとかなっているが、銃弾だったりしたら止められないだろう。

 

(ここから何かあるのか……?)

 

そう考え、警戒しているとアスファルトが急に逆向きに飛んできた。

 

(何!?)

 

そのままもともとアスファルトがあった場所の手前に着弾した。

 

(なんだ今のは……)

 

減速・加速領域魔法『加速度反転領域《カウンター・ゾーン》』。

先程の魔法はオサムの想像した減速領域《ディーゼラレーション・ゾーン》ではない。減速領域《ディーゼラレーション・ゾーン》が速度を一定値落とすのに対し、先程襲撃者が使ったのは定率減速。領域に外側から侵入した物質から90%の速度を奪うよう定義されている。しかし加速度反転領域《カウンター・ゾーン》はそこで終わらない。定率減速領域を過ぎると加速度領域が待ち受けているのだ。そして加速領域で、定率減速領域で奪った速度をマイナス方向に加える。

結果的に加速度反転領域《カウンター・ゾーン》に入った物体は最初の速度の八割で返されることになる。

減速領域《ディーゼラレーション・ゾーン》のように移動系統が苦手な人が使う魔法だが、加速・減速系統が得意な人にとっては単なる停止領域よりもずっと効果を発揮する優れた魔法だ。停止までしない分、事象改変もしやすい、実践的な魔法でもある。

もともと優れた魔法ではあるが、一番問題なのは、オサムがこの魔法の存在を知らないことである。

 

知らないということは焦りを生む。

 

予想が違《たが》えばなおさらだ。

 

だからオサムは、『技』でどうにかするのを諦めた。

 

「お前は、仲間を殺した! だから殺す!」

 

襲撃者は自分の魔法を発動したことで自分の優位を確信したのか、興奮気味に叫んだ。事実、言葉通りの気持ちもあるのだろう。

 

「おいおい……襲撃したのはお前らだぜ。自分達が悪役《ヒール》だって分かってるのかよ?」

 

オサムはいつも通りの口調でそう言った。

 

そこに焦りはない。

 

「うるせえ! たとえ自分が何をしたとしても、仲間が殺されたらイラッとくるんだよ!」

 

「……それもそうだな」

 

心底落ち着いた様子で話すオサムに襲撃者は逆に焦りを覚えたのか、大声を張り上げた。

 

「分かってるのか! 今ピンチなのはお前なんだよ! 俺が仲間の拳銃を拾って撃てばお前は死ぬしかないんだよ!」

 

「ああ、その通りだ」

 

「ならもっと──」

 

「けどよ」

 

襲撃者が叫ぶのを途中で切り、オサムは不敵に笑う。

 

まるで勝利を確信しているかのように。

 

「それはお前の魔法が突破されないことを前提にしてやがるぜ?」

 

「越えるというのか、この壁を……」

 

ギリギリと苦虫を潰したような表情をする襲撃者。加速度反転領域《カウンター・ゾーン》をここまで発動する術者だ。自分の加速魔法に自信があるのだろう。そしてその自信は実力に裏付けされている。それを侮辱されたように感じたのだろう。

 

それを見てオサムはニヤリと笑った。

 

 

「越えるんじゃあねえ、潰すんだ。正面からな」

 

 

オサムは自分の特化型CADの引き金に指をかける。

それに入っている魔法式はただ一つ。

オサムの固有魔法。

 

瞬間老化《コンバージ・アシッド》

 

その様子を見て更に焦りを覚えたのか襲撃者は拳銃のもとに走り出した。しかしそれは無駄だった。

 

 

 

「風化しろ」

 

 

 

その一言で、滅びの螺旋が動き出し、

 

襲撃者は死んだ。

 

全身ボロボロになった肉塊が、ドサリと倒れた。

 

単純な力比べだった。

 

オサムの魔法が、襲撃者の干渉力を大幅に上回っていたに過ぎない。

 

「終わった……」

 

自分は一撃しか受けていないのに妙に疲れた。

 

オサムはそこでゆっくりと眠りに落ちた。

 

 

 




中二病で何が悪い!!!

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