その日も菜々はいじめられていた。
「やーい、やーい。弱虫」
「助けてぇお姉ちゃん」
「また、妹をいじてるなぁ」
いつものようにシノは菜々を助けた。ところが、
「ほう。あんたかいつも俺の弟を傷付けるのは」
一人の男がいた。
「当時のシノは7歳。確かにその年では天才だった。しかし、年上からしては赤子の手を捻るようなものだった」
茜音は淡々と話をした。
「ということはもしかして」
「そう、シノは彼にぼこぼこにされたの」
「ほらほら、ちゃんと守らないと死んじゃうぜ」
彼が使う魔術とシノが知っている魔術の間には天地の差があった。彼が使うのは傷つける魔術なのだから。
「きゃぁー」
なんとか防いだか反動で後ろに飛ばされた。
「立てよ。お前には色々と恩があるんだよ。それとも?あの妹さんを傷つけられたいのか」
男は高笑いをする。
「それだけはさせない」
シノは立ちあがった。
「そうこなくっちゃ。もっとたのしもうじゃないか」
シノは防戦一方。もう、身体中がほろぼろになっていた。
「ぐくくくくっ」
ついには立つことができなくなった。
「もう、おしまいかぁ?しかたがないなぁ、じゃあ、次お前な」
男は菜々の方に近づいていった。
「私はただ見てるだけだった。怖くて動けなかった。そして、動けない私に苛立ってた」
菜々は強く拳を握りしめた。
「それで貴女はどうなったの」
「簡単よ。私は壊れたの。人間として」
「やめ、止めてよ菜々」
シノは必死で止めた。
「なんでなの?こいつはお姉ちゃんを傷つけたの。殺さなくちゃ」
菜々は指で魔方陣を編成し
「ズドン」
「がはぁ」菜々が飛ばした魔法は男の足を撃ち抜く。
「あはは、もっと苦しめ」
指から出てくる魔法で男を苦しめ続ける菜々。
「もう、やめろ」
「なにがあったんだ」
近くの大人がやってくる。
「お願い。菜々を止めて」
「そして、大人数人によって菜々は止められたの」
「・・・・・・」
菜々を含め誰も声をだすことができなかった。菜々の目には涙が浮かんでいた。
「そ、それが私なんですか」
「いいえ、貴女じゃないわ」
「どういうことなんだ」
今までの菜々の話をしていたはずなのになぜ菜々ではないというのか分からなかった。
「話を最後まで聞きなさい。まだ終わってないの」
「そして私は捕まった。そして、あまりの強大な強さを持っていることから街は家族の無理を押しきって私を封印したの」
「その言い方だと何かあったのね」
「そう、あったわ。あのグズ達は強大な力を我が物にしようと私の力を奪おうとしたのよ」
菜々は歯軋りをした。
「一人の男が目を覚ました」
「どうだった」
一人の男が入ってくる。
「だめだ。あれは強すぎる」
首を振りながら男は部屋を後にした。
「はぁ、これで20人目か」
男は溜め息をついてある場所を見た。そこにいたのは菜々だった。
「あいつらは自分を強くしたいためだけに私を取り込もうとしたの。私を封印して祭壇で実体のない私と会って倒して奪おうとした。でも、ことごとく倒したけどね」
苦笑しながら菜々は言った。
「でしょうね。あんたを倒すのはほぼ不可能でしょうね」
「そう気付いたやつらは今度は別の方法を使いはじめたわ。お姉ちゃんに変身してやっていた時は相当腹が立ったわ。そして、何もかも信じれなくなったわ」
その日もいつもの儀式が始められようとしていた。菜々はいつもの場所に立っていた。
また、誰か来る。そう思いながら魔法を編んでいた。
「ヤッホー、菜々迎えに来たよー」
現れた人間はまるで姉のように振る舞っていた。
「あんた、誰?」
菜々はそう尋ねながら魔法で攻撃的した。
「うゎ、危な。姉ちゃんに向かってなにやってんの」
そいつはそう怒りながら近づいてくる。
「姉ちゃん?そんなわけないでしょ。お姉ちゃんがここにいるはずがない」
そういいながら魔法で攻撃をする菜々。
「なに言ってんの。そのお姉ちゃんがここにいるって・・」
「そんなはずかない。お姉ちゃんがあんなグズ達と一緒のことをするはずがない!!」
「・・・・・」
「あいつらは私を力としか見てない。私を攻撃して、私を騙して、あいつらは平気で私を傷つける。そんなことお姉ちゃんはしない」
そういいながら菜々は魔法で攻撃をする。
「ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえ」
攻撃を続ける菜々は驚いた。お姉ちゃんと名乗る者は攻撃を全て受けながら近寄ってきた。
「な、なんで、なんで、何もしてこないの」
驚きのあまり攻撃を止めた菜々。
「な、なんでって・・・、当たり前じゃない。だって・・・・」
そう言いながら近づいてくる。彼女は菜々を抱き締めた。
「大切な妹を傷つける姉なんて姉失格じゃない」
「本当にお姉ちゃんなの」
泣きながら菜々はシノに尋ねる。
「当たり前でしょ。ごめんね。遅くなっちゃって」
ボロボロになったシノはそう言った。
「よく、お姉ちゃんが来れたね」
二人は寄り添いながら菜々は尋ねた。
「最初無理って言われて理由を聞いても教えてくれなかったから隙を見計らって見張っていた人眠らせてきたの」
ニッと笑いながら菜々を見た。
「ごめんね。遅くなって」
シノは菜々の頭を撫でた。
「いいの。お姉ちゃんが来てくれただけて嬉しい」
「ねぇ、菜々あんたがよければ私のところに来ない?」
「それもいいけど、私は元の体に戻りたいの」
「それは無理かもしれないの」
「どうして?」
「この儀式を仕切っている男はこのままだったら菜々を殺すつもりなの」
「そんなぁ」
菜々は絶望した。
「だからなの」
「え?」
「大切な妹を守りたいし、誰にも任せられない。それに、わたしの中にいればいつか元の体に戻せるかもしれない」
「本当に?」
「不可能に近いけどね」
「不可能を可能にするのが魔術の基本なんでしょ」
「正解。じゃあ、私の所にきてくれる」
「いいよ」
「そうして、菜々の力と心はシノが持つことになったの」
「待ってください。じゃあ、私は誰なんですか」
「・・・・・・・」天使は何も言わなかった。その無言で二人は察した。
ここにいる菜々は偽者だってことを。
「ごめんなさい。まさか、ここまで重い話とは思わなかったわ」
笑いながら菜々はそう言った。
「大丈夫なのか、菜々」
「はい。大丈夫です。真実を聞けたんで」
菜々は後ろを向いた。
「智さん。どんなわたしでも。智さんの仲間ですよね」
「当たり前だろ」
「よかったです」
そう言って菜々はどこかにいった。
彼女は一枚の紙をもっていた。
「さあ、これを聞いて貴女はどうするの?」
菜々は咲夜に尋ねた。
「貴女に味方してあげるわ。それで、何をするればいいの?」
「友久君を止めて」
「彼が来ると思うの?」
「きっと、彼はもう一人の私を助けにくる。彼がいちゃダメなの」
「分かった。足止めはするわ」
「ありがと」
菜々は時計をみた。
「もうすぐね」
貴女は分かってないわね。咲夜は思った。
彼は必ず奇跡をおこす。きっと、悲劇ではおわらせない。
「天使、菜々を知らないか」
智は部屋に来るなり天使に尋ねた。
「菜々ちゃんがどうかしたの」
ビクッと天使は驚いた。
「それが学校中を探してもいないんだ」
「まって、今どこにいるか調べるわ」
といって天使は後ろの機械を使って調べ始めた。
「いた。外にいるわ。近くには咲夜ちゃんと・・・、あと一人知らないか反応があるわ」
「まさか!」
智は部屋を飛び出した。