特に料理屋が異世界に繋がっていて、こちらの技術で、異世界で料理を出して、云々という話が大嫌いです。
その人の作品が面白ければ、面白いほど嫌いになります。
なんで異世界じゃないといけないんだ。
なぜ、はるかに技術的に上回っているチート持ちじゃないと、勝負できないんだ?
対等の条件で喧嘩しろやって思うわ。
そんな訳で、多分、異世界じゃない現実世界で、同じ条件で、チート持ちじゃない人たちのお話です。
あ、しつこいですが、一話の登場人物とは無関係の他人です。
「おい。起きろ、由紀。」
俺の部屋の俺のベッドを占拠し、俺をソファーに追いやっておきながら、一人気持ちよさげな顔をして、熟睡している由紀の奴を俺は叩き起した。
「なによ、もー、こんな朝早く。
あたしは低血圧だから、朝弱いんだよ。」
由紀はそう言いながら、シーツのう中に隠れようとしている。
俺はシーツを引き剥がし、
「阿呆、池谷珈琲店のモーニングに私もつれてけと言ってきたのはお前だろうが。
あそこは人気店だから開店前に行って、場所取っとかないと、常連の俺だって席無くなるんだぞ。
お前の席なんて確実に無くなるわ。」
と言った。
「むきゅう。」
由紀は諦めの意味なのか、訳の分からない言葉を発すると、起き上がって、
「ちょっと、君、向こう行って、ドア閉めて。」
とキッチン側を指さしながら言った。
「なんで?」
俺の問いかけに、由紀は旅行カバンを手元に引き寄せながら言った。
「着替えるから。」
俺は暖房のきいてない寒いキッチンへ追い出された。
俺が住んでいるのは、日本でも屈指の有名な観光地だ。
女友達の由紀は休日を利用して、観光にやって来たわけである。
そして、宿泊費用を浮かせたいから、俺の部屋に泊めろと言ってきたのだ。
当初は由紀がソファーで寝る約束だったのに、気がついたら、俺はベッドを追い出され、ソファーにいた。
仕方なくソファーで寝る準備をしている俺に、由紀はガイドブックを見ながら言った。
「ねぇ、池谷珈琲店って知ってる?」
と。
「あー、知ってる。
というか、俺は常連なんだが。」
と、答えると、由紀は、
「うっそ!
ねぇ、
池谷珈琲店のモーニングコーヒーからこの街の1日が始まる。
って、ガイドブックに書いてあるけど、本当なの?」
と問いかけてきた。
「まぁ、人によって好みは違うから、池谷珈琲店じゃない店に行く人もいるだろうが、オレはずっと池谷珈琲店でモーニング食ってるよ。」
と答えると、
「あたしも行きたい。明日、連れてってよ。」
と言ってきたというわけ。
で、なかなか起きない由紀を俺はやっと起こす事に成功したわけである。
「まだか?」
「まだー。」
という会話を何度か繰り返し、やっと、
「いいよ。」
という返事が返ってきたのは、開店時間直前で、席に溢れた観光客が行列を作りだす時間だった。
そうなるとさすがの常連といえど、行列にならぶしかない。
ゆっくりはしていられない、走るしかない。
俺は由紀を追い立て走った。
観光客のいる表の入り口ではなく、勝手知ったる常連用に開け放たれているかの如しの裏口から店に入った。
外観は純和風の町屋建築だけれど、店内に入ると、まるで、ホテルのラウンジのような雰囲気で、明るく広々としている。
俺は勝手にお冷を二つ、メニューを一つ手にして、いつものカウンターの一席に腰を下ろした。
そして、お冷を一つとメニューを由紀に渡した。
「あれ、ここ、セルフサービスなの?
ていうか、メニュー見ないの?」
由紀は不思議そうな顔をして聞いてきた。
「あぁ、常連はセルフっていうか、勝手に持ってく。注文しないからメニューはいらない。」
「注文しないって」
「しないと言うか、決まってるから、メニューは見ない。って感じかな。」
「あぁ、そういう事か。じゃあ、あたしはじっくり見せてもらうね。」
そう言うと、由紀はメニューを開き、目を落とした。
「あぁ、ごゆっくり。」
しばらくして、
「ねぇ、ここって、けっこうモーニングメニュー豊富なんだね。」
と、メニューを見たまま、由紀はそう言った。
「あぁ、そうだな。多いかもな、他に行かんから知らんけど。」
と答えると、
「なんか、みんな美味しそうで悩む。」
「あー、ちょっと違うな、美味しそうじゃなくて、美味いんだわ。確実に。」
「マジかー。ねぇ、なにがオススメ?」
「いやー、それは聞かれると困るんだが。」
「なんでさ?」
「だって、みんな美味いもん。」
「でも、君は決まってるんでしょ?どれなの?」
「俺はローテーション。」
「は?ローテーションってなにそれ?」
「曜日ごとに違うやつ頼んでる。」
「頼んでるんじゃん。」
「いや、月曜はこれ、火曜日はこれって決まってて、それを店員さんはもう覚えてるから、何も頼まないよ。」
「なんかめんどくさい客。」
「そうかな?」
「ちなみに、そのローテーションは?」
「えっと、小倉バタープレスサンド、ホットケーキ、チーズトースト、ふわふわ玉子サンド、ポテトサラダサンド、クロワッサンとハム、カリカリベーコンサンド」
「ちょい待ち。小倉バターって、変じゃない?
なんで、小倉をトーストするの?」
由紀は気色悪いとでも言うような顔をして言った。
「いや、トーストじゃなく、プレスサンドなんだが。」
「どっちでもいいわよ。トーストやプレスサンドといったパンに餡子のせないでしょ。選択肢としてはバターかジャムでしょう、普通。」
「こっちでは小倉は普通なんだよ。」
「実物見た事も食べた事もないし、トーストとアンパンはパンのやわらかさが違うし、おいしいのかも知らんけど、変だって思うわよ。」
「あぁ、わかったわかった。今日は小倉プレスサンドの日だから、少しやるから食ってみなよ。」
そう言うと、由紀はにっこり笑って、
「ありがとー。じゃあ、私は何を頼もうかな。
ねぇ、ホットケーキなの?パンケーキじゃなくて。」
ここはパンケーキじゃなくて、ホットケーキな。
つうか、本来、パンケーキとはフライパンなどで焼いたケーキの総称なんだと。
クレープ生地にクリーム等を巻いた甘いものから、前菜にもなる塩味系のものまでと幅広い。
だから、本来の定義では、ホットケーキはパンケーキの一部らしい。
ちなみに森永製菓としての見解は……
ホットケーキは小麦粉、卵、牛乳、砂糖などを混ぜて、フライパンなどで円形に焼いたもの。甘くて、厚みのあるものをホットケーキとしている。
パンケーキは砂糖不使用で甘くなく、食事に合うような品質のもの。
つまり、森永製菓は、ホットケーキは厚みのあるスイーツ系、パンケーキは食事系という見解らしい。
まっ、そんな事はともかく、ここのはホットケーキは、創業当時から変わらぬ銅板で焼くホットケーキで、たっぷりのバターを塗って、蜂蜜かメープルシロップをかけて食べる、初めて食べても懐かしいと感じるホットケーキさ。」
「銅板?
銅板使って焼くの?」
「おう、銅板で焼き上げることで、焼きムラが少なく、ふっくらとキレイに焼き上がるんだと。」
「へぇ、よし、私、ホットケーキにしよう。」
とかなんとか話をしていたら、店員の佐藤ちゃんが通りがかったので、佐藤ちゃんを捕まえると、
「ホットケーキのセットで、飲み物は紅茶で。」
と、由紀は注文を伝えた由紀はコーヒーが飲めないのである。
「紅茶には、ミルクと砂糖はお入れしますか?」
佐藤ちゃんの問いかけに、由紀は俺を見た。
「好きにしたら、俺は入れてもらってるけど。」
そう言うと、由紀はしばし悩んで、
「入れなくていいです。」
と答えた。
「ホットケーキのシロップは蜂蜜と、メープルがございますが?」
と、佐藤ちゃんは問いかける。
由紀はこれまたしばし悩んで、
「メープルで。」
と答え、注文は終わった。
「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ。」
そういうと、佐藤ちゃんは、足早に厨房に向かった。
忙しいのである。
しばらくして、由紀の注文と、注文してないけど俺のお決まりの小倉プレスサンドとミルクと砂糖入りのコーヒーのセットが届いた。
二人揃って、まず、飲み物に手を伸ばした。
俺は厚手のカップになみなみと注がれた漆黒色のコーヒー。
まず香りを楽しみ、スプーンでよくかき回し、底に貯まった砂糖を溶かし、おもむろに口に運ぶ。
毎日飲んでるけど、あぁ、やっぱり、池谷珈琲のコーヒーはうまい。
由紀の手には背の高い耐熱ガラスのカップに銀の持ち手のカップがあり、そのカップには透明感のある紅色の茶が、たっぷりと注がれている。
由紀は一口紅茶をこくっと飲むと、ほうっと吐息を洩らした。
知ってる。
池谷珈琲の紅茶は、そこらの紅茶専門店よりうまい。
俺はカップを置いて。プレスサンドを手に持ち、片端をちぎりとると由紀に渡した。
「あ、ありがと。じゃあ、いただきまーす。」
もぐもぐかみかみむしゃむしゃ。
しばらくして、パンを咀嚼し終え、飲み込んだ由紀は目を見開いて、こっちを向いた。
「なにこれ、バターの塩気とあんこの甘さが絶妙じゃん。
ていうか、このカリカリしてるとこ、超おいしいんだけど。」
そうであろう。
「最初、耳の方が多くて、ケチだなぁと思ったけど、このカリカリ最高じゃん。」
「ケチって、まぁ、カリカリなとこが特にうまいからそっちを多めにやったんだがな。」
由紀はしばし、なにか悩む素振りをしていたが、
「ねぇ、ホットケーキ一枚あげるから、プレスサンド1個ちょうだい。」
と言った。
「シェアしろってこと?」
「そそ。」
「じゃあ、お前がホットケーキを食べる前に一枚よこせ。」
「???」
「ホットケーキを少しでも食ってからだと、やっぱり止めるとか言い出しかねない。先にやってからだと、俺の分が足りなくなる。」
「シェアしようと言ったんだから、そんな事しないし。
まぁ、いいよ、じゃあ。」
由紀は皿にホットケーキを二枚並べ、それぞれにたっぷりとバターを塗り、シロップをどっぷりとかけ、そのうちの1枚を取ると、俺の皿の上に置いた。
あぁ、プレスサンドにもシロップついちゃうな、まぁ、いいけどさ。
俺はさっき、由紀に渡したプレスサンドの残りを由紀の皿に乗せてやった。
さて、俺は先にどっちを食べるか思案していると、由紀はさっそく、プレスサンドを口に運んでいた。
どうも、だいぶお気に召したようである。
よし、俺はホットケーキにしよう。
先に食ってしまえば、後から取り戻せまい。
俺はホットケーキを四等分にして、皿に流れ落ちたシロップを、絡め直し食べる。
あぁ、懐かしい味。
初めて食べた時と変わらず、うまい。
そうやって、またたくうちにホットケーキを平らげた頃、由紀はナイフとフォークを手にして、ホットケーキを四等分にし、嬉しそうに口に運んでいた。
それを横目で見ながら、プレスサンドを口に運んでいると、ぐいぐいと肩を引っ張られた。
なんだと思って見ると、由紀だった。
由紀は目を潤ませて、泣きそうな顔をしていた。
「どうした、由紀。」
俺が心配してそう言うと、由紀は
「おいしい。でも、なんだろ、ここ、初めてきたのに…、初めて食べたのに…。」
「なんだか、懐かしい味がするんだろ。」
「うん、なんでだろ。」
「俺にもよく分からんけど、初めて食べるはずなのに、懐かしい味がするんだ、ここのホットケーキは。」
「そうだね。うん、不思議。」
見ると、由紀はぽろぽろと涙を流し始め、慌ててハンカチを取り出し、目を抑えた。
「どうした、由紀。」
再度、問いかけると、
「私ね、小さい時、おばあちゃんっ子だったんだ。
おばあちゃん、私が小さい時に、よくホットケーキを作ってくれたなって、思い出した。
こんなに形もキレイじゃなくて、不恰好だったし、こんなにおいしくなかったけど、なんか、懐かしくなって、思い出した。」
なんだかギュッとしてやりたくなって、俺はウデをまわして由紀の肩を抱き寄せた。
由紀はちょっとびっくりした顔をしたけれど、ふふっと笑って、頭を俺の肩にもたれさせてきた。
しばらくして、朝食を終えた俺達は精算を済ませて店を出た。
「ねぇ、これからどこ行く?」
由紀は俺の横に並ぶと、そう問いかけてきた。
俺は由紀の手をそっと握り、
「まだ時間あるしさ、ちょっと俺の部屋来ないか?」
と、答えた。
由紀は俺の顔をちょっと見ると、顔を伏せ、
「いいよ。」
と、言った。
この後、めちゃくちゃSEXした。
やっと、終わった。
一話はなんか勢いで書いたんですが、二話はちょっと苦闘しました。
思ったより長くなったし。
ネタばらしのコーナー。
例によって積極的に元ネタをばらしていくスタイル。
京都・イノダコーヒ(そのうち、ビーフカツサンドを書きたい)
大阪・丸福珈琲店(ここのホットケーキは懐かしい味がする)
名古屋・リヨン(小倉プレスサンドはうまい)
次はシン・ゴジラ対スイパラ対カンムス(体験版)を書きたいと思いました。
いや、シン・ゴジラ対スイパラに騙されてスイパラ行ってしまって、スイパラを食い尽す艦娘達を書きたくなりました。
でも、これは外伝的な話になるので、完全版はコミケ用の同人誌限定にしようかなぁと思います。