「何がおこってこんなことになってんだよ」
クロは目の前の物体を見て驚いていた。
そこにあるのは氷漬けになったティアブロスだった。
「一体、誰がこんなことしたのかしら」
「私でも片足やっと氷漬けに出来るか出来ないかよ」
「会長もこんなことできないはずなんですが」
「私がしたのよ」
頭の上から声がした。
「あんなことできないのに魔王なんて倒せるはずがないわよ」
そこに立っていたのはどこかで見たような女子だった。
「まさか津田さんがやったの」
「そうだけど、だから分かったでしょ。あなた達は必要がないって」
「だけど皆で助け合うほうがいいに決まって」
「そんなわけないじゃん。私はたった一人で魔王を倒したの。だからあなた達は必要ない。いるだけ無駄なの」
「そうです。綾香さん一人いれば大丈夫なんです」
綾香の肩から一匹の三毛猫が現れた。
「でも」
「これ以上は何の意味もない。ここであなた達を氷漬けにしてもかまわないわよ」
彼女は手を高く挙げ降りおろした。手からはなにかが出てきて私たちの方に向かってくる。しかし、氷漬けになったのは手前の地面だった。
「??」
見ると綾香の左手が降りおろされる手を止めていた。不思議そうに左手をみていた。
「ここは一旦引こう。今の彼女は話も聞いてはくれないわ」
「そうね」
そう言って私達は綾香から離れた。
「なんであんたは邪魔をするの」
誰もいない空を見上げ綾香は言った。
「成程、それでぼこぼこにやられてきたってわけなのね」
「別に負けたわけじゃないし。戦ってたら勝ったし」
「シノ。戦ってたら間違いなく氷漬けにされてたわ」
「そ、そうかもしれないけど」
下を見ながら目をそらした。
「まあ、ディアブロスを氷漬けにしたんでしょ。なら、戦わなくてよかったわね。それで、そこの無言の彼女はどうしたの」
「別に考え事をしてただけだよ」
「なにかあったの」
「綾香が私達を狙った時、咄嗟に力を使ったの」
「だけど、効果がなかったのかしら」
智はうなずいた。
「確かにシノにも効かなかったり、効果がない奴もいる。でもな、あいつはおかしいかったんだ。まるで何かに妨げられてるみたいな」
「妨げられるかぁ」
「なにか思い当たる節があるんですか」
「いや、全然」
ズコーと二人は滑った。
「それで、なんで海辺に来てるんですか?」
「分からない。ただここに来なくちゃいけないって思ったのよ」
ミケと綾香は海に来ていた。
「そういえば前に私は魔王を倒す存在だって言ってたんですけどいったいどういうことなんですか?」
「私はこの世界に来る前に魔王を倒したの」
「え、ちょっと待って下さい。魔王を倒したんですか」
ミケは口をあんぐり開けて驚きながらたずねた。
「ええ、だから私一人で充分なのよ」
「それじゃあ、魔王の姿を見たんですか」
「ええ、魔王は・・・・・」
夕焼けのチャイムが流れた。綾香の声はミケにだけ聞こえた。
ミケは目を見開いた。
「それは酷くないですか」
「別に」
そう言って戻っていった。
(綾香さん。悲しくはないんですか?)
「それで、こてんぱんにされて策がなくてここに来たってことで合ってる?」
茜音の言われた通りでなにも言えなかった。
「綾香は何か不思議な力が持ってるんだ。それがなにか分からないか」
「不思議な力ね。で具体的にどんなのなの?」
「何て言うか。彼女がなにか冷たい・・。そう氷!氷に包まれてるみたいな」
「あら、そんなとこまで気づいているのね」
天使は笑いながら立ち上がった。
「そこまで分かったならあと少しよ」
そう言って部屋を出ようとする。
「ちょ、待てよ。あと少しってどういう意味」
部屋を出ようとする茜音を私は呼び止めた。
「もう時間よ。教室に戻りなさい」
「話を切らないで。ちょっと」
「彼女を助けてあげて」
そう言って天使は部屋を出た。
「え?」
検討違いの言葉に理解できなかった。
結局なにも結果を得ることなく教室に戻ってきた。
「あ、智さん。どうでしたか、何か教えてもらいました?」
「いや。全く教えてくれなかった」
「そうなんですかぁ」
智達三人の空気はずーんと重くなった。
「でも、一つ気になることを言ったの」
「気になること?」
「彼女を助けてあげてって」
「どういうことなの」
結局三人にも分からなかった。
「ようやく来たわね」
一人の女は立ち上がった。
「どうした。どこにいくつもりだ」
「いいじゃん。散歩散歩」
「余計なことはしないでださいよ」
「はーい」
そう言って彼女は外の世界に出ていった。